最終経歴:2位の人   作:踊る餅巾着

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七話 Wonder Sevens

 初星学園には七不思議なんてない。

 ただし、いくつかの噂がある。

 

 いや、どう考えてもあのファイルって七不思議? 

 先輩方がたむろっているところを階段、一つ上の踊り場で聞いていたが、初星学園には世にも恐ろしい七不思議が……ないらしい。代わりに、今聞いた通り噂が出回っていた。

 

 ぼーっとしたかっただけなのに……あのファイルに関連しそうな話が転がり込んでくるとは。

 困ったもんだ。

 先輩方も今日は2階の踊り場を駄弁るスペースとしたらしく、どこかにいく様子はない。がっつり井戸端会議をする体勢だ。校舎に備え付けの階段なので、降りるなら目の前を通るしかない。ちょっと怖い。

 降りられないので、おとなしく待つことにした。

 

「それで、七不思議ってなんなの?」

「いや、だから七不思議はないって。でもなんか、一年生絡みらしいよ!」

「マジぃ!? ウケる。あ、でもあーしも一個知ってるよ」

 

 声が全然違う。どうやら、3人組らしい。

 ……盗聴ですやんねこれ。でもファイルの話が出たらと思うと……あれについてちょっとでも情報が手に入れば、恐怖心も薄れると思うんだ。今のままだと押し入れから引っ張り出すのも怖いんだよ。必死。許して。

 

「まずは寮の歌うま幽霊。夜な夜な歌声が聞こえるの。これは外せないよ」

「あ、はいはい。それは知ってるわ」

「え、なに? あーし知らないんだけどそれ」

「なんかねー、一番星にも劣らないすごーい歌が聞こえるらしいよ。寮じゃないから知らないけど」

「えー、やば。でも害がないならいっか」

 

 確かに、歌声に近づいていった生徒が失踪するみたいなマーメイド的何某じゃなきゃいいよね。

 いーや、と先ほどこの話を知っているといった生徒が声を上げる。クールな感じの声だった。

 低めの声で、息を潜めるように。

 

「あんだけ上手いとさ、聞き入っちゃうのもよくないとこだけど……私らみたいな二年生にとっては、シンプルに格の違いを見せつけられてるみたいでね。たまにならいいけど、一時期毎日歌ってて……メンタル削られるよ」

「うっわ。つれー」

「え、それって三年生? というか、そうじゃないなら聞きたくないな……」

「なんと……一年生なんだわ。やってらんねー。でもやるしかねー。麻央先輩が本人に会って突き止めたんだって」

 

 うわぁ、といった空気のようなため息が残りの二人から漏れる。

 短い間、その空間は静かになった。

 ここから見える景色を見ているらしい。ここから見えるものは、一年生の校舎だけだった。

 ぼそりとつぶやかれた言葉は、誰のものともわからなかった。

 

「アイドルだわ」

 

 少しして、なんでもなかったように3人は話し出した。

 

「はいはい、次のやつ! 今度は私が仕入れたやつ、特ダネだよ〜?」

「サゲるやつ以外で頼むぞ〜」

「悪い噂はほとんど聞かないけどね。良くも悪くも他人に構う暇ないし」

 

 なんか一人コテコテのギャルいるな。

 ……まあいるか。

 

「今回は……会長のスキャンダルだよ!」

 

 な、なんだってー!? 

 バカな……あの会長は……完璧超人だったはず。スキャンダルなんて……!! 

 

「あー。あれね」

「あー。アレだわ」

「そう、一年生をストーカーしてるって噂があって……ってえぇ!? なんで二人とも知ってるの!?」

 

 はい。

 そうでした。見たことありました。あの人ストーカーしてたわ。

 聞き覚えのある叫び声と悲鳴が聞こえてビビったのは最近じゃないはずだが、声すら容易に思い出せる。

 

『ことねえぇぇぇぇ!!』

『ぎゃあーーーーーーーーーっ!!!!!』

 

 なむさん。過去のことね嬢。

 不満そうな声が聞こえる。この噂についての話題を振っていた人だ。

 

「ぶー。せっかく会長の親しみあふれるえぴそーどを手に入れたと思ったのになぁ……」

「ホントに親しみあるか? それ」

「ウケる」

 

 会長の奇行は7割のオモロと3割の心配で見ている。心配の行く先はもちろんことねちゃん。

 まぁ近場の厄介ファンだと思えば……余計にダメか。だわ。

 ただ、これで美声幽霊もとい美声一年生の話で落ち込んだ空気は吹き飛んだ。

 この調子で七個ぐらい出して欲しい。あわよくばファイルの情報と、怪談話のタネがあればいいなと思ったり。

 

「うーん……じゃあブルに追いかけられる会長の話も特ダネにはならないか……」

「ちょっと待って。何それは。あの人いつメキシコに渡航したの?」

 

 私とクールっぽい先輩がほぼ同じ感想を思い浮かべる。

 なんで? 一番星そんなことやってる暇あります? 

 バラエティできるんだ会長……強いなー。

 

「やるならスペインっしょ。じゃなくて、佑芽ちーっしょ」

「あ、やっぱ知ってた? そうだよ、花海佑芽ちゃん。あの子が会長を追っかけてたって話で……」

「違くね? 一緒にランニングしてるとこあーし見たから」

「あ、そうなの? じゃあそうだね」

 

 ほえー、佑芽ちゃんか。なるほど。

 会長は佑芽ちゃんについてけるんだ。すげー。

 会長しか知らない人なら逆なんだろうけど……まぁ、はい。会長の走ってる姿はことねちゃんを追っかけてる時しか見たことないので。

 

「ブルって何? 闘牛なの?」

「佑芽ちゃんと曲がり角でぶつかりそうになった人が言ってたんだよ。人とぶつかりそうになった風圧じゃないって」

「おもろ。まじ佑芽ちー見逃せんわ。同級生だったらと思うともっと気が気じゃないよ」

 

 まー上位、今まで上にいた人からすればあの子より怖いものないよ。

 まくりのスピードが尋常じゃない。

 私はもう最初の頃で追い越されちゃったから今は特に何も思ってないけど。いつものことだからこっちの方がしっくり来るし。

 そしてどうやら、ギャルの人は佑芽ちゃんのファンらしい。

 

 同業まで虜にする力は、私が今一番欲しい才能だ。しかし……なかなかねー。同学年にもそんなアイドルはいる。佑芽ちゃん以外にも。さっき先輩方が言ってたように、やってらんねー話だ。

「でも続けるさ」としか言えないが。

 

「噂って感じじゃないけど、Syng Up! はどうなってるんだろ……」

「あぁ、かやりんは初星辞めたらしいよ」

「前から思ってたけどあだ名分かりづらくね? ほぼ呼び捨てっしょ」

「良いんだよ。ファンだってバレにくいし、何よりずっとこれで呼んでたからもう変えらんない」

「学園辞めちゃったの!? 今どうしてるのかな……」

 

 まじすか。

 ユニット解散もビビったけど、辞めたの? 

 おぉい……マジかよ。ファイルとか七不思議よりよっぽど衝撃なんだけど。

 まじですか……。

 冬利はショックで顔を覆う。

 彼女が心を整理している間も、話が進んでいく。

 

「なんだっけ。月極(つきぎめ)だっけ」

「それ駐車場な。極月(ごくげつ)っしょ、相変わらず漢字弱いね〜」

「なんだよ。やるか?」

「あーしと勝負するにはまず赤点をゼロにしてからだね。出直しな」

「くそが」

「極月学園……白草姉妹のいるところだよね? 961プロ、だっけ」

「あれ、あーしより詳しいじゃん。そうらしいね」

「……なるほど。確かに合理的だと思うよ。あそこは実力主義だから、燐羽ちゃんは抜きん出るはず」

 

 元気だった先輩の声が、少しだけ陰った気がした。

 二人は気づいていない様子。

 クール先輩があ、と思い出したように声を上げた。

 

「黒井さんか。ふーん……いいね。跳ねっ返りの一年生、叩き潰しがいがありそう」

「血の気おおいねー。あーしはパス。というか、噂ってもう出尽くした?」

「まだあるよ〜! ふっふっふ……初の準備であんまり会えなかった間に、仕入れはたっぷりしたからね」

「話題に事欠かないね、この学園は。当然っちゃ当然か」

「これは凄いよ……今年の学園主席。咲季ちゃんの! S! S! D〜!」

 

 さて。なるほど。

 この辺りで私はお暇しようかな。

 そう思って校舎の中を見ると、人だかりができているところだった。OMG。

 いやいやいや……SSDはダメだよ。逃げたいんですけど。

 誰か助けてください。もしくは気絶させて。

 ああ……現実はいと無情かな。

 

 

「はい、コップ。折角だから3人でね」

「なんだこの色。飲むわ」

「え、絶対やなんだけど。ちょ、つぐな。やめ━━━━」

 

 結果として3人ともちゃんと飲んだ。元気な声の先輩が一番飲んだっぽい。

 好奇心なのかなんなのか知らないが、命知らずにも程がある。あれを常飲するのは生命の形を順応させた花海佑芽だけですよ? 

 あ、篠ちゃんも飲んでるか。効率厨(しのさわひろ)と、血液=SSD(はなみうめ)……外れ値でしょ。

 

「凄いねこれ! なんかこう……すごい! 視界がぐらぐらする! わぁ波の音聞こえてきた!」

「へへへ……やべ、変な味すぎて笑い出てきた。うへっ、へへ……」

「うぐ……なんで発光する液体を嬉々として飲んでんだし。しっかりしろ。幻聴聞くなー」

 

 二、三回ベチベチと聞こえ、先輩二人が正気に戻る。

 無言だった。幽霊の話と同じぐらい。

 明らかに空気の中に疲労の色があった。ジュース飲んで錯乱したらそりゃあね。

 

 にしても元気先輩、ガッツがある。あの量を生半可な気持ちで飲めば、トラウマになる人もいるというのに。

 ……しかし、まだテンションはおかしいみたいだが。

 

「健康に良いタイプのエナジードリンクって感じ!」

「悪いだろ。むしろ良い方が怖い」

「作ってもらってて悪口言うなあほ。あーしにまで無理やり飲ませて」

「弾けた。そして混ざった! そんな味」

「野菜の星の王子様!?」

 

 テンションが変なのは二人だったみたいです。

 味は不評だが、元気・クール先輩はもう一度差し出されたら飲むらしい。どういうこと? 

 SSDを飲んだからか、予鈴が鳴ったからか。定かではないが、三人はまた揃って校舎の中に消えていく。

 

 そして私も、彼女たちが降りて行ったのを皮切りに階下へと駆け降りていく。ゆっくりしていては次に間に合わなさそうだったを

 途中で歩く誰かを追い越しつつ、校舎に入る。

 階段を一段飛ばしで登ると、そこにはもう準備を整えたクラスメイトたちがスタンバイしていた。

 ついでに檄がとんでくる。

 

「高辻ィ! 何をやってる、もう始まるぞ! 掃除の時間だ!」

「すいませーん! 佑芽ちゃんと倉ちゃんも、待たせてごめん!」

「良いよー」「大丈夫ですわ!」

 

 トレーナーも教室の掃除をするのだろうか。

 私達も、担当の場所に掃除道具を持って歩みを進める。

 我々はアイドルを目指すものであり、掃除をカリキュラムに取り入れる学校・学園は少ない。だが初星学園では、用務員さんを雇う以外でも、数ヶ月に一回全体での掃除が行われる。

 持ち場も毎回交代だ。

 

「すぅー……ふぅ。ごめんね〜。篠澤ちゃんの件ー」

 

 私が言うと、二人は心当たりがないように頭にハテナを浮かべる。

 

「広ちゃんの……何かあったっけ?」

「いや、ほんとは私じゃなくて篠ちゃんだったでしょ? 今回の掃除メンバーは」

 

 何故か分からないが、元々のところから持ち場を変わるようにダンストレーナーから言われた。たぶん二人は気にしないと思うけど……私が気にする。何より、仲良し三人組を壊したくない。

 そう言うと、二人は納得したような顔を浮かべた。二人は理由を知っているようだ。

 

「それは……気にしないでくださいませ。篠澤さんも了承していることですの」

「えっ、そうなんだ……理由って、聞いていいやつ? ダメだったら全然良いんだけど!」

「それはね……広ちゃんたぶん、階段掃除に耐えられないから……」

「あっ」

 

 あぁ。それは…………そう。確かに。

 気にしすぎだったか。まぁ言ってなきゃ悩んでたから丸く収まってよかった。階段歩くの見る時、いつもヒヤヒヤするし。なんなら息切れするから背負うこともある。

 とにかく懺悔は済んだし、これで掃除に専念できる。

 

「箒は誰がやる?」

「あたしやりたーい!」

「では、花海さんにお願いしますわ」

 

 我々は知らなかった。

 花海佑芽に箒を持たせてはならない。

 ここに篠ちゃんがいなくてよかった。この風圧を耐えられなかったと思われる。そう考えると、私が配属されたのも運命のいたずらか。

 

「佑芽ちゃーーーん! 止まってくれーーー!」

「花海さあぁぁぁぁん……こ、これでは私達は雑巾掛けできませんわー……!!」

「えっ、そうー? ならわかった」

 

 気流がにわかに勢いを失う。助かった。命が。

 埃たちは、怯えるように隅っこに逃げている。さもありなん。これなら集めるのは簡単そうだ。次は絶対このやり方しないけども。

 

「あとはわたくしか、高辻さんが隅の埃を集めますわ。花海さんは雑巾をお願いします。それでは、どちらがやりましょうか」

「じゃんけんですな。勝った方が箒で」

「了解ですわ!」

 

「「最初はグー!」」

 

 どの仕事でも佑芽ちゃんは全力。今回は校舎内なので階段の踊り場は広めだが、猪みたいな突進で今にも終えそうである。怖いって。当たる当たる。

 結局私がじゃん勝ちで箒をすることになった。

 こういうのは得意。任しといて。

 

 ちりとりを左手で逆手に持ち、角にかたまったゴミの群れを片付ける。踊り場のかどが四角じゃなくて丸くなってるわ。埃がぺたりと張り付いてる。

 こんな集まってることないよ。花海佑芽恐るべし。

 ゴミが落ちないよう、ちりとりの裏を叩く。ちりとりの中で、ほこりや枯れ葉が一箇所に集まっていった。

 佑芽ちゃんが走るように踊り場を雑巾掛けしている隣で、千奈ちゃんも一段一段丁寧に磨き上げていた。

 性格の差が出てますねー。どっちも良い。

 

「掃除をすると心が洗われますわ〜。お二人はどうですか?」

「私もそれは思いますねえ。……自分の部屋まで同じようにはいきませんけど」

「あたしも! ……私はあまり、必要性を感じない」

「まぁ! 篠澤さんですわ!」

「ふふ、掃除の時間もレッスンに充てたら……倒れちゃった。プロデューサーにも詰められた。ままならない、ね」

「ふふ、うふふ……お二人とも上手ですわ〜!」

 

 声真似は特技の一つ。自信あるやつとないやつの差がかなりある。

 佑芽ちゃんのが雰囲気モノマネは上手い。声は佑芽ちゃんから変わってないけど。

 掃除したいけどレッスン優先したいって願望は篠ちゃんが、というより私が……ずぼらなアイドルならたぶんちょくちょく思ってる。

 実家なのもある。寮の方が良かったのか、さてどうかね。

 

「そういやさ、二人は初星学園にまつわる怪談話に心当たりはない?」

「えっ、なになに! 怪談とかあるの!?」

「わたくしは耳にしたことがないですけれど……藤田さんや星南お姉さまなら心当たりがおありかもしれませんわ!」

 

 私は考える。

 中間試験も終わり、少し時間がある。もしファイルの出所や曰くがあるのなら、今調べるしかない。最終的に、何らかの手段で処分するのは間違いない。けども本当になんの対策も無しでは帰ってきたり祟られた時に……どうする。反撃する手段が0なのだ。

 あれはトムリドルの日記みたいなものだというのに、私は一向に魔法使いの才が目覚めない。雷みたいなあざ浮かんでこねーかな。もしくはバジリスクの牙をくれ。

 

 与太話はここらで終わりにして。

 ことね嬢と会長……確かに、情報通とこの学園の主、その家系に聞くのが一番手っ取り早くはある。

 ただ……ちょうど交流が一番薄いとこなんだよねえ……。

 三年生は言わずもがな、藤田さんとはシンプルに行動範囲が違う。

 

 私の出没地点は、スーパー、コンビニ、図書館、レッスン室とかそんな感じ。そもあんまり外に出ないタチでもある。

 藤田さんは……バイトよな。たぶん。この前スーパーで会った。気まずくて「ッス……」しか言えなかった。向こうも「おぉ……シャーセー」みたいな感じだった。セーフか。なにが? 

 きっかけさえあればまた違うだろうけど。

 

「二人に聞いてほしいのはね、私と篠ちゃんに降り掛かった不幸についてだよ。詳細を言うと訳わかんなくなるからちょいちょい端折るけど」

「篠澤さんに不幸がっ!?」

「骨とか折れなかった!?」

「なんだと思ってるのよ。分かるけどね?」

 

 実際、頭に当たったのが私じゃなかった場合は想像したくない。

 

 一人でも知っていればおーるおっけーなんです。今回だけで成果があるとは初めから思っていない。

 先輩の、しかも七不思議の話で出なかったんだからダメ元でOK。

 あとは、まぁ……知ってる人が多い方が、失踪とかしてもね。探してくれる、かもしれないし。

 

「これは空から降ってきた異物の話……私と篠ちゃんが━━━━」

 

 結局、あのファイルを書いてる人が見つからないのが問題だ。

 咲季P、手毬Pは違うとわかった。というか、独りでに文字が増えているところを目撃した者としては、誰かのイタズラとすら思えない。

 仮にイタズラだとしたら、悪質すぎるしタネがわからない。

 ガチ怪異です。本当にありがとうございました。生涯にまだ悔いあり。

 

 手短に、ファイルが空から降ってきたこと、誰かのプロデューサーのレポートだったこと、書いてる人が見つからないのに中身がどんどん追加されることだけを話した。

 前半二つまでは飲み込んでいた二人だが、三つ目を話すと宇宙猫になってしまった。

 

 ですよねえ。

 お手上げです。最高だよ。これなんて神ゲー? 

 ……そういや二人のレポートもあったよね。自分も、なんで二人に聞こうと思ったんだろって感覚でいたけど……これか。

 

「それは、いまどちらに……?」

「私の家。押し入れに閉じ込めてるけど勝手に出てきそうでビビってる」

「「えぇ…………」」

 

 ドン引きですやん。

 しょ〜〜〜がねぇでしょ! 学校置いてたらどんな異変が起きるかわかったもんじゃねーのですよ!! 

 所有権が私にあるというよりはね、監督責任があるんですよ。仮に落とし物入れに置いて誰かが持って帰って……なんらかの事件が起きるじゃん。絶対さ。

 ソレ私の責任なんすよ。んも〜〜〜まいっちゃう。

 

「人に渡せないでしょうよ。シノサワさんだと、化け物に対抗できないのに嬉々として突っ込みそうだし」

「うっ……広ちゃんはやるね」

「間違いないですわ……」

「はぁ〜〜〜……とりあえず、私が消えたら頼んだ。篠ちゃん倉ちゃん佑芽ちゃんに私の未来かかってるから」

「突然の重荷ですわ!?」

 

 千奈お嬢様には流石に重いかもしれない。ただし、それは彼女一人の時だ。

 隣を見れば女傑がいる。ドンと胸を叩いた音が聞こえた。

 

「任せて! あたしが絶対助けるからね!」

 

 頼もし〜〜〜! 

 花海佑芽の怪異退治。成功以外の文字が見えない。

 まずそうならないよう動くのだけども。藤田さんか会長。……かなり究極の二択ですねぇ。会長は普通なら100%無理なんだけど、幸運なことに千奈ちゃんがいる。接触を図る、もしくは聞いてもらうだけならタダだぁ! 

 これは会長に聞く方がマルですね。

 

「ところであの〜……お嬢様? ここいらでちょっとお願いがございまして……ヘヘ……」

「いや、三下じゃん。それじゃなくない?」

 

 花海佑芽が冷静すぎる。

 腹筋だけじゃなくてツッコミの鋭さもキレてます。

 

「お話をお聞かせ願いますわ!」

「へぇあの、十王会長に初星学園の怪談話があるか聞いてほしくてですね……さっき出た案をお使いとしてやらせるのは少々心苦しいんでやすが」

「分かりましたわっ!」

 

 ありがとうございます。

 あ、靴とか全然舐めますよ? 

 奴隷として扱ってもらって結構です。……これ首締めがどうたら言ったやつが言うとシャレにならないね。やめようか。

 二つ返事をくれたお嬢様には、感謝の念と畏敬の念を込めた視線を贈っておく。今度なにか返礼品を渡します。

 

「お礼はホールケーキとかがいいですか?」

「3個ぐらいお願いしようよ千奈ちゃん!」

 

 あんたは悪魔? 

 

「う、あの、2個ぐらいで勘弁してもらえると助かりまーす……」

「そこまで血も涙もないこと致しませんわ!? お気持ちだけで結構ですの」

「なんで?」

「友達の頼みですもの!」

 

 あなたは天使? 

 やっぱり靴磨きとかやった方がいい気がしてきた。

 使わせるくらいなら自費で用意する。これが倉本の流儀ですか……。

 これで一つ、活路が見えたわけだ。ホールケーキでなくともなんか献上しましょうね。

 

 藤田ことねちゃんさん…………。咲季嬢とかに接触する必要があるかな。

 やれるだけのこと、やりますかぁ。

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