うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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馬一族

織田軍は見事敵本陣を陥落させた。

崖に囲まれた本陣では前からしか警備を強化しておらず、後ろの、崖への注意をまったくはらっていなかったのだ。

その穴を付いた騎馬隊による奇襲によって陥落したのだ。

 

その報告を受けた、西涼の部隊は驚愕した。

 

誰もが不可能だと思う崖からの、そして馬で駆け下りるという神業。

誰も頭の中でそのような方法思いつかないであろう、ましてや実行しようとしても、土壇場で臆してしまうだろう。

こんなことできるはずがない、自殺行為だ。

そして、自分の部下までをも道連れにし、殺してしまうという、心の抑止力までもかかってしまう。

 

それをこの男はできると確信し、実行し、そしてやってのけたのだ。

 

馬騰は思った。

 

(今の世はこの魏、呉、蜀の三国が天下へ手を伸ばしているわね。

そして、もっとも手を伸ばしているのがこの男。織田信長・・・・彼の魏。

 

彼の大胆でありながらも、確実に功を残した戦。

私は負けたけども、逆にそれ以上大きなものとの繋がりができたのかもしれないわね)

 

「ご主人様。此度の戦も勝利しましたね。

最初は無謀だと思っていましたが、心のどこかでご主人様なら可能なのではと思っておりました。

お見事な奇襲。私は感服いたしました」

 

「うむ」

 

愛紗が尊敬の眼差しで信長を見つめている。

この二人のやり取りを馬騰は口元に指を当てながら見つめる

 

(あら?この娘の眼・・・・これは尊敬する者を見る眼とは別の感情が入っているわね)

 

馬騰は口元にニヤリと笑みを浮かべ二人のやり取りを見つめる。

そして別の人物がこの部屋へとやってきた

 

「ご主人様ただいま戻りました」

 

朱里が信長の元へ馬岱を引きつれ戻ってきたのだ。

 

「ふむ・・その者が・・・馬岱か」

 

「う、うん」

 

馬岱はビクッと緊張ぎみに反応する。

その反応を見た信長はククッと笑いながら感想を述べる

 

「クク・・鈴々ともそう歳は変わらぬか。やはりこの世はワシの世界とは違うな。

まだ、遊び足りぬような年頃の娘が豪傑・・か。

 

おもしろい。馬岱よ。朱里から話は聞いた。

うぬもこの信長の天下布武のため、力を貸せい」

 

「わ、わかった。ご主人様!

それからわたしは蒲公英!真名は蒲公英だからそうよんでね」

 

馬岱は信長の圧力、魔王としての貫禄に若干緊張しているようだ。

彼女らしさの天真爛漫さがでないようだ。

 

そして、その時・・・

 

「お、おにいちゃ~~~~ん!!!!!!」

 

鈴々が慌てて信長の元へと走ってやってきた。

なにやら背中に誰かをおぶっているようだ。

生憎、身長が足りず、おぶられている方は足を引きずられている。

 

「す、翠が!!ばちょーが倒れちゃったのだ!!!!」

 

「お、お姉様!!!」

 

「翠!!大丈夫!?」

 

その知らせと、馬超の顔を確認した蒲公英と馬騰は慌てて馬超の元へと駆け寄った。

 

「お、お姉様は大丈夫なの・?」

 

「翠は大丈夫なのかー!?」

 

蒲公英と鈴々は二人顔を並べて馬騰の下へ詰め寄る。

 

「ふう・・大丈夫よ。ちゃんと呼吸をしているわ。

ただ気を失っただけみたいね」

 

「翠は本陣陥落の知らせと、馬岱っていうのが降伏して鈴々たちの仲間になるって聞いたら倒れちゃったのだ」

 

「そっか・・・」

 

「翠には今回の戦でいろいろ背負わせすぎたのかもしれないわね。

私が見ている事、仲間を大勢死なせた事、そして私の安否と蒲公英の降伏・・・

疲れがどっとでちゃったのよ・・

 

でも、私は嬉しいわ。

翠に貴女のような心配してくれる友達が出来た見たいね」

 

馬騰は馬超から鈴々へ、その優しい笑みを・・安堵の笑み、そして優しい笑みを移す。

 

「にゃにゃ!?」

 

「もう真名も預けあっているみたいね。

翠に変わって私からお礼をいわせてもらうわ。

ありがとう。このまま地面に倒れたままだと体をきっと壊していたわ」

 

「にゃはは~翠とは槍を交えた仲なのだ!」

 

「え?なになに?わたしにも聞かせて!」

 

鈴々は馬騰と蒲公英に翠との事をありのまま話した。

馬騰は鈴々が幼いながらも馬超と互角の戦いを繰り広げたことに驚き。

蒲公英は自分と背丈すら全然変わらないのに、その武の違いに驚き落胆した。

 

そして、そんな折、当の本人である馬超が目を覚ました。

 

「ん・・あれ・・・・あたし・・・」

 

馬超が起き上がりざまに辺りを見渡し状況の確認をする。

先程まで戦っていた鈴々、蒲公英、母上、そして知らない者たちが周りにいる。

そして、視界の180度を越え、体を反転させようとした時、

 

「馬孟起よ。眼を覚ましたか」

 

馬超はその低く、威厳のある声を耳にし、体を後ろに向ける。

そこには若いながらも王としての貫禄に溢れ、こちらを鋭い目つきで見つめる男がいた。

その男からは、あの蜀の曹操のような、絶対的覇王のオーラを感じる。

 

「ああ。あたしが馬孟起。西涼の錦馬超さ」

 

馬超はこの男に睨まれ、自分との格の差、器、人間性、全てを自分と比べても勝てるはずが無い、劣等感が体をめぐる。

ただ言葉を交えただだけでわかるのだ。

この男はこの荒れ狂う天下に抗うことができる唯一の人間だと。

 

「ふむ。ワシは織田上総介信長。うぬと戦い勝利したもの。

そして、この魏を統べる当主であり君主ぞ」

 

「へぇ、あんたが魏の魔王か」

 

「いかにも。して馬超。うぬはワシらとの戦いに敗れた」

 

「ああ。そうだな。そして母上はあんたに殺されず、何故か縄にも縛られていない。

蒲公英。馬岱に至ってはあんたらに寝返ったみたいだな」

 

馬超は気丈に振る舞い、そう答える

 

「さあ。斬れ。あたしは最後にいい戦いができた。

いい友もできた。この世に未練なんてないさ。

武人らしく、カッコいい最後だと思う。

 

さあ、斬れ」

 

馬超はその綺麗な瞳を閉じる。

背筋もピンと張り、その佇まいはまさに武人。英雄。

死を覚悟し、そしてこの世に一切の悔いや未練の無いものはこれほどまでに美しいのかと皆がその姿に見惚れる。

 

辺りは誰も言葉を発しない。発せない。

シンと静まり返る室内、緊張の空気だけが辺りを支配している。

 

そして、一つの言葉発せられた。

 

「斬らぬ」

 

「え?」

 

馬超は耳を疑った。

 

「斬らぬ」

 

馬超は両目を開いた。

 

「ワシはうぬを望む。それだけだ」

 

「あ、あたしを?」

 

「うぬの実力は欲するに値する。

ゆえにワシは最初からうぬを殺すつもりなどない。

 

西涼の地などいらぬ、ワシはうぬの武、そして心が欲しい。

この信長に仕えるという、部下としての心がな」

 

信長がたんたんと話す。

 

「じゃ、じゃあなんで攻めてきたんだ?」

 

西涼の地がいらない?じゃあなぜ攻めてきたんだ?

同盟を組み、そしてあたしに協力を要請すればいいんじゃないのか?

 

「一つにならねば決して平和など訪れぬ。

 

ワシのいた日ノ本という国。

かように小さき島国でさえ、群雄が割拠し争いが耐えぬ。

同盟なぞ、無価値に等しきもの。

裏切りが絶えぬ、騙し、騙され散る大名の多きこと。

 

しからば一つにまとめねば決して相容れぬ。

思想、文化の違いという下らぬ理由で戦は起こるのだ。

 

だからワシは攻めた。そして勝った。

西涼を武により、手に入れたのだ。

これにより、ワシはこの大陸の北側をほぼ手中に収めたのだ。

魏という一つの国にな」

 

「そうか・・そしてあたしは負けた。

捕虜だから、仲間になれってことだな」

 

「うむ。だがしかしうぬはそう簡単に首は振らぬともわかっていた」

 

「え?」

 

馬超はうつむいていた顔を上げ、信長を見る。

 

「うぬを手に入れるためにワシはあえて騎馬で勝利を得たかったのだ。

うぬら西涼の騎馬隊に騎馬をつかった戦での勝利をな。

 

うぬらでも真似できぬ芸当をし、そしてうぬに自ら仲間になりたいと思わせるためにな。

クク・・おかげで崖から落ち死んだ者も数百おったわ」

 

信長はククっと笑い、馬超を見る

 

「はは・・そうか。やっぱり全員があんなことできるわけじゃないんだな。

びっくりしたよ。そこまで差をつけられてたらあたしたちの面目丸つぶれだもんな」

 

馬超もフフっと口元に笑みを浮かべ、ピンと張り詰めていた空気が少し緩んだようだ

 

「見事だった・・あたしたち西涼の完璧な負けだ。

 

騎馬隊をあんなにも手玉に取って・・そして大将が自らあんな危険なことをするんだもんな・・

自分だってその崖から落ちた一人になったかもしれないのに」

 

「翠。信長様は貴女を手に入れるために自らあの策を提案したそうよ」

 

「母上・・」

 

「お姉様。良い友達ができたっていうんだからさ、死ぬのもったいないんじゃない?」

 

「蒲公英・・」

 

馬超は自分の親しき者たちに言われ考える。

そして、その視線を一人の少女に向けた

 

「翠・・・」

 

「鈴々・・」

 

自分と互角の勝負を繰り広げた一人の小さな少女。

彼女の眼が潤んでいる。

 

「り、鈴々は翠ともっともーーーっと一緒に遊びたいのだ!!!!」

 

鈴々があたりに響く大きな声を張り上げる。

 

「り、鈴々・・」

 

その言葉は部屋だけでなく、彼女の心に響く。

その単純な言葉が心に何度も木霊する。

 

「馬超よ」

 

そして前から聞こえる男の声。

 

「ワシの配下となれ。そして・・・・生きよ」

 

 

「はい・・生きます」

 

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