うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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お久しぶりです。
この更新を見た人は一話前に戻って 病 というタイトルから見てくださいね。
お知らせ ってタイトルであった話を変更して書きましたので。


捕虜返還

その日、魏の大広間には蜀の荀彧が訪れていた。

元来荀彧は大の男嫌いであるがそれはぐっとこらえこの場にいた。

蜀のため使いたくも無い丁寧な言葉を並べる。

 

「こちらの魏には先日の戦いで行方不明になった黄忠が捕虜になっていると聞きました」

 

「うむ」

 

「それでは改めましてこちらの要求は魏延、そして黄忠の返還を要求します」

 

「で、あるか」

 

荀彧は魏延と黄忠の返還を求めこの魏の地へとやってきた。

曹操からの正式な使者としての公式な会談である。

魏延そして黄忠は蜀にとって欠けてはいけない将だ。

 

「もちろん無償で返していただけるとは思っておりません。

こちらからはこの倚天(いてん)の剣、そして相応の金を差し上げます。

どうかこの二つでお二人を返していただけませんか?」

 

そこに詰まれた金はこの二人の将の力量に合わせた返還には充分見合うほどの大金であった。

普通の捕虜返還であれば将の力に合わせた金や品などを渡し交換という形で捕虜を解放してもらう。

しかし今回の魏延、黄忠二名の返還には金どころか名剣である倚天の剣まで差し出すというのだ。

 

「こちらの倚天の剣は曹操様が命じられ造らせた宝剣です。

こちらの剣はまさに天をも貫くほどの力を持っていると思われます」

 

「愛紗」

 

「は!」

 

愛紗が荀彧から倚天の剣を受け取り鞘から剣を抜く。

 

「おお・・なんと美しい・・」

 

「綺麗・・」

 

まさに宝剣と呼ばれし倚天の剣。

愛紗どころか剣に詳しくない桃香までもがその美しさに声をあげる。

 

「クク・・たしかに美しき剣よ」

 

信長も椅子に座りながらその剣を眺めるが確かに美しい。

後世に伝説として語り継がれるであろうほどの剣。

それを今、この目で目の当たりにしているのだ。

 

「さて・・どうでしょうか?

この倚天の剣、そしてこの金でお二方を返していただけませんでしょうか?」

 

荀彧が再度こちらへと問いかけてきた。

 

「なあご主人様!こんだけ良い条件なんだ」

 

「主よ。私も破格の条件だとおもっておるが」

 

「ああ。私もそう思う。どうでしょうかご主人様」

 

翠、星、愛紗が信長のほうへと視線を向ける。

だがとうの信長は目を瞑り肘掛に肘を付き、拳をこめかみ辺りにつけ思案している。

そして十秒ほどたったころ目を開きこう口を開いた。

 

「クク・・過ぎた物ほど災いの種となろう。

人を殺すには木の棒でも充分。剣は壁にかけ眺め、崇め奉る物にあらず。

美しすぎる物ほど人の心を惑わそう・・ぞ」

 

そう信長が発した言葉に翠、星、愛紗の三人はハッとした。

三人は武器の価値と言うものを知っているがために素晴らしすぎるこの剣に一瞬執着した。

自分がその剣を持ち腰から下げている姿を想像をした。

もしそれが自分の手に入らず他の物に渡っていたらきっと嫉妬してしまうことは容易だろう。

 

(いかん・・私としたことが。

つまらぬことから人と人は争ってしまうのだ。

物や女から人は戦争まで発展してしまうことを歴史が証明しているではないか)

 

愛紗はすぐさま倚天の剣を鞘に戻し荀彧へと渡した。

 

「では・・倚天の剣はいらないということで?」

 

「うむ。そして金もいらぬ」

 

「金もですか?」

 

「ああ」

 

この言葉に荀彧も動揺する。

 

「では、返還を断ると?

失礼ながらこれだけの物を提示し捕虜の返還をつっぱねたということが民に広がりますと民心を失うことになりますが?」

 

「クク・・断りはせぬよ。ただこちらの求める物と違うだけ・・ぞ」

 

「ではいったい?」

 

「朱里」

 

「はい!」

 

信長に声をかけられた朱里は前へと出る。

 

「こちらの求めるものは停戦です」

 

「停戦ですって?」

 

思わぬ要求に荀彧は戸惑う。

なぜ停戦するのか?

そちらは定軍山で勝利し勢いに乗っているであろう。

対してこちらは負傷兵の傷すらまだ癒えていない。

停戦すれば兵の治療がすみ募兵で兵を集め、新参兵の訓練すら済んでしまうのでは?

それどころか兵糧や武具など戦備まで整ってしまう。

 

狙いはなんだ?

停戦すれば捕虜二人が返ってくるどころか戦力を整えてしまう。

 

「・・・」

 

荀彧の頭がまとまらない。

口から出てくる言葉が見つからない。

 

「なに、単純なことですよ」

 

朱里が口を開いた。

 

「天下布武」

 

「武によって天下を統一する・・」

 

「私たちは心までも統一します」

 

そういうことか。その一言で荀彧は納得した。

 

「わかりました。

心までも統一するならばそちらはまだまだ時間がかかりそうですね。

こちらも国内の内政がまだ軌道に乗っていないのでありがたいところです。

停戦の期間はそちらでお決めください」

 

「はい。追って連絡しましょう」

 

そしてこの会談は幕を閉じた。

捕虜であった魏延、黄忠に事情は伝えられ二人はしばらく過ごしたこの城を後にすることになる。

 

「桂花か。久しぶりだな」

 

「桂花ちゃん。璃々は大丈夫なの!」

 

「心配しなくても大丈夫よ。桔梗がちゃんと面倒見てるわ」

 

「そう・・ならよかった」

 

黄忠は力が抜けたのかペタリとその場で崩れ落ちた。

そんな黄忠に焔耶が肩をかしてたたせる。

 

「お待たせしました」

 

その言葉とともに桃香が馬をつれてやってくる。

一頭は荀彧の乗ってきた馬、もう二頭は・・

もちろんその傍らには護衛として愛紗、そして蒲公英がいた。

 

「私は自分の馬で来たけど・・」

 

「桃香。私たちにも貸してくれるのか?

だけどずいぶんいい馬だな」

 

「もちろん!黄忠さんだって早く娘さんの顔が見たいと思って。

白蓮ちゃんに頼んでいい馬を選んでもらったよ」

 

「そんな・・劉備さんにはあれだけ看病していただいてそれだけで充分です!」

 

「駄目だよ!黄忠さんがよくても娘さんがきっと早く会いたいだろうしね。

だからこれは娘さんの頼みを私が聞いてるの。それだったらいいでしょ?」

 

桃香の屈託の無い瞳が黄忠を見つめる。

数秒の後黄忠のほうが折れたようだ。

 

「うふふ、わかりました。娘の頼みは親が聞くもの。

劉備さんからありがたくお借りします。そして・・

 

私の真名は紫苑。紫苑と呼んでください」

 

黄忠が笑みを浮かべ桃香へと微笑みかける。

その返答へと桃香も笑顔を浮かべた。

 

「私は桃香。桃香です、紫苑さん」

 

二人は自然に近寄り握手をした。

そしてその場へと焔耶も近寄ってきた。

 

「紫苑、桃香は私の親友なんだ」

 

「あらあらそうだったの?」

 

「ああ。世話になったな、桃香」

 

「焔耶ちゃんも元気でね」

 

「ああ」

 

「こら馬鹿焔耶ー!わたしを無視するなー!」

 

「うるさい蒲公英!今大事なところなんだ!」

 

魏延と蒲公英は魏で過ごしていたようないつもの光景が広がった。

その光景に桃香は苦笑いするが黄忠と荀彧は違った。

いつも強さをもとめ必死に生きてきた魏延からは違う肩の力が抜けたような表情。

敵に勝つために決して弱さを見せない蜀にいたころの魏延とは違う。

 

「さ!帰るわよ」

 

荀彧がそう口に出し別れをすませ蜀の三人は出発した。

その帰り道荀彧は困惑した。

 

(あれが劉玄徳・・仁の人。

この二人をここまで骨抜きにするなんて予想外だったわ。

真名を預けたことにかんしては何も言わない。

 

だけど・・この二人はあの劉備を斬れるの?

 

魏は実質は織田が君主をやっているようだけどほぼ二大君主制に近い。

一人は織田、そしてもう一人があの劉備。

本人はそのつもりがないようだけどずいぶん周りに好かれているようね。

対して織田は君主でありながら劉備よりも好かれてないみたい。

それじゃあいつか劉備に奪われるわよ?)

 




倚天の剣

曹操が造らせたという宝剣。天をも貫く剣の意。wikiからの抜粋。
これの相棒に青釭の剣がある。
曹操が対を成すように作らせたといわれている。
青釭の剣は曹操が夏侯恩にあげたが長坂で趙雲にやられ青釭の剣は趙雲のものになった。
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