うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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袁家の三人を仲間に入れ、全員で今は官渡城に居を移している。

曹操を見張り、けん制するためにこの城が一番いいためである。

 

麗羽は一流の侍女となるために月、詠の指導を受けていた。

だが、やはり今まで人に茶などをいれさせていたためか、まったく仕事が出来ないのである。

掃除にいたっては手が汚れるのを嫌い、やろうとしないのだ。

 

「まったくあんた馬鹿じゃないの!」

 

「手が汚れてしまいますわ!こんな汚いものに触れてしまえば病におかされてしまいますわ!」

 

詠と麗羽の言い合いは続く。そんな光景を月は困った顔で見ている。

 

「え、詠ちゃ~ん、麗羽さ~ん・・。早くしないと他の部屋をお掃除する時間がなくなっちゃうよ」

 

そんなおりにこの部屋の主が帰ってきたようだ。

 

「あれ?月ちゃんに、詠ちゃんに、・・麗羽さん?どうしたの?」

 

そう。この部屋は桃香の部屋であった。

掃除をしたくないと言い張る麗羽であったが、桃香の部屋であればするだろうと月と詠は考えたのであった。

だがそれでも、駄目であった。麗羽は埃すら触る事ができないのだ。

 

「へぅ・・麗羽さんが、お掃除をしたことがなくて、それで全然してくれなくて」

 

「そうなんだ。ちょっと貸してみて」

 

そう言い、桃香が使われなくなった布で作られた雑巾を手に持ち、自ら机などを拭き始める。

 

「と、桃香さん!?」

 

「ごめんね、麗羽さん。私の机ちょっと散らかりすぎだよね。

今までお掃除したことがないなら、ちょっと抵抗あるよね」

 

「い、いえ!そ、それよりあなた自らがやることはないではありませんの!」

 

「ううん、違うよ。お掃除は気づいた人がやればいいんだよ。

そうすれば、あまり汚れないでしょ?そうしたらお掃除をしてくれる人だって仕事が少なくてすむでしょ?

だから、他にいっぱいいろんな事に手が回るでしょ?

はい、麗羽さん。次は貴方が拭いてみて、ここならあまり汚くないでしょ?」

 

桃香が自分が使った雑巾を麗羽に渡す。

そして麗羽は雑巾を見つめ、次にすでに綺麗になった机を拭き始める。

 

「どう?これならあまり抵抗ないでしょ?」

 

「そ、そうですわね」

 

その流れのまま袁紹は他の場所も拭き始める。

一度触ってしまえば、汚い雑巾でさえも抵抗がなくなったのか、次々と部屋を拭き始める。

その様子を眺めていた月はにっこりと笑い、詠はやれやれといった表情を見せ、二人も掃除を始め、桃香も一緒になって掃除を始めた。

 

「うん。綺麗になったありがとうね麗羽さん♪」

 

「い、いいえ。わたくしなんてまだまだですわ・・それにいらないお時間までとらせてしまって・・」

 

「ううん、気にしないよ。麗羽さんはお掃除をしたことがなかったんでしょ?

だったら、仕方ないよ。それに私が時間を割く事で麗羽さんがお掃除を出来るようになったんだし、いいことづくめだよ♪」

 

そういい、桃香が麗羽に向け、にっこりと微笑む。

 

「フフ。相変わらず素敵な笑顔ですわね。貴方の笑顔を見るとなんだか力が沸いてきますわ。

さあ、月さん!詠さん!次の仕事に行きますわよ!」

 

そう言い麗羽が掃除用の水が入った桶を持ち部屋から出て行った。

 

「まったくあいつってば、本当に現金な奴ね。あんな奴にボクは負けたのか・・」

 

「ま、まあまあ詠ちゃん」

 

落ち込む詠をなだめながら、一礼し月と詠も部屋から出て行ったようだ。

その二人を手を振りながら、桃香は見送る。

 

この光景を眺め怪しく光る目に気づかずに・・

 

 

場所は変わりここは訓練場。

猪々子と斗詩は愛紗に任せられている。

 

「でやああああーー!!!」

 

「おるぁあああーー!!!」

 

堰月刀と斬山刀が交差する。

お互いの武器が激しく火花を散らせる。

つばぜり合い。力比べの状態である。

 

「・・はっ!」

 

「なにっ!!??」

 

不意に愛紗が今までこめていた力を抜き、猪々子の左へと回り込む。

猪々子は急に愛紗が力を抜いたために、力の行き場を失い、前のめりに倒れそうになる。

 

「猪々子。ここまでだ」

 

愛紗が猪々子の首に堰月刀を突きつける

 

「ちっくしょ~・・またアタイの負けかよ・」

 

「文ちゃん。これで三連敗だね」

 

「猪々子。お前は力任せすぎるんだ。すぐにお前は挑発にのる悪い癖を直すんだな」

 

「だけどよ愛紗~・・力比べになったらさ、やっぱ自分の力を見せ付けたいじゃん?」

 

「それが駄目なんだ。まったく・・お前は鈴々か?気が合いそうだな」

 

愛紗がやれやれと首を振るが、逆に猪々子は嬉しそうに笑う。

 

「鈴々か~、あいつとは昨日一緒に食べたラーメンがうまかったな~。

あ、そういえば今日の昼も一緒に食う約束してたっけな」

 

「文ちゃん・・少しは反省しようよ~」

 

「はは、斗詩も苦労しているようだな」

 

「まあ・・麗羽様の方が酷いですし。

それに前は私一人で二人を相手していましたから、今はだいぶ楽ですけどね。

麗羽様は月ちゃんと詠ちゃんに任せてあるし」

 

「はは。どうりで最近詠の怒る声が響くと思ったらそういうことか」

 

「はい。みたいです」

 

二人は仲良く笑いあう。苦労人同士、気が合うのであろう。

そこに猪々子が何を笑っているのかと、二人に詰め寄る。

この三人は気が合うのか、最近はよく笑いあう光景が見られる。

 

斗詩は常識人でありまじめであるため、愛紗を怒らせることがまったくない数少ない人物である。

対して猪々子はまるで手のかかる妹がもう一人増えたみたいだ。

鈴々とも仲良くしてくれているために、愛紗からしてみれば世話になっているともいえる。

 

「なるほど・・袁家が亡び、織田陣営に・・・」

 

またここで怪しい目が光る・・・

 

彼女は先程からこの官渡城を調べている。

時には聞き耳をてて、時には天井裏に上り、穴を空け覗き見る。

 

(ここには・・いない)

 

先程から誰かを探しているようだ。

今は各武将たちの部屋の天井裏に潜んでいる。

 

(ええっと・・・いた!)

 

彼女の目に映るのは魔王 織田信長である。

 

(織田上総介信長・・・今、尤も勢いのある織田軍、総大将・・)

 

彼女は信長の行動を観察する。

今信長は部屋で書簡を読んでいるようだ。

そして、立ち上がり部屋からでていったようだ。

 

(戦術書・・さすがですね。持ち歩き、暇があれば見て勉強するわけですね)

 

信長は廊下を歩き、傍にいた侍女に紙切れを渡す。

 

(何を渡したんだろ?見えないや・・)

 

尚も信長は歩き続け、一つの部屋に入ったようだ。

その部屋は何もない空き部屋のようだ。

机はおろか、何もない。まさにただの部屋、空間。

 

(なんだろ・・こんな部屋で何を?)

 

「クク・・影よ。この信長に何を求めるものぞ」

 

(バレた!!??)

 

「無駄ぞ。すでにうぬは袋の鼠・・・やれい!!」

 

天井裏にいる彼女の周りには既に忍びが二十人はいるであろうか?

彼女を取り囲んでいるのだ。

 

(まずい・・囲まれている・・!?)

 

突如として、彼女の足元から槍が突かれる。

彼女は必死でそれを避ける。忍びに囲まれているためその範囲でしか避けれない。

どうやら、部屋に何も無いのはそこに箪笥や机など荷物があれば、自由に部屋を動き回り、槍で突けないためであろう。

 

(ここに誘導させられたわけですか・・!?)

 

彼女は尚も避け続けるが、回りを敵に囲まれているため、彼らを気にしながらの回避である。

うまく避け続けるが、その行動は長くは続かなかった。

突如として、床が抜ける

どうやら槍で床を突き、穴がたくさん空いた為に抜けたようだ。

いや、そうさせられたようであった。

 

部屋では信長が不適な笑みを浮かべ、彼女を見つめる。

 

「闇に生きる影よ。うぬはどこの者ぞ」

 

「・・・・」

 

信長は彼女の首に槍を付きつける。

だが彼女は何も答えない。

そうしている間に忍びが天井裏より下りてきて、彼女を縄で縛る。

 

「私は拷問されても何も答えませんよ。今すぐ殺したらどうですか?」

 

「殺すか否かはこの信長が決める。うぬに何を見出せるかはわからぬがな」

 

「どうして・・私に見られていることがわかったんですか?」

 

「日ノ本はここより優秀な忍びが数多い。もちろんうぬよりも優秀な者もおったわ。

そのような時代を生き抜くためには、ここ以上に気配に敏感に生きねばいかんのでな」

 

「そうですか・・ならば尚更覚悟がつきました。

私がまだ未熟であるゆえの結果。殺してください」

 

彼女は目を瞑り、上を向き殺せと口にする。

信長も彼女は何も口を割らないだろうと思い。槍を持つ手に力が入る。

だがそこで一人の忍びが口を挟む。

 

「殿。彼女は呉の者ではないでしょうか?」

 

「ほう。なにゆえそう思うか」

 

「私たち忍びたちの中では、呉の周泰と言う者の技術の高さは有名です。

私たちよりも隠密、偵察に優れていると聞きます。

実質私たちの警備を抜け、ここまでやってきました。

 

殿が侍女に私たちを集めるよう、伝えるまでは私たちは彼女の侵入に気づきませんでした。

面目しだいもありませぬ・・」

 

忍びが全員頭を下げる。

警備をしていながら、自分の主の元まで進入を許してしまったのだ。

 

「呉の者か・・おもしろい、周泰よ。目を開けよ」

 

そう言われ、周泰は目を開け信長を見る

 

「うぬの命。殺すわけにはいかなくなった。しばし、そこで待て」

 

そして、信長が侍女を呼び、紙と硯を用意させ何かを書き始める。

 

「この手紙を持ち、呉へと戻るが良い」

 

信長は周泰の縄を切り、今書いた手紙を周泰へと手渡す。

 

「この手紙を・・ですか?」

 

「うむ。うぬら呉にとっても大事なことぞ」

 

「・・・、わかりました。ではこれにて失礼します」

 

その選択肢しかないようだ。

 

周泰は再び天井裏へと入っていく。

その速さに忍びたちは驚きの声をあげる。

だが信長だけは驚きはしない。

信長はよく知る半蔵という伝説クラスの忍びを思い出す

 

 

「ただいま戻りました」

 

「明命!どうだった?」

 

「はい、織田はどうやら袁家を滅ぼした後、袁紹、文醜、顔良を引き入れたようです」

 

「なるほど、どんどんと将を吸収していってるのね」

 

ここは呉。周泰は言われたとおり呉へとすぐに戻ってきたのだ。

そして、信長に託された手紙を主である孫策へと渡す。

周瑜もその場にいたため二人で内容を確認している。

 

「同盟・・か」

 

「それも期限付き、半年か」

 

信長は呉へと同盟を持ちかけたのであった。

信長たちの領地と呉は比較的近く、いつ、何が原因で争いが起きてもおかしくないのだ。

 

「私たちにとってはまだ地盤を固めたいところね」

 

「ああ、独立したばかりだからな。それに今織田とは争えない」

 

「織田にとっても今は曹操とにらみ合っているものね。つまりどちらにとっても争えない状況というわけね」

 

「だが、期限は半年・・。つまり、半年すぎれば」

 

「あとは知らない・・」

 

孫策と周瑜がにやりと笑いあう。

おそらく、半年もあれば織田も呉も地盤を固め終え、争う準備は十分だということを意味するのであろう。

半年と一日が経てばすぐにでも出陣してもよいということである。

 

「さて、織田がこの半年でどれだけ成長するか見ものね」

 

「ああ。我らもな」

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