悪食クソ女の暴食日記   作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍

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親子丼喰いたいわ

 

 警鐘を上げ続けている本能を無視して私は【飛行】で空へと飛翔する。トカゲ野郎の背には羽があるから多分こいつも飛べるはず。飛んできてくれれば勝機はあるんだけど。

 

 でもまだ能力が安定しないから後90匹くらいは例の羽人間を喰って能力を安定させたかった……理想を言えばその十倍は食べたいけど。十倍でもちょっと足りないかも知れないわね。念には念を入れて百……いや千倍は喰いたいわ。9万匹の鳥人間とか夢みたい。やばい、想像しただけで心臓がドキドキする。それだけ食べれば酷くお腹が空くようになった今でも足り……るわよね? そう考えてるといつの間にか非常食に貢がせた男物の服の首周りがが涎でびしゃびしゃになっていた。

 

 涎を腕で拭うが、奴は飛んで私を追ってこない。失敗ね。いえ、違う。

 

核熱吐息(ブラストロア)……」

 トカゲの喉の奥が極光を放ったかと思うと“それ”は飛んできた。

 一言で言えば空高く立ち上る火柱、口から吐き出す炎の吐息。しかしその熱と密度と殺傷力はこんなチープな説明では説明しきれない。進行の軌道上のありとあらゆる物を焼き滅ぼす絶望の光線が私に向かって放たれた。

 

 結論から言えば躱わせた理由は運が良かった。何兆何京分かの1で起こる奇跡。それを偶然ひけただけ。放たれた光線の余熱でトカゲの周りの石が液状化し、ギリギリで死の吐息を避けた私の皮膚の一部も炭化する。

 

何度も私の命を助けてきた勘が告げるがアレはやばい、ヤバすぎる。極限まで、熱と、破壊を圧縮して作り出した絶対死、そこから漏れ出した、搾りかす同然の熱ですらこの始末。絶対に食らってはいけない。さっき逃げたら死ぬと感じていたのはこれが原因だったのね。まあ躱せたしもう大丈夫。

 

そう思った私の目に飛び込んできたのは衝撃の光景だった。再びトカゲの喉の奥が極光を放つ。

 

「うわぁ……嘘でしょ」

 

 私は全力で地上に向かって飛んだ。

 とにかく遮へい物がある所へ。

 

もちろん光線の盾にすることを期待している訳では無い。目的は視線を切って光線の狙いをつけさせないため。燃え盛る民家を盾に視線を切って私は逃げるように飛んだ。そして二発目の極光が放たれた。

 ■■■

 結果だけ言えばなんとか逃げ出せたわね。二発目の吐息を吐いた後もクソトカゲは私を捕まえようと追ってきたけど、あっさり逃げることができたわ。しかしこれはトカゲが鬼ごっこが下手くそというわけではない。手を抜いてようと私の倍くらいの足の速さだったあいつは鬼役として優秀だった。単に私がそれ以上に鬼ごっこに長けていたと言うだけ。私は日本にいた時武装警察との鬼ごっこが日課だった。逃げられなければ捕まり捕まれば殺され殺されれば何も食べられなくなる。だから私は必死で逃げて逃げて逃げていた。何も食べられなくなるのは嫌だもの。とにかくこと“逃げる”事において、私に勝てる生物は存在しない。

 それにしても

 

「はぁ────────────────────ー」

 

 ぐううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう

 

 ううっお腹すいた。安心したら余計に。

 

 思い返せば非常食を取り逃してからの1週間は本当にろくな食事ができてなかった。この1週間で食べられたものといえば狼23匹と熊18頭とでっかい蜘蛛18匹と緑ガキ33人と私並のデカさの緑ガキ19人と1メートルくらいのムカデ40匹とうさぎ268頭と猪9頭と小動物72匹と鹿23匹と山猫33匹と犬人間47人だけ。みんな美味しかったけど全く足りなかった。その上日を追う事になぜかどんどんどんどん食べ物が取れなくなるからひもじいったらありゃしなかったわ。

 

「その上今は傷を癒すために喰って喰って喰いまくらないと行けないのに……」

 

そこで私は周囲を見回した。

 

 

「ご飯が無いわ。はぁぁぁ……」

 

 

 トカゲに散々ボコられたけれど、ものすごく痛かったけど、実はそこまで重症ではない。骨も7本くらいしか折れてないし、内臓だって大事そうな部分は潰れていない。私自身の肉だって指が3本持ってかれて脇腹の肉とほっぺの肉が持っていかれた程度。戦力差がありすぎてあのトカゲの思考が“仕留める”から“甚振る”にシフトされたのが良かったわね。それよりも火傷が深刻だわ。それよりもっともっとお腹が深刻だわ

 

「食べ物はどこ? どこなの? いったいどこにあるのよ! ねえ!」

 

 そう言って私は駆け出した。クソトカゲに見つからないように。走る度に折れた骨が肉に食い込んで激痛が走るが空腹はもっと苦しい以上止まるという選択肢はない。

 

「メシーメシー」

 

 食べ物を探しているうちに、それはあった。鶏小屋。辺りの民家は燃えているのにここだけ不自然に燃えてない。

 

 私は鶏小屋まで行き、鍵をそれに付けられた網ごと引きちぎり扉を開け侵入する。私の姿を捉えた鶏たちはまるで悍ましいものでもみたかの様に怯え始める。何でかしら、不思議ね。そう思いながら舌舐めずりする。さあてとイタダキマス! 

 [鶏完食! ]

 [鶏完食! ]

 [鶏完食! ]

 [鶏完食! ]

 [鶏完食! 腕力↑]

 [鶏完食! ]

 栄養が五臓六腑に沁み渡るわ! 傷も骨折もそれなりに治ってる。でもご飯を食べた直後は体の調子が良いけれど、傷はまだ治りきっていない。特に内臓の辺りが。もうちょっと欲しいわね。お肉が。おかわり探しましょうか! 

 

 今の餌小屋の周囲は不自然なまでに燃えていなかった。つまり不自然に燃えていない場所を探せばそこには餌があるということ! 

 私は飛んだ。

 逃げた私を探そうとトカゲが飛び回っているがそんなの関係ない。

 非常食の隠密能力は凄まじかったが私もかくれんぼには一家言ある。隠れながら空へ舞い上がり不自然なまでに火の手の上がってない所を見つけ音も立てずに飛んでいく。そこには馬小屋があった。しかもロバ一匹つき! ロバと私の目があった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ロバ完食! 体力↑」

 

 半端に肉喰ったら余計にお腹減ってきたわ。

 

 でもでもこれで完治ね。

 

 さてさてどうやって奴を仕留めましょうか。

 

 思案しながら歩いていると鳩の死体が転がっていたのでちょっと考えてポケットに入るサイズになるまで食べて残りをポケットに突っ込んだ。本当は今すぐ食べたいんだけど我慢我慢、我慢だわ。そうしているとさっきの戦闘地点に戻ってきていた。あら、こういう事もあるのね。

 待って、ここがさっきの場所なら非常食2号もいるはず。早く避難させてあげ無いと……私のお腹に。そう思って非常食を探すが見つからない。逃げたのかしら。ふんっ! まあいいわ! 別にあんなの食べたかったわけじゃないし! ちょっとばかりジューシーで美味しそうなだけで調子に乗らないで欲しいわね。あんな肉全然食べたくない。食べたくないって言ったら食べたくない。ぐぅ……

 

「お嬢ちゃん。大丈夫か」

 

 そう声がかかったのはその直後だった。

 

 ひ、非常食2号。つい涎が垂れそうになる。「さっきはありがとうな。すまない。俺が全部守らないといけなかったのにお嬢ちゃんみたいなよそ者にまで負担をかけさせて」

 

 逃がしたと思ったお肉が帰ってきた♡これは夢? 痛い! 夢じゃない! やったわ! じゃあさっそくいっただきまああああす

 

「見ず知らずの土地で見ず知らずの俺を颯爽と助けてくれたんだ。まるで御伽噺の英雄様だよ。称賛に値する」

 

 待って、落ち着くのよ私、一撃で仕留めきれず声を出されてあいつが戻ってきても面倒だわ。もっと信頼させてきっちり油断した所を一撃でやらないと。

 

「お礼は良いわ。当然の事をしたまでだし。あなたが私の立場でもきっと同じ事をしてくれたでしょう。きっとね。というわけだからお礼なんて言わせないわ」

「! そうか……でもこれだけは言わせてくれ、ありがとな」

 うんうん適当に言ってみたけど琴線に触れて油断を誘えたようね、じゃあ早速いっただ……

「俺はこの後地下に避難する。皆ちゃんと避難場所に逃げきれたんだ。これ以上あいつと戦って時間稼ぎする理由は無い。嬢ちゃんもきて欲しい。あいつは化け物だ。戦って勝てる相手じゃない!」

 !!! なるほどなるほど。その避難場所とやらに村人がいるわけね。なるほどなるほど。じゃあ案内されるまでこいつを殺すのは後回しにしましょうか、ウフフ。

 ■■■

「嬢ちゃん、こっちだ」

 私達は村のはずれに来ていた。何度かトカゲに見つかりかけたがその度にしっかりと隠れて逃げられた。見つからなかったのもまた奇跡よね。

 おじさんが立ち止まったのは何の変哲もない石畳の前

「アガペネクス」

 非常食2号がそう言うと何の変哲もなかった石畳がずるずると移動し地下への階段が開かれた。「ふーん、面白いわね。まるで魔法みたい」「魔法みたいじゃなくてそのものなんだが……」何言ってるのかしらこのおじさんは。この現代の地球に魔法なんてあるわけないでしょ。それから私達は音を立てないように、それでいながら迅速に地下に潜って言った。地下に着いたあと非常食2号は私を、この村を助けてくれた人だと避難民に紹介する。ただその言葉は私の耳の左から右に消えていく。目の前の光景があまりに衝撃だったから。()が十! 二十! 三十! いっぱい! 

「ああいう手合い対策の為の避難場所だ。悪くないだろ」騒がれても面倒だしあいつを殺すまでこいつらを食べるのは我慢ね。おあずけを喰らった犬肉みたいな気分だわ。そう思ってると肉共が群がってきて話しかけてくる。

 

「お姉ちゃん冒険者か? アレ相手に戦闘が成立するとかすげーな」

 

「よそ者なのに首突っ込んで来やがって……まあ感謝してやらないことも無いこともないと言うか……」

 

「うるせーなおっさんのツンデレなんか価値ねえんだよ素直に話せや!」

 

「助けていただきありがとうございました!!」

 

「そんな血まみれになってまでなんで俺たちのために戦ってくれたのか……ありがとう。ヒーロー」

 

「なんで男物の服を着てるんだ? それエリオットのよく着てた奴と同じブランドの奴やん」

 

口々にざわめきが起こる。

 

「お前ら落ち着け、あいつに聞かれたらどうなると思う。もっと声抑えてくれ」

 

一瞬で声が消える。静寂の中

 

「ガランドちゃん生きてたんだね〜良かった〜……ほんとに良かった〜」と呑気そうな声と共に女の肉が出てきた。どうやら非常食2号の名前はガランドと言うらしいがそんなのどうでもいいわね。問題は出てきた女の肉。こいつはぜっったい美味しいと本能が告げてる事。特に胸の辺りの霜降り肉が大きくて食いでがありそう。

 

「ありがとうね〜お嬢ちゃん〜私の大切な人を助けてくれて〜今生の別れかと思ったわよ〜」

 

「いえ、いいわ。お礼なんて」

 

お礼でお腹が膨れるかっての。そう言うと美味しそうな肉は雰囲気が変わった。表情こそ一切変わって無いものの今までのぽやぽやした雰囲気が消え神聖な雰囲気が漂う。「いえ、本当にありがとうございます。冒険者様。私の夫を失えば、私は耐えられなかった。何かあなたには別の目的があるのでしょうが、ソレでも私の愛する半身を助けて頂いたこと、一生忘れません」そう言って深々と頭を下げた。頭を上げた時にはあの雰囲気は消えていた

 

「それにしてもジローが心配だ。俺が薬草取りに行かせなければ」

「大丈夫よ〜ジローちゃんあの子アレでそういう勘は鋭いから〜」

 んー? ジロー? どっかで聞いたような? 、あっそうだわ。確か非常食の名前だわ。非常食2号って本当に非常食パパだったのね。じゃあこっちの美味しそうな肉は非常食のママかしら、ウフフ。じゃあコイツラを非常食の目の前で食べて親子丼と洒落込むのも悪くないわね。

 まあその前にやる事があるんだけど。

「よし。体力も回復したしあのトカゲを殺しに行くわ」

 

「待ってくれ!」

 

 非常食パパが両手を広げて私の前に立ちふさがる。

 

「あいつがいくら強くとも、認識阻害の魔術がかかってるから滅多な事ではここを見つけられない! もう戦う必要なんて無いんだ!」

 

「そもそもあいつとは因縁があるのよ。絶対に消えない傷を心に付けられた因縁がね。だからいいわお礼なんて。私がやりたくて勝手にやってることだし」

 

「因縁?」

 

 非常食2号が言う

「私はあいつに大切な物を奪われたの。とってもとっても大事な、世界で一番愛していた()を。だから私は奴をとことん痛めつけて殺してやりたい。村を焼かれた復讐のため、大切な物を奪われた怒りの為。だから私は行かなくてはならないの。安心して、戦ってもあいつにここがバレないようにするから」

 

 私の表情もこれ以上無いほど曇る。

 

「何があったのかは聞かないよ……俺なんかがその苦しみを理解できるとは思えない。嬢ちゃんの苦しみは嬢ちゃんにしかわからない。ただ……分かった止めない」

 

「ありがとう、じゃあちょっと剣を貸してくれるかしら。素手であいつをどうこうするのは無理だわ」

「ああ、業物だ、大事に使ってくれ」

「ありがとう」

 

「役に立つかは分からないけど俺も助太刀させてもらう」「貴方が死んだらあの女の人が悲しむでしょう」ストレスで肉の質が悪くなっても困るわ。「でも私が死んだとしても悲しむ人間は誰もいないわ」あいつらが聖女たる私の聖性と優しさを理解できないぼんくらだからだけど。「お嬢ちゃん! そんな事言うな! 俺は悲しい」「私も悲しいわ。恩人が死ぬのは」「俺も」「僕も「俺も」」非常食ママを皮切りに口々に私が死ぬと悲しいと言う言葉が村人達から発せられる。よしよしなかなかいい感じに信頼を勝ち取れたわね。こいつらを後でパクパクですわした時どんな表情を浮かべるか楽しみだわ。その時ザラザラとした低い声が響き渡った。「ほう、化け物の癖に随分慕われていますね。村人さん、悪いことは言わないです。その方は信用しないほうが良いですよ。普通に最悪の部類の人格してますよ。その方。おや、何故か傷も癒えてますね。なかなか腕のいい白魔術師がいるようだ」「バルバトス。……何故ここが分かった……」非常食パパが言う「【生体感知のマジックアイテム】で。そちらの黒髪黒眼の化け物さんが落としたんですよ。私の二発目のブレスから逃れる時に」あの時か! ごちそう時計を落としたのは。

 

「まあ、私の狂気に巻き込まれて死ぬ皆様方には同情しますよ。やる事は変わりませんが。核熱吐(ブラスト)……」

 

「待って!」

 

 吐息を今にまさに吐こうとしているトカゲに言う。

 

「村人達に手を出さないで。これ以上私から大切な物()を奪わないで!」

 

 私の悲痛な叫びが地下に響き渡る。

 

「ギャハハ!」

 

 トカゲが吹き出した。面白くてたまらないものを見るような目で

 

「ギャハハハハ! ヒヒヒ! なるほどなるほど、嘘ついてるわけでは無いのに、こんな邪悪な怪物が怪物らしく振る舞ってるのに、出力されるのは英雄の様な発言! ヒヒ……フフフ……ギャハハハハ! ……笑わせてもらったお礼です。分かりましたよ。上で待ってます。一人できて下さい。貴方が死ぬまでは村人に手を出さないのはお約束します」

 

 そしてトカゲはカツンカツンと階段を登っていった

 

「というわけで私は行くわ」 

「……嬢ちゃんが死んだら俺は嫌だ」「私だって貴方達ががあいつの息で()()()()()()()()()悲しいわ」主に食糧的な意味で。「お姉ちゃん。大丈夫? 勝って、生きて戻って来られる?」肉付きの良いガキが心配そうな目で言ってくる。ああ、心配そうな目美味しそう。引きちぎって味見したい……我慢、我慢よ私。トカゲを仕留めた後安心して喜んでいる所をぶすりとやるまでの辛抱だわ。「勝つわ! 楽しみにしててね!」勝った後纏めてみーんな私の胃袋に収まるのもね。と小声で付け足した。「なんもお礼はできないが。本当にありがとう! 英雄様!」「だからお礼なんて要らないっての……いや、待って」そして私は振り向いた。「もし生きて帰れたら食事をお腹いっぱい食べさせて欲しいわね」

 

 ■■■

 

 カツンカツンと石畳を踏み私は地上に出る。

 

 ご飯を食べた後だけあってなかなかに体の調子も良い。これなら第二ラウンドに行けそうね。

 

「おまたせ」

「いえいえ全然待っていないですよ。どうかお手柔らかに」

「そう」

 

 その時奴の方から漂ってきた匂いに反応して私のお腹が凄まじい音を立てる。

 

「やーんはしたなーい。恥ずかしいわー」

 

「クックック……私の同僚が貴方をみたら喜ぶと思いますよ。【暴食】の二つ名を冠しておきながら他者の食事を見るのが好きで本人は少食とかいう訳の分からない方ですが、まあそういう所が愛嬌があるんですよね。もし私を倒せたら七大魔将の【暴食】とあってみてください。きっとお腹いっぱい食べられますよ」

 

「その割に負ける事一切考えてなさそうね」

「そりゃそうだろ人間(ゴミクズ)

 

 トカゲが急接近して拳を振るった私は剣でそれを受け止める。第二ラウンドが始まった。

 

 直撃すれば一撃で死ぬであろう、目で捕らえられない速さの拳の嵐を、視線でどこにくるかを筋肉の隆起でタイミングを見極め、勘でもって躱しつつ

 なんとか剣で反撃するがその鱗に刃は通らない。鱗同士の隙間に剣を通し筋肉を直接斬りつけるがそれも弾かれる。

 

 やっぱり強い。手を抜いてこれかよ! 武装警察最強の金髪の男が脳裏にちらついた。奴と戦った時の次に絶望的な戦いね。これ。絶望的だわ。

 

 大ぶりでありながら、目で捉えきれない右フックをしゃがんで躱した直後私は空に飛んだ。

 

「またそれですか、撃ち落とされて終わりですよ。核熱吐(ブラスト)……」

「あらら、また地面からビーム? 地べた這いつくばってる下等なトカゲにはお似合いだわ」

 

 挑発する。こいつはキレ易いのは分かっている

 

「ギャハハハハ! おもしれーじゃんお前! よしよしそんな痛めつけられて死にてーんだな! よし決めた。誘いに乗って素手で解体してやるよ下等生物!」トカゲが消えた。次の瞬間音よりも早く私の元へ飛んできたトカゲに喉を掴まれる。それと同時に何をやったかは知らないけど私の翼に穴が開く。ダメね、穴が空くと飛べないわ。「まずは一旦ミンチだな。安心しろよ、ポーションですぐ直してやっから」

 私を叩きつけるような体勢でトカゲは一気に下降する。

 

 よしよし狙い通り。

 

 私は剣で私自身の掴まれている喉の肉を切り離し拘束から逃れる。

 

 凄まじい激痛と共に酸素が私の身体から失われる。

 

 もちろん死ぬつもりは無い。死ぬのは嫌だわ。もの食えぬ肉片になんてなりたくないし、もっともっともっともっともっともっともっともっともっと食べたい。大好きな大好きな、大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな食事ができなくなるなんて考えただけで気が狂いそうだわ。

 

 その思いのまま隠し持っていた鳩肉を喰った。すると馬を食べて腕を生やした時同様再生能力が発動。喉も羽も再生する。自由落下しながら、蜘蛛糸を【絞首紐(キュロット)】の形にしてクソトカゲの首にかけた。そして治った羽で全力で私は真上へ全力で飛んだ。自由落下よりも速い速度で下に落ちるクソトカゲと、それ以上の速度で真上へ飛ぶ私。【絞首紐(キュロット)】の掛け手と掛けられ手が正反対に物凄い勢いで移動した事で物凄い勢いで絞首紐が締まった。

「っ──ー!」「アハッ♡」

 決まったわね。流石の結構苦しそうにしてるわ。つい口角が上がりそうになるけど我慢我慢。

 この程度でなんとかなるような生温い奴でないのは分かっている。いま藻掻いているのは多分今まで味わった事のない不快感で混乱してるだけだろうから。

 

 重要なのはここから。

「いっただきまあああああす!」

 紐を思い切りたぐり寄せ、喉笛を噛みちぎって一気にトドメを刺そうとする

 勘が言う、こいつの喉元の、唯一逆向きになった鱗、そこが弱点だと。

 が、それにゾッとした様な表情を浮かべたトカゲに裏拳で下顎を物理的に砕かれる。

 しかし噛みつきとか言う、一撃必殺だけれど隙だらけの攻撃が潰されるのなんて予想済み。あらかじめ【毒牙】で爪に纏わせておいた。圧縮猛毒を帯びた爪を

 口の中へ突っ込み、そのまま口内に爪を突き刺して、毒を注入する。ここなら鱗の防御は関係ないからね。

 手応えあり。

 しかし次の瞬間私の指も噛みちぎられ、そのままもむもむと咀嚼され、ゴクリと飲み込まれた。

 

「ああ! 私の指があぁぁぁぁ!」

「いやはや、驚きました。貴方にもそういう人間らしいリアクションがあったんですね」

「その指は私が食べたかったのに! 糞っ糞っ、喰い殺してやる! クソトカゲ! 生きたまま丹念に丹念にバラバラに引き裂いて、刺身にして美味しくいただいてやるわ!」

「……」

 

 何故か呆れたような顔をしたトカゲ、それがよろめく

「あ?」 

「ウフフ、毒が回ってきたようね」

 

 そこから形勢は逆転した。噛みつきはギリギリで避けられるが他の攻撃は面白いように当たる。

 

 蹴られ、切られ、こかされ、さらに毒を注入され、発剄で内部破壊をくらい、かったい両目は潰れ、あっという間にトカゲはふらふらになった。

 

 目まで硬いとかめちゃくちゃね、借りた剣でゴリゴリ削らなければ目すら破壊できなかった。でもでもそれでもぶっ壊した事に変わりは無い。

 

「ウフフ。両目つぶれちゃったわね。あらあら、震えてるわね、可哀想に、でも手加減してやれないわ」

 

「じゃあそろそろ」

 私はがばっと大口を開けた「いっただっきまああああ」

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 トカゲが大笑いしだした。

「お見事。お見事。お前マージで強えよ! ただ誤算があります」まるで麻痺毒で動きが鈍ってのが演技だったかのようにこちらの攻撃を躱して強烈な反撃をしてくる上に目までいつの間にか治ってる。

 

「私、単純に強いんですよ。それはもう、めちゃくちゃに。【特殊能力(スキル)】だか知らねえけどテメェのチンケな毒が効くわけねぇだろ」

 ……ちょっとこれはヤバそうね

 

 ぐううううううううううううううう……

 

 お腹はそれ以上にヤバそうね

 耐えられるかしら。主に空腹に

 

 それからは地獄だった。

 甚振られる殴られる指の間に針を突っ込まれるやらの拷問をされて四肢をもがれて私は芋虫の様に這いずる事しか出来なくなった。

 まあそれは良いわ。全然良くは無いけど、我慢できる範疇

 それ以上に辛いのは物凄く美味しそうな肉が目の前にあるのにおあずけをされている事。

 ああ! お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉お腹空いたご飯食べたい食べたい食べたい食べたい

 

「お前全然応えねえのな。まあ良いや。あばよ、クソ女。これが俺が自然様にできる唯一の真っ当な善行だ」

 トカゲの喉の奥に極光が集まる。

核熱吐(ブラスト)……!」

 次の瞬間鱗の隙間を通して、トカゲの背後に短剣が突き刺さった

 

 




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