ライブが終わり、自分と鏡田さんは二人で寮までの帰路を歩いていた。
既に太陽が沈み切っており、寮まで一人で歩かせるのは流石にしのびなかったためだ。
タクシーを呼ぶにしても、あまり距離が離れていなかったし、そして何より鏡田さん本人からの希望もあり、こうして寮まで送ることになった。
「あ、満月だ」
ふいに鏡田さんがそんなことを口にした。
言われて、空を見てみれば確かに、そこには満月が浮かんでいた。
「久々に月を見ました」
「かもですね、自分も『初』が終わった後以来です」
二人で立ち止まって、月を見る。
こうして、月をちゃんと見たのはいつぶりだろうか。パッと出てこないぐらいには昔の事だ。
「以前見た時、ふと思ったんです。私って月みたいだなって」
そんなことを考えていると、鏡田さんがポツリと呟き始めた。
「プロデューサーさんは月の裏側ってどうなってるか知ってますか?」
「たしか、穴が何個も空いてるんでしたっけ?」
「はい、そうです。だからもしも月がこちらを見せていたら、あんなに風に月は見えないはずなんです。それが本当の自分を隠している自分と似ているなって思ったんです。きっと裏側を見せたらプロデューサーにも失望されるだろうな、って思ってたんです。まあ、まさか実際はアイドルとして失望なんて出来る程期待されていないとは思っていませんでしたけど」
「うっ……」
それを言われると弱いとこではある。
「大丈夫です、冗談ですよ。冗談」
「そういった類の冗談は心臓に悪いのでこれっきりにしてください」
「はーい、わかりました」
気の無い声が返ってくるだけだった。
こちらからすれば真剣なのだが、これはもう身から出た錆だと思って甘んじて受け入れるしかないのかもしれない。
それにこれで少しでも鏡田さんの気が紛れてくれるのなら安いものだ。
「……それなら、一つ言わせてください」
「なんでしょうか?」
「月は綺麗です。確かに裏側は穴だらけかもしれません、ですがそれは隕石の衝突から表の面を防いでいるからです。月が綺麗であるために、裏側は穴だらけになっているだけです。もし月が回転していれば、両面穴だらけになっていたでしょう。ですが、現実はあの様に綺麗に空に浮いている。だからこそ、みんなから愛されているんです、あなたのように」
「でも、月は輝けませんよ」
「なら、自分が照らします。太陽みたいな半端な形ではなく、何時だって満月で、昼にだって空に見えるよう、月についていって照らし続けます。それでどうでしょう」
「……言ってて恥ずかしくなりませんか、その言葉?」
「恥ずかしいですが、本心ですので」
「はあ、本当、プロデューサーさんはずるいです。そういうの、本当駄目だと思いますよ」
鏡田さんは、そう言って顔を逸らした。
「……なら、私からも返事をしないといけませんね」
返事っていったい何のことだろうかと、考える。
ただ、そんな思考は一瞬で頭の中から消えてしまった。
「死んでもいいわ」
振り向いて微笑みながらそう口にする、彼女の顔が今まで見てきたどんなものよりも魅力的に見えたせいだ。
続きは学マスの新シナリオがきたら書きます。