うつけ無双   作:なろうからのザッキー

45 / 52
久しぶりに書いて見ました。
更新は相変わらず不定期ですけどね。

もう何を言われても織田上総介信長でいきます。





夜の定軍山を夏侯淵が馬にまたがりながら駆ける。

 

「ぐう・・うおええぇ・・」

 

先ほどから頭がぐるぐる回るような感覚がし、嘔吐する。

体が重く熱っぽい。

 

「完全にしてやられたな・・地形や技術。そして兵力に慢心してしまったか」

 

この定軍山の戦いでは地理的に圧倒的に有利であった。

攻めてくる織田方を待ち構える形での戦。

兵の配置や陣を構える余裕があり万全の状態での戦だったのだ。

 

「秋蘭さま。ご気分は!?」

 

「最悪さ、流流。だがこうして生きている。

今は退こう。生きていればまた奪い返せるさ」

 

この戦いでの将も夏侯淵、黄忠、そして典韋と蜀軍にとって比較的冷静な将たちだった。

地形、兵力も互角、陣構築もできており将も冷静さをもった臨機応変の利くものたち。

なにより北郷から夏侯淵と黄忠の関係さえも告げられていたのだ。

 

だがしかし一つ誤算があった。

郭嘉が血を吐き倒れたのだ。その事実に程昱は取り乱した。

いや、本人はそれを悟られないようにいつもの軽口を言っているがはたから見れば誰もが彼女の動揺に気づいていた。

曹操はこの二人の軍師を定軍山に向かわせるつもりだったが急遽それをとりやめた。

荀彧を派遣しようかとも思ったがそれもやめた。かわりに彼女たち三人の名軍師には及ばないが優秀な軍師を抜擢したのだ。

 

定軍山の戦いは蜀と魏の戦い。

その結果を信長も知っているはず。蜀の劉備が漢中を征することに成功する戦い。

夏侯淵も黄忠もいる。すべてのピースを握っているのはこちらだ。

 

ではなぜ戦いを挑んでくる?

狙いは荊州からの別働隊でも送り込んでくるか?

それともわざと負けて追撃で定軍山から引きずり出すつもりか?

いや、春蘭じゃあるまいしあの三人の猛将たちはみな冷静なのだ。

 

やはり危険だ。

敵の狙いがわからないからこそ桂花を私の元から離すわけにはいかない。

 

「申し訳ありません、華琳様・・定軍山を奪われ、紫苑も生死不明。いかなる罰をもお受けします」

 

「罰を望むならいくらでも与えるわ。

でも今回は私にも非があった、でもなにより天がいたずらしたようね。

まさか凛が倒れるなんてね」

 

「すまない華琳。俺は凛が体が弱いことを知っていた。

そしていつ死ぬかもな・・」

 

「・・・いつ?」

 

「本当はもう死んでるさ・・赤壁を迎えることが出来なかった。

歴史的大敗をして曹操は言うんだよ。郭嘉が生きていれば負けなかったのにってさ」

 

北郷は俯き拳を握る。

そこからは今にも血があふれ出るかもしれないほど強く。

 

「もう、狂いすぎたんだ。俺はただの役立たずさ、しがない一人の警備隊長でしかないんだな。

天の御使いは終わりだ」

 

北郷にはもうこれから世界がどう動くかがまったくわからなくなった。

彼にとっての最大の武器である知識はもう役に立たない。

タネのつきた手品、レールの無い電車。

もう彼は乱世に飲まれた一人の男でしかない。

 

「この私の目が曇るなんてね。

赤壁での勝利に目が眩んでしまった。

私たちが生き、戦うのは紙上の三国志という物語ではない。

この地、世界での私たちの戦い。

 

私は魏の曹孟徳にあらず、蜀の曹孟徳・・

ようやく目が覚めたわ。信長は最初から三国志というものに踊らされていなかったのね。

いえ、むしろ破壊していたわけか。だからこそ官渡に乱入しそして定軍山でもまともにぶつかってきた」

 

曹操が両手で自分の顔を挟むようにパチンと一つたたく。

部下たちを守るためにと北郷に三国志を聞き、そしてそれでうまくいったことで頼ってしまったのだ。

彼女の肩に圧し掛かるものは今まで重すぎた。

そして彼女が寄りかかった男は彼女の重荷を半分も持ってくれた。

心に安らぎを与え何万もの命を救う方法を教えてくれた。

 

今まで一人でやってきた曹操は一人の女として、そして男として彼を頼りそしてうまくいっていたのだ。

一時でも彼女を女にしてくれた彼が今はうなだれている。

ならば彼をもう一度笑わせてやりたい。

 

「一刀」

 

「・・・」

 

「ありがとう」

 

「どういうことだ?」

 

「ずいぶん貴方に助けられたわ。

女としての私はここで終わり。今からは覇王曹操に戻るわ。

赤壁は正直なところ私では駄目だったでしょう。

貴方におんぶに抱っこな私だった。それが心地よかったわ。

一睡もせずに策を練り続けた夜もあった私が太陽が昇ったことすら気づかないほどに寝れた日々が続いた。

おかげで頭痛もずいぶん楽になった」

 

「そっか。俺も華琳が頼ってくれてすごくうれしかった。

こんなちっぽけな俺が華琳みたいな英雄を支えてあげれたんだな」

 

「ええ。だからね、それで充分よ。

もう貴方の未来知識は必要ないわ。まあこれから晋という国がどうなるか楽しみだったけどね。

 

さあ!みんな、軍議よ。定軍山をとられこれから敵はどう動くか!

もはやこれは三国志にあらず!私たちの戦いよ!」

 

 

 

「・・・ここは」

 

「あ!起きたんですね!よかったぁ~」

 

定軍山で意識を失った黄忠は現在療養のため魏軍の医務室にて横になっている。

黄忠は現状の把握にと寝台から起き上がろうと体を動かした。

 

「うっ・・」

 

「あ!まだだめですよ。貴女はあの毒の煙を誰よりも大量に吸い込んだんですから。

普通では動けないような状態でも無理に体を動かしていたんですから筋肉にすごい負荷がかかったみたいです」

 

桃香のいうとおり黄忠の体はピリピリとしびれているようだ。

指が五本とも動かすことは出来るが痺れがひどい。

大きく体を動かせば体の頭から足まで一本の電流が走るかのようだ

これではまともに武器を持つことはおろか食事ですら支障がでるだろう。

 

「今はゆっくり休んでください。

命には影響がない毒らしいですから体から毒が抜けるのをゆっくり待ちましょう」

 

「それでは・・だめなの」

 

「えっ?」

 

黄忠が再び体を動かす。

寝台から出ようと顔をしかめながら這い出る。

 

「・・っつ!」

 

だがやはり体がいうことを利かない。

寝台から地面に転がり落ちるように倒れる。

 

「やめてください!どうしてそんな無茶を」

 

「璃々が・・私には娘がいるの」

 

「娘さんですか?」

 

「ええ。まだ小さくて・・ご飯も作れないの。

だから私はここにはいられない。いっこくもはやく・・」

 

黄忠は痺れる体をずりずりと這わせゆっくりと移動する。

そんな彼女を桃香は見ていられない。

黄忠の肩に手を回し彼女を立たせる。

 

「確かにそれは一大事ですね。

でも私は今の貴方が心配です。

貴女の決意は本物だってわかります。きっと放っておけばそのままこの城を出て行くでしょう。

でもそれじゃあ貴女が死んでしまいます!

体に無理をして悪化して!ご飯だってまともに食べられなくて!賊にだって襲われてしまいます!

娘さんが一番大事なら貴女が死ぬなんて娘さんにとって一番悲しませることをしないでください!」

 

桃香はそういって黄忠を再び寝台に寝かせた。

その言葉を聴いた黄忠は黙り込んでしまった。

そしてその顔からはツーっと一滴涙が零れる。

 

「じゃあ・・どうすれば・・」

 

「私がご主人様に相談してみます。

それで駄目なら朱里ちゃんや雛里ちゃん、軍師の子たちに相談します」

 

 

 

信長は城内を歩いていた。

その目的は一人の女性だ。

 

「周瑜よ」

 

「織田・・か」

 

その相手とは周瑜であった。

信長は周瑜という人物の死因を知っていた。

呉の大都督にして英雄孫策と断金の交わりとも言われる堅い絆。

周瑜もまた王佐の才といわれるほどの才気を持ち文武ともに優れ行政にも内政にも長けた。

まさに完璧超人といっても過言ではない非凡の将。

だからこそ惜しまれるのはその早すぎる死だ。

周瑜が病死したのは三国志を知っているものならば誰もが知っていよう。

 

信長もまた己が乱世に生きているため当然知っていた。

赤壁の戦いの後、周瑜は病に倒れ病死する。

だが信長はこの世界を三国志から大きく変えてしまっているために大きくズレが起きている。

だからこそいつ死ぬかわからないのだ。

 

「汝・・体に変調はないか?」

 

「体だと?何故それを貴方に言わなければならない。

確かに私たちは捕虜だ。まあ、監禁や軟禁されていないだけありがたいがな。

私は桃香には深い恩がある。彼女を裏切るような脱走はしないさ」

 

周瑜はそう言うと信長を相手にしていないのかそのまま反転し去っていった。

周瑜はまったく信長に気を許していない。

自分たちをほぼ壊滅させた敵国の総大将であり魔王なのだ。

捕虜である自分たちをいつ拷問し処刑してもおかしくない。

 

「死なすには惜しい人材よ」

 

信長もまたその場を反転し去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




周瑜の死

赤壁は208年に起きました。そして周瑜は210年に病に倒れます。
戦傷から病になった。毒矢を受けその毒が悪化した。心労と過労。
などさまざまな死因がありますが正解はわかりません。
恋姫では過労となっており、この作品も過労とします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。