うつけ無双   作:なろうからのザッキー

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合肥の戦い

「桃香、今日はいい天気だな」

 

「桃香。我ら捕虜にまで気をつかってくれなくともよい」

 

「あ、桃香殿。お猫様はお好きですか~?」

 

「桃香。やはりこの城の書物は豊富ですばらしいな。

 

 

 

「ねえ信長。暇なら相手しなさいよ~」

 

「策殿、信長とて暇ではないぞい」

 

 

 

「は?私たちを呉に返す?」

 

「そして決戦だと?」

 

「貴様!死に体の呉に鞭打つ気か!

勝負のついた今何故戦を激化する!」

 

「クク・・汝らとて火が体に燻っていよう・・ぞ。

うぬら呉のすべてをこの信長にぶつけ、そして届かせてみよ。

汝ら呉の魂、戦、血へど・・この決戦にて全て受け止めた後もう一度汝らを捕らえようぞ」

 

 

 

 

信長の命により魏と呉の決戦が決まった。

おそらく決戦の地は合肥となろう。

魏と呉。この二国の決戦の地としては悪くない。

 

(合肥か。やはり喰ろうても歴史は無理やり同じ道を歩ませようとするのだな)

 

信長はこの合肥の地を見渡す。

合肥という景色は知らなくとも違っているということがよくわかる。

張遼が存在せずそもそもこちらにいる将はほぼ蜀軍。

名前のみの魏軍。

 

(クク・・おもしろい。この信長しかと役目を果たしておるぞ貂蝉。

もはや北郷なぞ脇役にすぎぬ)

 

「信長様。将兵の布陣全て整いました」

 

「あわわ、この戦いに勝利すれば天下は完全な二分。

この戦は歴史にのこる戦となります」

 

「クク・・わかっておる。しかと歴史に残ろうぞ」

 

 

 

「蓮華。こちらの布陣は全て整ったわよ」

 

「はい。しかし本当によかったのですか?」

 

「シャオもどうしてお姉ちゃんを総大将にしたのか聞きたかったんだけど」

 

今回この戦では姉である孫策が総大将とならなかった。

本来であれば当主が戦に出陣するのであれば当然当主が総大将である。

君主を差し置いて総大将になるとは考えられない。

妹である孫権が総大将になることは通常ありえない。

それが意味することとは

 

「簡単なことよ。これからは蓮花、貴方がこれから呉を率いるの」

 

うすうすわかっていたとはいえこの発言に孫権は度肝を抜かれた。

 

「どうしてですか!姉様はまだお若い。

それなのにどうして若輩である私が!」

 

「そうね・・私は母様が築いた孫呉の結束を深く傷つけたわ。

確かに領土はかなり広げた。

でもね、歴史的大敗をし、そして呉内でも将たちの仲を裂いた」

 

それは孫策たちが解放されるまでの間のことであろうか?

軍内では降伏か徹底抗戦かで二分し、将たちでかなりもめたのだ。

かたい絆で結ばれていた孫呉では今までここまで大きくもめることはなかった。

 

「孫呉を存続の危機にまで落としいれそして私自身も敵に囚われ首を斬られるどころかもう一度戦う機会を与えられ解放された。

まっ、相手があの信長や桃香の軍だしって割り切れるけどやっぱり将としては恥よね。

だから・・私は孫呉の王は蓮花、貴方に譲る」

 

「姉様・・」

 

孫権の胸に姉の気持ちが伝わってくる。

そうかそこまで覚悟したのか。

ならば妹として、そして王の血筋としてこれを突っぱねることなどできようか。

 

「わかりました。この孫仲謀しかと承りました。

まずはこの一戦勝ちましょう!そして最高の栄華を誇らせましょう!」

 

 

そして戦が始まった。

両軍は約二万対二万。

呉軍は残っている領土のうち首都である建業以外の城はほぼ治安維持のための数十人だけを残しかき集めた。

今なら民でも蜂起すれば簡単に城が落ちるだろう。

それを覚悟の上での戦とした。

全てを生まれ変わらせる戦いだ。

 

「進めー!軍師である周瑜の言葉は私の言葉と思え!」

 

孫権の声を皮切りに将たちが各々の目的地へと移動する。

中央を突き進むのは黄蓋。孫竪の代から呉を支える宿将だ。

 

「お、きおったな」

 

前方から織田の部隊が攻めてくる。

そこに見えるは小さな将。

 

「燕人張飛参上なのだー!」

 

「ほう、張飛とはまた有名どころがきたのう。

儂は黄蓋。ここでそなたの相手をしてやろう」

 

「聞いたことある名前なのだー!」

 

「そうかそうかならば遠慮はいらんじゃろ?」

 

「おうなのだー!」

 

「戦場で将同士が直接出会ったのじゃ!ならば当然!」

 

「一騎打ちなのだー!」

 

「おうよ。ならばお互い無用な兵の被害は出したくないじゃろ?

ここは兵たちは戦わせないのが得策と思わぬか?」

 

「え?うーん、たしかにお姉ちゃんは兵が死ぬのをいやがるのだ」

 

「ならばやはり戦うのは儂とお主だけのほうがいいのう」

 

「うん!わかったのだー!」

 

二人は自軍の兵たちに戦うことをやめさせこの一騎打ちを見よと伝えた。

将からの命とあらば両軍の兵たちは二人を丸く囲むように観戦する形となった。

そして二人は自慢の武器を構えた。

鈴々が蛇矛という槍に対して黄蓋は多幻双弓という弓である。

 

「お姉ちゃんは弓でいいのかー?」

 

「はは!儂をお姉ちゃんと呼んでくれるか。

なかなかいい奴じゃの。ついでに知っておるか張飛。

戦場で強い武器とは敵に遠くから攻撃できることよ。

素手よりも剣、剣よりも槍、そして槍よりも弓!

それすなわち!」

 

そう黄蓋が口上を述べながら矢を鈴々に向かい射る。

 

「うわっ!?っとと・・危ないのだー!」

 

だが鈴々もそれを防ぐ。

 

「儂はおぬしよりも強いということじゃ」

 

黄蓋が二本目を番える。

この場にピリピリとした緊張感が漂う。

兵たちもごくりと唾を飲み込む。

なぜなら初めて見たのだ。

 

「そらそらどうした張飛!」

 

「うわっ!はっ!」

 

黄蓋の矢はあまりにも速い。

魏軍には弓矢を主武器とする将がいない。

つまり一番弓が得意なのは兵なのである。

目が矢の速さになれていないのだ。

 

「お、おい・・あの矢なんだよあれ」

 

「瞬(まばた)きなんてしたら終わりだ・・」

 

自分たちの知らない速さだ。

兵が呟いたように瞬きなどしたらその時に額に矢が刺さるであろう。

この事実に兵たちはゾッとする。

兵が知らないならば当然鈴々も知らない。

 

「どうした張飛、防戦一方かの」

 

「う、うるさいのだー!」

 

張飛もその超人的な動体視力で矢を防ぐ。

黄蓋としては初撃で屠りたかったが防がれてしまってはしょうがない。

手には常に二本矢を持つ。

一本射れば一本矢筒から取りまた二本を手に持っている。

 

「はっ!」

 

「てやー!うっ・・」

 

「甘いわ!」

 

鈴々が一本目をはじき、その隙に近づこうとすれば持っていた二本目をすぐに射る。

常に二本持っている状態でいるのは矢筒から矢を取る隙に近づかれるのを防ぐためだ。

 

「卑怯なのだー!」

 

「勝負に卑怯も糞もないわ!」

 

 

 

「ずいぶんと長い槍だな」

 

「ここから先は行かせないよ~」

 

戦場の右翼では星と孫尚香がにらみ合っていた。

星が率いる歩兵の前にはずらりとならぶ6mはあろうかという長さの槍を構える孫呉の兵。

対してこちらの槍は通常の3mほどの槍。

 

「趙雲将軍!敵方から矢も飛んできます」

 

「むう、敵も本気だな。はてさてこれはどう対処しようか」

 

趙雲もこのような長さの槍は見たことがなかった。

こちらの武器が届かないところから攻撃されては手の出しようが無い。

 

「お主ら一旦後退だ。敵はあの長さの槍だ、速くは走れまい」

 

星の指示に兵たちは後退を始めた。

彼女の言うとおりその長い槍が重くそして邪魔で速く走れない。

 

「皆注意して追って!」

 

孫尚香は追撃の指示をだす。

通常よりも速度は遅いがしっかり兵たちは動き出した。

だがそれもすぐに終わった。

なんと魏兵がまた一列に並んでいる。

 

「へえ~伏兵ってわけじゃないんだ。

それで?またぶつかるの?」

 

「っはっはっは!まさか、それでは先ほどと同じよ」

 

「ならどうするつもり?長槍隊前進!」

 

「こうするまでよ!」

 

その言葉と共に星と兵が大きく振りかぶった。

手に握られていたのは石。

 

「ぐわっ!」

 

「があ!」

 

「石などそこらじゅうに落ちておるわ!

その長い槍が邪魔でなかなか防げぬであろう」

 

星の言うとおり槍が長すぎて投石をうまく防げない。

兵たちは格好の的となっていた。

 

「貴様らが矢を番えて射るよりもこちらは振りかぶって投げるだけでよい!

そらお主ら今のうちに後退だ!」

 

星たちは手に持った石を投げるだけ投げて後退を開始した。

 

「なんて奴!追うわ!」

 

孫尚香は再び追撃を開始した。

そして少し追えばまた魏兵が一列に並んでいる。

 

「くっ!また並んでるわね矢を番えて!」

 

「言ったであろう!こちらは石を投げるだけなのだ。

矢を引き絞るという動作がない分こちらが早い!」

 

わずかだがそこには確かに速度の違いがあった。

星たちが投石しすぐさま後退する。呉の兵たちの矢が地面に付くころにはすでに後退し終えている。

そして確実に被害も大きかった。

投石は立派な攻撃手段だ。

すでに呉の兵にも死人が出ていた。

 

「なかなかやるじゃない。でもね!絶対ぶっ倒してやるんだからー!」

 

 

こちらは戦場の左翼。呉軍では周泰がここで指揮をとっていた。

 

「これはなんという貧乏くじですか・・」

 

「はあああー!!!この青龍偃月刀の錆となれ!」

 

「・・・死ね」

 

対して魏軍は愛紗。そして副将に恋と魏の最強部隊が率いていた。

こちらの戦いは一方的であった。

最強の二人に率いられる兵たちの士気は常に最高潮でありその勢いは止められそうにない。

 

「くっ・・壊滅必死です。ですが私の目的は敵を倒すことではない」

 

周泰は兵を斬りながらこそこそと動き回る。

愛紗と恋に見つかれば終わりだ。

間違いなく二人は周泰を目標とし斬りかかってくるだろう。

 

左翼の周泰部隊の目的は敵とぶつかり戦うことではない。

それがわかっているからこそ周泰の部隊の兵は手を出さない。

完全に武器を身を守る盾として使っている。

 

「よし・・すぅーーーー ぴーーーーーーー!!!!」

 

周泰が指を使い指笛を噴く。

これが合図となった。

 

「こ、この音は・・撤退じゃ、みな逃げろーー!」

 

「か、勝てるわけねー、こんなやつらに勝てるわけねー!」

 

「天下無双と軍神の相手なんぞわしらにはどだい無理な話じゃー!」

 

周泰の部隊の兵が引いていく。

みな蜘蛛の子を散らすように四散していく。

 

「なんだ?あちこちに逃げていく。壊走したのか?」

 

突如としてこの場からいなくなる呉兵。

あきらかに普通の撤退ではない。

 

「・・違う」

 

「恋?」

 

「・・危ない!」

 

ヒュッ ヒュッ

 

突如としてとんでくる火矢。

 

「もっとです!もっと放ってください!」

 

そこにいるのは呂蒙。

弓兵を伏せておきこの時を待っていた。

彼女の合図で一斉に火矢が放たれる。

そしてこの辺り一帯は火に包まれる。

 

「くっ・・本当に呉の者たちは火が好きだな。

だがいくらなんでも火の回りが普通じゃないぞ。早過ぎる」

 

「・・これ」

 

恋が何かを指差している。

そこには干草のようなものがある。

 

「恋、それは?・・火種か。そんなものが落ちているとは」

 

「・・それも辺りにたくさん落ちてた」

 

「そうか・・こんなものは無かった。どうやら敵は我等に気づかれぬように戦闘中に仕掛けていたのか」

 

火に包まれる愛紗と恋。

もはやこのまま進軍は無理であろう。

おとなしく後退するしか道はないようだ。

その後退も無事にいくかどうか。火の回りが激しく安全な道を模索しながらの後退となろう。

 

「やりました。敵関羽と呂布の足止めに成功。

彼女たちでもこの火の中を突破しこちら側に来ることは不可能です。

軍神と天下無双、二人の弱点はただ一つ人間だったことですね」

 

周泰の目的は無事に達成することが出来たようだ。

そして中央でも無事に目的は達成できている。

もちろん右翼でもだ。

彼女たちの目的は戦い撃破することにあらず。

 

(この一騎打ち少しでも長引かせる)

 

(投石はシャクに触るけどこのまま・・)

 

 

 

 

「先方は激戦になっているかもな」

 

「だろうな」

 

「ん・・?なあ、何か聞こえないか?」

 

「なにがだ?」

 

「いや・・なにか・・」

 

「これは・・鈴?鈴の音だ・・まさか!」

 

 

 

「進め!このまま信長の首を頂く!」

 

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