うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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殿軍

劉表軍に勝利し、勢いに乗る織田軍

 

「徹底的に殲滅せよ。織田に二度と逆わぬよう彼奴らの本能にまで恐怖を植えつけるのだ」

 

信長の指示により、敵を追撃し、殲滅せんと織田軍の士気はもはや天を突かんがばかりであった。

 

「ほ、報告します!!」

 

だがそこに伝令兵が息を切らしながら転がり込んでくる。

そして、息もたえたえに驚くべき報告を口にした。

 

「そ、曹操軍と戦っていた、劉備様による別働隊が・・は、敗走しました!!」

 

「なんと・・ぐっ・・やはり曹操は一筋縄ではいかぬか・・」

 

信長の頭のなかにあった負けるのではという想像が当たってしまった。

こちらは劉表軍五万という大軍であるため、戦力を減らすわけにいかなかった。

そのため、まだ誰にも知られていない呂布という最強の策を劉表に使うか、曹操に使うか信長は悩んでいたのだ。

 

その結果、信長はこちらの戦力を劉表より、一万も減らす代わりに恋をこちらにおいた。

その代わり、向こうには曹操軍より五千多い状態で戦いに挑ませたのだ。

 

だが、曹操は強かった。

五千という戦力差ではものともしなかったのだ。

 

では向こうに恋を送っていてはどうだったであろうか?

勝っていたかもしれない。

だがこちらはどうであろうか?

恋がいなくても勝てていたであろうか?

 

いや、そのようなこと考えるだけ無駄である。

大事なのは結果である。

どちらが勝っていたかなどどうでもよい。

 

今は劉表軍には勝てて、曹操軍に負けたという結果である。

 

今最善のすべきこと、それは・・・・

 

「退け!追撃はよい!官渡城へ急ぐのだ!!敗走し、生き残った者があの城へ逃げ帰るはずだ!

全軍撤退じゃ!!退け!退けー!!」

 

「くっ、これが曹操軍か・・。見事だ」

 

桃香たち織田軍は窮地にたたされていた。

数では勝っていた織田軍だが、戦略では負けてしまったのだ。

いくら、雛里が優秀とはいえ、向こうには3人の名軍師がいたのだ。

 

敵の連携は見事なものであった。

あの3人の軍師は離れていようと、仲間の頭のうちを読み、その場で打ち合わせでもしているかのように部隊を展開していくのだ。

 

そして、名だたる武将の数。

夏侯惇、夏侯淵、許緒、典韋、張遼、楽進、于禁、李典

よくここまで集めたものだ。

 

「桃香様!私たちの負けです!官渡城へお引きください!」

 

「そうだね・・悔しいけどここは逃げるしかないね・・」

 

「あわわ・・申し訳ありません・・」

 

雛里が今にも泣きそうな顔をしている。

しかし、泣けば更に兵たちに動揺を与えてしまうと、必死に帽子をめぶかにかぶり、顔を見られないようにしている。

そこへ桃香が優しく帽子の上から頭をなでる。

 

「ううん、雛里ちゃんが悪いわけじゃないよ。誰も悪くない。

悪いのは今の世の中だよ・・言葉も通じて、同じ大陸に住んでて、同じ人間同士で殺しあうこんな世の中。

そんな世の中を正す為に、私たちも武器を持って戦ってるなんておかしい話だけどね」

 

桃香は困惑した表情だが、元気付けようと笑顔を雛里に向ける。

 

殺し合いを無くすために、殺し合いで解決する。

武器を持ったまま、相手に握手を求める。

 

桃香は昔言っていた、理想ごとを完全に理解したようだ。

そして、今はその負の連鎖から抜け出せないことも理解していたのだ。

相手に話を聞いてもらうためには、勝って、そしてそれから相手と話あうと桃香は決めたのだ。

 

自分の理想ごとや思想を相手に無理やり押し付けると言われようが、自分の気持ちを理解してもらい、少しでも同じ気持ちになってもらえればと、少しでも争う気持ちを無くしてもらえればと考えたのだ。

 

「でもさ、愛紗。敵がそんな簡単に逃がしてくれないみたいだぜ」

 

「文ちゃんの言うとおり、敵の追撃が・・・」

 

「ならば・・私が殿を引き受けよう」

 

愛紗が一人、背を向け敵の方へと歩いていく。

 

「ま、待てよ!だったらアタイも!」

 

「駄目だ!誰が桃香様と雛里を守るんだ!

私はお前たちを信じている。

お前たちが桃香様を思う気持ちは私と同じ。

私を安心させてくれ・・そうすれば私はここで安心して敵の追撃を食い止めることができる」

 

愛紗はもう一度振り返り猪々子と斗詩を見つめながら優しい顔でそう話す。

最近は訓練をし、そして武器を交えこの二人ももう立派な織田軍の一員だと愛紗は実感したのだ。

だから、この二人に安心して桃香を任せる事ができると。

 

「さあ!もう行け!敵は優秀だ、そんな簡単に逃がしてはくれないぞ!」

 

愛紗が再び敵に向け走り出す。

その背中には迷いなどが一切感じられない。

美しく、女性らしい背中だがその背中はとても大きく感じられる。

 

「愛紗ー!ぜってー死ぬんじゃねーぞおおおーー!!!!」

 

「愛紗さーん!必ず、必ず戻ってきてくださいねーー!!!!」

 

二人はその背中に向け大声で叫ぶ。

二人にとっても愛紗はもう大事な親友となってしまったのだ。

 

「愛紗ちゃん・・・・」

 

「桃香様・・今は、愛紗さんに任せましょう。私たちはここで死ぬわけにはいけません」

 

愛紗を心配する表情で見つめる桃香。

だが今は雛里の言うとおり撤退するしかない。

桃園の誓いを胸に桃香はこの地を去る。

 

愛紗には千人の兵が託された。

その千人で曹操軍を迎え撃ち、桃香たちが逃げる時間を稼ぐのだ。

 

「くっ・・さすがに数が多いな。そして兵の錬度も高い・・これが曹操か」

 

愛紗は自分の持てる限りの力で敵を斬る。

堰月刀を止めている時間が無いほどに、常に振う。

自分が多く倒さねばいかない。兵は千人しかいないのだ。

 

「ここは一端退くぞ!退けー!!」

 

愛紗たちが撤退の動きを見せる。

だが敵も逃がしてはくれない。

愛紗たちを殲滅せんと敵は全速で追いかけてくる。

 

「今だ!やれーーー!!!!」

 

突如、池から鎧を纏わず、武器だけを持った兵が現れる。

 

「うぉ!なんだこいつら!池に潜んでいたのか!?」

 

愛紗は先に池に兵を潜ませ、そして期を見て奇襲させようと撤退したのだ。

 

「よし!よくやった!敵は混乱している、攻め立てよー!!」

 

そして、また攻撃が始まる。

だが、数が違いすぎる。少数での奇襲であるため、どうしても敵の持ち直しが早いのだ。

 

「くっ・・このままでは全滅してしまう。なんとかせねば・・」

 

愛紗は敵を斬りながら、考える。

兵たちの疲労もある・・なんとか一度休まねば、自分も死ぬわけにはいかない。

城に戻るまで、一睡もせずに戦い続けるのは不可能だ。

 

「そういえば林があったな・・・よし!皆、退くぞ!撤退だーー!!」

 

再び愛紗たちは撤退する。

だが、今度は敵も少し慎重気味に追撃を開始する。

愛紗たちは必死に走り、林へと入り身を隠す。

 

「皆よく聞け、ここでなんとしても敵と距離を引き離す。

いいか、一度しか言わん。しっかりと聞いてくれ」

 

「やつらはどこだ!探せー!!」

 

「隠れても無駄だぞ!!全員皆殺しだ!」

 

曹操軍の兵たちは林に入り、愛紗たちを探す。

愛紗たちは木の陰や草むらに身を隠している。

そして、そこで期を見ているのだ。

 

そして、両者の距離は少しずつ縮まっていく・・・・

 

「今だ!やれー!!!!」

 

「うおぉおおおおーー!!」

 

「な!?なんだー!!??」

 

「木、木が!?」

 

一斉に曹操軍へと倒れてくる木。

その数は二十はあるだろうか?一斉に同じ方向へと、同じタイミングで一斉に倒れてくるのだ。

 

愛紗たちは、身を隠し、そして木に切り込みを入れておき、接近してきたら一斉に倒したのだ。

曹操軍は一斉に倒れてくる木につぶされるものや、その光景に驚き完全に意識は木へと持ってかれている。

愛紗たちはその混乱している隙にその場から撤退していった。

 

うまく、曹操軍の追っ手から距離を離し、愛紗たちは休憩している。

だが、状況は最悪だ。

休まなければ、戦えない。だが休めばその分また追いつかれる。

そして、戦うたびに更に状況は悪化していく。

死者のほかに脱走兵もいる。

もう愛紗たち殿部隊は三百ほどしかいないのだ。

 

「お前たち、すまないな。こんな部隊に選ばれてしまって」

 

愛紗はその場にいる全員に聞こえるようにそう話す。

 

「いいえ、関羽将軍と共にこんな修羅場を戦えて光栄です。

一生の思い出になりますよ」

 

「俺も、帰ったらガキに話してやりますよ。

父ちゃんは関羽将軍と一緒にこんな戦いをしてきたんだぞって」

 

「俺もです。帰って彼女に話してやりますよ。

きっと、惚れ直してくれますよ」

 

兵たちの顔には酷い疲れの表情が見えるが皆笑ってそう話してくれる。

愛紗はその言葉に少し心が軽くなる。

こんな死地の部隊に選び、つき合わせてしまって責を感じていた。

 

「そうか・・皆共に生き残ろう。・・・・・・よし!皆見ておれ」

 

愛紗はなにやらごそごそやっていたが、突如硬貨を取り出す。

ただの硬貨ではないか?その様子に兵は首をかしげている。

 

「硬貨には当然表と裏がある。私は今から7回連続で表を出そう」

 

そんなことできるはずがないと兵たちは口々に言う。

だが、愛紗はできるという

 

「私たちはあの信長様の軍だぞ。

この地の者ではない、私はやはりあの方は天から来た、天の御遣いだと思う。

だから私たちには天の加護があるのだ、見ろ!」

 

愛紗は指で硬貨をはじき、手の甲で硬貨を受け止め、そしてもう片方の手で落ちないように抑える。

そして、ゆっくりとその手をどける

 

「見ろ!表だ。もう一度やろう、それ!」

 

愛紗はそれからも硬貨をはじく。

 

2回、3回・・そして・・・

 

「な、七回とも全て表・・・」

 

「どうだ!!私たちには天の加護があるのだ!

この修羅場、きっと乗り切れる!皆力をあわせ一緒に帰ろう!!」

 

「おおおおーー!!!!!」

 

愛紗の行動とその言葉に皆元気を出したようだ。

暗かった顔をしていた者も、この結果に元気を出したようだ。

 

「ふふ・・朱里から教わった人身掌握術・・。まさか使うときがこようとはな。

だが、そのおかげで皆士気を取り戻してくれたようだ。

人身掌握・・か、聞こえは悪いが、それも使い方しだいだな」

 

愛紗はその言葉を口にしながら硬貨を見る。

その硬貨は二枚重なった硬貨であった。

裏面と裏面を合わせ、表しかでない硬貨。

だが、たったこの二枚の硬貨で兵たちの士気は大いに上がったのだ。

 

 

「ぐふっ・・・」

 

「大丈夫か!」

 

「すみません・・俺はもう駄目みたいです・・どうか・・生きて・・ご武運・・を・・」

 

「くっ・・」

 

愛紗は顔を背ける。昨日話していた兵だ。

また一人減った・・

昨日、皆で話し合い、兵とも心の距離が縮まった分愛紗はつらかった。

 

「なんとしてもこの修羅場を切り抜ける!!皆、頑張ってくれー!!!うぉああああーー!!!!」

 

愛紗は悲しみを胸に敵へと斬りかかる。

愛紗は奮闘する。堰月刀を振えば敵は一度に3、4人は死ぬ。

だが、こちらは明らかに劣勢。

敵が3,4人死ねば、こちらも数の暴力で同じだけ死ぬ。

 

「く・・、なにかないか・・。あれは!?」

 

愛紗の目に映るのは峡間。

愛紗の脳裏にいつぞやの光景がよみがえる。

 

「おい、お主。脱走する振りをし、あの峡間に向け走るのだ。そして・・」

 

「わかりました!」

 

兵が数人の仲間を連れ、走っていく。

 

「た、助けてくれーー!!」

 

「もう付き合ってられるか!!」

 

その光景に敵はあざ笑うかのように攻め立ててくる。

だが、愛紗はそれでも戦う。

自分が奮闘し、時間を稼がねば。

 

「お前たち!最後の力を振り絞れ!私が付いている!

だから、今だけは耐えてくれ!決して諦めるな!」

 

「おおおーー!!絶対死なねえ!!絶対帰るんだ!!」

 

愛紗の言葉に兵たちは再び、力が入る。

 

「大丈夫だ。帰れる。きっと帰れる!!」

 

「私が付いている。大丈夫だ」

 

「辛くなれば、私を見ろ!私の折れぬ心や姿を見て再び自分に渇を入れよ」

 

愛紗はずっと言葉を兵たちに掛け続けた。

自分の言葉を聞いて、生きる希望が沸くのであればとずっと声を掛け続ける。

そして、時間は十分に稼ぎきった。

 

「よし!退けー!!退くんだー!!」

 

愛紗は再び撤退する。

峡間へ向けて必死に走る。

 

だが敵は逃がすまいと愛紗たちを再び追撃する。

愛紗たちは峡間を必死で走り抜ける。

そして、出口へと差し掛かったところで愛紗は叫ぶ

 

「やれ!やるんだーー!!!!」

 

「な、なに!?」

 

「い、岩が・・岩が降ってくるぞーー!!!」

 

愛紗の言葉で一斉に振ってくる岩。

愛紗の指示で、撤退した振りをした兵たちは、崖を上り、岩を集め、待機していたのだ。

 

「よし・・皆今のうちに逃げるぞ!!」

 

愛紗たちと、曹操軍の間には岩という壁が出来た。

岩をよけ、進むために時間がかかるだろう。

愛紗たちは今のうちに距離を離す。

 

愛紗たちは走り続け適当なところで休憩を取る。

だが、そこで愛紗は驚いた。

 

もう数は30にも満たなかったのだ。

昨日まではその十倍はいたであろう兵たち。

最初は千人もいたが、ここまで減ってしまった。

 

昨日話していた、父親と思われる兵も、彼女に自慢すると言っていた兵も皆死んでしまった。

愛紗の心が折れそうになる。

兵たちの心ももう絶望しかない。もう生き残れるとは思えないのだろう。

 

愛紗は兵たちの顔を見渡し、そして、決断した。

 

「・・・・・・。皆、聞いてくれ」

 

 

 

「殿部隊の追撃か~あんな、もう少ない部隊をなぶり殺しにするっちゅーのもいい気がせんなぁ」

 

張遼はその神速の名で先行して追撃部隊に選ばれた。

曹操がなおもつぶす事ができない、殿部隊に落石などでいらぬ損害をおったことでついに張遼を任命したのだ。

 

そしてついに追いついたのだ。

敵兵は残りわずかだと聞いていた。

そして、もう戦ってから、30分はたっただろうか?

だが、移動すらない。普通戦えば、こちらの兵力であれば圧倒し、どんどん前へと進むものである。

しかし先程からずっと移動がまったくないのだ。

それに、なにも報告すらない。

 

張遼は兵を呼び、状況を聞いた

 

「なんやずいぶん時間かかっとるやん。それに進まんし・・毒蛇でもでたんか?」

 

「い、いえ・・毒蛇というより・・鬼というか・・」

 

「鬼・・?」

 

張遼は不審に思い前方へと出る。

そして、そこで張遼は呆然とする。

 

「しょ・・正気かいな・・・・」

 

そこには鬼がいた

 

 

 

 

燃え盛る炎を背景に愛紗がたった一人で曹操軍と戦っているのだ。

その姿はまさに地獄から来た鬼のようだ。

 

「背水の陣ならぬ背火の陣ちゅーわけか・・・野を焼いてウチらの進軍を止めたんか・・」

 

愛紗は兵に野を焼かせ、そして逃がしたのだ。

これ以上仲間を死なせるわけにはいかないと、孤軍奮闘しているのだ。

 

「張遼か・・・私は今、炎よりも熱く燃えているぞ」

 

張遼に気づいた愛紗がゆっくりと歩みより、そして張遼に向け青龍堰月刀を構える。

 

「おもしろい・・その炎ウチの堰月刀で消したるわ・・」

 

張遼も飛龍堰月刀を構えるが汗が止まらない。

 

(ウチがびびっとるんか?震えがとまらへん・・)

 

「でやああああーー!!!!」

 

愛紗が張遼へと走り、その武器を上から下へとおもいきり振り下ろす

 

「そんなもん効くかあーー!!んなっ!!??」

 

張遼は武器を横にし、その攻撃を受け止めるが愛紗の一撃はなんとも重い攻撃であった。

 

(なんちゅー重さや・・まるで恋とやりあっとるみたいや・・)

 

愛紗はなおも攻撃を繰り出す。

堰月刀を右から左へ、そして上から下へ。

張遼に攻撃させまいと、まるで無茶苦茶に振う。

その攻撃はどれも単純なものであるが、張遼は防戦一方である。

 

それでも愛紗の攻撃は効果が大きかった。いかんせん攻撃が重いのだ。

張遼の手はもはや限界である。

 

(だ・・駄目や・・・なんちゅー攻撃・・無茶苦茶やけど・・。関羽・・その背中にどんだけ重いもんしょっとるんや・・)

 

張遼は武器を交え、愛紗の気持ちが伝わる。

絶対に退かんと。

 

張遼の額には汗がにじむ、そして、手は震えている。

対して、愛紗の顔はまるで何かを悟ったかのような顔だ。

この場は完全に愛紗のものとなっていた。

 

兵たちも愛紗の気に完全に飲まれている。

誰もが思っていた。

 

今の愛紗を止めることは誰もできないと・・・・

 

そして、張遼は一歩下がり武器を下ろす。

 

「ウチの負けや。今のアンタには勝てへん。

何人もの命を背負っとるんやしな、一体多数じゃ勝てんわ。

それに・・アンタは今死ぬべき人やないってお天道さんもいっとるみたいやで」

 

張遼が上を向き、手のひらを上に向ける。

愛紗もつられて上を見上げる。

 

「雨・・・か」

 

降り注ぐ雨が火を消していく。

まるで、愛紗の奮闘をたたえるかのように、火が消え帰り道を作っているかのようであった。

 

「くっ・・・・」

 

愛紗は力が抜けたのか、ひざをつく。

 

「ウチも義の将なんて、言われとるけど・・アンタほどじゃないわ。ほらっ、肩貸したる」

 

張遼は愛紗の元へ駆け寄り、愛紗に肩を貸し、愛紗を立たせる。

 

「誰か!馬を!」

 

そう言われ、兵は馬を持ってこちらへとやってくる

 

「ほら、仲間の下へ帰り」

 

「いいのか・・?」

 

愛紗はそう張遼へと告げるが、張遼はにっこりと微笑む。

 

「ウチは霞。真名は霞や。アンタの心意気に惚れたわ。

だから、アンタへの贈り物や。受け取ってな」

 

「・・そうか。さすが義の将だな。

私は愛紗。真名は愛紗だ」

 

二人は握手をかわす。

 

「愛紗。いつかアンタとゆっくり酒でも飲みたいわ」

 

「そうだな、そのために今は戦おう。いつか実現させるために。さらばだ!霞!」

 

愛紗は馬に跨り、この修羅場から姿を消した。

愛紗の長い殿は終わりを迎えたのだ。

一人の熱い将の思いによって

 

「さ~って・・なんて説明しよっか・・・」

「そうか・・愛紗は一人で戦っておるか・・」

 

「愛紗ちゃん・・」

 

官渡城では、愛紗によって逃がしてもらった兵たちが愛紗の状況を告げる。

愛紗の命令により、野に火をつけ、その向こうで愛紗は一人で曹操軍を食い止めていると。

 

この場には暗い雰囲気が漂う。

愛紗の生存は絶望的であると・・だが、そこに

 

「ほ、報告します!!関羽将軍が・・関羽将軍が官渡城へ向かっております!」

 

一人の兵が関羽を見つけ、報告に来たのだ

 

「なんと・・灯りを灯せ!!!もっと城に灯りを灯すのだ!!

地獄を潜り抜け、帰還する愛紗をこんな暗い城で出迎える気か!!」

 

信長の命令により、松明の量をさらに倍にする。

城は一気に明るさをますこととなった。

 

「あれは・・・」

 

愛紗は馬に跨り、官渡城へともうわずかなところまできていた。

だが、その城の前で不思議な光景を目の当たりにした。

 

「おかえりなさいませ関羽将軍!!!!」

 

「おまえら・・・」

 

兵が二列になり、松明を手に持っている。

愛紗はその間をゆっくりと闊歩する。

城まで続く、松明の赤いゆらゆらした灯り。

そして城はさらに明るく照らされている。

 

愛紗は光り輝く道を通り、さらに強い光へと向かう。

その輝きはまるで愛紗の生命力を現しているかのようだ。

 

「愛紗!!」

 

「ご主人様・・・ただいま戻りました!!」

 

愛紗は馬から下り、膝を突く。

 

「・・・大儀であった」

 

「はい・・」

 

「主。こういうときは・・いえ、お耳を拝借しますぞ」

 

城の制圧を終え、戻っていた星が信長の耳を拝借し、ごにゅごにょと耳打ちする

 

「愛紗・・大儀であった」

 

信長は愛紗を片手で抱き寄せ、抱き寄せた手で愛紗の後頭部のあたりから自分の胸へと抱き寄せる。

 

「大儀であった・・・大儀であった・・・」

 

「あ、ありがとう・・ございます・・」

 

愛紗は幸せそうな顔を浮かべ、目を閉じ、力尽きたのかゆっくりと眠りに入っていった。

 

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