信長たちは袁術、呂布連合を撃破し、敵として戦っていた呂布、陳宮を無事説得し共に理想を共有し仲間となる事を快諾してくれた。
しかし、呂布、陳宮は信長よりも桃香を主君として見ている節がある。
信長としては、呂布は裏切りの将として有名であったことを知っており、信長自身もあまり近寄ろうとはしていないようだ。
信長としての考えは自分が呂布に主君と思われるよりは、桃香のその広い仁の心に任せておけばうまくいくのではないかと考えている。
自分では恐らく松永や光秀と同じような結果を起こしてしまうかもしれない。
第二の本能寺を起こしてしまっては元も子もない、この第二の生では死ぬわけにはいかない。
ならば、桃香に部下を任せようと考えていた。
袁術軍は織田に戦いを挑んでいる間に、孫策たち呉の面々が武装蜂起し、袁術の本城を攻め落としたらしい。
結果としては、袁術は信長たちの領土を奪おうと戦いを挑んできたが、皮肉にも逆に自分が奪われる結果となったようだ。
織田軍は全員が広間に集まり、これからのことについて話し込んでいる。
月、詠、恋、ねねは懐かしい顔を久しぶりに見た事で楽しそうにしている。だが・・
ここにまた新しい情報が忍びによりもたらされた・・・・・
「官渡にて、袁紹軍と曹操軍が戦いを開始しました!」
忍びによりもたらされたこの戦いの情報。
兵力では圧倒的に袁紹がおしており、曹操軍は最大限の構えで戦っているとのこと。
どうやら、曹操も手を抜いて勝てる相手ではないようだ。
(ふむ・・官渡の戦いが始まったか・・。結果としては兵糧を襲い、曹操の勝ちであったな・・。
歴史をなぞればこのまま曹操が平原一帯を治め大勢力となることを止められぬ・・
北郷も恐らく全てを知っていようぞ・・この先の曹操の行動を・・そして、その行き付く先を・・)
「ご主人様?どうされました?」
愛紗が先程からずっと考え事をしている信長に声を掛ける。
「・・・・・・」
信長は返事すら返さず、椅子に座り、肘置きに肘を乗せ、こめかみの辺りにこぶしをあてずっと目を瞑り考えている。
「ご主人さ・」
「やめておけ」
「星・・・」
星がさらに声を掛けようとする愛紗を止める。
「主はああしながらもずっと、考えておるのだよ。頭の中でこれから起こす行動の成否の結果をずっとめぐっておるのであろう。
きっと、今頃は一、二年後あたりまで考えておるのではないだろうか」
「確かにな。ここはそっとしておいたほうがいいかもしれないな」
愛紗と星はそう判断し、信長に一度目を向け、そしてまた皆の方に顔を向ける。
「朱里。私たちはこれからどうすべきなんだ?」
「そうですね・・恐らく、この官渡の決戦しだいではないかと・・」
「結果次第ということか?」
「あぅ・・袁紹さんが勝てば、次はそのまま曹操さんの本城まで攻め立てるかと。曹操さんを滅ぼすまで私たちに牙を向けないと思われます。
お二人には因縁があるようですから。袁紹さんはその後、西か南、つまり私たちどちらかに矛先を向けると思われます」
「そして、曹操さんが勝てば・・袁紹さんを滅ぼした後に、恐らく私たちかと・・」
「そうか・・。どちらにせよ、私たちも何か行動を起こさなければな・・」
「じゃあ、今は内政に従事して戦力を高めるべきかな?」
「そうですね・・それが無難かと・・」
桃香の提案に朱里、雛里、愛紗は賛成しようとしていた。
他の者たちも、恋、袁術連合軍と戦ったばかりということで、その考えに従おうと考えていたその時・・・
「官渡に往くぞ」
先程まで、ずっと黙っていた信長が突然口をひらいた
「官渡・・・ですか?」
「うむ。このままではワシらは曹操に飲まれるであろう」
「ご主人様は官渡での戦いは曹操さんが勝つと思われで?忍びによれば袁紹軍十万に対し、曹操軍は三万と圧倒的に兵力差があります」
朱里はこの戦い、信長は何故曹操が勝つと予想したのかと問いただした。
他の者たちもこの兵力差ではいかに曹操軍の将が優れていようとも、即決できるほど単純なものではないと信長にといた。
「ワシも北郷と同じよ。ただ知っているまで、曹操が勝つということをな。ワシは知っている知識は全て出す。
この戦の後の曹操の快進撃の事もな。
しからば曹操が肥大化する前に食らおうぞ。そうせねばワシらが彼奴らの肥やしになる。
曹操を止めるには今が好機。
曹操が官渡に主力を集結させている今こそ・・ぞ」
そして、信長が椅子から立ち上がり、部屋から出て行こうとする。
「出陣ぞ。この決戦、ワシらは第三勢力として加わろうぞ。黄巾の時に宣戦布告はすましておるわ」
そして、信長は部屋から出ていった。
信長が出て行った後、そこにいるものたちが話を再開する。
「そういえば、ご主人様は黄巾の時にしきりに曹操を挑発しておられたな」
「まさかこの結果を見越して?でも、いいのでしょうか?」
「あまりいい気はしないな。二人の戦いの邪魔をするわけであるからな」
やはり、みな少し、不満があるようだ。
だが、しかし桃香だけは信長を擁護する。
「でもでも!曹操さんが勝つってご主人様は言ってるんだよ?曹操さんが勝っちゃったら、平原を全て手に入れちゃうよ?
そうしたら、もう勝てないよ・・
大陸一の軍勢になっちゃうし・・私たちにもう勝ち目がなくなっちゃう。
死んじゃったら・・・それで終わりだよ・・」
「桃香様・・・」
桃香が伏目がちに思いを話す。その光景を全員が驚いた様子で見ていた。
「ふっ・・確かに桃香様のおっしゃる通りだ。勝てば官軍・・ですな」
「その通りですよ桃香様!!ご成長されましたね!」
「お姉ちゃんの口から戦うなんて聞けるなんて思ってなかったのだ!」
「確かにそうです!袁紹さんよりも曹操さんの方が明らかに優秀です。
ご主人様の仰るとおり、曹操さんが勝てば、明らかに次の目標は南下。私たち徐州です」
「あわわ・・この決断は、先を全て見据えた決断だと思います」
「うん。そうだね。やっぱりここは・・・官渡にいくしかないよね。
よーし皆!!出陣の準備しよう!」
「御意!」
信長たちは城門前に整列する。
「出陣準備整いました。いつでも出発できます」
「うむ。皆往くぞ。敵は官渡にありぞ!!!」
「おおー!!!!」
「糜竺!糜芳!うぬらに城は任せる」
「はい!ご主人様!どうかご武運を!」
そして、織田軍は官渡に向け。出陣した。
行軍は長いものであったが、ついに曹操軍の国境が見えてきた。
しかし、国境には警備兵は最低限しか配置されていないようである。
やはり、曹操は袁紹との決戦に全力を注いでいるようだ。
無理も無い。曹操といえども、敵は強大であるのだ。
いかに、無能な袁紹といえども、慢心は身を滅ぼす。
なにより袁紹とは犬猿の仲。負ければ生かしてもらえないであろう。むしろ曹操自身が生きる事を拒否するであろう。
絶対に負けられない一戦なのである。
「皆一斉に攻めたてい!!一人も生かすでないぞ!」
「おおおぉぉーー!!!」
「な、なんだぁ!?」
「あれは・・・織田!?織田が攻めてきたぞおー!!」
国境の兵たちは自分たちの兵数ではどうしようもないことを悟り、一目散に逃げていく。
戦う事を放棄し、一斉に逃げ出すが、降り注ぐ雨のような矢に何人も死んでいく。
何人かは矢に当たらず、逃げおおせたようであったが
「逃がさぬ」
「ひっ!?い、いつのまに・・」
すでに入り込んでいたのか、忍びの者たちが逃げる兵の眼前に出現する。
そうして、瞬く間に国境の警備兵は全員が命を落とした。
「このまま一気に攻める!時は無限にあらず。道中の城は無視して進めぃ!官渡の戦が終わる前にワシらは付かねばならぬ!」
そして、信長はさらに速度を上げて行軍する。
道中、城の付近を通るが、城内の兵は必要最低限しかいないのであろう。
城内の曹操軍の兵からの攻撃は微々たるものあった。
・
・
「くっ・・さすがに兵力差があるようね・・」
曹操軍は苦戦していた。
袁紹軍の攻撃はたいしたものではない。ただただ力の限り突撃してくるだけの美しさどころか野獣のような攻撃。
だが、兵力差は三倍以上。
数の暴力は恐ろしいものであるのだ。
「華琳様、ご無事ですか!」
「ええ。大丈夫よ春蘭。でも、麗羽の分際で伏兵とは少しは頭を使ったものね。褒めてあげなくちゃ」
「ふっ、恐らくたまたま兵がサボっていて、伏兵のような状態になっただけではないかと」
「あら?確かに秋蘭の言うとおりかもね。そのほうが麗羽らしいわ」
曹操、夏侯惇 、夏侯淵は袁紹軍の兵を次々と切り捨てていく。
だが、その額には汗がにじんでいる。
殺しても殺しても減らない袁紹軍。
今現在では大陸一の大勢力なのである。
兵の錬度は低いが、数だけは誰よりも優れている。
そこへ、荀彧が息を切らせながら走ってくる。
その顔は疲れからか、苦しそうな表情であるが、とても輝いていた
「華琳様!鳥巣の兵糧庫の襲撃成功した模様です!」
「来たわ・・ついにこの時が・・聞きなさい!」
曹操が自慢の武器、絶を掲げ力の限りの声で叫ぶ。
「兵糧は全て焼き払った。貴様たちに食べるものはもはや何もない!!
我が勇敢なる兵たちよ!袁紹に見せてやりなさい!!この曹孟徳と袁紹の器の違いを!力の違いを!!
貴方たちの武を持って知らしめてやりなさい!!」
「おおおおおおぉーーー!!!!!」
曹操の鼓舞により、曹操軍の士気は天をつかんがばかりに上がっていく。
そして、逆に袁紹軍の兵たちはその士気の高さと、兵糧が燃やされた事実に、飲み込まれるかのように、士気が低下していく。
この戦いの勝敗はまさに決定した事であろう。
だがその時・・・・
「報告します!!第三の勢力が現れました!!旗印は木瓜!織田です!」
「な、なんですって・・織田が!?」
「クク・・戦場に混沌を・・・・曹操よ、袁紹よ」
突如として官渡に織田軍が現れた事により、官渡に大混乱がおきる。
これから烏合の衆に成り下がった袁紹軍を攻め立てようとしていた曹操軍はおろか、袁紹軍も織田の登場はまさに晴天の霹靂であった。
「袁紹の軍は捨て置けい!!まずは曹操軍を駆逐せよ!彼奴らこそ、我等の最大の敵ぞ!
恋!うぬは旗印を隠すのだ!まだうぬの存在を知られるには早すぎる!
愛紗!鈴々!うぬらは曹操に当たれい!!敵は混乱しておる!朱里、うぬはその都度、最適の指示をだすのだ、判断はうぬに任せるぞ。
星!白蓮!!うぬらは袁紹軍が攻撃して来た際の迎撃に当たるのだ!!雛里、うぬも朱里同様指示を一任する!
ねね!うぬは戦場を広く把握せよ!戦況を見極めてこそ、戦に勝つ!!」
「御意!!」
織田軍の登場はまさに戦場に混沌をもたらせる結果となった。
敵の兵糧を落とした曹操軍の士気は最高潮であったが、新しい敵の登場により、士気は一気に低下したようだ。
織田軍の勢いは高く、袁紹軍にいなかった一騎当千の将が織田にはおり、その存在自体が曹操軍の士気を低下させた。
「きー!!なんですの私たちの美しき戦いに水を注すなんて!これだから下賎なやからは嫌いですわ!皆さん!織田なんて華麗に滅ぼしてしまいなさい!」
袁紹はもう自軍の士気が下がりきっている事に気づいていなかった。
兵糧庫を滅ぼされたどころか、織田にまで手を出した事で曹操、織田の二つの軍と戦う事になったのだ。
もはや、攻撃すればするだけ、兵が死んでいくのだ。
兵糧がなく、明日が見えない、兵たちの攻撃などまったく効かないのだ。
「なんてこった・・・官渡に織田軍が来るなんて・。こんな歴史知らないぞ・・
いや、そもそも織田信長が居る事自体がおかしいんだ」
一刀も混乱していた。
自分の知る歴史では、曹操軍はこの官渡で兵糧庫を襲撃し、その勢いに乗って袁紹を滅ぼすのだ。
だが、今の状況はどうだろう?
教科書に、そして、独学で知った知識にもまったく知らない新しい結果。
官渡の戦いでありえない、第三勢力の登場。
勢いに乗って、滅ぼすどころか、織田が攻めかかってきたことにより、更に危険な状況ではないだろうか?
このまま戦いを続ければ、兵を無駄に死なせるだけであろう。
「くっ・・春蘭!秋蘭!!ここは退くわよ!」
「ですが華琳様!」
「桂花!私の言う事が聞けないの!悔しいけど・・・ここは退くしかないわ・・やられたわね・・完全に漁夫の利をとられたわ」
「・・わかりました。全軍撤退よ!!」
撤退の合図に曹操軍は速やかに退いていく。
さすが曹操軍である。まったく無駄な行動無く、兵は退いていく。
曹操の采配は見事であった。引き際というものを完全にわきまえていた。
「ご主人様!曹操軍が撤退していきます!」
「うむ。愛紗、鈴々!そのまま曹操を追撃せよ!!この官渡より完全に追い払うのだ!朱里!ぎりぎりまで追撃させるのだ!深追いは決してするでないぞ」
「御意!」
愛紗、鈴々、朱里はそのまま曹操軍の追撃へと向かっていった。
信長はその光景をジッと見つめる。
「曹操よ・・この信長の首にたどり着いてみせよ・・」
「・・・信長。貴方の首、必ずやこの曹孟徳がもらいうけるわ。今回は譲ってあげましょう」
二人の会話は到底聞こえるはずがないものであったが、二人は会話していた。
覇王と魔王。二人に通じるものがあるのであろうか?
二人の因縁はさらに深まっていくのであった。