いつしか”災害の王”と呼ばれてました。   作:黎狐

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今日は敵側単体で書かせて頂きます。まさか.....?


敵の根本

side敵連合

「.......」

「死柄木弔....どうしたんです?」

「何か....帰ってきてからずっと黙ってますね....」

「どうでも良い....」

「いや、どうでも良くは....黒霧。

「!...どうかしましたか?」

「トバせ。『先生』の目が届かない場所に」

「…………わかりました」

これまでの命令とは明確に異なる、有無を言わせない強さの命令。尋ねる隙も無い、逆らおうと

言う気も起きない。黒霧が知る限り、『先生』の目が届かない場所にワープゲートを開く。

「....僕もついて行っても?」

「....好きにしろ」

 

ワープした先は見事なアネモネやカーネーション、ミモザやベゴニア、アガパンサスにアリウム、アロエ、スグリ、エリカ等様々な花が咲き乱れる湖だった。咲き乱れる花が意味する言葉から、『先生』はここを嫌う。まぁ『先生』の監視自体、そこまで強いものでは無いのだが....

「……死柄木弔?どうしたのですか?」

「あ?」

「貴方が外出したあの日から、何処か様子がおかしい....一体何があったのです?」

「僕も気になります....何か嫌なことでもあったんですか?」

「……」

顔は割れていないとは言え、ステインと共に行動を行った事で敵連合の名は世間に知られた。だが死柄木が外出したことは報道されていない。にも関わらず、死柄木は何も話さなかった...何が

あったのか、何を経験したのか。何も語らないのだ。

「....あの日、天呑災我にあった。」

「!?」

「天呑....災我?」

「...ステインと直接対決して、勝った男だ。」

「....なるほど、それで?」

「...俺の根本が、分からないと....そう言われた。」

「根本...ですか?」

「あぁ....黒霧、俺には昔の記憶が無いって言うのは話したな?」

「?えぇ....」

「...そうだったんですね」

「確か、"いつか自分の意思で辿り着くべきものでもある"とも語っていましたね」

「……全部、ではねえが、思い出した。」

『!!!!』

「...俺は、全部壊してた。夢を否定した父親、何もしなかった母と祖父母、たった一人の姉、

懐いてた飼い犬....全部全部、もう壊してた。」

思い出したのは、過ちの引き金を引いた瞬間とそれまでの軌跡だった。

 

今思えば父にも何かしらの事情があったのかもしれないけれど、あの家では『ヒーローの話題は

禁止』という個性社会でも珍しい部類にあるルールが設けられていた。()はそう聞いた、程度に

しか知らないけれど、父の母……僕にとっての祖母と父の間で何かあったらしい。

それでも普通に生活出来ていた....()()()()()()

泣いていた僕を励まそうとしたのか、姉は父の書斎に忍び込んで一枚の写真を持ってきた。

写真には幼い父と恐らく祖母だと思われる女性が、仲良く微笑んでいた。けど...

『転孤!!書斎に入ったな!?』

ひっ……!?

見たな……?

写真を見たことに気づいた父は、酷く怒っていた。険しい顔で眉間に皺を寄せて、僕を叩こうと──して、やめた。僕に手のひらがぶつかる既のところで止められて、でも子供の僕には

恐ろしくて。ボロボロと零れる涙は止まらずしゃくりを上げて泣いていた。何でそんな事を

するの、誰か助けて、って。その後、僕は反省するまで家に入るなと閉め出された。

──どうして……?──どうしてそんな事を言うの?──お父さんなんか、大っ嫌いだ……!

日が落ち、風が冷たくなり始めた。グズグズと泣きべそをかく僕に、寄り添ってくれるモンちゃんは柔らかくて温かくて、モフモフの毛に手を突っ込んで抱き寄せていた。荒れた肌は刺すような

痒みを引き起こして、涙で濡れた目元をゴシゴシと擦るものだから余計に痒くなって。ついには

ガリガリと音を立てて引っ掻いた。その瞬間、音もなくモンちゃんが崩れ落ちた。

『……え?』

ほんの一瞬。目を離した瞬間にモンちゃんは血溜まりになっていた。崩れた顔の一部から何も

映さない目がこちらを見つめていた。柔らかな体毛に包まれていた左手は生温い血液に塗れて、

虚構を支えるように持ち上げられたまま。突然の出来事に僕は酷く恐怖した。年齢一桁の幼い子供が体験していいことじゃない。隣にいた温い生命は生臭い赤に変わり果てた。

『どうしたの──……!?』

謝りに来ただろう姉も隣の血溜まりを見て、悲鳴をあげて逃げようとした。

置いていかないで、そう伸ばした手が姉の服を掴み、また一つ【崩壊】が起こる。

ビキリ、と姉の身体に亀裂が走り、一瞬のうちにボロボロと崩れ落ちた姉()()()()()は動かなく

なった。華ちゃんの悲鳴が聞こえたお母さん達が部屋の中からこちらを見ていた。何が起こった

のか分からないけれど、我が子を守らなければとサンダルに足を突っ込んでこちらに駆け寄ろうとした。【崩壊】が伝う。庭を、地面を。虫のように、這うように。母の足も伝い、地面が崩れ茶色い土が露見する。既に母の頭まで【崩壊】が登っている。

『転孤!!』

母が叫び、母が崩れる。僕を抱きしめようとしていた腕は僕に届かず、僕の手も母に間に合わ

ない。触れるよりも早く母がボロボロに崩れ落ちた。【崩壊】は止まらない。母を、姉を、

モンちゃんを襲った()()は祖父母まで届き、顔を上げたときには...もういなかった。

ようやくこの現象の起点が自分であることに気づいた。触れた端から崩れてしまい、【崩壊】は

伝播する。グチャグチャでボロボロの地面の上で込み上げる不快感と得体の知れない感情を処理

しきれず、迫り上がる胃の中身をその場にぶちまけた。その場で泣き喚いていると、父が信じられないものを、化け物を見るような目で立っていた。

『転……孤?』

『おっ、おっとう……!お父ざ...ごめ゙ん゙な゙ざい゙……!!』

.....止まっていた【崩壊】が、また暴れ出す。グチャグチャでボロボロになって

いた庭は更に壊れ、地獄と呼ぶが相応しい光景が出来上がる....崩れていく、家族と過ごした家が、モンちゃんと駆けた庭も、姉と共に覗いた窓も。

『────すまない』

崩れ荒れ果てていく中、父は確かにそう言った。母と同じように僕を抱きしめようとこっちに

向かってきてくれてた。声は出なかった。助けてくれるの?とも思わない。何故か僕の手は

真っ直ぐ父に向けて伸ばされて。僕の手が父の胸に触れた。助けて欲しいと手を握るでもなく、

怖いよと縋り付くでもなく。何らかの意思を持って胸のど真ん中に触れた。

『ごめんな……!ごめんなぁ……!』

『っ───』

憎悪か拒絶か、或いは復讐か....それとも怒りか。自分の意思で父を【崩壊】させる。亀裂が

走る。ひび割れた身体から赤い血が噴き出して、崩れた後には何も残らない。途方もない快感が

全身を貫いて──どうしてと呟く自分がどこかにいた....はず。これが死柄木弔が思い出した、

かつての自分、その一部。そこから何がどうなって死柄木弔(今の自分)になったのか

分からない。

 

「……それで、貴方はどうされるのですか?」

「.....」

「何も」

『?』

思い出したことを語った後、死柄木は確かにそう言った。

「何も...ですか?」

「あぁ....もう……俺も俺が何をしたいのか分からない。俺の憎しみにはちゃんと向けるべき誰かがいて、その誰かはとっくに俺自身の手で殺してた」

「死柄木弔.....」

満遍なく撒き散らしていた殺意の矛先。それが遠い過去に既に役目を終えていた代物だと理解した...してしまった。顔につけていた『父』を手に取る。冷たく固まった()()はもう人体の感触はなく、無機質な物体でしかない。パキパキと音を立てて崩れ……塵も灰も残さず消えた。

「黒霧、炸間。」

「……はい」

「何です?」

「『先生』に聞きたいことが出来た。しばらくは様子を見る...聞いたんだからお前も手伝えよ?」

「えぇ...僕は壊したくてここに来たんです、壊せるのなら手伝いますよ。」

「....ありがとな。」

 

魔王(AFO)は、何もかもを甘く見過ぎた愚か者だ。虫の羽ばたきが遥か彼方での突風となるかの如く、

己の手のひらが常に磐石であるとは限らない。【崩壊】の矛先が向けられる可能性を少しも考慮

しない愚かさが、いつか魔王(AFO)の足を捉える日も近い....

そこに、一陣の風が舞った。その風は狙いを定めたかのように、炸間へと吹き荒ぶ。

「キャッ......あ//」

「........は?」

「なんと.....」

風が吹いた後に見えたのは、咄嗟にスカートを押さえる仕草をし、サラシが緩んだ炸間破蓄の姿だった。

「ミッ....見ないで下さい...../////」

「.....まぁ、うん。黙っておく。」

「そうですね....」

結論、炸間破蓄は女だった。




早速バレました.....勘の良い皆様方、もうお分かりですね?そしてリア友よ、本当にすまない。もしお前がこの作品を見たのなら腹を切ろう。次回、林間合宿!!
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