うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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魔王の策

「朱里と雛里はちっこいのだー!」

 

「む~っ鈴々ちゃんだってそんな変わらないじゃない」

 

「あわわ、私のほうがちょっとだけおおきい」

 

「まったくお前たちは何の話をしているのだ」

 

「愛紗は黙ってるのだー!!」

 

荒野は広く果てしないため、各方面に細策を放ちその報告をまっているため、ただ進軍するだけであったため一向は話しているうちに仲良くなったようだ。

 

信長だけはかたくなに遠くを見つめているが、桃香がしきりに話しかけているようだ

 

「ねえねえ、ご主人様。ご主人様って元の世界では何してたの?」

 

「ふむ・・とあるものを手に入れようとし、その道中失態をおかし、諦めざるをえなくなった」

 

「え~っ?どういうこと?」

 

桃香はよくわからないといった表情で首をかしげる

 

「ワシがうぬのような仁徳を持っておればそのような失態を犯すこともなかったかもしれんな。桃香」

 

「そんな仁徳なんて~//私はただみんなと楽しくすごしてるだけだよ~」

 

桃香は照れた表情で信長にはにかんだ。

しかし、信長は遠い過去を見るような表情で空を見上げた。いろいろな意味が篭っているのだろう。

 

仁徳・・・自分にはおそらくないだろう。

 

だから自分は裏切られ続ける生涯、そして、終幕だったのだろう・・と

そんなことを話していると・・・・

 

「報告します!!!ここより前方五里の所に黄巾党とおぼしき集団が陣を構えております!!その数一万!!」

 

その報告を受け、信長はすぐさま表情を変え、軍師を呼んだ。

 

「一万・・か。策を練る必要があるな。朱里、雛里!」

 

「は、はひ!!あうっ噛んじゃった」

 

「へい!!あわわ・・」

 

「うぬらの力ここで見せよ」

 

「大丈夫?朱里ちゃん、雛里ちゃん?」

 

桃香は心配そうな顔で二人の顔を見つめた。

しかし、それは杞憂なようだ。

 

二人ももう、切り替えたのだろう。二人は軍師の顔を桃香へと返した。

 

「はい、私たちはそのために今まで勉強をしていました。その勉強の成果をやっと披露することができるんですね」

 

「べんきょーって朱里と雛里は何を勉強していたのだ?」

 

鈴々が朱里と雛里へとそう質問をした。だが、その答えは想像を超えていた。

 

「えと、孫子、呉子、六韜、三略、司馬法・・それに九章算術、呂氏春秋、山海経・・あとはいくつかの経済書と民政書を勉強しました」

 

「うわー・・・・それ、全部勉強して覚えたの?」

 

桃香はポカーンっと口を開けている。愛紗も目を驚きで見開いていた。鈴々だけはその本がなんなのか分からないのだろう。特に変わっていなかった。

 

「はい」

 

「すごーい!!愛紗ちゃん愛紗ちゃん!!この子達ひょっとしたらすっごいかも!」

 

桃香が手をパチパチとたたいている。

 

「確かにすごいですね・・・それより、この見た目でその才を見抜いたご主人様の方がすごいと思うのですが」

 

「朱里、雛里。策を挙げよ」

 

「はい。伝令さんからの報告では敵はここより五里先に陣を構えているとのことですが、ここより五里先というのは兵法でいう衢地となっています」

 

「くちー?なんなのだそれ?」

 

「衢地とは、各方面に伸びた道が収束する場所のことをいうんです」

 

「ふむ・・・そのような要所に雑兵か。狙い目ぞ」

 

「ご主人様ぁ・・どういうこと?」

 

桃香がうるうる目で訳がわからないといった表情を信長へ向けた。

 

「えとですね・・敵は私たちより多くの兵を持つとはいえ、雑兵でしかありません。またその雑兵が守っている地は黄巾党全軍に影響を及ぼすであろう重要な地」

 

「そこを破れば、私たちの名は否応無く高まります。だからこそ、これは千載一遇の好機」

 

「それでそれで!!どうするの?」

 

「はい、第一に敵を陣地から引っ張り出すこと」

 

「その後野戦に持ち込むこと、ただし平地で対峙してはいけないこと」

 

「数で負けているなら数で負けない状況を作り出せばいいんです」

 

「ふむ・・されどここらは荒地ばかり、峡間なぞどこにあるのだ」

 

信長は朱里へと疑問をぶつけた。その答えを聞き、朱里は驚いた。

 

「はわわ!!本当に私たちの考えがお分かりになるんですね!」

 

「どういうこと~?」

 

桃香は相変わらず先ほどから首をかしげっぱなしである。鈴々はもはや話しを聞いていない。

 

「はい。数で負けているなら道が狭くなっているところで戦えばいいんです」

 

「そして、ここより二里ほど行った所に川が干上がってできた谷があります」

 

「真か?」

 

「はい」

 

「ええ?でもそんなところ地図に載ってないよ?」

 

桃香が地図を開き、地図をジーッっと見つめて探している。

その様子を見て、雛里が言葉を発した。

 

「その地図市販の物ですよね?」

 

「う、うん」

 

「なら、商人さんたちがよく使う道や山とかしか書いてないんです」

 

「もっと細かい正確な地図は漢王朝や官軍しか持っていません。戦略などを練る上で地形を把握するのはとても大切なことですから」

 

「うぬらは漢王朝や官軍しか持っておらぬような地図をどこで見たのだ?」

 

「はい、私たちは水鏡先生のツテで見ることができました。だからおおよその地理は把握しています」

 

「ふむ、ならば敵をうまく誘引すればよいのだな。幸いワシらは正規兵には見えぬ。黄巾の者共を釣るには絶好の餌よ。敵は必ずや釣れるだろう。

愛紗は前衛を頼む。うまく敵を釣るのだ。そして、鈴々、うぬには伏兵をやってもらう」

 

「伏兵?どこでやるのだ」

 

「朱里、雛里。谷があるということは、崖があるということだな」

 

「はい。落石・・ですか?」

 

朱里が信長の考えを読み、そう答えた。しかし、信長はさらにその上をいっていた

 

「ぬるいわ。ここらに森や木々が生い茂っているところはあるか?」

 

「はい、少し行ったところにあります」

 

「ならば木を伐採し、丸太を縄で縛るのだ。人が乗り越えられないほどにな。そして木材を集めよ!!大量にぞ!!」

 

「敵を閉じ込めてどうするのですか?あ!!それで、敵の退路を断ち、鈴々ちゃんに奇襲してもらうのですね。でも、落石じゃないとは?」

 

「どういうことー!!ご主人様と朱里ちゃんと雛里ちゃんだけで話さないでよー!」

 

桃香が手をバタバタと動かし、二人の顔を交互に見つめる。

 

「後で話す!!さあゆくぞ!!!」

 

そして・・・

 

「敵が開門してきました!!!」

 

「私は織田の堰月刀関雲長!!!賊共!!私が貴様らの前に現れた以上貴様らに明日はない!!」

 

「うおおおおあああああーーーー!!!!!!!!」

 

愛紗たち前衛の部隊と黄巾の兵がぶつかりあった。

 

「はあ!!やあ!!」

 

愛紗にはたくさんの黄巾兵が攻めてくる。やはり女ということがあって敵はなめているのだろうか?しかしその考えが自分の命を無駄に早く散らしていかせるのだった

 

「く、やはり雑兵といえど・・数の違いはきついか・・・」

 

「関羽様!!このままでは前衛がもちません!後退はまだですか!!」

 

関羽隊の者が焦ったような声でそう告げる

 

「後方で戦況を観察している後方の部隊を引き出さなくては・・・しかし・・・」

 

まだ敵は動きそうにない。だが、なんとしても敵を引きずり出さなくてはいけない。

まだ、ここで下がるわけにはいかないのだ。

だからここではまだ戦うしかない・・・ならば!!

 

「もう少しだけ耐えてくれ・・・・・ううおりゃあああああー!!!!」

 

愛紗が兵を鼓舞するために一人勇敢に突撃していく。

 

「星、お主もこのような気分だったのだな。やはり私とお前は似ている。このように一人で敵の大群の前に立ちはだかるというのは武者震いがするものだ。私の中の猛将の血が騒いでいる。

 

聞けい賊共!!この関羽!!貴様ら賊を許しはせぬ!!後方で震えておらずこの関羽の首を討ち取ってみせよ!!この臆病者どもが!!!でやあああああーー!!!!!!」

 

「おお・・関羽様・・すばらしい戦ぶりだ。まさに軍神・・・」

 

「俺たちも戦うぞ!!!関羽様ばかりに戦わせるな!!俺たちも続けーー!!!」

 

兵たちは愛紗の奮闘に鼓舞され士気を取り戻したようだ。

 

「皆、この関羽に続けーー!!!!」

 

「うおぉぁぁああああああーーー!!!!」

 

「うぉ!?なんだこいつら!?急に勢いが!?」

 

黄巾の兵たちは急に勢いづいた関羽隊に押され始めていた。

やはり、猛将の存在というものは軍に多大な影響を与えるのだろう。

 

 

「関羽様!!後方の陣が開きました!!」

 

ついに待っていた報告が兵よりもたらされた。

その報告を受け、愛紗はすぐに撤退の準備をする。

 

「よし!!ついに釣れたか!!皆よ引くぞ!!敵とつかず離れずの距離を保つのだ!雛里!!」

 

「はい!皆さん、後退します!!敵が諦めないように絶妙な距離を保ちます!!」

 

一方・・・・・

 

「華琳さま。西方に砂塵を確認しました。恐らく黄巾党とどこかの軍が戦っているのだと思われます」

 

猫耳少女がそう話す。相手は、クルクル頭の少女だ。二人の会話は続く。

 

「そう。この辺りの敵に目を付けたとなると、その部隊官軍では無さそうね」

 

「恐らくは。・・主戦場より離れた地であるのに、戦略上重要な拠点となりうるこの場所に目を付けるなど、愚昧な官軍に出来るはずがありません」

 

「諸侯の中にも、なかなか見所のある人物がいるということでしょうな」

 

「ふむ、一度顔を見てみたいわね」

 

「どうされますか?」

 

「とりあえず、この戦い傍観に徹するわ。どのような戦をするか見させてもらうわ」

 

 

「峡間が見えたぞ!!!ここを一気に抜ける!!後方の部隊は敵の追撃を受けるかもしれないがすぐにご主人様が助けてくれる!!今しばらく耐えよ!!」

 

「おおおーーーー!!!!」

 

愛紗たちは狭い峡間を抜ける。しかし狭いために部隊が一度に通り抜けれるわけではなく、どうしても細長い形になってしまうために後方はどうしても追いつかれてしまうのだ

 

「っく・・・もう少しだ・・もうすこしでここを抜ける全員全速前進!!峡間を抜ければ私たちの勝ちだ!!!」

 

そしてついに峡間を抜けたのだ

 

「よし!!!しばらく敵をそのまま引きずり出せ!!あとはご主人様がやってくれる!!」

 

敵も峡間を抜け、数百人が出てきたころ・・・・

 

どーーーーーーーーん!!!!!!!!!

 

「ぐわああああーー」

 

「ぎゃあーーー!!!」

 

「うわあ!!!なんだこりゃ・・・・丸太を縄で縛ったもの・・・」

 

突如として降ってきたもの・・それが谷間を抜けている黄巾兵の何人かを踏み潰した

 

どーーーーーーーん!!!!!!!

 

それが後方にも降ってきてそこでも黄巾兵を踏み潰し、その退路を断った

 

「くそ!!!閉じ込められたじゃねえか!!!!」

 

「やれい!!!!!」

 

信長が谷を見下ろすように立ち何かを落とすよう指示した。

 

「な、なんだこりゃ・・・・火、火だーーー!!!!!」

 

「ぐあああーー!!あっちーー!!」

 

突如として降ってくる松明、燃えた木材が彼らに降り注ぐ。信長は大量の木を伐採し、敵の退路を断ち彼らを火責めにしたのだ。

 

「クク・・火をつけよ・・油をそそげ・・・全てを断罪してやるのだ・・」

 

そして油を上から投下した

 

「ぐああああーー!!や、やめろおおおおあああああああああーー!!!」

 

「クク・・よく燃えておるわ。もっと木材を落とせ!・・・ここに地獄を作ろう・・ぞ」

 

「お、おい!!中のやつら大変な目にあってるぞ」

 

峡間にはいる手前で丸太を縄で縛ったバリケードが落ちてきたために谷間に入らなかった兵たちは自分たちがもう少しで火責めにされるところだったと安心したところ。

 

「にゃにゃにゃーー!!鈴々隊参上!!!この瞬間をまっていたのだーー!!」

 

「な、なにーー!!!」

 

「反転しろ!!!ご主人様の計が成った!!敵は分断されたぞ!!!固まっていたら厄介な奴らだが、分断された今はただの小勢!一気に叩く!!」

 

「く、くそがあああああああ!!!!!」

 

 

「クク・・よく燃えておる。乗り越えられぬぞ。丸太で作ったのはそれ自体も燃え、汝らが乗り越えられんようにするため・・ぞ」

 

閉じ込められた兵たちは必死で逃げようと、バリケードを乗り越えようとする。

だが、そのバリケードも燃えているのだ。

 

油があらかじめ染み込ませてあり、すでに業火を上げている。

 

「ぎゃあああああ!!!!」

 

「熱い・・・・がああああー!!!!」

 

「うう・・ひどい臭い・・・それに・・・・」

 

その光景はまさに地獄であった。人間が生きたまま焼かれているのだ。そしてその酷い臭気と熱気が崖の上にいる桃香たちに届いてくる

 

「このために木を切ったのですね。でも、確かにこれなら兵の被害を少なくし、且つ、敵の兵を一気に減らすことができますね」

 

朱里も崖から下の惨劇を眺めている。

 

「朱里。うぬらの当初の計はこの狭い峡間で戦い、兵力差を無効化するものであったろう?」

 

「はい」

 

「ワシの前では最善の策を述べよ。それが最善であれば実行する。ワシはいち早くこの乱世を終わらせ、天下を統一するのだ」

 

「天下を・・統一ですか」

 

「うむ。そのためにうぬらの真の知略が必要なのだ。無駄に格好をつけるな。すべては兵の命を救うためぞ。兵の命を格好や風評のために散らすな。皆が笑って暮らせる世の中に兵の命を無駄にする者は必要ないのだ!」

 

その言葉に桃香ははっとした。桃香は最初この策に反対した。あまりにもむごすぎる。生きたまま人間を焼くのだ。だから桃香は反対した。

 

だがしかし、この策の効果は実際どうだろう?

 

峡間で兵力差を無効化にして戦っていれば当然兵が直接戦う機会が多い。だがこの策では、実際に戦うのは愛紗たち先行の部隊、そして、分断された少数の部隊を愛紗たち先行の部隊と、伏兵となっていた鈴々も分断された少数の部隊と戦うだけなのだ。

あとは、火が敵兵と戦ってくれる。こちらの被害はなしで・・・・

 

兵の命を無駄にしない・・・私は、反対していたということはそれは戦死する兵を増やしてくれっていっていたのではないか?

 

そんな私が・・皆が笑って暮らせる世を作りたい?皆が笑顔・・?違う!!!兵にだって家族がいるんだ!!兵の命を無駄に散らせる者は笑って暮らせる世に必要ない・・か・・・私もまだまだだなあ・・・

 

「桃香、見よ。これが戦ぞ」

 

「うん。私はこれを見なくちゃいけない。これが戦うってことなんだね」

 

「うむ。人の死の元に平和は作られるのだ。そして、人は気づくのだ。争いが馬鹿げていることにな。今はこうして手を血で汚すしかないのだ。

 

汚れずに手に入るものなどない!!彼奴らの死が平和な世の礎になるのだ!!!」

 

「うん!私は見る!!決して目を離さないよ!!彼らの死が・・・皆が笑って暮らせる世の礎になるなら!!!」

 

「桃香様・・・」

 

信長、桃香、朱里はこの光景を目に焼き付けるようにしっかりと見つめるのだった

 

 

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