悪食クソ女の暴食日記   作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍

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トカゲを喰うわ

私は下半身の消失した馬をもぐもぐと食べながら茂みに隠れて様子を伺う事にした。

 

 炎をバックに二人の人間が向き合っている

 

 片方は中年を通り越して壮年にさしかかりそうな人間の男だった。その顔は非常食そっくり。

 

 しかし目を引くのはもう片方。この村を襲撃したと思わしき3メートル程の影。

 

その大まかシルエットは人とそっくりだったけれど顔はトカゲ、それも鳥人間を掻っ攫いやがったクソトカゲとそっくりね、そしてその全身は地のように赤黒い鱗で覆われ、本来人間にない尻尾や翼も持った、言うなればトカゲ人間ね

 

普通のトカゲは喰いでが全くないけど、こいつはそれなりのサイズだし楽しみだわ。

 

 もぐもぐ

 

 アストラはすっごく美味しかったし爬虫類繋がりのこいつもきっと美味しいのだろうと直感が告げている。

 

 というかこの国きてからは何食べても本当に美味しいと感じるわ。何でかしら?

 

 いや、理由は明白ね。処刑されるまでの3ヶ月を思い出す。捕まってからの3ヶ月間、私は何も食べられなかった。おかげで、今ではあの地獄すら生温い3ヶ月間で得られなかった栄養を補充するためか分からないけど日本にいたときよりさらにさらに酷くお腹が空くようになっている。

 

 いくら食べても足りないんじゃないかと思える程の空腹で頭がおかしくなりそうではあるけど、悪い事ばかりじゃない。空腹は最高のスパイスだという言葉はけだし名言ね。未調理の、あまり味が良くないであろう生肉でも空腹と言うスパイスを嫌になるくらい振りかけられてるおかげでちゃんと美味しくいただけるのはありがたいわ。

 

もぐもぐ

 

 近くを通りがかったネズミをキャッチし口に放り込んだ。こんなふうにね。

 

 [ネズミ完食!]

 

 ごっくん。うん。あの国のネズミよりもまるまる肥えてて美味いわね。結構好きな味かも。

 

 動きがあった、向かい合った二人のうちの非常食もどきがトカゲに非常食もどきが突進する。なんというか、思ったよりも早いわね、速さ自体はすっとろい非常食の顔そっくりだから舐めてたわ。

 

 もぐもぐ

 

 観察する。漁夫の利を狙って。ああ、でも、それにしても、どっちも美味しそう。沸き上がる食欲を抑えるために私は無我夢中で、下半身を既に失った馬の死体へ歯を突き立て骨ごと噛み砕き咀嚼した。

 

もぐもぐ

 

 そうしている間も非常食もどきが剣を振るい、それをトカゲもどきが受け流す。非常食もどきは結構強いのだけれど、それでもアストラよりは確実に弱そうね。

 

「いやはやお強い。うっかりしたら私も危なそうだ。」

 

 その言葉とは裏腹に、トカゲの方には余裕が滲み出ている

 

「うるせえ、いきなりやってきて、村を焼きやがって。

その挙げ句村人まで殺そうとしやがって、彼らが逃げるまで俺が時間を稼がなければ絶対に死人が出ていたぞ。

 しかも王女様……じゃねえ、母さんも、村人達も妙な光の膜のせいで村から出られねえ。あの妙ちきりんな光の膜はお前を殺せば消えるのか?なら【絶死絶命】の元幹部の力、見せてやるよ。」

 

もぐもぐ

 

 非常食もどきの目に力が宿った。その目は日本にいた時何度も見た目だった。

 

「おお、怖い怖い。頭だけになっても私の喉笛へ食らいついてきそうだ。……その目に敬意を評して少しばかり自己紹介を。私は、憤怒の魔将バルバトス。種族、龍人(ドラゴニド)

 私はですね。自然が大好きなんですよ。私は花も虫も木も動物も好きなんです。嫌いなのは人間だけ。自然を虐げ、搾取し、殺し、自然界とは別次元の高みに立ったつもりで自然を見下しやがる人間どもが大嫌いなんですよ。特にあの、素晴らしい美しいミミズさんを見下していやがる所がムカつきます!知っていますか?彼らの姿は遥か昔からほぼかわっていない、進化していないと言うことを。それすなわち進化の必要が無かったと言うこと。つまりそれだけ彼らは完成されている。人間や魔族といった下等生物なんざよりはよっぽど。これに限らず生存と生殖いう目的のみを考えるなら人間にも決して劣らず、かつ性根の綺麗さは人間を遥かに上回る自然界の生物を見下す人間は邪悪で愚かだ。おおっと、自然の生物が純粋だの善良だのという幻想を持ってる馬鹿共と私を一緒にしないで下さいよ。チンパンジーさんとかイルカさんのいじめをみた時にそんな幻想は木っ端微塵に砕け散りましたから。ただ、それを考慮してなお、人間や魔族と比較すれば自然界の生き物の方がよっぽど純粋で、よっぽど善良だ。だから大好きなんですよ。でもね、貴方がたの、人間の自然に対する蛮行は目に余るから死んで頂こうと魔王様の配下に下った次第でございます。」

 

 もぐもぐ

 

「……いやー深くて良い言葉だな。俺馬鹿だから何言ってんか分かんねえや。」

 

「ああ、分かっています。分かっていますとも。魔族もこの美しい自然に対する害であると。人間にも自然を愛する者はいると。私自身も自然に対する害であると。人間も自然の一部だと」

 

「はいはい分かった分かったさっさと死ね死ね」

 

 もぐもぐ

 

非常食もどきが猛烈な勢いで剣で斬りかかるがかわされる。そこからもなかなかの速度の連撃を繰り出すがかすみを割いてるかのように当たらない。

 

 もぐもぐ

 

「正当性や、倫理は貴方がたにある。それが分かっていても尚、憤怒はこの身を焼き焦がす。起きていようと眠ろうと常に、怒りは、私を苦しめる。だから決めたのですよ。正義が向こうにあろうが無かろうが、それはそれとして、ぶっ殺すと。そうする事でしかこの胸の苦しみはとれない故。クソ喰らえ、倫理、正統性。まあ、要は、独善による逆恨みで、溜まったストレスを貴方方を痛めつけて、ぶっ殺して、発散しようと言う訳です。まあ、要は、アレだ。」

 トカゲ人間の目から光が消えた。どこか愛嬌があって美味し……もとい、かわいらしかったその目が加虐性でぬらりと歪む。

「私の自慰(オナニー)の為に、死んでくれ。人間」

 

 次の瞬間私のお腹から地響きの様な音がなった。ぐぅ……

 あーあ、不意打ちでトカゲの後頭部殴ってぶっ殺そうと思ってたけどこれじゃ失敗ね。茂みからお尻のポケットに枝が突き刺さって出られないので手刀で枝をへし折り、馬の最後に残った前脚を喰いながら二人の前に出る。

 

 

二人の視線が私に突き刺さる。先に口を開いたのは非常食もどきだった。 

「何やってんだお嬢ちゃん!早く逃げ…………は?何で馬喰ってんだ?何で今?何でこのタイミングで?」

 

 私のご飯に目ざとく目をつけ非常食もどきは言った。ご飯に言及するという事はそれすなわちよこせということ。全く意地汚いジジイね。あげないわよ。私の拾った私のご飯何だから。

 

取られないように最後に残った足をバリバリと食べて食べて食べまくる。

  

 うまっうまっ……馬だけに。

爆笑もののギャグを考えてたら馬の全身は余すこと無く私の体に収まった。

「ごっっっくん……ふぅ、アストラの次くらいにはイケるお味だったわ。合格よ。」

 

「馬完食!速度↑」

 

 

 しかし、はぁー……また食べてたご飯が無くなっちゃった。何度体感しても、この瞬間は、切ない

 

切ない気持ちでお腹をさせっていると不思議なことに怪訝そうな表情を浮かべてトカ肉が言った

 

「始めまして。お嬢さん。改めて説明させていただきます。魔王様直下、七大魔将【憤怒の魔将】バ……」

 

「ねえ、さっきは何言ってんのかさっぱり分からなかったけど、あなたは大人よね。じゃあ何か食べ物頂戴。持ってないとは言わせないわよ。こんなにお腹を空かせている子供が目の前にいるのに、手を差し伸べないなんてキ◯ガイのやる事だわ。大人何だからいつ飢えに飢えた子供とあっても良いように、山のようなご飯を持ち歩いているのが常識よね」

「「は?」」

非常食もどきとトカゲ人間の声が被った。

「そうやってなんにも知らないフリして大人の義務から逃げようとしても無駄よ。だってそうでしょう。大人には、子供をいついかなる時も!病める時も、健やかなる時も、常に文字通り山盛りの食料を与えてお腹いっぱいにする義務があるの!だから一刻も早くご飯をちょうだい!それが無理ならお前の血肉で贖ってよ!早く食べられてよ!お腹が空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて空いて仕方ないの!」

「「え?」」

「さあ!早く早く!焼身自殺してセルフで丸焼きになってくれても嬉しいわ!刺し身も良いわね!その筋肉は齧りついたらどんな食感と旨味とジューシーさが口の中に広がるのかしらその骨を噛んだ時の振動を顎で感じれたらどれほど幸せかしらああああああ!ああ!ああ!喰いたい喰いたい喰らいたい!」

 私の完璧な理論に感動したのか非常食もどきもトカゲ人間も絶句した。沈黙を破りトカゲ人間が口を開いたのはその十秒後だった。

「……イカれていますね。あなた、私が言える事じゃ無いですが。」

「なによ、ちょっと人より食いしん坊なだけの普通の女の子に大して酷い言い草ね。」

「……あー自分を客観的に見れないし見る気も無いタイプなんですね。あなた。恐らくあなたは生きている限り、自然どころか、魔族、人間全てに仇なす者なのでしょうね」

 

「お嬢ちゃん!そんな狂ったフリをしても見逃すほどこいつは甘くないんだよ!とっとと逃げろ!」

「いや、剣士さん。この人本物ですよ、何度か見た化け物共と完全に目が同じですし」

「ごちゃごちゃ言わないでさっさとご飯食べさせてよああもう埒が明かないわねえええええええ」

 

「はいはい分かりました分かりました。とっとと苦しんで死ねよ、生贄」

「ああ!もう無理無理!いっただきまああああああす!」

 

 

そして私はトカゲへ踊りかかった

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