最近は九時~十時に寝なくちゃ疲れが取れない。
更新は本当に不定期になります~
合肥においての戦いは信長たち魏軍の勝利によって幕を閉じた。
呉軍本隊である孫権の部隊が壊滅しそして孫権本人が負けを認めたからであった。
その知らせを受けた呉の兵、そして最後まで戦い続けた孫尚香は呉の滅亡に剣を落とした。
呉は首都である建業を失い戦力も全て出し尽くしたのだ。
それは完全な敗北であったのだ。
そして魏軍は建業に入城し事実上孫呉を滅ぼすことに成功した。
ここに天下二分は成ったのだ。
「私たちの負けだ」
孫権が頭を垂れる。
「我々孫呉は貴殿たち魏軍との正々堂々の戦いにおいて負けたのだ。
戦力も互角に揃えてもらった上での負けだ。
もはや何も言うまい。見事な戦であった」
孫権の顔には悲壮感などなかった。
「呉の領土は今荒れているだろう。
無茶な徴収や徴兵をしたのだ。
負けたとはいえ最後にいっぱい食わされてくれ」
「クク・・姉ににてこのワシに最後に一撃をくれるか」
「ああ。姉様の妹なのだ」
少し晴れ晴れとした表情をしていた。
彼女のそんな顔を見た翠も微笑を浮かべていた。
そんな彼女を孫権もチラリと見て二人の視線が合い笑みを浮かべあった。
「織田、正直私はまだお前に良い印象を持っていない。
悪魔だの魔王だの言われているお前しか知らない。
だがお前の治める領土、そして見事な戦。
この二つを見せられてはお前に王の器があると確信できる。
どうか私の変わりにこの乱世を終わらせてくれ」
そして彼女はまた深々と頭を下げた。
孫権が頭を下げたと同時に周りにいた孫呉の諸将も頭を下げた。
その中には周瑜もいた。
(諸葛亮・・この私を二度も超える智謀を見せられたのだ。
私に彼女を越えることは出来ないだろう。
ならば近づくのみ。そして見せてもらおう!
私を越える彼女が見る織田信長という存在を)
親友である周瑜が頭を下げた姿を見た孫策。
彼女の顔にも笑みが浮かんでいた。
(やっぱり信長は私が見込んだ男。
蓮華どころか冥琳までも彼を認めだしている。
私に見せて頂戴信長!我ら孫呉が成し得なかった事を貴方に賭ける!)
そして最後に孫策が頭を下げたことで呉の将全員が降伏することとなったのだ。
「どうか私の首一つで収めてくれないか?
ここにいる将たちは皆ここまで乱世を生き抜いてきた猛者たちだ。
必ず織田の役に立つだろう。
どうか寛大な処置を聞き入れてもらえないだろうか?」
「な、なにを言っておられるのですか!」
「そ、そうですよ蓮華様」
彼女の言葉に甘寧、周泰が困惑した。
「何もいってくれるな思春、明命。
こうするのが一番丸く収まるのだ。
お前たち二人はきっと織田で役に立つ。
だから・・だからお前たちだけでも・・」
二人の必死の様子に孫権の感がきわまった。
「れ、蓮華様ー!ならば・・ならば私もお供します!」
「ううぅ・・れんふぁさま~。
私たちはあの世でも蓮花様の警護をいたします」
「お前たち・・思春!明命ー!」
三人は深く抱き合った。
彼女たちの光景に陸遜や呂蒙ももらい泣きする。
「ううう・・悲しいよ悲しすぎるよこんなの!」
突如として桃香が前へと躍り出る。
孫権たちを背に桃香はたちはだかった。
「私たちは皆を笑顔にするためにこの乱世を戦っている。
だから!だから目の前で泣いている三人にさらに酷いことなんてしてほしくないよ!
泣いている人を笑顔にするための戦いだもん!」
桃香はクルリとその場で180度回り孫権たちのほうを向く。
そして三人を両手で一度に抱きしめたのだ。
「ほら、死ぬなんていわないで。
私も一緒にお願いするから」
「と、桃香・・」
「「桃香殿」」
そんな桃香の言葉に一層涙が止まらなくなる。
この光景を見る猪々子と斗詩。
彼女たちがポツリと呟いた。
「な、なんか見たことある光景が・・」
「あれ、そうだね・・うん。既視勘がすごいね」
まるであのときの自分たちと同じような状況じゃないか。
こうやって彼女は全ての人間を救おうというのか?
「甘いな・・桃香は」
「うん。甘すぎるよ」
そう桃香を語る二人。
だが彼女たちにはまったく桃香に対する不満の色はなかった。
むしろ晴れ晴れとしていた。
「これからも守っていこうな」
「うん。命をかけて」
改めて二人は桃香への忠誠を誓った。
自分たちだったからじゃない。
誰に対しても彼女は変わらなかった。
目の前で救える人間を全て救おうとするその出会ったころからの変わらない優しさ、信念。
権力を持とうが自分から膝を付き視線を合わせ必死に語りかけてくる器。
そんな彼女を誰にも殺させない、守ってみせる。
それこそ自分たちの命を救ってくれたあの時のように。
「信長様」
「相変わらず一人ではしゃぎ、盛り上がっておるわ」
「ええ。まるで子供のような天真爛漫さです」
「無垢であり表情がコロコロ変わる。
まさに子供よ。だからこそ周りを引き込むのかもしれん。
遊ぶ相手が指に止まるようにな」
そう発した信長。
すでに桃香の周りには呉の将が集まっている。
陸遜や呂蒙が桃香に孫権のことで懇願している。
彼女の周りには人が集まる。
こうして彼女という人物を見て知ってしまえば誰もが好きになってしまうのだ。
「クク・・愛紗」
「はっ」
「汝はここで孫権の首を斬れるか」
「そう・・ですね・・ご命令とあらば」
信長に忠を誓っている愛紗。
確かに彼女は命令であれば首を斬ると言った。
だが明らかに歯切れが悪い。
姉である桃香を裏切ることにもなるがそれだけではない。
すでに形成されている空気が違うのだ。
この場での主役はもはや信長ではなくなっていた。
完全に桃香であったのだ。
呉の将はもちろん、翠や星、鈴々も桃香が発するこの空気に当てられた。
「ご主人様。どうか孫権さんを殺さないで!」
桃香が膝を付き頭を下げた。
ここに控えていた文官たちもいつのまにか桃香に加わり頭を下げていた。
敵軍どころか魏軍の者たちからも孫権の処罰についての嘆願の声が上がっている。
完全に周りを味方につけているのだ。
「ふふ、主。ここで孫権を斬れば一斉に批判が高まりますな」
「はわわ。築き上げてきた魏軍の結束に皹が入るかもしれません」
「お兄ちゃん!孫権を殺さないでほしいのだー!」
(長島での一揆でも門徒宗を焼き払い、比叡山ですら恐れず実行した。
ワシは今まで誰にも指図を受けず我が道を進んできた。
市ですら浅井もろとも焼き殺そうとした。
そんなワシが・・クク・・ここで剣を振り下ろせんことが証明か)
「上級給仕を呼べ」
「はっ!」
突如信長が一人の給仕を呼びつけた。
その知らせをうけた彼女はほどなくしてこの部屋に到着した。
「茶を振舞ってやれい」
「かしこまりました」
そして一人一人の茶を配っていく彼女。
呉の諸将にとって見れば何故このような状況でと思ったのも不思議ではない。
だが泣いてしまったために喉を潤そうと一口茶を飲む孫権。
そして表情が変わった。
「なんとうまい茶だ!」
「ですね、これは見事なものだ」
この茶の味に呉の将は感心した。
さすが織田の軍には優秀な給仕がいるのだろうと。
だがそこに控えていた給仕の様子が豹変した。
「オーッホッホッホ!当然ですは、当然ですは!このわたくしが自ら入れたお茶ですもの」
そこにいたのは麗羽であった。
突然のことにたじろく孫権たち
「え、袁紹だと・・どういうことだ?」
「麗羽さんはうちで給仕さんをやってもらってるの。
えと、ちょっと他のお仕事が何もできないから給仕をね」
「袁紹が・・だと」
「ええそうですわ。
わたくし今まで世間を知らなすぎましたわ。
自分で食べ物を作ることも、そして食材すらも知らなかった。
自分が着る召し物の着方すら知りませんでしたわ。
わたくしがむしゃらに働くうちにふと考えましたの。
何も知らない小娘であったわたくしが天下を語るとは・・と。
なんだか悲しくなったわたくしはその反動で働きましたわ。
そうしたら気づけば一般の給仕たちの上である上級給仕にまでなれましたわ」
そう語る袁紹の目はキラキラしていた。
額に汗を少し浮かべ給仕服の裾から雑巾が見えている。
今彼女は腐ってなどいない、生きているのだ。
たまにとれる休日は猪々子や斗詩と三人でならんで歩いている光景も見れる。
全力で日々を謳歌していた。
「あら、袁紹。でもすこしあのオーッホッホッホが減ったんじゃないかしら?」
「あれはもはや今は使っていなくてよ。
先ほどはわたくしだと分かってもらうためでしてよ。
突然大きな声を出すのは給仕としてあるまじき行為。
主が驚いて怪我をするかもしれませんし、お年を召した方の体にも障りましょう。
私は上級給仕ですの。このまま給仕長まで上り詰めたいものですわ」
袁紹の言葉に偽りはなかった。
初めて自分の力で掴んだ地位なのだ。
生まれた時からすでにあった肩書きではない、袁家というものではなく麗羽が勝ち取った地位なのだ。
彼女もそれがうれしいのだろう。
「麗羽。今後も励むが良い」
「はい。失礼いたします」
彼女の動作は優雅さがあった。
さすがは名門の生まれであっただけはある。
動作全てに艶と優雅さが織り交ぜてあった。
「もはや戦は終わる」
信長の一言に辺りが静かになった。
「しからば汝らを殺すのは都合が悪い。
文官の多い呉からの力添えは必要である。
孫権、うぬの首を一つ取ることでさまざまな弊害が起こる。
ならば貴様の首、そして体は我が元にあったほうがよい」
「ならば」
「ついてこい。この俺の背中を追ってくるがよい。
姉共々見せてやろうぞこの乱世の終幕を」