鏡田京香の親愛度イベント   作:五月車

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親愛度 第15話

 イカロスとタイダロス。ギリシャ神話に登場する親子の名前で、イカロスの方は神話に詳しくなくとも一度はどこかで聞いたことがあるかもしれない。

 

 イカロスを代表するエピソードとして、蝋で固められた羽で空を飛ぶというものがある。

 蝋で出来た羽が壊れないよう、タイダロスは彼に海の近づきすぎないよう、太陽に近づきすぎない忠告する。

 しかし蝋で出来た羽で自由に空を飛ぶことが出来るようになった彼は、その忠告を無視して太陽に近づきすぎた結果、蝋が溶けて墜落死してしまうのだ。

 この時、親であるタイダロスも同じように蝋で固められた羽で空を飛んでいたが、彼は太陽に近づかなかったため、墜落しせず着地することが出来ている。

 

 このエピソードは、傲慢になってはいけない、あるいは身の程をわきまえて行動することの大切さを教訓とする物語だ。

 

 ただ、自分は思うのだ。

 イカロスのような最期は果たして不幸なのだろうか?

 

 墜落死してしまう、それは確かに不幸であるに違いない。

 無事生き残った方が客観的に見れば幸福であることは疑いようもない。

 

 ただ、もしもイカロスが太陽に憧れていたとするなら?

 神話の様にその傲慢さからではなく、もしも少しでも太陽が近づきたくて、空高く飛んだ時、墜落したことを後悔するだろうか?

 むしろ幸福ですらあるのではないのだろうか?

 

 ……今の自分は、その答えが分からないままでいた。

 

 

 

「プロデューサーさん、ついに『QUARTET』です。今回のオーディションには白草四音も出るんですよね?」

「そうですね、名簿に名前があります」

 

 予想通り、白草さんは『QUARTET』に出場してくるらしい。

 

「勝てますかね?」

「……かなり厳しい戦いになるとは思います」

 

 今回の公開オーディションに向けて、特別何か行ったことはない。

 

 以前と同じく、基本的なレッスン、それからファン数を増やすための営業、あとは番組での配信と、演劇の為の稽古。

 この四つが殆どで、何か別の事に手を出すことが出来なかった。

 

 唯一、特別な事があったと言えば、時間経過と共に『鏡田京香の百面相チャンネル』の知名度が想定以上に上がってくれたおかげだろう。

 実際、当初のプラン立てていた際のファン数よりも今の実際のファン数の方が多い。それは追い風にはなっているが、それぐらいだ。

 

 白草四音の実力は本物だ。

 極月学園のトップ層である、Aランクを取っているのは伊達ではないということなのだろう。

 

「それでも、勝って欲しい。そう、思ってます」

「ふふ、その言葉だけで十分です。プロデューサーがいるあたしは無敵なので!」

 

 そう宣言して、彼女はオーディションの舞台へと向かった。

 

 白草四音は強敵である、それは確かだ。

 ただ『N.I.A』でなら、鏡田さんの勝機はあると思っている。

 

 白草さんは他に参加していた公開オーディションでも、会場のファンを楽しませるということよりも、審査員の評価を気にしているように見えた。

 これは、観客による投票が含まれる『N.I.A』において基本的に悪手だ。

 求められているのはアイドルと観客が一体になり、観客と共に盛り上がれるそういったステージだ。

 その悪手を選んでも尚、オーディションに勝ってきているという事実は、さらに白草さんのポテンシャルの高さを示しているわけではあるが。

 

 鏡田さんはその逆で、審査員に受けようとは思っていない。

 観客と一緒に盛り上がるライブ、それを第一に考えてライブを行っている。

 そういう風に、鏡田京香というアイドルを、彼女自身も作ってきている。

 

 白草さんが唯一持っていないものを、武器にしている鏡田さんなら、万が一があるかもしれない。

 

 もしも、白草さんを打ち破るなんてことが出来れば、彼女はちゃんとしたアイドルになれるはずだ。

 ……いや、その先のこと、今は考えないでおこう。

 今はただ、彼女が勝つことを祈るしか出来ないのだから。

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