悪食クソ女の暴食日記 作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍
私は村への道のりを駆ける駆ける。そうすると面白いほどぐんぐん村が大きくなっていく。ボロ切れが風にたなびいて小気味よい音を立て、私の頬に吹いてくる風も冷たくて気持ちが良い。「アハハッ! 最高!」
ぐうぅきゅるきゅるぐううううううう……
だけれど流石にお腹が空いてきたわね……ちょっと休憩して栄養取らないと。思い返してみれば非常食を取り逃してアストラと熊狼をつまんでから笑えるほど獲物に会えて無い。その時の苦しみと言ったらもう……ダメね、考えれば考える程酷くお腹が減ってくる。
ガサッ
ん?
ゲコッ
■■■
そこからはカエルを鷲摑みにしおやつにしながら徒歩で村へ向かった。口の中で小骨がパキパキっと折れて小気味が良いわ。
「オオウシガエル完食!」
「あなたもまあまあイケるお味だったわよ。ごちそうさま」
私はごちそう時計をポケットから引っこ抜いた。そこに写っていたそれなりサイズの肉を表す赤点は村の端っこに集中しており、死体を表す黒丸は増えてない。何かが襲撃して来ていてもちゃんと一箇所に纏まって避難できてるようねよしよし。それにしてもこの赤点の大部分が人間じゃなくて人間より美味しい家畜なら嬉しいんだけど。
なぜかよく勘違いされるけれども別に私は人肉にこだわっているわけではない。そもそも私の目的は、ただただお腹いっぱい食べる事。この二十四時間三百六十五日私を苦しめる飢餓を癒す事、だからお腹いっぱいになるまで食べられればなんの肉でも文句はないのよね。もちろん美味しいに越した事は無いけれど。お腹がいっぱいになるだけの量の食事、かつそれが人間より美味しい食事であれば私に人間を食べる理由は無い。だってそうでしょう。他にお腹を満たせるものがいくらでもあるのなら相対的に不味いものに手を出す理由なんて無いもの。
つまり私は美味しい食べ物食べ放題の状況下なら他人とも問題無く共存できるわ。
それなのに「お前はあらゆる生物と共存できない、怪物というのも悍ましい何かだな」とか抜かしやがったクソ警察もいたわね……しかも私にそんな酷い事を言いやがったクズをもうちょっとで食べられそうだったのに食いのがしてしまったのは残念だわ。
思い出したら空腹がさらに辛くなってきた。
日本食が恋しいわ……調理されたご飯が恋しいわ……クソ警察の肉が恋しいわ……
そう思っているとそれは上から落ちてきた。私の頭にべチャリと落ちて顔まで覆ったきたそれは最初は冷たかった。しかしその直後猛烈な熱を放出し初めた。いや違うわね。張り付いた何かは私の顔を溶かしてる。張り付いた何かに殴打を浴びせるものの飛び散るだけで離れない。爪を使って引き裂くが効果無い。それどころか今度は右手にも取りつかれる始末だ。手についたそれをよく見ると、緑色のグニグニとしたゼリー状の物体であり、気のせいか私の体を溶かす度に大きくなっていってる様にも感じる。変な生き物ね。これも魔物? そう思った直後、私の手に張り付いていたゼリー擬きは私の胃袋に、頭に張り付いていたゼリー擬きは口内に収まっていた。酸っぱく、バチバチッと舌に走る強刺激がたまらない。その上、私の肉の旨味が凝縮されていて普通に美味しい。よく分からない相手なら食い殺せば良いんだわ。
そう思った次の瞬間、顔と手からまた痛みが伝わってきた。
さっき取り切れなかった残ったゼリーの肉片が残って悪さをしているようだ。
僅かなそれの肉片が私の肉を食らってどんどん再生し巨大化していく。咄嗟に顔にも砂利をかけこそげ落とそうとするが大部分は私の顔の肉にきっちり張り付いて取れない。
この後もかなりてこずったものの
【毒牙】で動けなくさせるタイプの毒を作ってぶっかけたらゼリーはピクピク痙攣し無力化された。
やれやれアストラ喰ってなければだいぶやばかったわね。
そう思いながら痙攣しかできなくなったゼリーを口に運んだ。
[スライム完食! 【摂食回復】]
なんとか喰えたけど酸で顔の皮膚がデロデロに溶けちゃってるのを感じる。
多分今の私の顔は化け物みたいな見た目になってるわねアハハ!
それから眼球が溶けたのが理由でぼやけた視界に苦労しながらも
駆け抜け村へと辿り着いた。
村の目の前には光の膜が張られていた。何これ、食べられるの? そう思って試しに噛みつこうとするが歯はガチン! ガチン! ガチン! と空で打ち鳴らされるだけ。
「チッ」
はいはい食い物じゃないんですね期待した私が悪うございました!
でも不思議ね。何でこんな謎の膜があるのかしら。……どうでもいいわね。別にそんな事を考えてもお腹は膨れないし気にするだけ損だわ。
とりあえず膜の中へ一歩踏み込むが別に妨害されることもなく、拍子抜けするほどするりと中へ入り込めた。
へえこれが村ね。そこかしこから火の手が上がっているが一通り見た感じだとまだ死んだ
でもこの馬は違う。馬の美味しさが五臓六腑にしみわたる。
私は早いとこ襲撃者を見つけないと行けないの夢中で貪り食った。
「むぐむぐ! ごくん。はぁ……ここに非常食がいればしっかり調理された馬刺しが喰えたのに……くっちゃくっちゃ……残念……もっちゃもっちゃ」
馬肉に舌鼓を打っていると腕をなくした方の肩が痒い、というか違和感がある。
肉にかぶりつきながら右肩を見ると肩の付け根から腕が生えてきてるのが目に入った。不思議ね。そう思いながらも手も口も止まらない。というか止められない。さらに馬の足を飲み込む。すると腕がさらに生えだした。へえ、何だか知らないけど今の私は、喰えば喰っただけ傷が治るようになっているらしい。あむ、ごっっっくん。思い切りデカい肉塊を一気に飲み込んだらごっそり腕が再生した。この反応から見るに、いっぱい食べればいっぱい傷も治る見たい。ならいっぱいいっぱい食べてしっかり傷を癒さないと。こ、これは傷を癒したいだけでご飯をいっぱい食べたいわけじゃないんだからね☆勘違いしないでよね!
グゥゥゥ……
ツンデレごっこしている場合じゃ無かったわね。速く食べないと…
本能の赴くままに、馬の肉を貪り、食し、いただきまくる。
喰えば喰うほどに失った腕はにょきにょきと生えてくる。
爛れた顔の皮膚もあっという間に元通りになる。馬の体積が半分になった頃には両腕がきっちり揃っていた。
試しに動かしてみるけど今まで無かったのが信じられないほど自由に動く
嬉しいっ! 片腕だとご飯を食べづらかったから両手が揃って嬉しいわ! しかも顔の皮膚まで治ってる! 本当に食べ物様って偉大だわ! 喜びと共に馬の後ろ足を引きちぎり飲み込み左手で馬を持ち上げ右手で固定しながらバクバク食べていく。勢いのまま馬の股間の謎の出っ張りを一息に引きちぎって飲み込む。ごくん。
「馬(下半身)完食!」
馬の残りのパーツをかじり空腹を紛らわせながら歩いて襲撃者を探すと、二つの影が見えた。
片方は二足歩行のトカゲといった風貌の3メートル程の人間だか魔物だかよく分からない奴。私には分かる。こいつは絶対美味しい。
もう一方はくたびれたおじさん。よく見ると非常食にそっくり。非常食があんなに美味かったんだからきっとこいつも絶品ね。
さてさてどうしましょうか。私はお腹を擦りながら口の周りの血を舌舐めずりして舐め取った。