分解修復勇者の異世界道中   作:フリー123456789

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3話 よっしゃ!頑張るぞい!「サクラギぃいい!!!」

だるい感覚と共に目が覚めた。

 

 原因を探る為にステータスを開く。

 

―――――――――

名前:桜木春

年齢:18

種族:人族

職業:無職

Lv :1

HP:50/50

MP:1/52

攻撃力:F

防御力:F

魔法防御力:F

素早さ:F

器用さ:EX

知力:EX

幸運:E

エクストラスキル:多言語理解

ユニークスキル:分解修復、学習

スキル:家事、速読、空腹耐性

称号:異世界人、読書愛好家

―――――――――

 

 どうやら魔力の使い過ぎによる疲労のようだった。

 

 <分解>と<修復>、<分解修復>を合計5回行った。

 

 魔力はゼロになると体が動かなくなるらしい。

 

 直前の魔力残量的に考えると1回の使用で10減る計算になる。

 

 そうなると<学習>は特に魔力を必要としないのだろうか。

 

 改めて強すぎると思う。

 

 それと何故か魔力総量が2増えている。

 

 これに関しては分からない。

 

 レベル上昇やスキル補正のみであり、他に手段があるとしたら魔道具による一時的な上昇ぐらいだ。

 

 だが、俺は何もやっていない。

 

 直前に起きたこととしては、魔力が空になってぶっ倒れただけだ。

 

「もしかして、魔力量が空になったことを<学習>して底が尽きないように体が成長している……?」

 

 仮にそうだとしたら<学習>の範囲、というよりもユニークスキルの強さが以上なことになる。

 

 だからこそ王国は俺たちを召喚したのだろう。

 

 ステータスを眺めながら考えていると1MP回復したことに気付いた。

 

 どうやら体感的に1分に1MP回復している。

 

 つまり<分解修復>は10分に1回使用可能ということだ。

 

 いつか魔力量を気にせず、<分解修復>を使いまくることができれば、逃げることに関しては無敵になるだろう。

 

 攻撃が届かない地面に逃げればいいのだから。

 

 地面を<分解>して槍に<修復>することができれば攻撃にも転用できるだろう。

 

 遠距離使用とかも夢がある。

 

 だが、それには魔力量があまりにも足りない。

 

 今の俺では5回使用するだけでバタンキューだ。

 

 ダンジョン遠征までの残り日数は魔力量を上げること。

 

 戦闘訓練に参加し、<学習>で戦闘・戦術スキルを入手すること。

 

「追加で<偽装>と<鑑定>も欲しいな」

 

 スキル辞典によると優れた冒険者や一部の知恵を付けた魔物は、<偽装>というスキルを用いて相手を油断させ一気に勝負を決める者がいるらしい。

 

 元の能力は変わらないが、<偽装>を使うとステータスや能力を誤魔化すことができるとか。

 

 また<鑑定>は人や物を見てそのステータスやスキルを調べることができるらしい。

 

 どちらも有用なスキルだが、レベルが低い場合、ばれてしまう可能性があるためある程度までレベル上げも同時にやる必要がある。

 

 スキルはその行動を取ると取得できるらしいからまずは、人前で偽装することから始めよう。

 

 

★★★

 

 

 訓練から帰って来たクラスメイトと共に食堂へ向かう。

 

 ほとんどの者は、地面に体を付けたのか土や泥で汚れていたが、美咲だけはいつも通り綺麗なままであった。

 

 皆がへとへとの中、俺だけ元気なのは目立つため、俺も皆と同じように疲れたことを偽装し付いて行く。

 

 食堂に入ると皆は、オアシスかのように群がり我先にと料理に手をつけ腹を満たしていた。

 

 俺と美咲は、騒がしい場所から離れて食堂の隅で2人で座っている。

 

 美咲はスプーンを手に持ったが、昨日と同様で口に付けることは無かった。

 

 俺はバレないよう小さく<分解修復>を唱え、料理を一瞬にして薬抜き料理にしようとしたが、食事には薬は入っていなかった。

 

 美咲の料理にもバレないように<分解修復>を唱える。

 

 その後、俺は料理を口に含んだ。

 

 昨日の夜から何も食べていなかったため、料理が体中に染み渡った。

 

「ちょっと、いいの?」

 

「ああ、よくよく考えたら情で縛りつけようとしてくる相手が薬を使う可能性は低いだろうから食べた方がいいかなって。餓死したくないし?」

 

「……そう。なら私も食べようかしら」

 

 そう言うと美咲は、手に持ったスプーンで目の前の料理を口に運んだ。

 

 久しぶりの食事に感動したのか、普段からは想像がつかない食べ方でガツガツと料理を食べだした。

 

 今の美咲の姿は、今まで料理を食べた事が無い原始z

 

 ガンッ!

 

「いっ」

 

「聞こえているわよ」

 

 どうやらいつの間にか声に出ていたらしい。

 

 食事を終えた後は、昨日と同じように各自部屋へと戻った。

 

 一人部屋に戻った俺は、魔力量がフルになったことを確認した。

 

 そして昨日掘っていた穴の続きを掘り進める。

 

 <分解>を5回使った所で今日の作業は終了した。

 

 残りは5MP。

 

 <速読>を使い魔力を空にして気絶するように眠った。

 

 

★★★

 

 

 いつもより早く目が覚めた。

 

 今日の天気は雨だ。

 

 訓練場が外の場合、明日から参加しようか真剣に検討している。

 

 考えた結果、万が一、戦闘・戦術スキルが取りにくい場合のことを考えて参加しようと決意した。

 

 戦闘訓練に参加するためスマホを隠す必要がある。

 

 俺は、ベッドの近くに小さなダンボール程度の穴を開け蓋をする。

 

 昨日、魔力を空にして気絶したため魔力総量が少しあがり、54MPとなっていた。

 

 <分解修復>を分けて使ってしまったため現在は34MPだ。

 

 現状を把握した俺は、メイドがノックする前に部屋を出て食堂へと向かった。

 

 後ろからメイドが付いてくるのが分かったが、無視して進んでいく。

 

「お待ちください!ハル様!」

 

 メイドは昨日よりもグイグイと来ており、俺の腕を掴んでその豊満な胸に押しあてた。

 

 だが、俺は冷静に対処した。

 

「俺では無く大柄な坊主にやれ(止めてくれメイド。その術は俺に効く)」

 

 そう言って俺は無理やり腕を剥がし、早歩きで食堂へと向かった。

 

 危なかった。

 

 クラスの男どもを馬鹿にしていたが俺も男。

 

 油断しているといつ喰われるか分からない。

 

 ここは鋼の精神で乗り切ろう。

 

 食堂についたが、まだ準備中とのことで追い出されてしまった。

 

 仕方が無いので図書室へ向かい、追加で本を借りることにした。

 

 『魔物について』『ダンジョンについて』の2冊である。

 

 以前見つけた時も読んでいたが、ダンジョン遠征に参加するなら改めて読んでおいた方が良いだろう。

 

 それに、俺も男だからこういった本は好きだ。

 

 食堂が開くまで俺はこの2冊をゆっくり読んだ。

 

 読書をすること10分、徐々にクラスメイトが集まりだしたと同時に食堂が開いた。

 

 全体が食べ終わるのは、大体1時間だ。

 

 つまり5回<分解修復>しても問題無い。

 

 今回は、俺と美咲の分だけでなく追加で適当に3つ<分解修復>して<偽装>スキル取得を目指す。

 

 食堂の隅で待っていると美咲がやってきた。

 

 朝の一見があったからか、つい美咲山に目が行ってしまった。

 

 クラスメイト、いや俺が通っていた高校の全男子の憧れ。

 

 誰もが一度、その山を登らんと挑んだが1人を除いて未だ山入できた者は居ない。

 

 ほとんどの男子はその山入の難しさから諦めたが、そんな中でも一部の選ばれし者たちは諦めずいつか山入することを夢見ている。

 

 美咲山の評価をしながら俺は風景を楽しんでいたが、美咲に睨まれてしまい眺望は終わってしまった。

 

「随分と余裕そうね」

 

「まあな。王城脱出に希望が見えた」

 

「そう。私も考えていたけど<武神>スキルで正面突破以外思いつかなかったわ」

 

 どうやら美咲も王城脱出を考えていたらしい。

 

 その内容は俺とは違い武力にものを言わせたやり方だが。

 

「でも美咲はその方が楽そうだな」

 

「それがそうでもないのよ」

 

 どうやら昨日やってきた佐藤以上の体格の男――ガゼフは王国騎士団長だったそうだ。

 

 本人が言うには、元Aランク冒険者だったらしく国王に見初められて騎士団に入団したんだとか。

 

 いくら強力なスキルがあったとしてもレベル差によって実力が分かれてしまうらしく、美咲も王国騎士団長には勝つことができなかったという。

 

 逃亡後、追われることを考えると相手の最高戦力を知ることができて良かった。

 

 見つかったらOUTという気持ちでいくしかなさそうだ。

 

 食事を終えた後、昨日とは違い皆に付いて行き訓練場へと向かった。

 

 俺が居ることに気付いた高橋は、俺のところまで近づいてきた。

 

「桜木君。今日は参加するんだね」

 

「ああ。昨日1日考えたんだが、皆必死に頑張ってるのに俺だけ参加しないのは罪悪感があってな。ステータスが低いから足手まといかもしれないが、よろしく頼む」

 

「分かった。こちらこそよろしく!」

 

「けっ。足手まといが増えたのかよ」

 

 相変わらず、俺に対する佐藤の当たりが強い。

 

 泣きそうだ。

 

 美咲に慰めてもらうしかないな。

 

「よし集まったな。これより昨日の続きを開始する」

 

 そう言うと皆2人組を作りだした。

 

 ステータスが近い者同士でペアになるらしく美咲は高橋とペアになっていた。

 

 高橋好きな山田が美咲を凄い目で睨んでいるが、美咲は気にする様子を見せずに淡々と訓練に励んでいる。

 

 それにしても山田のその顔、女子がしていい顔じゃないぞ。

 

 続々とペアが作られていく中、俺は重要なことに気付いた。

 

 俺のステータスと近い者が居ないことだ。

 

 男女別の体育の授業で先生に2人組作ってと言われた時と同じくらいの絶望が頭を支配する中、1人が俺の所までやって来た。

 

「さ、桜木君。良かったら一緒にやらない?」

 

「……影山か。いいのか?俺で」

 

「う、うん。ペア居ないみたいだし。それに……」

 

 そう言って影山はビクビクと佐藤を見た。

 

 なるほど。

 

 佐藤が言っていた足手まといは影山のことか。

 

「佐藤が言うことは気にするな」

 

「あはは。バレた?実は僕も足手まといって言われちゃって……よろしくね?」

 

「ああ。同類同士頑張ろう」

 

「……」

 

 影山は俺の言葉に苦笑するだけで何も言わなかった。

 

 同類とは思いたくないのだろうか。

 

 泣きそうだが、今は訓練に集中しよう。

 

 兵士が一人一人に木剣を渡していく。

 

 俺は受け取った木剣を<分解修復>し木刀に作り直した。

 

 どうやら俺の想像通り<分解修復>を応用して新たな物に作り替えることができたようだ。

 

「あれ?桜木君の木剣が刀の形になってる」

 

「なんのことだ?」

 

「いや、だって……ってあれ?木剣だ」

 

「見間違いじゃないか?」

 

 影山に認識させた後、<分解修復>で木剣に戻し偽装した。

 

 もう少しで<偽装>が習得できそうな感じがする。

 

 その後は影山と一緒に剣術の稽古をした。

 

 前で実演してくれている兵士を真似て素振りをする。

 

 剣道は一通り嗜んでいたが、この世界の剣術とは違うらしくまさしく実践という感じだ。

 

 そんな感じで素振りを1時間程度続けた。

 

 俺は肩で息をしていたが、影山は「ふぅ」と軽く息を吐く程度だった。

 

 他のクラスメイトはそもそも息が切れていなかったり、美咲たちに至っては元気ピンピンだ。

 

 どうやらこちらの世界に来たことで基礎体力が上がったらしい。

 

 日本に居た頃ではありえない体力に嬉しく思うが、これで凡人レベルとは異世界人はどれだけ屈強なのだろうか。

 

 息を整えているとどうやら次のステップへと進んだらしくペア同士で打ち合っている。

 

「影山。遠慮しなくていいぞ」

 

「分かった。じゃあ行くよ!」

 

「え、ちょ」

 

 掛け声と共に影山の手元がぶれ、俺の胴体へと目掛けて木剣を突く。

 

 何とか気付いた俺は、影山の木剣を横からはじきそのままカウンターで胴体へ

 

 ――って重すぎる!

 

 華奢な影山からは想像がつかない程の力!

 

 これがステータスの差かよ!

 

「くはっ」

 

 結局、俺は続く影山の攻撃を処理することができず、そのまま喰らってしまった。

 

「いってぇ……」

 

「大丈夫?桜木君」

 

「ああ。それにしても影山は強いな」

 

「そ、それ程でもないよ」

 

 いやそれ程でもあるよ、本当に。

 

 血の味がする。

 

 口を拭ってみるとどうやら思った以上に強打してしまったらしく、漫画見たいに口から血を吐いてしまった。

 

 ちょっとやり過ぎちゃうか……?

 

 この世の理不尽を嘆いていた時、どうやら誰かがこちらへとやってきたらしい。

 

「あ、たちb―――」

 

「春、大丈夫なの?」

 

「無理だお……」

 

「どうやら大丈夫みたいね。貴方、申し訳ないのだけど手加減してもらえないかしら?春は皆と違ってステータスがゴミだから」

 

「えぇ、ひっど」

 

「事実でしょ」

 

「あ、あはは。分かったよ。橘さん」

 

「頼んだわ」

 

 そう言って俺の女神様は華麗に去って行った。

 

 いや、女神様ならそのまま癒してくれよと言いたいが贅沢は言えないか。

 

 どうやら目立ち過ぎたようだし。

 

 何故か俯き暗い表情をしている影山に声をかけ剣術の訓練を再開した。

 

 

★★★

 

 

「これよりダンジョン遠征を開始する!」

 

 うす暗い洞窟のような場所の入口でガゼフが俺たちへ伝えた。

 

 あれから1週間、<分解修復>を続け穴を掘ったり、逃亡用スキルを手に入れたり、武術系スキルを手に入れたりした。

 

 俺の腰には、王国兵士が一般的に使用している剣を<分解修復>して刀に変形させている。

 

 周りには、俺のユニークスキルは作り替えることができる能力と教えている。

 

 嘘は言っていない。

 

 ズボンの左後ろには、魔法袋をベルトに通すように付けている。

 

 空間魔法が付与された魔道具らしく貴重な代物らしい。

 

 この袋の中には、1週間分の食糧と火起こし用の魔道具、借りパクしたままの数冊の本、スマホと充電器が入っている。

 

 ダンジョン遠征は3日かけてやるらしく、全100階層以上あるとされるこのダンジョンの20階層を目的としている。

 

 この1週間、レベルは上がっていないがスキル取得やステータス向上で俺の実力は召喚当初よりも伸びている。

 

―――――――――

名前:桜木春

年齢:18

種族:人族

職業:無職

Lv :1

HP:50/50

MP:50/50(400/400)

攻撃力:F(E)

防御力:F(D)

魔法防御力:F

素早さ:F(D)

器用さ:F(EX)

知力:F(EX)

幸運:F(D)

エクストラスキル:【多言語理解】

ユニークスキル:【分解修復】【学習】

スキル:【家事】【速読】(土魔法)(剣術)(格闘術)(偽装)(忍び足)(鑑定)

    (自動MP回復)(空腹耐性)(痛覚耐性)

称号:≪異世界人≫≪読書愛好家≫(偽る者)

 

():偽装中

―――――――――

 

 土魔法は<分解修復>で穴堀していたら自然と身に付いた。

 

 土魔法の練習扱いだったのだろうか。

 

 何にせよ手札が増えたことに変わりはない。

 

 他にも念願だった<偽装>スキルを手に入れ現在偽装中だ。偽装している間、1分間につき1MP減っていくため燃費が悪いが、そこは<自動MP回復>で補っている。

 

 どうやら冒険者はその職業柄、<鑑定>を持っていることが多く俺も訓練中にガゼフが他の者に<鑑定>を使っていた所を見た。

 

 ガゼフを100%騙すことはできないが、それでも俺の実力が漏れないに越したことは無い。

 

 何故か称号に<偽る者>が追加されたが。

 

 閑話休題。

 

 <自動MP回復>は1分間に自分の最大魔力量の5%を回復するため現在、1分間に20MP回復している。

 

 常に<偽装>を使っている為、結果的に19MP回復していることになる。

 

 これからもお世話になるだろう。

 

 <剣術>と<格闘術>は戦闘訓練中に取得した。

 

 何故か初日以降、攻撃に苛烈さが増した影山だったが、そのおかげで<痛覚耐性>も追加で取得できたのだから感謝しかない。

 

 <鑑定>はこれまた戦闘訓練中にクラスメイトたちを観察して力量を図っていたらいつの間にか取得していた。

 

 <忍び足>は夜中に美咲の部屋へ忍び込んだ時に取得した。

 

 スキルもそうだが、ステータスも上がった。

 

 いいこと尽くしだ。

 

 幸運は重なり、昨日遂に王城の外まで穴を開けることができた。

 

 美咲には既に伝えておりダンジョン遠征後、翌日の休日に脱出する予定だ。

 

 よっしゃー!頑張って逃亡するぞ!

 

 

★★★

 

 

「サクラギ!サクラギぃいい!!!」

 

 突如床が崩れ俺は奈落の底に落ちた。

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