分解修復勇者の異世界道中   作:フリー123456789

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第17話 サクラギ

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<三人称視点>

 

 王城での御前会議から数日後。

 

 レイヴァンハート王国でも滅多に見ることができないほどの豪華絢爛な1台の馬車が舗装されていない道を通常の馬以上の速さで進んでいる。

 

 その馬車はエクストラスキル<重力魔法>の<軽量化>が付与されており牽引する馬の負担を軽減することが可能だ。

 

 そんな馬車を牽引しているのはただの馬ではなく、馬に似たBランク級魔物グレーターホース。

 

 Bランク級の魔物を討伐するためには、3人から5人で結成されているBランク級の冒険者パーティーが最低でも1組は必要だ。

 

 だが、これは討伐時の目安であり捕縛などの生け捕りの際には、更に高位の冒険者が必要となってくる。

 

 そのため魔物を使役している者はその魔物よりも実力が遥かに上か、家畜化された魔物を買ったのかのどちらかだ。

 

 そんなグレーターホースを更に強化するかの如く、どちらにも<回復魔法>の<疲労回復>が付与された馬鎧が装備されている。

 

 それだけでなく、馬に騎乗し馬車を囲むようにして護衛する100人程の屈強な男たち。

 

 防具は革鎧、鉄の胸当て、武器はロングソード、弓、魔法杖など彼らは統一感の無い防具と武器を携帯しているがその実力は本物だ。

 

 たとえ毎日死闘を繰り返しているベテラン冒険者パーティーであろうとも護衛を突破して馬車の主の元に辿り着くことは困難だ―――逆に言うとベテラン冒険者パーティが複数で手を組めば突破可能と言うことであるが。

 

 

★★★

 

 

 まるで大名行列のような一行は、王国の御前会議で議題に上がった迷宮都市のダンジョン前に辿り着いた。

 

 馬車の御者台に座る執事服を着た男が御者台から降り馬車の扉を開け中で眠る侯爵を起こすために体を揺らす。

 

「―――旦那様。旦那様」

 

「んぅ……、ぅ?」

 

 侯爵が目をこすりながら意識を現実へと戻し背を伸ばす。

 

「件のダンジョンにお着きいたしました。これから冒険者ギルドへ挨拶を―――」

 

「何を言っておるのだ?俺は侯爵だぞ。向こうが来るならまだしも俺が行く必要は無い!」

 

 起きたことを確認した執事は、要件を伝えるために大声で話し出したが寝起きだからか、侯爵は冒険者ギルドへ挨拶することに怒りを示しそれを伝えてきた執事を殴り飛ばした。

 

 勢いよくそのまま馬車の外へ飛ばされ地面に頭を叩きつけられた執事であったが、長年鍛えていたことにより全くの無傷であった。

 

 自分を殴り飛ばした侯爵へ文句を言いたかったが、口答えすると物理的に首が飛ぶ可能性があるため唇を嚙みしめながら文句を吞み込み侯爵をダンジョンへ案内するために立ち上がる。

 

 そして侯爵が馬車から降りるところを待っていると侯爵よりも先に左腕の袖を風になびかせながら青年――影山が降りてきた。

 

 執事は、彼が侯爵と同じ馬車に乗っていたことに気付くことができず一瞬警戒したが、馬車の影から出てきた影山を見て王都を旅経つ前に付いてきた者だということを思い出した。

 

(彼は確か……勇者カゲヤマ、でしたか。王国が唯一召喚に成功したという……)

 

 執事は、そう心の中で呟きながら影山をさりげなく横目で観察しだす。

 

 黒色で肩パットが入っているジャケットのようなものに5つの金色のボタン。

 

 左胸とジャケットの下部に左右対称にあるポケット。

 

 ジャケットと同じ配色のズボンと革靴。

 

 影山の故郷では学生が着る服として一般的であるが、この世界では珍しい部類の物であり高級そうに見えることから貴族、もしくは最低でも商人だと思われることが多い。

 

 執事もその例に漏れず、普段見ることができない不思議な服装と侯爵と同じ馬車に乗ることができていた状況から高貴な身分の者出身であると見なした。

 

(それよりも……この感じ。流石、勇者と言ったところでしょうか……)

 

 だが、執事は服装から分かる影山の身分だけではなく彼から感じ取ることができる雰囲気をその身に感じこの場に居る100人の護衛が束になっても勝つことはできないと判断した。

 

 執事のこの判断は正確には正しくない。

 

 影山はダンジョン遠征に参加しベヒーモス戦を生き残ってはいるが、今日に至るまでレベルを上げたことが無い。

 

 そのため彼は未だレベル1という戦闘を経験したことのない平民の平均レベルと同じだ。

 

 執事が影山から強者特有の雰囲気を感じとったのは、ひとえに長年培ってきた戦闘経験による弊害とも言える。

 

 閑話休題。

 

 執事が影山をさりげなく観察していると馬車から侯爵が肩で風を切りながら堂々と降りてきた。

 

 執事は――権力と財力があるだけの只の貴族で今回の遠征に何も役には立たない。むしろ古い考えの貴族にありがちな手柄を立てるために指示を出したりするのだろう――とこれから起きるであろう苦労を考えながら、だがそれを一切顔に出すことなく馬車から降りた侯爵を迎えダンジョン遠征の開始の許可を求める。

 

「旦那様、間引きを開始してもよろしいでしょうか」

 

「よかろう。まずは俺の指示無しでやって見せよ」

 

「はっ。かしこまりました」

 

 侯爵から許可を貰った執事は、今回連れてきた100人の私兵をダンジョンに投入していく。

 

 迷宮都市にあるダンジョンは、桜木春が感じたように狭く陣形を取りながら攻略していくことが困難であるため私兵を5人ずつ投入していくこととなった。

 

 手持ち無沙汰となった執事は、侯爵の代理として冒険者ギルドへ挨拶に向かうため振り向き口を動かす――――――ことはできなかった。

 

 初めに感じたのは違和感。

 

 先程までダンジョンの入口付近にある木々から聞こえてきた鳥や虫たちの鳴き声が止み痛いほどの静寂が広がった。

 

 そして遅れて肌を刺すような緊張感。

 

 まるでこれから何か、良からぬことが起きるかのようだと執事は感じた。

 

(いや……まさかな)

 

 執事は言い表せない緊張感を気の迷いだと思い込み今度こそ冒険者ギルドへ挨拶に向かうための許可を取ろうとした時―――――それは起きた。

 

 ダンジョンの入口付近。

 

 つまり執事たちが待機している場所の目の前に突如無色の魔法陣が浮かび上がった。

 

 魔法陣は徐々に回転していき速度が速くなるとともに魔法陣から鳴り響く音が静音から轟音へと変わり、無色だった色が赤黒くそして稲妻を発生させる。

 

「な、何事だ!?」

 

「分かりません!旦那様、おさがりください!」

 

 突如起きたことに驚いた侯爵は、身の危険を感じながら後ろへと下がっていく。

 

 執事は、下がっていく侯爵を見てさらに下がるように言った。

 

(ボス部屋攻略後の転移じゃない!何か本格的にまずいことが起きる!)

 

 長年の経験からこのままでは大きな被害が出ると考えた執事は、ダンジョンに入っていく私兵を止め侯爵を守らせるために<指揮>を使い私兵へ命令を出し周りを固めさせた。

 

 もうまもなく侯爵を守るための陣形が取れるというタイミングで魔法陣がこれまで以上の雷音を鳴らしながら赤く輝きその場を照らした直後、大地を震わせるような音と共に姿を現した。

 

『GURAAAA!!!!!!』

 

 突如、目の前に現れたのはドラゴンだった。

 

 ドラゴンはこの場にいる誰もが見たことの無い、そして感じたことの無い高貴さと威圧感を振り撒いた。

 

『うぁあああああ!!!!』

 

 雄叫びを聞いた私兵たちは、混乱しその場を立ち去ろうとした。

 

 侯爵は突如現れたドラゴンに恐れ腰を抜かしズボンを濡らしたが、貴族としての矜持がわずかでも残ったのか、気絶することは無かった。

 

 執事は、長年の戦闘経験から<恐怖耐性>を持っていたためこの場にいる他の者よりも冷静であったが、それでも脳内では恐怖が充満していた。

 

「お、おい!俺を守れ!」

 

「っ!皆の者!戦闘用意!」

 

 だが、侯爵が命を守るように執事に命令したことで僅差で恐怖を克服し私兵へ集団戦闘系のスキルである<指揮>を使い命令を出す。

 

 <指揮>を受けた私兵たちは、内からドラゴンに立ち向かう勇気と侯爵を守らなくてはならいという使命感が湧いてくるが、ドラゴンに対する恐怖心は消えることなく手足は生まれたての小鹿のように震えながら武器を構えだす。

 

(とりあえずは、これで……)

 

 体勢を完璧に整えることはできなかったが、それでも私兵たちが仕事放棄して逃げ出す状況にならなかったことに安堵しドラゴンを調べるために長年愛用しているスキルを使う。

 

「<鑑定>ッ!」

 

 目の前のドラゴンのステータスが頭に流れていく。

 

「なんだ、これは……ッ!?」

 

 <鑑定>の結果は、これまでの執事が生きてきた人生の中でもトップに入る程歪なものであった。

 

 前職の冒険者の時、魔物を見つける度にその魔物がどういったステータスをしているのか調べた後に戦闘をしていたため魔物から感じる威圧感からある程度のステータスを予測することが可能だった。

 

 執事は、目の前のドラゴンから感じる威圧感から最低でもSランク級、最悪の場合国家滅亡級だと予測していたが、結果はレベル27であり自分よりも少し高いぐらいだったことに己の目と鑑定結果を疑った。

 

 ステータス値に至っては、自分よりも劣っているため実際に戦っても多少苦戦はするだろうが命に危険があるレベルというわけでは無い。

 

 通常の魔物よりも多くのスキル、ドラゴンが使わないであろう<刀術>や<剣術>といった謎のスキルもあるが、<鑑定>の結果から分かることから負ける要素がどこにも見当たらない。

 

(だと言うのに……なんだと言うのだッ!この威圧感はッ!)

 

 ステータスからでは、考えることができない圧倒的な実力差を感じることに違和感を覚える執事。

 

(まさか、ステータスを偽っている!?)

 

 <鑑定>で見た結果は、目の前のドラゴンが偽装したステータスであり、実際はこの場の誰よりも強者であるという最悪の想定を思いつく執事。

 

「ッ!全体、攻撃中止!」

 

 ステータス値を偽装しているのであれば、当然スキルも偽装しているであろうと考えついた執事は、攻撃命令を中止し侯爵を退避させようとするが1歩遅かった。

 

「<斬撃>ッ!」「<クイックショット>ッ!」「<ファイヤーボール>ッ!」

 

 多種多様な武器を構え<斬撃><クイックショット><ファイヤーボール>など中距離の攻撃をドラゴンに向けて放たれる。

 

『GRUAAA!!!』

 

 ドラゴンは右手を握りしめないように丸くさせながら背中へと回すと空中にドラゴンサイズの巨大な太刀のような形をした炎を作り、ドラゴン目掛けてやってきた大量の攻撃を全て蒸発させ防いだ。

 

 そしてそのまま空中に浮かんだ炎の太刀を左手で握りしめると巨大な体をかがませ右腰に左手を持って行き一気に私兵たち目掛けて一閃。

 

 振り抜かれた炎の太刀から高密度の魔力で構成された火炎が<斬撃>のように私兵たちの元へと地面を蒸発させながら向かっていく。

 

 火炎の<斬撃>を受けた私兵たちは数秒すら抵抗できず蒸発していったが、侯爵、執事、影山のつま先辺りで攻撃は終わった。

 

「た、助かっ――――」

 

『GRUAAA!!!』

 

 侯爵が助かったと安堵する前にドラゴンは、再び雄叫びを上げると重く分厚い翼を動かし大空の彼方へと轟音と共に消えていった。

 

 

★★★

 

 

「……なるほど。それで侯爵の代わりに其方がやってきた、と」

 

「左様でございます、宰相閣下」

 

 謎のドラゴンとの邂逅から数日後、生き残った3人は奇跡的に無事であったグレーターホースの馬車を使い複数の村を経由しつつ侯爵領へと帰還した。

 

 謎のドラゴンが現れたことを王城に報告へと向かったが、侯爵は屋敷につくや否や自室へと引きこもり部屋から出てこようとしなかったため影山と共に2人で王城へと向かった。

 

 たとえ侯爵位の貴族であろうとも主人を連れず執事のみを寄越したことに王城勤めの者たちは憤りを感じたが、偶然同時に入城した宰相が執事、というよりも影山の存在に気付き王城の自室に案内しドラゴンとの遭遇、そして<鑑定>の結果を報告していた。

 

「それで……そのドラゴンの名は……」

 

 報告を受けた宰相は、ダンジョンブレイクなど軽く見えるほどの事態に眩暈を感じながら再度ドラゴンのことについて聞いた。

 

「はい、サクラギと」

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