悪食クソ女の暴食日記   作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍

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クソ女と契約する羽目になってやがる

「は?」

 クソ女の狂気にまみれた瞳に困惑の色が浮かんだ。その目にはこいつ何いってんだといわんばかりの色がありありと浮かんでいる。

 

 こいつとはこれ以降無駄に長い付き合いになるが、ここまで困惑という感情を表に出したのはこれが最後だ。

 

「ねえ!ジローちゃん大丈夫!その話は後で聞くけど今そんな事言ってる場合じゃないわ!」

「ジロー!怪我はないか?お嬢ちゃんも!」

 

 

 

「あ、ああ無事だよ、父さん、母さん。俺達は問題ないから他のみんなが大丈夫かどうか見に行ってくれ。多分あそこの避難所にいるんだろ。俺達は問題ないけど疲れたからちょっとほっといてくれ。」 

 母さん達が俺の足が無くなっている事に気付かないよう、俺は幻影投影型マジックアイテム【幻視幻妖】で誤魔化しながら言った。一刻を争うこの状況下で足を心配されている時間なんて無い。

 

 ■■

30分後、我が家では丸型テーブルを囲んで、俺、母さん、父さん、クソ女が並んでいた。

  

「こんなに英雄精神の溢れたお嬢さんとくっついてくれるならジローも安泰だわ〜」

「ウフフ、どういたしまして」

化け物はそう言いながら机の下で俺の足を踏みつけてくる。どう踏めば相手に最大限の苦痛を与えられるか熟知している奴の踏み方だった。しかしこの家に入ってからこいつは誰も殺していない

 

 何故クソ女がこんなに大人しくしているのか、それはとある契約によるものだ。

 

 あの後、表面上は無傷の俺と、無傷になったクソ女を見て安心した父さん母さんは避難民を呼びに避難所に戻っていった。「ジロー、その話後でしっかり聞かせろよ」と言い残して。母さんに至っては「後は若い2人でごゆっくり」だそうだ。

 

 残されたのは俺と呆気に取られたクソ女。

 辺りを沈黙が支配した

 クソ女を困惑させて隙は作った。今の、隻脚、隠密無し状態だとどう考えてもパワーアップした今のカス女とは戦っても勝てない。なので後は言葉の勝負に持ち込んでどうこうするしか無い よく忘れるがクソ女は一応人間なのだ。食べる事で思考のほぼ全てが占有されているが、その“食”に対する合理性は逆手に取れる。さあ、一世一代の勝負だ。()()()()()()クソ女を“説得”する

 

「あの、ご主人様お腹は空いていませんか?」

「え、あ、ええもちろん。とっても、どうしようもなく、頭がおかしくなりそうなほどに空いてるわ。もうペコペコだから今からあなたたちを喰うわね。いっただきまああ」

 

「そのペコペコのお腹を満たす事を約束できると言ったらどうしますか。その為の策が私にはあります。俺の指示に従ってもらえるのならお話します」

 

「……本当?それが本当なら夢のような話だけど……」

 

 そう言ってこちらをクソ女は睨め付け舌を出した。

 

「お前とりあえず適当な嘘をついて私を騙そうとしてるわけじゃないわよね。」

 

「ご主人様。そんな事があろうはずがございません。ですがあなたにはなにもやっていないのに治安維持組織に追い回されたり、店に入っただけで客も店員も料理人も逃げ出して、誰もいなくなった店内で冷えた生肉を齧ったりした事は無いでしょうか。何の心当たりもないのに殺人鬼呼ばわりされ、泊まるところも確保できなかった経験は無いでしょうか。」

 

「へぇ、どうして知ってるの?その通りよ。」

 

「失礼ながら申し上げますがそれはご主人様に常識がないからでございます。人前に出る時は服を着る、人肉は大っぴらに喰わない、料理には金を出す。そう言った事を我慢して行えば、結果的に食べられるご飯の総量は多くなると思います。」

 

「ふざけないでよ、人肉食べちゃだめ、お金の分までしかご飯食べちゃダメとか早々に餓死するじゃない。あなたは私を飢え死にさせたいの?常識なんかでお腹は膨れないし、そんな守っていたら全然食べられないわよ。私はその考え方をして、それで生きてきた。今さら変える気なんてさらさら無いわ」

 

 「それで結局追い回されて料理された飯を食べられなければ世話無いですよ。要は、お金です。お金さえ稼げば、美味しいものを思う存分食べられる。人肉がダメというのも、代わりに人肉以外の魔物を食うとかすれば良い。お肉を食べつつお金ももらえます。」

 

「むぅ……」

 

「それに俺が手助けすればより効率よく金を稼ぎ美味しい魔物を見つけることができます。それに加え二つ、貴方が満腹になれるであろう方法を知っています。私と組めばもっともっと美味しいものをたくさん食べられますよ」

 

「まあ、言葉でだったら何とも言え……じゅるるる!……るわよね」

 

「見たところご主人様はこの世界に詳しくないご様子。それに大しても情報を提供できます。このままずっと森にこもって狩りし続けるおつもりですか。森の生き物と、村人とか言う栄養状態の良くないご飯だけ食べるおつもりでしょうか。街に言ってもお金が無ければご飯なんて食べられません、食べられるわよと言わんばかりの顔してますがそれも追い回される原因の一つです。」

 

「知識が交渉材料なら貴方をとっととぶっ殺して終わりだわ。知識なら後でいくらでも得られるし。いや、ここで拷問して適当に知識を吐かせても良いわね。」

 

「あなたが知らない知識を得るまで何年かかります?その知識を得るまでの間のあなたの食事は、今知識を得るよりずっと貧相なままだ。拷問も同じです。知識は適切なタイミングで引き出せなければ意味が無いのですから。役に立ちますよ、私」

「うーん……」

 クソ女が頭をポリポリとかく。

「私の目的はご存じの通りお腹いっぱい食べる事。そして安定して満腹になれる環境が整うのであればこの村に手を出す理由がなくなる以上、貴方が私に協力するのは筋が通ってるわね」

「なら…」

「でもね」

俺の頬を両手で挟んでくる。

 

「例え満腹になったとてこの村の連中を全員喰い殺す事をやめる気はないわ」

「……何故でしょうか。」

「みてよこの傷、あなたに傷つけられてとってもとっても痛い痛いだわぁ」

 

無傷の右手の甲をひらひらと振る

 

「そんな事しちゃった貴方が苦しむなら喜んで村人全員お腹送りにするわ、うふふっ!それはとっても楽しそうだもの。」

 恐ろしくクソ女らしい答えが返ってきた。予想通りだ。

 

「なら話は簡単です。」

「なーに?」

 「貴方が継続的に満腹になれる状況を作り次第、俺は自殺します。そうすればその理由も無くなるでしょう」

 

「ふざけないでよ。私は貴方を思う存分痛めつけたいの、死に逃げなんてさせるわけないでしょ。死に逃げなんかしやがったら私、何するか分からないわよ」

 

「それでは満腹になれる環境を得た後、最後に私を拷問死させるのはどうでしょうか。どれ程拷問されても私は文句は言いません。それであなたの鬱憤も晴らせるはずです。これでこちらの出せる手札は全てです。交渉が決裂するなら、あなたと全力で戦います」

 

 そう言った俺の目を奴はじーっと見てくる。

 

「その目不快ね。日本の武装警察が決死の覚悟を決めた時に見せる目だわ。あいつら手負いの獣みたいなタフさで襲いかかってくるから厄介なのよね。ただでさえ強い……いえ、厄介な貴方が、その目になったらまあまあてこずりそうだし……」

 

 そう言ったクソ女の口元から真っ赤な舌が覗いた。

「まあ良いわ受けて上げる。その契約とやら」

 

 第一関門突破!喜びのあまり小躍りしたくなったが隙を見せたらすぐに付け込まれ交渉ごと力尽くで潰されるのは目に見えている。俺は全力でポーカーフェイスを保った。

 

「ありがとうございます。しかし貴方を満腹にする3つの策ですが、この方法をとるには半年ほど時間をいただきたい。」

「あ?」

 クソ女の目が殺気立つ

「契約後に余計な事を付け足すのはルール違反よね。私は遅くても1時間後には食べ切れないほどのご飯を食べられると思ってお前の話に乗ってやったの。後からルール付け足すなら私もルールを付け足すわ。そうね……後からルールを付け足すやつとその大切な人は例外的に食べて良いとか、ね」

 

 食べものが絡まないと2桁の足し算もできないクソ馬鹿が、人前に全裸で出るとヤバいという常識もないアタオカが、こういう場面でだけ狡猾に理を振りかざしてくるのは本当に厄介だ。そして自身に利が無いと判断すればこいつは契約の破棄など何とも思わない。

 

「半年経つ前にも、できる限りの食料を取れるよう全力でサポート……」

 

「口では何とでも言えるわよね、できる限りってどれくらいよ、誠意を見せてよ、もっと具体的な誠意を」

 「村が人質な以上舐めた態度はとれませ……」

 

「もし途中あなたの考えが変わったら?あなたの“これくらいは良いだろう”となるラインはどこ?無いと思うけど村人が大事なのが演技だったら?それは保証にも誠意にもなり得ないわ。」

 こいつ……馬鹿のくせにこういう時だけ頭が回るのマジなんなんだよ!

 

 「…そうですね。賊やってた時の貯金の余りが200万Gあるのでそれを全額あなたに差し上げます。」

 

 そう言って金の入った袋を差し出した。

 

「どれだけ食べられるの?」「はい?」「これでどれだけ食べられるのかって聞いてるの」ああ、そうか。

「だいたい5000Gで1キロのの馬肉が買えます。」

 「ふーん400キロくらいしか食べられないのね……でも良いわ。料理されたご飯を食べられるんだもの。料理されたご飯なんて何年ぶりになるのかしら……ラーメン……すき焼き……天ぷら……おにぎり……カツ丼……ううっ想像するだけで腹ペコで狂いそう……」

 

 ぎゅおごぎゅるるるるると獣の唸り声の様な音が響いた。こいつ、本当に意地汚え……後で聞いた話だが避難所ではこのときコイツの腹の音を新たな魔物の襲来だと勘違いしパニック状態だったようだ。

 

 「経験上村人皆殺しにして略奪しておけば大体その60倍程度は手に入るんだけれど……まあ、あなたの話に乗って上げる。優しい優しい私に感謝してよね。」

 よっしゃ、第二関門突破!

 

「では契約締結で良いでしょうか」

「良いわ」

 

「まずあなたは俺の指示にできるだけ従う事」

「あなたは私をお腹いっぱいにするのに全力を尽くすこと。」

 

「では契約を結ぶ上で、三つ約束があります。」

「何かしら」

 

「お腹が空いても人前で人間を襲って食べてはいけません」

「できる範囲で我慢するわ」

 

「この村の人間には絶対に手を出さないで下さい」

「善処するわ」

 

 「食事はお金を出して買うこと」

「検討を加速するわ」

 

信用できねえ……

 

 「ん…そう言えばご主人の名前は」

 

 「クロエ、カワムラクロエ」

 ■

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