信長たち一向は白蓮の城でしばらく生活させてもらっていた。
白蓮の要請でここ幽州の賊たちを何度も征伐し、そして城に戻る生活を繰り返していた。
愛紗、鈴々、信長は兵の調練を任され、桃香は白蓮の事務の仕事を手伝っていた。
愛紗も暇があれば白蓮の手伝いをしていたが、信長には出来なかった。
なぜなら彼は字が読めなかったからだ。
そのことに信長は軽くショックを覚えたのか、兵たちの調練が終わればすぐに与えられた自室へと戻り、寝る間を惜しみながら、字を勉強していた。
その信長の熱心さには桃香はおろか、白蓮にまで「あいつはいつ寝ているんだ?」と、心配させるほどであった。
信長は桃香たちや愛紗、星、白蓮だけでなく、暇そうにしていれば鈴々にも字を教えてもらっていた。
それはおろか、字が読める侍女たちにも恥じることなく字を教えてもらっていた。
まさに知るは一時の恥、知らぬは一生の恥を教訓にしているかのようだった。そのため、信長の成長はすさまじく、自身の才能も手伝っているのだろうか、一ヶ月もたてば、普通に生活するには支障をきたさないまでに字が読めるようになっていた。
そして、ついに時は動き出した
信長は侍女に連れられ、皆が集まっている部屋にきた。
全員が揃った事で、白蓮は話を始めた
「全員揃ったか、さて皆、この城に朝廷よりの使者が来たのは知っているよな?」
「ふむ、黄巾の討伐を命じに来たようだな」
「そうだ。私はすでに参戦することは決めているのだが・・」
「白蓮ちゃんがね、これは私たちにとって好機なんじゃないかって」
桃香がよく意味は理解していないが、白蓮がそういっていたよ~っと言わんばかりの口調でそう告げた
「好機?なんなのだー?」
鈴々はその言葉で理解できなかったようだが、信長は理解したのか、ポツリと漏らす・・
「好機・・か」
そして、白蓮が信長たち一向を見つめ、話を再び続けた。
「黄巾党鎮圧で手柄を立てれば、朝廷より恩賞を賜ることになるだろう。桃香たちがその気になれば、きっとそれなりの地位になれるはずだ。そうすれば、もっともっと多くの人たちを守ることが出来るだろう?
残念ながら、今の私の力はそれほど強くない。・・そりゃもちろんもっともっと力をつけて、この動乱を収めたいとは思っているけど、でも今すぐは無理だ。そんな私に桃香を付き合わせる訳にもいかない。時は金よりも貴重なんだから」
白蓮が少し難しい顔をしながら口を閉じた。
それを見ていた信長はやはりな、っといった表情で口を開いた。
「ふむ・・白蓮よ。うぬのおかげでワシらは良き生活を送らせてもらった。ワシらが出ることがうぬの望みなら是非もなし。そうさせてもらおう」
「・・え?ご主人様、どういうこと?」
その言葉に桃香は首をかしげ、意味が分からないといった表情であった
「ワシらは活躍しすぎたのだ。星は客将として十分に働き、ワシらも黄巾の討伐に積極的に参加し、何千人もの賊を滅ぼし、名を上げてきた。太守としての面目が潰れるほどにな」
「え!?そんな・・・」
桃香が困った顔で白蓮の顔を見る。すると、白蓮は困ったような引きつった笑顔を桃香へと返した
「この功名を上げる絶好の好機にワシら自身の手で手柄を立て独立さたいのだな。これが最も効率の良い対処法ぞ。しかしながらこれはワシらにとって利はあるがうぬにとってはただの現状を回復させる手段でしかないのだがな。真に優しき女ぞ」
白蓮はそう呼ばれ少し照れたのか顔が赤くなっている。
そして、顔を元に戻し力強く喋りだした。
「私は・・お前たちに何かを感じるんだ。きっと・・この乱世を終結へ向かわせる可能性が!私じゃきっとできないでかい事をお前たちならやってくれるってな!」
「白蓮ちゃん・・」
桃香はただただ嬉しかった。自分の親友がここまで自分たちのことを考えてくれていたとは思ってもいなかったのだろう。
だが、自分たちにはどうしても必要なものがある。それを愛紗が告げた。
「しかし・・私たちには手勢がありません・・」
「私の街で・・やってみろ」
白蓮のさらなる援助に桃香たちは驚きの声を上げた。
信長でさえも少し驚いた表情をして、白蓮を見た。
「えーー!!??そんな!?いいの!!??」
「ああ。これは私からのお前たちへの最後の援助だ。友の門出に贈ってやるさ」
「クク・・たいした女子・・ぞ。ならばそうさせてもらおう。白蓮、いつかうぬが困ったときはワシらを頼るのだ」
「ああ、そのときまでにはでっかくなっていてくれよ。なんせ私の町の人を使うんだからな」
白蓮はグッっと親指を立て、笑顔で信長たちに顔を向けた。
「無論! 桃香、愛紗、さっそく手配するぞ!」
「まっかせーなさーい♪」
「はい、では早速行動に移りましょう」
そして、一週間の時がながれ・・・・・
「ふむ、思ったよりも集まったようだな」
そこには総勢六千人もの人数が集まっていた。
桃香の仁徳、愛紗、鈴々の武勇。そして信長自身には魔王というあだ名が白蓮の城下の民や兵、黄巾の間で流れていた。
信長自身が第六天魔王と称していることもあるだろうが、
信長の武、知略、統率力。信長たちは白蓮の要請での黄巾の討伐では全勝していた。敵がただの烏合の衆ということもあるが、そこには信長自身の采配のうまさもあるだろう。
白蓮の城下の者たちにとってはそれは大きな希望だった。付近の村や町は黄巾により滅ぼされたという噂は商人伝いに流れ入ってくる。しかし、そんな黄巾たちに全勝している者達がいる。そんな者たちがいまここにいるのだ。
それはヒーローとして城下の者たちに映るだろう。自分たちは彼らに守られている、魔王と称しているがそんなこと関係ない。自分たちの暮らしを賊共から守ってくれているのだ。
その評価は六千人もの兵を集めるには十分だった。魔王をただ見たいというだけの者もいるだろうが、彼らに付いていきたいというものの方が多いだろう。
「白蓮ちゃん、お別れだね」
「ああ。だがまたすぐに会えるさ。桃香。お前たちが活躍すればその活躍は私の耳にも届くんだ。それでお前たちの無事を確認するさ。だから精一杯人助けをするんだな」
「うん♪それが私のやりたいことだから♪」
桃香と白蓮は親友に別れの挨拶を告げた。
「愛紗、またいつか手合わせしたいものだな」
「ああ。お前との手合わせは非常にいい訓練になる」
こちらは愛紗、星。二人には何か通じているものがあるのだろう。
そして、またいつか会えると確信しているのだろう。
二人はお互いのこぶしを前に突き出し、合わせている。その様子を見た鈴々は
「ずるい!鈴々もなのだー!!」
「ああ。鈴々ともまた手合わせしたものだ」
星は笑顔でもう片方のこぶしを少し低めに突き出し、鈴々ともこぶしを合わせた。
そのやり取りが終わり、信長は星に近寄り話を切り出した。
「星、うぬは仕えるべき主を探しているといっておったな」
「ええ。そうですぞ」
「ならば、ワシら織田も候補に加えておくのだ。うぬの力、この信長は欲しておる」
「っはっはっは。伯珪殿の目の前で勧誘ですか?やはり貴方は面白いお方だ。ええ。是非参考になせてもらいますよ」
「うう~・・星、どうせお前もいつかここを出てくんだろ?」
白蓮はすごく情けない顔をして、泣きまねをしていた。
それを見て、ひとしきり笑いあい、そして、笑いがやむと空気が変わったようだ。
そして、愛紗が新しいスタートの言葉を言った
「では、ご主人様。さっそく出立しましょう!」
「私たちの第一歩だね~♪」
「これからどうなるのか楽しみなのだー!!」
「では、往くぞ皆の者!これより天下布武への道を共に歩もうぞ!!」
「おおおおおおおーーーーーーーー!!!!」
これより、この地に織田軍が誕生した・・・・・・