信長たちはここ幽州に跋扈する盗賊たちを排除しようと軍議を開いていた。
その軍議には白蓮を始め、趙雲、信長、桃香、愛紗、鈴々と全員が揃っている。
「っでだ、この付近に総勢二万もの大群がいる。私たちはこれを見逃すことなんてできやしない。ここでやつらを叩かなければいけないんだ」
白蓮は全員にゆっくりとそう話した。
今までの報告などでわかったことがある。それは・・
「また、黄色い布を頭に巻いた人たちだね・・」
桃香がそう、言葉を漏らした。
そう、最近の賊は全て頭に黄色い布を巻いているのである。その規模はすさまじく数十万人にも上るらしい。その全員が頭に黄色い布を巻いている。
「何か意味があるのでしょうか?」
愛紗がそう言葉を漏らした。その言葉を受け、信長がこう話す。
「ふむ・・黄巾賊・・か」
「え?」
「なに、ただのたわ言ぞ。呼び名が無ければいろいろ不都合であろう」
「なるほど、黄巾賊か。確かにそれは言い得ているな。よし、それもらった」
黄巾賊。黄色をベースに彼らの服装は作られている。
確かにこれはわかりやすい。これから奴らをそう呼ぼうと彼女らは決定した。
「それで、白蓮殿。こちらの軍勢は如何ほどなのでしょう?」
信長達はこの白蓮の城で生活させてもらううちに親しくなり、お互いに真名を交換し合ったのだ。早速、愛紗も公孫賛の事を慣れた感じで白蓮と呼ぶ。
「こちらは一万三千といったところか。敵とこちらでは約七千の兵力差だな」
その言葉を聞き、星はいきり立った様子で立ち上がった。
「ならば敵はただの烏合の衆!正規軍にあらず!!ここは一騎当千の猛将が当たれば敵は混乱しすぐに総崩れとなるでしょう!今すぐに出陣すべきです!」
「な、何言ってんだ星!!そんな無茶苦茶なこと出来るか!?兵法の基本は敵よりも多くの兵を用意し、そして当たることだぞ!!」
「しかし、その兵を多くすることができぬではありませんか。それにそれは先ほども申し上げた通り敵はただの賊!正規軍にあらず!!ここで必要なのは猛将の猛撃のみ!」
「し、しかし・・それはいくらなんでも無茶だ!七千もの兵力差だぞお前一人では・・」
「何を申しております伯珪殿。ここにいるではありませんか、一騎当千の猛将が四人も・・」
星がその人物を順番に見つめる。
それを見て白蓮もその四人が誰か気づいたのだろう。
「愛紗に・・鈴々に・・信長、そしてお前か?」
「ええ。そうです。この四人で前線に立ち、敵に当たれば敵は大混乱の総崩れ間違いなしですぞ!」
「だ、だがやはりそれは駄目だ!!確かに敵は混乱するかもしれない。だが危険すぎる!!そしてそれでは無駄に兵を失うだけだ!そんな無謀で無策な突撃なんて認められるわけない!!」
「はあ・・やはり伯珪殿は手緩いな。そのような甘い考えでは、一国の主とはなれまい。一県の将にはなれるかもしれませんが」
そんなことを言われては白蓮も黙っていられない。
あきらかにいらついた声色と口調で怒鳴る。
「ぐっ・・・ならば好きにしろ!!星!!」
「御意に・・・」
星は一礼し、一人部屋から出て行った。
その二人のやり取りを見ていた桃香も黙ってはいられなかった。
星がいなくなると早速白蓮に話しかけた。
「ぱ、白蓮ちゃんいいの!?星ちゃん一人で本当に行っちゃうよ!?」
その桃香の言葉に白蓮ははーっとため息を吐き、話し始めた。
「なあに、どうせ一人では何もできないさ。すぐに戻ってくるよ。あいつはここに来たときからそうだったんだ。いつも自分に突撃させてくれとか、どうも武勇を振るいたがる。
でも、あいつの気持ちもわからんでもない。私も一応武人の端くれ、戦況を自分の力だけで変えてみたいって気持ちがあるさ。
単騎駆け・・そんなことを是非してみたいものさ」
白蓮の表情には憧れのようなものも篭っていた。
自分には星のような武は無い。だが自分も武人。
そのようなことをやってみたいとは思った事がある。だがそんな事自分にはできないし、やろうとも思わない。自分はたくさんの兵の命を預かる身なのだ。
様々な思いが詰まった表情を白蓮はしている。
その気持ちを愛紗も感じていた。そして、彼女も語りだす。
「確かに私もその気持ちわかります。この青龍堰月刀一本で敵をなぎ倒し敵を止めてみたいですな」
「鈴々もなのだー!」
愛紗や鈴々もどうやら星の気持ちに共感できるようだ。武の頂を目指すものとして少しでも戦いの経験を積み、いつか夢見る天下無双の称号に一歩でも近づきたいのだろう
「だがそれは許可できない!!自分の夢や理想のために兵を無駄死にさせるわけにはいかない!自分のわがままのために兵を死なせてしまってはその家族にどう顔向けすればいいんだ!」
白蓮が机を両手でドンと叩きそう語る
「クク・・白蓮。うぬは真に優しき女よ。民や兵のことよく考えておる。うぬの元で働き暮らす者共は果報者・・ぞ」
「よ、よせよ!?照れるじゃないか!?」
白蓮が真っ赤になり、信長の方を見る。
「ハッハッハ、まっこと愛い奴よ!」
「あー!ご主人様白蓮ちゃんばっかりずるい!!私だって民や兵隊さんの事考えてるんだよ!」
ぶーぶーっと桃香が頬を膨らませた顔でそう信長に詰め寄る
「うむ。桃香も優しき女よ。同門だけあり、思想はよく似ておるわ」
「だよね~♪私たち仲良しさんだもん♪」
そう和やかに話していると・・・一人の兵が部屋に勢いよく入ってくる。
「た、大変です!!!殿ッ! 趙雲殿が一人で陣を飛び出し、敵部隊に突撃する構えを見せています!」
「な、なんだってーーー!!!!!????」
白蓮が頭を抱え、動揺している。
「ま、まさか・・星がこんなにも早く突撃するなんて・・」
「にゃは~星はせっかちなのだー」
「ど、っどうしよう!!星ちゃんが死んじゃうよ!!」
皆が慌てているなか一人信長は笑っていた。
「ご、ご主人様・・?」
「・・ックク・・ッハッハッハ!趙子龍!真に噂に違わぬ豪傑よ!!子龍は一身すべてこれ肝なり!!」
信長が腕を組みながら大きく笑っている。
「な、なに言ってんだ信長、こんな無謀な事やってなんであいつを褒めてんだよ!!」
「ふむ、確かに奴のした事は下策中の下策。だがこれで奴の実力がしれるわ。女の身でどこまでやれるか。勝家を超えられるか・・見せてもらおうぞ趙子龍・・可能ならば忠勝を超えよ」
そうして信長は席を立ち、この部屋から出て行こうとする。
「お、おいどこにいくんだよ!」
「ふむ、特等席で見てくる・・」
「はあ?」
何を言っているんだと、そういう表情で白蓮は首をかしげた。
そして、信長は振り返らないまま、淡々と話し出す
「白蓮、うぬは敵の後方より敵を強襲するのだ。我らの部隊を先行させて敵を引き付ける。うぬはその間に敵の背後へと回り込むのだ。
桃香。鈴々。うぬは旗手の数を倍以上用意するのだ。少しでも多く虚兵を作り敵の動揺を誘うのだ。
愛紗。うぬはワシのあとに続けい。敵の先鋒に一当てし、星と共に戦い時間を稼ぎ、頃合をみて引くのだ。
そして敵を釣り、桃香と鈴々で左翼、右翼より横撃をかけるのだ。そしてワシらは反転じゃ。
白蓮、うぬは到着を遅らせるでないぞ」
白蓮どころか桃香、愛紗、鈴々までもが驚いた。
まったく、予想だにしていなかったことなのだ。
「お、お前星が突撃して・・、私たちが話し合っている間に一人でこの策を考えたのか・・?まだ策の話なんて一つもしてなかったろ・・?」
「クク・・愛紗。うぬは兵を準備させたらすぐに出立するのだ」
そう言われ、愛紗は、ハッ!?と今意識を取り戻したかのような表情をする
「はい!し、しかしご主人様。貴方はどうされるのですか?」
「特等席・・ぞ」
そして信長は一人部屋を出ていった。
そして、白蓮は机に両腕を乗せ、その腕に顔を置き、寝そべるかのような体勢になった。
「な、なんなんだあいつは・・策を考えていたとしても、星のあの行動は考えていなかっただろ?それをうまく組み込んで考えたのか?即興で・・・?」
すると、桃香も机に寝そべる。二人は向かい合わせの位置にいるため、桃香が寝そべったまま前を向くと、白蓮と同じ目線になり、目が合った。
そして、桃香はニコニコ顔で白蓮へと話しかけた
「白蓮ちゃん。やっぱりご主人様ってすごいでしょ?」
「ああ。たいしたやつだ。それに、やはりあいつにはすごい才能を感じるよ。間違いない。あいつは私と違って本物だ」
二人のやり取りに、緊張感が感じられず、愛紗はせかすように話しかけた。
「そんなことより早く兵の準備をしましょう!間に合わなくなってしまいます!」
そう、話していると・・
「た、大変です!!織田殿がお一人で出陣なされました!!!」
「はあああ!!!???」
そこでは、一人の女性が戦っていた。
周りには大量の死体。頭に黄色い布を巻いた黄巾兵だ。
「はあ・・はあ・・やはり一人では少々疲れるな」
星は疲れていた。一人でもう何十人、いや、百人は殺しただろうか。
まさに豪傑である。
「ヘヘヘ・・あんたは確かに強えよ。だがなあ!!こっちは万の人数がいるんだよ!!所詮一人じゃどうしようもねえんだよ!!この馬鹿がああああ!!!!」
そう言って数十人が突撃してくる
「く・・はああああああーー!!!!」
星が必死に槍を振るう。
「はい!はい!はい!はいー!!!!!」
そして力の限りを揮い迫ってきた数十人を倒す
「へへ・・やるなあ・・だがなあ!!てめーの周りを見てみろ!!そんな状態じゃどうしようもねえだろ!!」
そういわれ見ると星の周りに倒し、積み重なった死体があり、身動きがうまく取れなくなっていた
「くっ・・迂闊であった・・・この趙子龍としたことが・・こんな失態を・・」
「っはっはっは!!!!もう終わりだな女ーー!!!!てめーはそのまま死ねやああああーー!!!」
敵がまた突撃してくる
「ふ・・これまでか・・・やはり、私はただの馬鹿でしかなかったのであろうか・・」
星は天を見上げ、そしてゆっくりと瞼を閉じた・・・・・・
「クク・・・第二幕の開幕・・・・ぞ」
星はハッっと目を開けた、すると隣に馬に跨った信長がいた。
「の、信長殿!!??」
「うぬの働き、見事であった。勝家を思い出したわ。だがまだ忠勝には及ばん」
信長が妙法千五村正を振い敵の死体を崩れるように切り刻み、蹴飛ばした。
「星・・・うぬのしたことは軍の崩壊を招く、下策中の下策。
失態をし、責を感じ、逃げるは悪、死は極悪・・ぞ。
失態を作ったならば働きで、失態を取り返すほどの働きをしてみせよ。勲功をあげよ!
此度はワシもこの三国の猛将の実力を見る良き機会であった。やはりうぬは趙子龍であった!!うぬの力・・ワシは欲しい。よってうぬを死なせるわけにはいかぬ!!手を貸そうぞ!!」
そして信長は星の前に立ち、疲れている星を守るかのように星の前方の敵を切り捨てる
「ふふ・・男に守られるとは、女冥利に尽きますな。だが私はまだ女の幸せを手に入れる気はありませんゆえ、ここで隣に立たせてもらいますぞ」
星は信長の隣に立ち、槍を構え、再び闘志を燃やしたようだ。その様子に信長も笑みを浮かべる。
「ふむ・・ワシもうぬをひな壇に飾り、化粧をさせ、鑑賞するだけにはしたくないのでな」
「ふふ・・さあ!!ともに戦いましょうぞ!!」
そして二人は背中を合わせ、互いを守るように敵をバサバサと切り捨てていく
そして・・・・
「ご主人様ーー!!!いったい何を考えておられるのですか!!」
愛紗が兵を率いて到着したようだ。
「まったく、貴方は私たちの主人である自覚がおありですか?確かにご主人様はお強い。しかし人には変わりないんですよ!斬られれば死ぬのです!」
「ッハッハッハ。ならば愛紗。うぬも人・・ぞ。うぬも死する者。そんなうぬらを先頭に立たせ、ワシは安全な後方で控えておれと?
兵が数万をこする大軍であればよいが、今は寡兵ぞ。そんな今ではそれほど余裕はなかろう。
今は星の言うように猛将の力が一人でも必要・・ぞ」
「た、確かにそうですが・・」
ガーンガーン
「む、合図が出ましたね。星!今は一緒に引いてもらうぞ!」
「なるほど。敵を釣るわけですな」
「さすがに頭の回転が早いな」
「ハハハ、ちゃんと将としての知識などはあるさ。猪武者ではないさ」
「こんなことをしておいてか?まったくお主も世話のかかるやつだ」
「鈴々ほどではないさ。さあ!引くぞ!」
そして信長、愛紗、星は兵を反転させ後方に引いた
「まちやがれ!!散々俺たちをコケにしやがって!!おいお前ら!!敵はただの小軍!!一気に蹴散らすぞ!!!」
敵はうまく釣れたようだ、そして・・・・
「にゃーー!!!突撃、粉砕、勝利なのだーーー!!!!」
「みんな!!守りたい人やこの地の平和のため、今は私に力を貸して!!」
鈴々と、桃香の部隊による奇襲が始まった
「よし!!皆!反転だ!!!」
信長、愛紗、星の部隊が反転し、これで三方からの挟撃が成功した。
「くそが!!なめやがって!!おいお前ら!気合いれろ!!!」
賊も挟撃され混乱しているようだが、数が多いためまだ戦う意思を奪うまでにはいかないようだ。
敵の様子に愛紗がしかめた顔で呟く。
「敵もなかなかやりますね・・・、白蓮殿はまだなのか・・」
「ふむ・・後方まで迂回してからの強襲であるからな。いま少し時が必要か・・」
「どうしますか?このままではせっかくの包囲が崩れてしまいます」
「ならば、先ほど言った星の言葉。今一度使い、敵を混乱させようぞ」
「と、言いますと?」
愛紗と、星が信長の隣で次の言葉を待つ
「うむ、一騎当千の猛将による猛撃・・ぞ。愛紗、星。うぬらまだ戦えるか?」
信長が二人へ、その視線を向ける。その瞳には(この信長の背中を追いかけて来い)といっているかのようだった。
「はい!まだいけます!!」
「ええ。私もいけますぞ」
二人は自慢の武器を握りなおし、まだまだいけると信長へ伝える
「ならば、このまま馬に乗ったまま突撃をかけるぞ。賊の集まりといえど必ず兵を指揮する者がおる。その者を討つのだ!三人で突撃するぞ!」
「く・・本来ならばご主人様にこんな危険なことさせたくないですが・・仕方ないですね」
「ハハハ!信長殿はおもしろいですなあ・・良いですとも」
「では往くぞ!!我に続けい!!!兵はそのまま防御の構えを崩すな!!」
信長と愛紗と星は馬に乗り敵兵の中に突撃していった。その猛撃はすさまじいものであった。
「誰ぞ!!この信長と張り合えるものはおらんか!!」
「賊共!!この青龍堰月刀の錆にしてくれようぞ!!」
「この常山の趙子龍の武の糧になりたいもの我が前にでられよ!!」
三人がまさに一騎当千の如き武を揮い、賊はその気迫に押されている。黄巾には猛将がいないため、ただただ、その様子は恐ろしく映ったであろう。
「お、おい・・なんだありゃあ・・・バケモンじゃねか・・お前ら!!あいつらをこっちにこさせるな!!俺を守れ!!」
敵の将とは呼べないがリーダー格のような男がそう叫ぶ
「む・・」
信長はそれを聞き漏らさなかった。
「クク・・この信長に目を付けられたこと、後悔するが良いわ!!」
50メートルは離れていただろうが信長はキッとその男の目を見つめたまま一点も反らさずその男に突撃をかける
「な、なんだありゃ・・なんでこっち見てんだ・・・やめろ!!来るな!!!来るなーーああああああああああ!!」
「クク・・滅せよ・・・」
信長が一刀の元に男の首を刎ねた
「聞けい!!汝らの将。この信長が滅したぞ!!」
そして時を同じくして
「進めーー!!!!公孫の力を見せ付けるのだ!!賊共!!今すぐ蹴散らしてやる!!」
白蓮の部隊も到着したのだ。そして混乱に、さらに後方を付かれての奇襲、包囲による大混乱が起こり敵はついになすすべなく殲滅されるのであった。
子龍は一身すべてこれ肝なり
これは劉備が趙雲に言った言葉です。
ようするに趙雲は全身が肝でできてるみたいに、すげー度胸の持ち主だってことです。