「あれはダメだわ。触るべきじゃないよ、激ヤバだった」
「冬利、朝から顔色が悪かった。あのファイルは、どうしたの?」
ダンスレッスンが終わり、昼休みに差し掛かる現在。
各自が教室に戻ろうとする中で、二人だけがレッスン室にいるままだ。
篠澤広と高辻冬利。
一人はあぐらで地面に座り、一人は平行棒を使って歩く練習をしている。
毎度のことながら、篠ちゃんのレッスン奇抜だよね。もう見慣れたけど。
最初にぱた……って倒れた時は、それはもう滅茶苦茶ビビったのも記憶に新しい。限界を知らなさすぎやしませんか?
「結局、置きっぱなしも捨てもできずに家に置いてる。押し入れの奥の奥だし誰かに見つかったりはしない。……アイドルをプロデュースする人間が作った資料だったよ」
正直、一晩経ってなおアレの中身を飲み込めていない。図星だから。だからこそ。
それだけ的確な言葉と、改善策と、励まし? のようなものがあった。真っすぐ受け取るべき言葉だと思うんだが、見た事も無い相手が書いたという一点だけでその評価は反転する。
複雑な気持ちなのだ。
何よりアレ誰もいないのに字だけ書きこまれてたし。トム・リドルの日記?
ワタクシ巨大な蛇に襲われるの……勘弁してくれー。
「あれ、
「じゃなかったんだと。名前と書く時の癖が違うから、確実に自分とは違うって」
うーん、と篠澤が首をひねり、うーん、と私も腕を組んで首をひねる。
「一つだけ、てまりんに確認しようと思うけど……あんなもん気にしたってしゃあないわ! 定期公演の試験がもうそろそろなんだし、そっちを優先する以外ないでしょー」
「……そう。もうすぐ初、始まる、ね」
「ダジャレ?」
「違うよ」
「うぇーい」
「うぇーい」
やはりノリが良い。
どう見てもミステリアス系の美少女だと言うのに、話すと案外ノッて来る。かわいすぎるだろ。
じゃれ合いはいいとして、実際そうなのだ。触るべきじゃないと仰々しい言い方をしたけど、単純に忙しくてそれどころじゃないのだ。
ひとりでに文字が書き連ねられていく書類が怖くないかと言われれば超怖い。何より普通に呪物。本当に呪物なことあるか。
私らは謎を解くことを生きがいとする探偵じゃないし、呪物を巡って戦う呪術師でもない。
思ったより真面目に呪物かもしれないので後でオタキアゲーするか考えているが、そんなのは数日かかりかねない。
うちの家庭はそんな無軌道旅行を許すほど裕福ではない。ここに通わせてもらっていることを日々感謝して生きている。いつもありがとうお父様お母様。
あれの扱いも、後で考えれば済む話だ。呪われたらどうするか、呪われた時に考えます。
「で、大丈夫なの君は」
「ふふ……そろそろ危ないかも。保健室の場所、覚えてる?」
そう言ってすぐに彼女は、手すりをパッと手放しこちらに倒れかかってくる。
おい! 私が支えなかったらまたぶっ倒れるでしょうが! そんで軽ッ……!
組体操のサボテンみたい。もしくはタイタニック。あぐらでいるやつと全体重預けてるやつだから、誰もそう思ってくれなさそうだけども。
「そろそろ危ない、はレッスンを出来る範囲までで止めて言うべきなんじゃないかしら。篠澤さん? 倒れるのを予告されても、とっさに対応できないかもしれなくてよ」
「千奈の真似? あんまりクオリティが高くない、ね」
「こんな千奈ちゃん嫌でしてよ。悪役令嬢ですわ、そんで人の物真似にケチつけんじゃないですわ。刃に衣着せるべきですわ」
「ですわ、だけじゃテンプレ頼り」
「叩きつけますわよ」
「背負ってくれるならいい、よ」
「……図々しい方ですこと」
時々この人は、こちらを試すみたいに冗談を冗談と受け取らない。
もちろんそんな真似をする度胸はないので、悪態だけついて背負う。本当に軽い。そして細い。ふふ、と悪戯っ子のように笑う顔は、あまり見ないようにした。
もう少し体が強くなったら宣言通りにやってやりますからね。あまり舐めるなよ。
保健室はここからそう遠くないし、連れて行くのにそう時間もかからない。
「そういや、篠ちゃんはさ……」
「ちょっと、そこの二人」
「んげ」「あ」
私が篠澤ちゃんを背負って歩いていると、後ろから声がかかる。
特徴的な声というか、声色というか。クールな声。とにかく、呼ばれた時点で見知った相手なのが分かった。思わず感情が声に出てしまったが、ものすごく悪手だったと思う。バレないで済めばいいんだケド。
「落ちこぼれを助けるなんて、けっこう殊勝なんだね。運び先は保健室?」
「おー、うん。篠っちゃんは中々無茶ばっかりするから保健室常駐だなーって保健室の先生も言ってるよ」
「ハッ、そう。でも、保健室の場所がまだ怪しいかもしれないし? 仕方がないから私がついていってあげる」
「……そうすっかー。篠ちゃんはおけ?」
「わたしはいい、よ。手毬が一緒の方が、嬉しいから」
「…………あっそ。それじゃ、ついてくるといいよ。ほんと、よくわかんない……」
そう。この鋭すぎるぐらい鋭い舌鋒の持ち主こそは月村手毬その人である。
ワタシ、コノ人……色ンナ、気持チ。イロイロ、アル。
広ちゃんがこの子を気に入ってるのは何なのか、何故なのか。めちゃくちゃ懐いているし、好意を隠そうともしないんだよな。月村の本人氏はそれに困惑してるのも興味深い。
非常に気になっている命題です。
こういう手合いはまず“聞き“の姿勢を取ることが大切だ。
遮ったとて、マイナスな展開しか浮かばない。
待ちを始めれば、ほぼ間髪入れずに新たな話題が提起される。BINGO。
当然ながらてまりんからだ。
「保健室に行くってことは……午後は休むの? スタート地点も違うのに、このまま悠長に歩くつもり?」
「午後の座学は免除だから、元々休み。でも、体力が残っていれば、回復を待ってレッスンを再開するつもりだった」
「え、座学ないの!? 凄くない? 生半可なことじゃ取れないと思うんだけど」
すると、広ちゃんは短く黙る。
その間に、どれだけの思考が巡っているのか。どんな思考が迸っているのか。
ぜひ知りたいものだが、恐らくそれを見る機会は無い。
「ふふ、上手くやった。得意なことは、早めに終わらせればやらなくてもいい、ね」
「……それなら良かったんじゃない。歩くのもひと苦労してた割には成長してるし」
ん?
歩きながらではあるが、私は少し後ろを見て、こちらを見る篠澤ちゃんと目を合わせる。
やはり同じような驚きを共有しているようだった。
「……てまりん、もしかして体温計取りに行ってる?」
「熱は無いよ。サポーターが壊れたから、保健室にある予備を取りに行ってるの。あとその呼び方、なに……?」
「あ、行く理由はあったんだ。呼び名はノリだよ」
なんか暇だからくっついてきたんだと思ってたわ。
「それはそうでしょ。わざわざ付き添いだけで一緒に行ってあげたりしないから」
「手毬、手毬。熱はないのに……今日はなんか、いつもよりずっと優しい」
そういうと、てまりんの足取りがピタッと止まる。
WOW、と思いつつも止まらない訳にはいかず、私も止まって彼女の方を見る。
ちょっと下向いてて表情見えないなー、と思っていると、すぐにその顔はこちらを向いた。
少し、いやかなり赤い。これは非常にマズい。めっちゃ睨まれとる。
「……す、少し優しくしたくらいで勘違いしないで!!!!! あなたのことなんて嫌いだから!!!!!!!!」
「ぎゃあーーー!!! ちゃんと掴まっててくれ広ちゃーん!!!!」
「わぁぁっ、ちょ、っと、や、ば、い、か、も」
凄まじい勢いで手毬が走り出し、その圧に負けて冬利は脱兎のごとく逃げ始める。
もちろん目的地には向かっている。ナビは正常に機能している。ただし安全性は考慮していない。エアバッグなんて上等なものはない。
保健室に着く頃には二人がへろへろ、一人アトラクションでグロッキーという死屍累々とならざるを得なかった。
ちなみに感想としては。
「ふふ…………吐くかと思った。絶叫系、降りようにも降りられない。すごく、ままならなかった。……いいね。またやりたい。今度遊園地行ったら、乗る」
いつもの数倍は興奮していた、ような気がする。口数多いし。体力さえつけば、絶叫系アトラクションも平気で乗りこなすタイプかもしれない。底の見えない女である。
そういえば、私は月村手毬に聞きたい事があったのだが。
走った後、篠澤ちゃんの容態を4、5回確認して。
「はぁ、はぁ…………ふー。ところでてまりーぬ、聞きたいことがあるんだよね」
「ぜぇ、はぁ……ふぅーっ。なに? あと、呼び方もなに? 変な呼び方しかできないの?」
「てまりーぬのプロデューサーのこと、たまに私らに自慢するじゃん? ……たまにじゃないか、ちょくちょく」
「そうだね。それがなに? ……まさか、狙ってるの!? あげないから!!」
「違うわ! ただ一個聞きたいだけだから! ステイ! ……で、てまりんのプロデューサーって眼鏡かけてる?」
「は? かけてないけど……それが何?」
冬利の顔がにわかに明るくなる。
「なるほど、ありがっと! いやね、なんかちょっと前にプロデュースさせてくださいって言われた人がいて、一応それがクラスメイトのプロデューサーじゃないか確認してんの」
というかてまりんって本当にPいたんだ。
ガチで失礼なんだけど、エアプロデューサーとかいてもおかしくは……ないからね。脳の片隅でずっと主張してたけど、ようやく静かになりそうだ。
代わりに目の前の小娘が喋り出す。
「ふーん。つまり、そのプロデューサーは眼鏡なんだ。でも……なんでそんな回りくどいやり方で? 普通に本人に聞けば一発で分かるでしょ」
「いやいや……気まずいやん。それで「はい、クラスメイトの○○さんを」とか言われたらちょ~気まずい」
「面倒だね。私なら直接聞いた方がいいと思うし、そうする」
「それもまぁ、やるかもしれないけどね。ちなみにYOU、Pのことって……すきなの?」
「はァ!?」
いやー。回りくどいのは分かるけど、バレないことが最優先なのだ。だからバレないような手段が大事なのだ。
にしても、適当にでっち上げた嘘の理由がそれっぽくて助かった。
私のことをプロデュースしてくれる人、しようとしてくれる人がいるってのは……真っ赤な嘘だ。
本当は咲季Pと手毬のPが同一人物かが確かめたかっただけ。要はあのファイルの持ち主が月村手毬のPである可能性を消したかったのだ。
咲季嬢のPの特徴を挙げていって明らかなNOがあれば別人だろ、という算段だった。……まさか一発目の質問から違うとは。眼鏡かけてなかったら絶対違うわ。
ボールペン派か鉛筆派かよりよっぽど分かりやすい特徴だぜ。全く、思ったよりずっと簡単に終わったわ。
……わたくしをプロデュースしてくれる人がいれば、めちゃくちゃ嬉しいんですがねェ。でっちあげにしては実念のこもった感じになったのは、本当に思ってること7割くらいだったからじゃないかなーと。私をプロデュースする人間、いません。小娘ですから。素質が足りないと見つめ直して思いますでな。
ま、それでも辞められないんですけど。
何はともあれ、もうすぐ試験がやってくる。
始まりの試験、初めの試験。
自然と、手のひらを開閉する。力が入った。
「試験前の追い込みは……そこそこ上手く行ってる。あとは休むけど、もう少しやってから帰りましょうね~」
カカッとステップを踏み、自分のアタマと身体との接続が普段の数倍なめらかになっていることを確認する。この時が、今までやった走り込みとかの成果を一番感じられる瞬間だね。
ただ、自分の中の成果ていどじゃあ到底、人に見て貰うに足りないことを知っている。
だから追い込みの追い込みだ。
「うっしゃあ! 誰もいないレッスン室お邪魔しまァ!」
「ひぃ!? な、なんですか!?」
わひっやっべ! 人おるやんけ!
上がった悲鳴の方向に、反射的にお辞儀しながら詫びを入れる。
「すいません! 誰も使ってないと思っちゃって大声出しました、申し訳ない……」
「いえ、その……お気に、なさらず」
その子の顔を見ると、どうやら同級生の子みたかった。
確か……1組の、海外からいらっしゃったらしいという?
地毛なのだろう、艶のある銀髪がとても眩しく映る。
入口にいるままでも居心地悪いし、あちらも集中できないかもしれない。
本当にすみませんという意を込め一度大きくお辞儀し、レッスン室に入る。
「お嬢さんも、ここにいるってことは……先生に許可を貰って?」
「お、お嬢さん!」
あ、まずい。入ってくる時のテンションのままで話しかけてしまった。
頭で考えるより先に喋ってしまうのは私の悪い癖だ。
恐る恐る彼女の方を見るが、思ったよりなんというか……好感触? うわ、このノリに対して喜んでくれた人初めて! たぶん! う、嬉しい……けど喜んだら変な人だと思われそうだから……やめとく……。
少し、お互いにそわそわしながら黙る時間が流れる。
「ん……お嬢さん、だしね。あ、お名前聞いてもよろしいですか? 多分同級生なので」
「わたしは、
「私も同じですね。高辻冬利です、仲良くしてね!」
悪いアイドルじゃないよー、とボソッと付け足すと、レッスンに戻ろうとしていた彼女の顔がものすごい速度でこっちを向く。
さっきよりも更に煌めく目。……たぶん、私も同じ。
もしかして……君は……
私が無言で右手を差し出すと、彼女は当然と言った様子で手を差し出した。シェイクハンド、世界共通。言葉はなくとも理解るものもある。
いやでも、あれだ。
とても親密そうなギャルの方がいたから、こっちが勝手にブラザーだと思う温度感だ。
同じ趣味だからってすぐ好きになるのでは、相変わらずチョロいままだ。
同じ高みに立つには相応しくない。
むしろファンサでアイドルも揺らがす、
っていうか、ブラザーじゃないね。シスターだね。シスターでもないけどね。聖職者でも姉妹でもないからね。弟はいるけど。
日本に来る外国の方は、ゲームやらアニメにも精通してる人も多い。……だとしても、アイドル養成校で同士を見つけられるとは思わなかった。
握手とはいいもので、同士を見つけたら必ずやるようにしている。
仲良くなるにはとてもいいアクションだ。
「わたしはこちらを使いますね……えっと、トウリさんはどうしますか?」
「ではこっちでやりますね! 舞台上では、競い合う相手ですけど……今日のところは、二人それぞれ頑張りましょう」
改めて、手をつないだままもう一度礼をし合う。
彼女の目には、臆病さばかりではなく、確かな炎が燃えているのだった。
レッスン開始。
自主レッスンだ。
初対面にレッスン中ということもあり、互いに言葉を発することは特にない。それに、話すべきこと、頑張りたいねという意気込みは既に話し終えている。あとは、やるだけだ。
二人分の息遣いと足音が響く。
ギュッ、ギュッ、タタッ。
キュ、キュ、キュイッ。ザッ……ギッ。
ゴム製のサンダル、しっかりとしたグリップ音がする。
軽快なステップには、空に描かれた飛行機雲のような明瞭な意志を感じる。
もう一つは、バスケシューズのような少し高い音。生き生きと、賑々しい動作だった。
基本に沿いつつも大胆な身体の動き。
どちらも洗練されており、これまでに続けてきた修練を思い起こさせる力があった。
様々な動作を試し、失敗し、やり直し、繰り返し…………。通しで全力の一曲を踊りきって、二人は休息を取る。どちらからともなく、最後の一回だと思ってやっていた。
「凄いね、えっと……葛城ちゃん……さん。見た事ない振り付けだけど……もしかして、葛城ちゃんさんオリジナルの曲?」
「は、はい。プロデューサーさんからもらって、練習して……なんとか、中間試験に間に合いそうです」
「ほんっとにすごい……ってことは、これを貰ったのってここ数ヶ月の間!?」
すると、控えめながらも嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。
あらー、良い関係性を築いているご様子ですねぇ。
……それにしても出会って数ヶ月で曲完成とか、どんだけ敏腕プロデューサーなんだ。流石はアイドル科よりも狭き門をくぐった人間。
P科のコネ自体は、私にもある……あった、んだけどね。夢中になってるからね。誰かさんに。ま、音信不通になっているとかでもないんだ、頼る時は全力で頼らせて貰うとしよう。
扉がガチャリ、と開かれる音がした。
「リーリヤ、そろそろ止めとけってプロデューサーから連絡が……って、他の人といたんだ。おはつー!」
「はっ、お初にです。ギャルの方や……!」
ぶっちゃけ、初星に来てから初めて見た。ばちばちのギャル。
自分に嘘はつけないので、正直な感想を言ってみた。
するとあちらさんにはウケが良かったらしい。
一組の教室で見た第一印象は、高身長だしかっけぇし可愛いし……という感じだった。話してみると、その第一印象はそのままに本物のギャルさと元気さを感じたはず。そこそこ前の事なので、あまり覚えてないけども……。
「ぷっ、あはは! そんな驚く物でもないって、この辺りにもいっぱいいるよ。 ……えっと、そっちは二組だっけ?」
「ですです。葛城のお嬢様が練習してるのを見て、こりゃ負けられないわーと。見てるだけでも凄いって思わされたところで」
「でしょでしょ? うちのリーリヤ、スッゴい努力家なんだよね~! それに……ふっふっふ。うち、結構名家だし~。淑女って感じするっしょ?」
「す、清夏ちゃん……!」
清夏ちゃん、というらしいギャルさんは気さくに、こちらのボケにノッてくる。
同じ家じゃないでしょ、というツッコミに、ごめんごめんと謝る清夏ちゃん。
ん~、凄まじい威力の惚気を貰っている気がする。いいわ。良い。ごちそうさまです。
清夏嬢は、スマホを開いてリーリヤちゃんに見せる。
恐らくプロデューサーからの伝言だろうそれを確認した後、彼女は自分のスマホを手に取った。
そちらも確認し終わり、プロデューサーからの指示を行動に移し始めた。
後ろ髪を引かれながらも撤収を準備している。
「清夏ちゃん、ありがとう。プロデューサーさんからの連絡、全然気付いてなかった。ちょっと怒らせちゃったかも」
「あたしも今日レッスン室が使えるなんて知らなかったし……心配したよ? いやー、これはカフェの新作奢ってもらわないとあんまり収まらないかもな~!」
「あはは、ごめん清夏ちゃん……それと、高辻さんも。最後まで出来てないと思う、から」
「あいや、全然ダイジョブよ! 今日は最終調整、不安と緊張をほぐすためのラスト一回だから、心配はご無用……気にしないで、ね」
すると、どうやら同じ目標を目指している事に勘づいたのか、清夏ちゃんさんがいたずらっぽい目をする。
「あっ、もしかして二人とも……明日の中間試験、頑張るみたいじゃん?」
「うん、そうだね」
「強そうだあ、お手柔らかに頼みますぁー……」
「じゃあさ、ぶつかった時もお互い真剣にってことだよね」
リーリヤ嬢は目をつぶり、開く。
そこには、先程よりも輝きと覚悟が増した、決意の炎が燃えていた。
「わたしは、全力で行きます。出し惜しみなしの、本気で」
その熱気にあてられ、私にまで熱が灯る。
拳を握った。
「フフフ……私も正々堂々戦って……誰が相手だろうと、絶対に勝つよ」
自信などない。
だが、自分のパフォーマンスを信じていないエンターテイナーを、誰が楽しめるか。
だから、自信が有っても無くても最高値を予告する。ホームランしか狙わない。
「私は強いぜ、お嬢ちゃん。負けるつもりはないからね」
「望むところ、です。わたしは、アイドルになりたいから」
伝説的王道之展開
後半のリー清は登場させることすら全く考えていなかったんですが、気が付いたら出来てました。キャラがひとりでに動くっていうのはこういうことを言うんだな(適当)