うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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錦馬超

織田軍は陣地を敷きそこで軍議をしている最中だ。

 

「敵は5万の軍勢です。そのうち3万が騎馬隊、残り1万が歩兵、そして最後に弓隊となっています」

 

忍びの報告により、西涼軍の内訳が分かった。

だが、やはり予想していた通り騎馬隊中心の構成であり、明らかにその突破力を中心とした突撃主体であることが容易にわかる。

 

「ここまで騎馬に偏った軍も珍しいですね。

ご主人様、まともに正面からぶつかってはこちらが不利です。

 

奴らにたいしてこちらも5万。

弓隊が2万5千、歩兵が2万、騎馬はたった5千ですよ?

これでどう敵の騎馬隊と戦うつもりですか?」

 

「ふむ・・敵は騎馬に偏っているがこちらは弓隊に偏っておるな。

弓と騎馬・・突撃されればこちらが一気に総崩れですな。

槍をもった歩兵なら少しは抵抗できますが、敵は大陸一と噂の涼州の騎馬隊。

ぶつかればこちらが負けますな」

 

愛紗と星がこちらの軍の編成と敵の編成を見て各々の考えを述べる。

他の将たちも口々に「これでは駄目だ」と話している。

 

「クク・・先も言ったであろう。知略無き戦など、戦にあらず。

戦は兵でするのではない、頭でするものぞ」

 

信長は不適な笑みを浮かべ周りを見渡す。

その誰もが信長を見つめ、彼の言葉を待っている。

 

「それこそ・・身内の将ですら分からぬ策であれば敵も分からぬ。

「まさか」、「ありえぬ」この言葉を述べ、驚き、驚愕すればするほどその策は極上・・ぞ」

 

そして信長は今回の戦で使う策を皆に述べる。

その策に皆は驚く。

 

それこそ、「ありえない」や「無謀です!聞いたことがありません!」などと言う言葉が辺りを飛び交った。

それは正に信長が聞きたかった言葉であった。

 

「は、母上!何やってんだよ!」

 

「翠。大丈夫よ。私はこの戦いを見届けたいの」

 

馬超は驚いた。彼女の母、馬騰が病をおし、この戦場へとやってきたのだ。

そして、馬騰は兵が用意した椅子へと腰掛け、ゆっくりと口を開き、愛娘へと言葉をかける

 

「翠。私はね、貴女の戦をこの目で見てみたいの。

私ももう歳よ。だからね、貴女の戦をこの目でしっかりと見届け、貴女が次にこの西涼を収める人物に相応しいか見てみたいの。

 

貴女の采配、兵への指示の仕方、そして流れる戦況にあわせたしっかりとした状況判断。

今回の相手の織田は強敵よ。

そこらへんをうまくできなくちゃこの戦は負けるわ。

だから、私に見せて頂戴」

 

「任せてくれ!あたしだってもう立派な武将さ!

織田が強敵だろうが、あたしたち西涼の騎馬隊にかかればイチコロさ!」

 

「まったく貴女はほんと自信家ね。

どこからそんな自信が出てくるのかしら。蒲公英!」

 

「ん?」

 

馬騰は隅に控えていた、馬岱を手招きして呼びよせた

 

「翠のことしっかりと見てて頂戴ね」

 

「まっかせて!お姉様をしっかりと見張ってればいいんでしょ」

 

「な、なんだよ母上!あたしの事が信用できないってのか!」

 

「そうねぇ・・うん。できないわ」

 

「な、なんだってー!?」

 

馬超はショックのあまりその場に崩れ落ちる。

その様子を馬岱は口元に手をあてウシシと笑って見ている

 

「貴女は昔からその自信家で、まっすぐな所が駄目なのよ。

まあ、それがいい所でもあるんだけどね。

でも、戦ではそれは別。むしろ悪影響しか与えないわ」

 

「う~・・見てろよ母上!!あたしの戦見せてやるよ!!

西涼の騎馬隊の力、そしてあたしの采配!全部見てあたしへの考えを改めさせてやるよ!母上はそこで見ててくれ!

蒲公英!いくぞ!」

 

「あ、待ってよお姉様~!」

 

馬超は馬岱を連れ、その場を後にした。

その光景を黙って見ていた馬騰はその場で一つ大きなため息をつく

 

「ふぅ~・・・さて、どうなることやら。

天よ・・どうかあの子達無事に帰してください」

 

そして、戦いの火蓋は切って落とされた。

開戦が始まると同時に馬超たち西涼の部隊は大きな怒号にもにた叫びとともに騎馬隊ほぼ全軍による突撃を開始した。

 

「皆突撃だ!あたしに続けー!!!」

 

馬超はその騎馬隊の先頭を走る。

 

「ちょ、ちょっとお姉様!なにもこんな大軍で突撃しなくっても」

 

「いいか蒲公英。よく聞けよ。

騎馬はその突破力が武器なんだ。

 

敵もこんな大群で来るなんておもっちゃいないさ。

それに、分かっていてもこんな大軍を持ちこたえるなんてできないさ。

てきのど真ん中に穴を開けて敵軍を真っ二つにし、連携を立つ。

そして、敵本陣へまっすぐだ」

 

馬超はまっすぐな瞳で遥か彼方、織田の本陣があるであろう遠くを見つめながら馬に跨っている。

 

「でも、そんなうまくいくかなぁ?」

 

「ばーか、3万もの騎馬隊だぞ?その突撃を食らえば、うまくいかなくとも敵をかき乱すことができる。

そうしたらおたがいもうただの乱戦さ。

それに最初の初撃。その勢いを受けた敵はものすごい被害さ。

 

よーし皆!全速前進だ!さらに速度を上げろ!!

敵にあたしたちの突撃力を見せてやれ!!」

 

「おおおおおおおおおおーーー!!!!!!!」

 

3万もの声が辺りを響かせる。

まるで地震でも起きているのかと疑うほどである。

 

「敵の士気は高いな」

 

「にゃはは~ここまで響くのだぁ」

 

織田軍は守りの構えを見せていた。

馬網柵や敵の進入を防ぐ、高い柵。

そして、5メートルはあろうかという長槍隊による構えを見せている。

 

普通の軍ではこれが普通であろう。

しかし、織田は違った。

 

「しかし、弓隊が前線とはな・・主と朱里、雛里が揃えばまったくおもしろいですな」

 

そう、弓隊が一番前へと出ているのだ。

その数、こちらも全て。弓隊2万5千。

 

「敵の士気は大いに上がり、その勢いは正に天を突かんがばかり。

勢いはまし、速度も上がっており、まともに受ければその初撃はこちらに大きく食い込まれ、分断されてしまうかもしれません。

私たちはその勢いを利用します。

さて、私はそろそろ行きます。皆さんも防御の構えを崩さないでくださいね」

 

そういい残し、朱里は前へとゆっくり歩んでいった。

その背中は、小さいが、朱里を知っている者が見れば、まさに今は一番大きく見えた。

 

「あ!お姉様あれはなに!!」

 

「な、なんだありゃ?」

 

馬超たちは進軍を続けている最中、前方に不思議なものが見えた。

そのため、少し速度を落とす。

 

「干草が・・大量に積まれてるな・・なんなんだこりゃ?」

 

あたり一面にある大量の干草。

干草が大量に積まれたものが点々と、並べられている。

敵は何をたくらんでいるのか、まったく分からない。

 

「燃やす?いや・・意味が無いだろ。

こんな平地で焚き火でもする意味が無い」

 

「ならお姉様落とし穴じゃない?干草で穴を隠しているとか!」

 

「ああ!たぶんそうかもな!

みんな!この干草を避けて進め!気をつけろ!!」

 

馬超は全員に伝え、進軍を再び開始する。

そして、馬超たち西涼の騎馬隊は巧みな技術で華麗に干草を避けて進む。

その速度は多少全速よりも遅いが、普通の騎馬隊の全速に勝るとも劣らない速度であった。

 

「いまです」

 

朱里が合図を出す。

そのタイミングは、敵が干草地帯のちょうど中ごろにさしかかろうという時であった。

 

その合図に弓隊は一斉に火矢を放った。

 

「皆!気をつけろ!!火矢が飛んでくるぞ!」

 

馬超たちも一斉に身構える。

 

だがおかしいのだ。

どうもこれは兵を殺す矢ではない。

狙いは・・・・

 

「干草・・か?」

 

織田軍の火矢はそのどれもが干草を狙っていた。

多少は兵に辺り、落馬するものがいたが、やはりそのほとんどが干草を狙っているように見える。

実質、干草が勢いよく燃え上がっているのだ。

 

「なんか嫌な予感がするな・・・皆!ここを一気にぬけるぞ!」

 

馬超の合図で、騎馬隊は一斉に走り出し、速度を上げる。

 

「なんだ?何も起こらないじゃないか?本当にただの焚き火か?」

 

しかし、何も起こらないのだ。

そして、先頭を走る馬超が干草地帯を抜けようとした、その時

 

 

パーーーーーーーーーーン!!!!!

 

 

「な!?」

 

 

パーーン、パーーーーーーーン!!!

 

 

パーーーン

 

 

 

パーーーーーーーーーン

 

 

「う、うわゎ!!」

 

急に鳴り出す、大きな破裂音。

どうやら馬超の真横から聞こえたようだ。

 

「ほ、干草?いや、これは・・・竹か!竹が中に隠されているのか!」

 

パーーーーーーーン

 

「う、うわーー!!!」

 

 

パン、パーーーーーーーン

 

 

「お、落ち着け!落ち着け!!」

 

 

パーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

「ぐああーー!!」

 

尚も成り続ける破裂音。

あたり一斉に鳴り響く、竹の爆ぜる音。

 

竹は中が空洞になっており、中には空気に似たガスが入っているのだ。

竹は燃やせばそのガスが暖められ急激に膨らむのだ。

そして、膨らんだガスが耐え切れなくなり、壁を吹き飛び、一気に放出されて音が鳴るのだ。

 

この出来事に馬は驚き、一斉に暴れだす。

馬術にもそれぞれの差があり、暴れる馬を乗りこなせなかったものは転倒し落馬する。

 

「ぐああーー!!!」

 

「なにやってんだーー!!」

 

一人が転べば、後は玉突きに後続が次々と、落馬する。

その現象が各地で起きているようだ。

 

「くそっ、おい皆大丈夫か?」

 

馬超は一度進軍を停止し、後ろへと振り返る。

 

「お姉様、わたしは大丈夫だよ。でも後ろが・・」

 

後ろの光景は酷かった。

実際自分たちも危なかった。いきなりあのような大きな音が鳴れば、自分だって驚くし、馬だって驚く。

だが、そこはさすが馬超に馬岱。

 

暴れる馬を見事に乗りこなしたのだ。

彼女たちは先頭を走っていたため大丈夫だったが、もし自分たちの前に兵がいて、彼が転倒していたら、自分たちもその馬に足をとられ落馬していたであろう。

 

「い、いてぇぇ・・」

 

「こ、腰がぁあああああ」

 

「腕が・・折れました・・・」

 

勢いよく走っていたために、その落馬の衝撃は激しいものであった。

落馬したものは皆、大怪我を負ってその場を動けないようだ。だがそのとき・・・

 

「いまです」

 

小さな軍師が再び合図をする

 

「な、なんだ・・空が・・・・矢だ!!!みんな気をつけろ!!」

 

突如として、降ってくる空を覆いつくさんがばかりの大量の矢。

その数、2万5千もの弓兵による一斉射撃。

 

そして狙いなどない。そこに大きく寝そべっている兵たちにそれに抗う術などないのだ。

大怪我をおい、体を動かし、避ける動作すらまともにできないのだ。

 

「ぎゃあああーー!!!」

 

「ぐうぁあああああーー!」

 

「ぐふっ・・」

 

「くそっ・・これがねらい目だったのか・・

 

すまない!!!!前進するぞ!!!奴らに私たちの力を見せ付けてやるぞ!!」

 

矢の一斉射撃は一度で終わった。

あれだけ放たれれば一度で落馬したものはほぼ死んだであろう。

それに、大怪我を負い、もう戦闘に参加できないであろう為、放っておいてもよいのだ。

 

「くそ!くそ!!私のせいだ!!!」

 

「お姉様仕方ないよ。たんぽぽだって気づかなかったんだし・・」

 

「あたしは今はこの兵たちの命を任されているんだ!だから・・・・」

 

馬超が伏目がちに下に視線を移す。

 

(ん・・・・・?)

 

馬超はその鋭い勘で何か危機を感じ取ったようだ。

 

そして・・・

 

「ぐあああああーーーーー!!!!!」

 

「がああーーー!!!!」

 

またも起こる大転倒。

先程とは違い此度は完全なる全速前進。

 

その勢いは、乗っていた者が数メートルは飛ばされるほどであった。

 

「な、なんだああーー!!!!!」

 

「お、お姉様見て!!これ!!!!」

 

馬岱が地面を掘り、怪しい場所を見つけたようだ。

 

「これは・・・馬用の落とし穴か?」

 

深さは10センチほどの小さな落とし穴。

馬の蹄ほどのサイズであり、深さだけは10センチ。

完全に馬だけを狙っているようだ。

 

たった・・たった、これだけのこと。

深さ10センチほど穴を掘るだけでこれだけの惨状が起こるのだ。

 

馬超が後ろを振り返ると、先程にも似た光景、地獄。

今度は勢いが強く、騎手は勢い強く放り投げだされ即死しているものもいる。

 

馬はどれも、足が折れ苦しそうにしている。

もう、騎手も馬も使い物にならないだろう。

 

馬超、馬岱はその天才的な勘で綺麗に避けていたようだ。

 

「くそ・・・」

 

「いまです」

 

尚も起こる、この非常なる鉄槌

 

「また・・・矢か」

 

再び降り注ぐ空を覆いつくすほどの矢

 

「い、いやだ・・・」

 

「し、死にたくねぇよおお」

 

負傷し動けない者たちに降り注ぐ矢雨。

彼らはなすすべなくそれをその身に味わうしかなかったのだ。

 

「行くぞ・・・皆、落とし穴に気をつけるぞ。

ゆっくりと進軍だ」

 

馬超は悲しい表情を見せ、進軍を開始した。

 

「お姉様・・・・」

 

馬岱もその後ろを続く。

 

「くそ・・・・矢が・・・」

 

今度は先程とは違い、矢が降り注ぐ。

 

落とし穴を警戒して進軍するため、どうしても速度を出せないのだ。

地面を見つつ、盛り返した跡が無いかをしっかりと確認し、移動するのだ。

そのために、速度は遅く、格好の的となるのだ。

 

「ぐあああ!!」

 

「ぎゃあああーー!!」

 

何人も矢に当たり死んでいく。

かなり、兵数は減ってしまった。

 

長い長い矢雨の中の進軍。

そして、遂に見えた。

 

「皆!!見えたぞ!!敵軍だ!!」

 

馬超の顔に笑みが見える。

 

「おっるぁあああーー!!!突撃だーー!!!!

あたしたちの勢いを見せてやれーー!!!!」

 

馬超たちは騎馬全軍による全速の突撃を開始した

その光景を見た、織田の弓隊は後続の長槍隊と後退しているようだ。

 

「舐めんじゃねーー!!!どれだけその矢に苦しめられたか!!!

今吹っ飛ばしてやるぜーー!!!」

 

だがその時

 

「いまです」

 

 

「ぐああああああーー!!!!!」

 

「がああああああーー!!」

 

「なに!?」

 

後続の騎馬隊がまた

大転倒を起こしているのだ。

 

今度はなんだ・・・・?

 

あれだ。

 

馬超は見た。

馬の足元に張られている長い長い縄が

 

全長100メートルはあろうかという長い縄、ロープ。

砂の中に埋もれさせておき、騎馬の大軍が着たら両端で引っ張り合う。

まるで、綱引きのように。

 

騎馬の勢いは強く。両端それぞれ100人ほどで縄を引っ張り合い、その衝撃を受け止めたのであろう。

その効果は高かった。またも全速による速度であったため、酷い惨状だ。

 

「くそくそくそーーー!!!!なめんじゃねーー!!」

 

馬超は勢いにまかせ一人で突撃する。

 

「うっるああああーー!!!」

 

馬超は長槍隊を切り伏せ、一人陣を駆け抜ける。

 

「ばかめ、進入を防ぐ柵があるんだよ」

 

「あたしを・・西涼の錦馬超をなめんなーー!!!!」

 

馬超と馬はまさに人馬一体。

 

「な、なんだとぉおおーー!!」

 

高い高い、馬の侵入を防ぐ柵を飛び越えたのだ。

 

「敵、馬超が柵を飛び越えました!!!

お気をつけください!!!」

 

「お、お姉様・・・・こんな状態でどうしろっていうのーー!!」

 

馬岱の後ろには先程の光景。

だが、まだ無事なものもいる。

 

「よーし!!無事な者たちであとは攻撃するよ!

まずは長槍隊を!!」

 

馬岱の背後に騎馬隊が整列する。

そして、長槍隊へと攻撃を開始した。

 

だが、

 

「な、なに?」

 

馬岱の首に何かがかかる。

馬岱は急ぎそのものを斬った。

 

「え?縄??」

 

だが、馬岱の横の兵士は縄を切るのが遅れたのか、敵兵の中に引っ張られていく。

 

「え?え?えーーーー!?」

 

織田軍から飛び交う投げ縄。

縄の端が、人の首が入るように丸く括られているのだ。

 

何百と飛び交う投げ縄。

 

「ぐあっ」

 

「ぐぇっ!」

 

首に縄がかかり、そのまま引っ張られ、敵陣へと引きずり込まれていく。

 

長鎗隊の長い槍の矛先が向けられているために下手な行動はできない。

だが、動かなければ投げ縄の餌食になる。

 

もはや、騎馬隊に勢いは無かった。

予定では、勢いにのり、全速の速度で敵陣に突撃し、勢いに任せた攻撃をする予定であった。

だが、今はその騎馬の勢いである足が止まっている。

 

助走をつければ、また速度が上がり、そのスピードを生かした攻撃ができるが・・・

 

背中を見せれば・・・

 

「くっ・・・・あ!?しまった!!!ぐぅう・・・」

 

馬岱の首に投げ縄がかかる。

思案にふけってしまった隙をつかれてしまったようだ。

 

「は、離せーー!!」

 

無残、馬岱は一人で敵陣へと引きずりこまれてしまった。

 

一方馬超は一人果敢にも戦いを続けている。

その進行方向はただひたすら奥。

本陣はたいていは奥だからだ。

 

「おっるああああーーーー!!!!」

 

馬超は強かった。

一人でも十分に戦えていた。

 

そして・・・・

 

「見えた!!!!あれか!!!」

 

馬超は本陣らしきものを発見した。

 

「あたしは錦馬超!!織田信長!!!覚悟しろ!!!」

 

馬超は騎馬に跨ったまま、本陣へと入る。

 

だが・・

 

「誰もいない・・・・」

 

そう、誰もいないのだ。

 

「そ、そんな・・・・じゃあ。どこなんだよ・・・

そして、お前たちは何を守っていたんだ」

 

「何も守ってないのだー」

 

「誰だ?」

 

「鈴々は張飛なのだー!」

 

鈴々が蛇矛を構えゆっくりと歩いてくる。

 

「何も守っていない?じゃあ空の本陣を?守るべき総大将がいないのにここを守っていたのか?」

 

「そうなのだー!鈴々も最初誰もいない本陣を守るなんて馬鹿らしいって思ったけど・・・

しっかり馬超も騙されてここを狙って攻撃してきたのだー!」

 

「そ、そうか・・・あたしは・・確かに騙された。じゃあ信長は?いまどこなんだ!!」

 

「お兄ちゃんは今ごろお前たちの本陣なのだ!!」

 

「なに!?」

 

「クク・・」

 

信長は馬に跨り、崖から西涼軍の本陣を見下ろす。

信長の背後には5000の騎馬隊。

皆、鐙を装備している。

 

「と、殿・・・本当にこの崖を下りるので?」

 

「無論」

 

「む、無茶ですよ!こんな崖下りられるはずがありません!!」

 

「できる!!」

 

「し、しかし・・・」

 

「鹿も四足、馬も四足・・・ぞ。皆ワシに続けい!!ワシの背中、そして勇士を見よ!!

怯え、怯んだ者は死ぬぞ!!」

 

そういい残し信長は断崖といってもいいほどの崖を馬で下り下りる。

 

「おお!!殿が馬で崖を・・・」

 

「わ、ワシらも行かぬわけにはいかぬ!!ええーーい!!覚悟を決めて下りるぞ!!」

 

「おおーー!!!!!」

 

信長の後続である騎馬隊も信長に続き崖を下り下りる。

 

「な、なんだと!!!貴様らどこからきおった!?」

 

「クク・・ワシが来た方向を見れば分かろうぞ・・・」

 

「ま、まさかあの崖を・・・」

 

「うぬに用などない。無価値!」

 

信長はその兵を切り捨て、騎馬隊全員で西涼軍の本陣へと突撃した。

敵は大混乱であった。

 

まさか来るはずの無い場所からの、そして五千もの騎馬隊。

馬に乗って崖を下りるなんて自分たちでも出来ない芸当を織田がやってのけたのだ。

 

そして、二人は出会った。

 

「うぬが馬騰か」

 

「ええ」

 

「しからば、この後のことは分かろう・・ぞ」

 

「はい」

 

そして馬騰は信長に背中を向ける。

それは早く切り捨てろと言っているようだ。

だが、信長は切らなかった。

その代わりに喋り始めたのだ

 

「うぬは・・天下を見たいか?」

 

「・・え?」

 

馬騰は後ろを向いたまま信長の問いを聞く

 

「うぬも当主であろう。しからば夢見たはずぞ。自らの手によるこの大陸の安寧。統治。

ワシは今、夢見ておる。そして、夢は一度手放せば決して二度と手に入らぬもの。

 

故にワシは全力で力を欲しておる。

馬騰。ワシに力を貸すのだ。うぬはその命、先程手放したであろう。

しからばその命、どう扱おうがワシの勝手ではあるまいか?」

 

「・・・フフッ。そうですね。

確かに私は先程生を諦め、切られることを望みました。

でも、私は今生きている。

じゃあ、私の命は今どこにあるんでしょうね?」

 

「クク・・我が手中にあるわ」

 

「そうですか。でしたら私は貴方に従うしかないようですわね」

 

馬騰がウフフと優しい笑みを浮かべる。

信長も釣られ戦いに勝利し、そして馬騰を味方に引き入れたことで信長の口角も大きく上がった。

 




鹿も四足、馬も四足

義経の一の谷での戦いでの名言ですね。
崖から馬に二頭落とし、
「見よ、一頭は立ち、一頭は動かず。鹿も四足、馬も四足、各々方それぞれ手綱を引き締め、捌き給え」

と、義経自ら突撃したって話です。
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