少し短いです。
ゲームでいう拠点のようなものも書いてみてとの要望がちょっとあったりしまして。
しかし、やはり私はこういった日常は苦手です。
翌日、大広間にて今後の話し合いが行われていた。
魏延は桃香にのみ、焔耶という真名を教えていた。
彼女の待遇は捕虜扱いなのだ。
しかし、牢に入れたりはせず彼女に部屋を与えそこに軟禁しているといった形が正しいであろう。
そして呉の面々である孫策、孫権、周瑜、黄蓋、甘寧、周泰。
彼女たちもまた同じだ。
しかし、孫策は違う。
「ねえ信長」
彼女は黙って軟禁されているような人物ではなかった。
部屋を飛び出し自由にこの城内を歩き回っているのだ。
そして、驚くべき事は彼女、孫策は信長に真名を預けたのだ。
彼女は赤壁での戦いで自分たちを手玉にとり、自分をここまで追いやった信長を認めたのだ。
彼は王の器があり、真名を預けてもよい相手だと。
そして孫権。彼女もやはり雪蓮と姉妹であったようだ。
「桃香。ここのご飯はおいしいわね」
自分やその部下。
そして自分さえも諦めかけていた周瑜を敵である彼女が自ら体を張り命を救ってくれたのだ。
その優しい心。
この乱世で変わらない奇麗事を貫き通す清純さ。
その全てはもはやすばらしいといえるほどであった。
故に彼女は真名を教えた。
そうなると・・
「桃香殿」
思春や(甘寧)
「あ、桃香殿」
明命(周泰)
「桃香。ここの書物はいいものが揃っているな」
冥琳(周瑜)も同じ。
全員が桃香に命を救われた者たちなのだ。
だが、雪蓮は彼女に真名を教えていない。
そして逆に蓮華たちは信長に真名を教えていない。
それぞれ、認めた相手が違うのだ。
雪蓮からすれば桃香はただの理想家、そしてこの織田軍に相応しくない奇麗事をいう女であるのだ。
蓮華からすれば信長は非常な男、冷徹、そして桃香の主に相応しくない魔王であるのだ。
そしてもう一人。
「蒲公英ー!」
「相変わらず馬鹿ね焔耶。その頭はやっぱり中身がないんじゃない」
時は少し戻り・・
焔耶はあれから傷が治るとすぐに蒲公英へ勝負を挑んだ。
桃香に立会いをお願いし、一対一を申し込んだ。
無論武器は本物の己の相棒。
桃香は危険だと主張したが焔耶のような特殊な武器の模造はない。
それに刃を必要としない撲殺を目的とした武器であるため意味もない。
なにより蒲公英自身もあの時の戦いを再現したいらしく彼女自身も真剣勝負を望んだのだ。
そのことを伝えられた桃香は黙って俯いたが、焔耶が必ず武器は寸止めをすると約束をしたのだ。
友達である桃香の悲しい表情を見たくないのか、必死でそのことを焔耶は伝えた。
蒲公英も寸止めを了解し二人の勝負は始まった。
だが、その日二人の戦いは決着がつくことはなかった。
「くっ・・はぁ・・馬岱。貴様なかなかやるな」
「はぁ・・はぁ・・だからいったじゃん。あんた程度じゃ私を倒せないよ」
どちらも互角。二人の武は拮抗しているのだ。
その日は二人の勝負は引き分けとし、また後日再戦となった。
何度も二人は戦う。
だが勝敗が付く日もあったのだ。
人間であるゆえに、体調が悪い日もある。
疲れている日もある。
時には蒲公英が勝った。
時には焔耶が勝った。
二人は自分が負けるとまたすぐに再戦を申し込む。
それの繰り返しだ。
その日は引き分けで終わった。
「また引き分けか・・これで5勝5敗23引き分けか・・」
「引き分けばっかね・・」
二人は地面に仰向けに寝そべっていた。
二人は黙って空を見上げている。
そして唐突に焔耶から口を開いた。
「強いな・・お前」
「はぁ?当たり前じゃん」
「そうだな。なら当たり前なお前と張り合っている私も強いな」
「なに?頭いかれたの?」
蒲公英はちょっと引いた顔つきをし焔耶の方を見る。
すると焔耶は笑う
「っはっはっは!そうかもな。最近武の向上を自分で感じている。
それがたまらなく嬉しいんだ。
あの日、あそこで死んで、止まった時間がまるで動いているようにな。
私は桃香のために強くなりたい。
敵である私に情けをかけてくれ、そして友だと呼んでくれた。
私の体は蜀の魏延だが、心は桃香だけの将、魏延でありたい」
そして、焔耶は蒲公英の方に顔を向ける。
「馬岱。悔しいが貴様との手合わせは私の武の向上に一番適しているようだ。
貴様になぞ言うのも癪だが、礼を言わせてもらう」
「ふんっ。あんたは精々私の鍛錬のためにこれからもかかってくることね」
「ああ。そうさせてもらおう。
貴様とはこれから長い付き合いになりそうだ。
それでここに・・我が真名である焔耶を預けさせてもらう」
「え?」
焔耶は蒲公英に右手を差し出す。
その行動に蒲公英は驚く
「・・・・・バチーン!」
「っいたぁ!な、なにをする貴様ー!」
蒲公英はその差し出された右手の掌に思い切り自分の右手の掌をぶつける。
「あはははは!私は蒲公英だよー!」
そう捨て台詞を吐き、蒲公英は場内へと走って逃げていく。
「このっ!ばた・・・、蒲公英ー!」
「相変わらず馬鹿ね焔耶。その頭はやっぱり中身がないんじゃない」