ようこそ面倒事から避けられない教室へ   作:ただ君に雨

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よう実2年生編12.5巻が衝撃的すぎたので書きました。書きたくなったから書いただけなので軽い気持ちで読んでください


山神悠弦という男

"平和な日常が一番"

 

これは俺の中で大事にしている俺の名言だ。人は誰しも一度は非日常的な世界観に憧れを感じることがあるだろう。

平和な教室が一変、床に魔法陣が現れて俺だけ異世界へ行ってしまった!?休日スーパーで買い物していたら強盗が入ってきて事件に巻き込まれた!?授業中に殺人犯が入ってきてクラスのみんながピンチに!?朝目が覚めたら知らない天井だった!?好きな子とのデート中に火事が起こって彼女が危険な目に!?キックボクシングの試合中脚を折られてしまい大ピンチに!?家族旅行中に不思議な少女に出会って波瀾万丈の冒険を繰り広げた!?困っていたお婆さんを助けたらお礼にと言われ高級リゾート地に招待された!?

 

等々、こういった現実ではそうないシチュエーションを妄想したことがあるはずだ。

なぜそんなくだらない妄想をしてしまうのか。気持ちはよく分かる。退屈な日常に刺激的なスパイスを加えたい、物語の主人公になってみたい、そんな欲望は誰しもが当然のように持っている。

 

別に妄想をすることが悪いと言っているわけではない。ただ、そのような妄想は単なる妄想に過ぎないというわけであって、現実でそんな事が頻発したら俺の名言の重大さがよく分かるということだ。

 

つまり何が言いたいかって、最初から変わらない。

平和な日常が一番。なぜ俺がこの言葉を大事にしているのか。その答えは先ほど言った俺の経験談に詰め込まれている。

 

そう、俺は世界で、いや宇宙で一番多忙で、平和を求めている皆んなの"ヒーロー"だ。

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「どうかしたの?」

 

「……あ、いや?何でもない。ほんとに大丈夫。大丈夫だから心配ない……」

 

「?」

 

休日の昼間、俺と俺の友人、一之瀬帆波はとある喫茶店で勉強に勤しんでいる。

二人席用の小さなテーブルで隣り合い、ノートと教科書を広げ、机の端にコーヒーを置いて、かなりチルい精神状態で勉強を捗らせていた。

 

「っんー!にしてもさ、ポイントが変動することはともかく、赤点で退学者が出るだなんて衝撃的だったよね〜!」

 

「そうだね……」

 

一之瀬が大きく身体を反らして全身を伸ばす動きと共に周りの男子からの視線を浴びる。多くの男子生徒の視線の先には一之瀬特有の豊潤なメロンがあり、皆が釘付けになっている。

だが俺はその程度のメロンでは興奮しない。嘘、興奮する。実は色々事情があって女体にはめっっっちゃ興奮する。

 

だが俺は漢だ。男、ではなく漢だ。異世界では一之瀬を超える夕張メロンの持ち主は大勢いたし、俺はその子らとヤる事やってきた。A○見て興奮する低俗な野郎とは格が違うのだよ。

 

「…………悠弦くん、そこには数式は書いてないよ?」

 

「うん、でも数学知識では解けない果てしない宇宙のように興味深い空間は広がっている……ってごめん!」

 

「にゃはは……男の子だもんね……悠弦君も」

 

俺としたことが、異世界人と日本人のメロンの差を観察してしまっていたようだ。失敬失敬。

 

「そっちの方は最近どう?なんだか大変そうだよね」

 

「あー……うちのクラスの問題児がちょっとね。Cクラスと色々揉め事があったらしいけど、俺そういう面倒事はうんざりっていうか、巻き込まれたくないからなぁ」

 

「でも困ってるんでしょ?同じクラスの子なんだし助けてあげなきゃ」

 

「助けるって言っても……」

 

俺のクラスの問題児、須藤健が絶賛今Cクラスのヤンキーと揉めている。助けようと思えば助けることは出来るが、ほぼ不可能に近い。

 

俺はあの日、教室で突然異世界へと飛ばされた時、飛ばされた異世界先で様々な経験をした。魔力を手に入れ、何度も死にかけて、何度も挫けそうになって、その度に立ち上がって皆んなのために戦って、好きな人とヤることもやって悔いのない異世界ライフを堪能した。そこで手に入れた魔法や魔力はオリジナルのこの世界に帰ってきても引き継がれている。

 

だが魔力は使えても魔法は使えない。使おうと思えば使えるが、使えるのはたったの一度限りで、俺はその一度限りの魔法は死ぬ直前に使うと決めているし、一度しか使ってはいけないという縛りは俺を転移させた世界の"軸"を統べる者から直々に伝えられている。

だから須藤たちを助けることは出来るが………

 

「助けようがないというか……助けたくないというか」

 

「それはないよ悠弦君」

 

「ごめん!助けられない事情があるんだ、それにもう面倒事に巻き込まれたくないし」

 

この人生の15年と数ヶ月で色々な事がありすぎた。少しは休ませてほしいものだ。

 

「謝るなら私じゃなくて須藤君に謝って。っていうかさ、面倒事に巻き込まれたくないなら、あの時どうして私を助けてくれたの?」

 

「えぇ?……いつの話してんの…」

 

「ほら………あまり言いたくないけど、さ。"あの時"だよ」

 

「そんな昔のこと覚えてないよ」

 

嘘、鮮明に覚えてる。というか忘れてはいけない気がする。

 

一之瀬は過去に盗みを働いたことがある。それは自身の可愛がる妹のためだ。

 

俺と一之瀬は中学時代に少し関わりを持ったことがあった。中学は別々だったが、ある日俺は買い物を頼まれて外出していた時、一之瀬の盗みを目撃してしまったのだ。

 

あの頃の彼女は今とは全く違って、生きるのに必死な少女だった。周りの目を盗みヘアクリップを手に取り走り出した彼女を見て俺は考えるよりも前に身体が動いていた。

 

俺の身体が動いた原因は盗みを働いた彼女に対する制裁の情ではない。その様子を目撃した他の男性の劣情によるものだ。

 

中学生にしては身体の育ちが良かった一之瀬に目をつけていた男性は万引きの現場を目撃し弱みを握ったと確信したのだろう。男性は走って逃げていく一之瀬の後についていくように追いかけていった。

 

俺は男性と一之瀬との間に何かしらの問題が生じることを危惧して考える間もなく走り出していた。

やがて男性は一之瀬に追いつき、手を強引に取って一之瀬が声をあげる間もなく人気のない路地裏へと引き連れて行く。

 

これから何が始まるのか予想できた俺はすぐに路地裏へと顔を出した。

 

「何してんだ!」

 

「っ……!?……って、なんだガキか」

 

「んーっ!……っぐ…んーっ!」

 

俺が路地裏へ顔を出していた頃にはすでに一之瀬はタオルのようなもので口を塞がれており、今にも始まってしまいそうな様子だった。

俺の声に一瞬焦りを覚えた男性だが、俺が中学生なのを見て安心したのか、すぐに悪気なく淡々と話し始める。

 

「君が知ってるかどうかは分からないけど、この子は万引きしたんだ。この歳じゃやっていいことと悪いことの区別もつかんだろ?だからおじさんがとっ捕まえて今から優しく教えてあげようとしてたんだよ。悪いことしたらどうなるか、ってね」

 

「何言ってんだお前」

 

「分からないなら君も一緒にやるかい?それなら場所を変えよう。いいさ、僕は人にモノを教えるのが上手だからね」

 

「あまり人の事舐めてんじゃねぇぞ」

 

「舐めてなんかないさ」

 

何の悪気もなく話す男性に、俺は腹が立っていたのだ。見た目からして恐らく四、五十代。だが人生経験でいえば俺の方が圧倒的に優っている。その上で俺は言ってやった。

 

「その歳になってガキに社会の厳しさ教えようとしてる割には、自分はまだしっかりとした女性経験もないんですか?見た目だけ成長して下の方はまだまだガキじゃねぇか笑えるなぁ」

 

「あ?なんだとクソガキ、もういっぺん同じ事言ってみろや!」

 

勝負事では冷静になった方が勝つ。それはいかなる場面で俺は知っている。腹が立ってはいけない。深呼吸すれば一瞬で冷静になれる。

男性は言われたことが図星だったのか、頭に血が上り始めてきていた。

 

「何回でも言ってやるよ。そうやって未成年の弱みを握ることでしか女と戯れることができない童貞風情がその子に触る権利なんてねぇんだよ!」

 

「殺すぞガキが!」

 

男性は怒り狂って襲いかかってきた。俺は面倒事が嫌いだ。こんな大人フルボッコにすることくらい容易だが、そんな事すれば暴行罪やらなんやらで俺まで罪に問われるかもしれない。だから俺は一発で仕留める。

 

「大人舐めんじゃねぇぇぞ!コラァ!」

 

ノープランで突っ込んでくる男性をかわし、持ち前の蹴りの技術を駆使して脳裏に強烈な蹴りを喰らわした。

男性は一瞬にして意識を失い、腕を伸ばしたまま人形のように倒れた。

 

「全く………これで記憶飛んでたらいいんだけど」

 

脳震盪。脳に強烈な刺激を与え脳を揺らし、ダメージを与える。倒れ方的に脳震盪になったことは確定的だ。あとは記憶を失っているかどうかだが。

 

俺は一之瀬に近づいて口に巻かれていたタオルと拘束されていた手を解放した。

よだれだらけのタオルと拘束用のタオルを男に投げつけ、俺は一件落着と思い手についた汚れを払うように手をパンパンと払った。

 

「あ、あの……」

 

「あーーーー、万引き云々とかいいから。君の表情見てればなんとなく分かるし。だから何も喋らずにさっさと帰って。俺も何も喋らずにやる事済ませて帰るから、ね?」

 

「……いや、あの」

 

一之瀬が何か言おうとしたタイミングで、俺は何も聞きたくなかったので走ってその場を離れた。あの時咄嗟に身体が動いたのは、面倒事に絡まれたくない以前に、虫唾が走ったからだろう。面倒事に繋がる何かに巻き込まれたとしても、こうやって何も喋らずに忘れたフリをしておけば後は時間が解決してくれると思っていた。

 

だが、神様はそれでも俺に面倒事を押し付けてくるらしい。

 

高度育成高等学校に入学した時、俺は彼女と再会した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヒロイン悩み中
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