鏡田京香の親愛度イベント   作:五月車

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親愛度 第8話

「最強の鏡田京香を作りましょう」

「は?」

 

 どうやら初めの言葉から間違えてしまったらしい。嫌に冷たい視線が突き刺さる。

 

「なんです、その最強の鏡田京香って」

 

 しばらくの気まずい沈黙の後、呆れたように、鏡田さんは尋ねた。

 

「そのままの意味です、先日鏡田京香であることを意識しろということは言いましたよね?」

「そうですね、そう言ってました」

 

 彼女はウンウンと頷く。

 

「けど、今の鏡田京香ではアイドルになれません」

「それで、最強の鏡田京香を作ろうってわけですか、なんですか、もしかして五人の私を集めて合体でもするんですか?」

「半分正解です、よくわかりましたね」

 

 自分が言ったことだというのに、何故だか意見を肯定されたことに驚いたような様子を見せる。

 

「……正気で言ってます?」

「ええ、もちろん。あなたをアイドルにするためにはこれが、一番だと思ったので」

「……わかりました、話は聞きましょう。あなたの事を信じると決めているので」

 

 こちらを疑うような目で鏡田さんは見ていたが、すぐに諦めたようにそう続けた。

 

「それで、何をするんです? まさか私を本当に五人集めるというわけではないと思いますけど」

「ええ。半分正解といったのはそっちではなく、合体するというほうですから」

「はあ……」

「まず前提として、今の鏡田京香という存在はアイドルとして弱い、正直に言えばデビュー出来る程の器ではありません。ですから、アイドルとして通用するよう、鏡田京香のアップデートをしようかと」

「そのための方法が合体ですか?」

「ええ。理想のアイドルになるよう、他のアイドルの良い要素を集めて、最強のアイドルを作っていきましょう」

 

 ようは、目指す地点を上にあげて行こうということだ。

 歌が得意なアイドル、ダンスが得意なアイドル、ビジュアルが良いアイドル、様々なアイドルがいる。

 その良い所だけを真似すればいい。

 

「……何となく言いたいことは理解出来ましたけど、本当に出来るんですかそんなこと。確かにアイドル達の良い所だけ合わせてそのアイドル達と同じようパフォーマンスが出来れば凄いアイドルになれそうですけど、なんというか机上の空論でしかない気がするんですけど」

「まあ、無理でしょうね」

「さっきから何なんですか、本当! 私のことからかって遊んでるんですか?」

「いえ、からかうつもりはありません。そもそも同じパフォーマンスをして欲しいとは思っていませんから、自分はそんな理想のアイドルが存在しているならどうするのか、考えて演じて欲しいということです」

「……ようやくわかりました。最強のアイドルに近づくよう努力するんじゃなくて、最強のアイドルを演じろってことですね。その最強のアイドルという役を作るために、色々なアイドルを合体させろと」

「その通りです」

 

 最強のアイドルの演技をする、それが鏡田さんが一番アイドルとしてのポテンシャルを発揮することの出来る方法であると、自分は考えている。

 ただ、演じるといってもその最強のアイドルというのが、ただ漠然としたイメージのままでは如何に彼女といえども演じきることは出来ないだろう。

 

「なるほど、分かりました。ということは……」

「はい、こちらの方に様々なアイドルのライブを集めたものがありますので、こちらで確認してください」

 

 この初星学園では、アイドルの研究のために多くのアイドルのライブ映像を見ることが出来るようになっている。

 その中でも、特に鏡田さんに近そうな路線のアイドルの物を何個か借りてきていた。

 

「そのライブの映像よりこの初星学園に通っているアイドルの中で、有力そうなアイドルの中間試験の映像を見せてくれませんか?」

「どうして、そちらの映像を見ようと?」

「最強のアイドルよりも、まだ駆け出しのアイドルの方がいいと思ったんです」

「演じるのが楽だから……ではなさそうですね」

 

 鏡田さんの表情を見れば、そういった消極的な考えでこちらに提案していることは見て取れた。

 

「鏡田京香には、まだ完璧さを求められていませんから。場数を多く踏んでいるプロのものよりも、まだ初々しさのある子達の方がいいと思うんです。そちらの方が観客に私には求められているはずです」

 

 彼女の言っていることは一理ある。

 未だデビューしていないアイドルの卵、そこに求められているのは一流のアイドル達に求められているものとは違うものが求められることもある。

 どこか応援したくなるような初々しさのようなものを求めている、観客だっているはずだ。

 

「分かりました、それなら以前の中間試験で、目立っていた人物の映像を流します。そちらを確認しましょう」

 

 流石に全員分流すわけにはいかず、特に目立っていた生徒達の内、十一人のアイドルの中間試験を鏡田さんと共に見る。

 

「参考になりそうなのはありましたか?」

「そうですね……、この花海姉妹と藤田さんと葛城さんの四人の映像。後一応、有村さんと紫雲さん、姫崎さんの映像もください。この辺りを参考にしようと思います、あ、それと以前見た子、倉本さんでしたっけあの子の映像も一緒にお願いします」

「月村さん、篠澤さん、秦谷さん、十王会長。この四人の映像はいらないということで?」

「ええ。月村さんは歌は上手いですが、最初から全力で歌うようなあの歌い方は鏡田京香に似合いませんし、篠澤さんと秦谷さんの二人は彼女達の独特の雰囲気がそのまま味になっているせいで、鏡田京香の入る余地がありません。十王会長が入らないのはプロの方と同じです」

「分かりました」

 

 そう冷静に返事をしながら内心では、自身の考えを見透かすように全く同じ考えを述べた鏡田さんの発言に驚いた。

 なんせ参考にならないだろうというメンバーも、そしてその理由すらもピタリと同じだったのだから。

 

「そうだ、プロデューサーさん。自主練習解禁してもらっても良いですか? 新しい鏡田京香のイメージをもっと掴みたいんです、その為には今どこまで出来るのか知るのも必要だと思うんです」

「ええ、そうですね。今のあなたなら適度な練習量に出来るでしょうし、ただ今までのようにオーバーワークするようなら」

「分かってますよ、ちゃんとその辺は配慮します。それに、もっと他のアイドルの映像を見ないといけないので、今までみたいにレッスンできませんからね」

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