悪食クソ女の暴食日記   作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍

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奴を殺してやる

 獲物を求めて森の奥深くへ走り去ったクソ女。 その間、俺は、意識が朦朧とする中、必死に動いた。 俺は懐に忍ばせていた小さなガラス瓶を取り出した。 瓶の中には、粘稠で、不気味に光る緑色の液体が満たされていた。 これは、かつて山賊仲間から貰った、奇跡の回復薬、ハイポーションだ。 売り払えば相当な額になるが背に腹は変えられない

 

 俺は、震える手で瓶の蓋を開け、残っていたわずかな液体を一気に飲み干した。 緑色の液体が喉を通ると、体中に温かい熱が巡り、みるみるうちに傷が癒えていくのが感じられた。 クソ女の残虐な拷問で砕けた骨も、修復されていく。 信じられない速さで、俺の体は再生した。 それでも、奴の恐怖は俺の心に深く刻み込まれていた。

 

 足を支え、よろめきながらも俺は立ち上がった。 俺は、これまで以上に、自分の身を守る術を身につけている事に感謝した。 俺には二つのスキルがある。

 

 片方は【隠密】身を隠す時にボーナスがつくだけの単純なスキルだが極めれば目の前にいる相手にも全く気づかれなくなる超強スキル。

 

 そして俺は、その技術を駆使し、クソ女の元から全力で逃げ出した。

 

 1分後

 

 獲物を平らげて血でぬらぬらと輝く口元をごしごしと拭いながらあの化け物が追ってきた。

 

 どうしてどの方向へ逃げたかが分かったのだと思ったが考えるだけ無駄だ。どうせ捕食者特有の勘だろう

 

 俺は恐怖で狂いそうになりながらも逃げた。

 

 奴の腹の虫から、撒き散らす涎から、尽きない飢餓から、狂った食欲から。

 

「非常食……どこよ……出てきなさい!」

 

 クソ女の声が、森の静寂を裂く

 

「私を待たせるなんて、とんでもない罰を与えるわよ。……分かった、分かったわ。特別に譲歩してあげる。私が、あなたをどうやって調理するか、どんな風に食べられたいか、言ってごらんなさい。リクエストに答えてあげるわよ……うふふ……」

 

 狂った提案が飛んでくる。

 

 そこからあの馬鹿は狂った思考によって狂った声真似と狂った歌で俺を呼び戻せようとした。

 それでも俺が戻ってこないと分かると途端に不機嫌になり八つ当たりをし始めた。 

「非常食! どこよ!」

 間抜けが、こうやって俺が隠れている限り、ある程度位置に当たりをつけないと俺を補足できない。それがこのスキル【隠密】の強みだ。

 

 何度も命を救ってきてくれた相棒(隠密)は奴にも通用する。そう気づくと舌を出しながら中指を突き立て余裕まで出てきた。そして

 

 ぐぅ

 

 腹が……なってしまった。最悪のタイミングで。次の瞬間満面の笑みと共に食欲に満ちた目線が突き刺さる。本来比喩である突き刺さるという表現が本当の事の様に思えた。

 ■■■■

「非常食! 待ってー! 戻っておいでー! 食べるからー! 美味しく頂いてあげるから! 逃げないで! 逃げないで! 逃げないで! 逃げないで! ニゲナイデ! ニゲナイデ! ニゲナイデ! ウフ! ウフフ! ウフフフフ! クケケケケ!」

「た! 助けて! 助けて下さい!」

「肉! 肉! 肉! 肉! 肉!」

 クソ女がぐんぐん俺に迫る

 涎を滝の様に流す怪物の手が俺の体に触れた。

「お肉お肉! 逃げないで速く速く食べられてよ! 私がお腹が空いて狂いそうなのに! 大人が身を捧げないなんて道理が通らないわ!」

 

このキ◯ガ◯に喰われて死ぬのか俺は…

 

 その時ぬるりと現れたのは鎌首をもたげた大蛇だった。大蛇王アストラ。B級モンスター最強格、この森の絶対王蛇。知性持つ蛇にして、食べる以外の目的での殺しを激しく憎む者

 

 密猟者の天敵、人類に仇なす、獣の守護者は、クソ女に本能的な警戒を持ったらしく臨戦態勢をとった。

 

 クソ女の目線が俺の背中とアストラを行き来するのを感じた。どっちから先に喰おうか考えているのだろう。それなら俺は大丈夫だ。

 

 クソ女の性格上、より大きく、より美味そうなアストラを優先するに決まっている。

 視線が俺の背中から外れる。

 そして俺は鳴り始めた戦闘音を背後に走り去った。

 ■■■ 

 逃げた! 逃げた! 逃げ切った。

 必死で息を整え余裕が出てくるとじわじわと涙が溢れてきた。

 俺は泣いた。

 この森の王たる俺がなんでこんな目に……

 

 クソッタレ! あのクソ女にさえ会わなければ! 

 

 そうだ……そうだ……!! 俺の親分(とっつあん)もクソ女の魔の手に…………!! 

 

 

 アニキもクソ女に殺された!! 女子供を200人ぽっち虐殺しただけで……血も涙もねぇ!! 

 

 

 救いは……盗賊に救いはねぇのか!? オレもこのまま死……死んで……ッ

 

 ……待てよ

 

「なぜ殺人鬼のために俺がビクビク後悔して「お願い神様助けて」って感じに逃げ回らなくっちゃあならないんだ? 

『逆』じゃあないか? 

 どうしてここから無事で帰れるのなら「下痢腹かかえて公衆トイレ 探しているほうがズッと幸せ」って願わなくっちゃあならないんだ……? 

 ちがうんじゃあないか?死ぬのはクソ女、お前の方だ!」

 

 

 

 鍵となるのは俺の保有するもう一つのスキル。【暗殺】

 

 効果は俺を認識していない対象への特攻効果。これが乗っている場合ダメージは五倍程度まで上昇するので鉄すら豆腐の様に切り裂ける様になる。

 

 正規の騎士相手でもこれと隠密を組み合わせるタイマンならどうにかなる、というか、なった。四肢を切断し身動きが取れなくなった騎士様の前で村を焼くのは俺の盗賊生活でも五指に入る幸せな思い出だ。

 

 俺は、逃げ出すべきだと何度も自分に言い聞かせた。クソ女の恐ろしい食欲と圧倒的な力の前では、抵抗など無意味だと理性は訴えていた。しかし、盗賊としての、歪んだプライドが俺の足を縛った。 幾度となく命拾いしてきた経験から、俺は自分の唯一の取り柄、気配を消す技術にすがることにした。闇討ちなら、あの怪物にも勝てるかもしれないという、薄っぺらな希望が胸に灯ったのだ。

 

 

 

 ドカ食い大好き! クソ女さんをぶち殺してやる

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