悪食クソ女の暴食日記 作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍
「いいプランも直近では二つありますぞ!! ではまず冒険者ギルドにGO!」
拙者の必死の叫びに、クロエ氏は首を傾げた。その拍子に、口の端から涎がツーっと垂れる。
「ギルド? ……何それ。美味しいの?」
「場所です! 組織の名前です! そこに行けば、金と肉が手に入る夢のワンダーランドですぞ!」
「ふーん……。またお店? さっきのお店は美味しかったけど、もう品切れなんでしょう? ギルドってお店は、在庫は十分なのかしら」
クロエ氏の認識が致命的にズレている。だが、ここで「仕事斡旋所」などと言えば、「働くの? お腹減るからヤダ。やっぱり腎臓もらう」となりかねない。
拙者は脳みそをフル回転させ、彼女の琴線に触れるプレゼンを試みた。
「い、イエス! ある意味では店です! いいですかクロエ氏、ギルドとはですね、『セルフサービスの超巨大ビュッフェ』の受付カウンターみたいなものです!」
「ビュッフェ……? 食べ放題のこと?」 ピクリ、とクロエ氏の食指が動いた。
「左様! そこに行けば、メニュー……もとい『依頼書』というものが壁一面に貼られております! そこには『巨蛇王アストラ』だの『オーガの群れ』だの、極上の食材リストがずらりと並んでいるのです!」
「へぇ……。メニューが壁に貼ってあるのね。大衆食堂みたいで親しみが持てるわ」
「そ、そう! そして我々はそこから好きな『メニュー(獲物)』を選び、現地へ赴き、調理(戦闘)し、その場で実食! しかも、食べた後に『食べました』と報告すると、なぜかお金までもらえるのです!」
クソ女が目を見開いた。 その顔に、純粋な驚きと喜びが広がる。
「何それ……最高じゃない。食べて、お金がもらえるの? 普通は逆よ? 食べてお金を払うのが文明のルールだと思ったけど……この街、なんて太っ腹なのかしら!」
「で、でしょう!? 冒険者システム、万歳ですぞ!」「うふ、うふふふふ! 気に入ったわ。そのシステム、とても合理的ね。私が満腹になるまで、その『ギルド』って店が破産しないか心配だけど」
彼女は包丁を服の裏に隠しながら、弾むような足取りで歩き出した。 腎臓の危機は去った。だが、新たな危機が頭をもたげる。
「ねえ、非常食。そのギルドってお店、人間のお肉も置いてあるの?」
通りすがる通行人をじっと見つめながら、クロエ氏が不穏なことを口走る。
「NO! ノーです! そこだけは注意点! ギルドという組織はですね、『ゲテモノ専門店』なのです! 人間のようなスタンダードな食材は扱っておりません! モンスター! 魔獣! 亜人! そういった珍味専門なのです!」
「ちぇっ。……まあいいわ。珍味も好きよ。食べたことない味が一番興奮するし。……ねえ、その辺歩いてる、鎧着たお兄さんとか、殻付きのエビみたいで美味しそうなんだけど、あれもメニューじゃないの?」
「違います! あれは同業者! いわば、同じビュッフェに並ぶ客です! 客を食っちゃダメ!」
「客……。……ライバルってことね? 私の獲物を横取りするかもしれない」
クソ氏の目つきが鋭くなった。
食欲から、排除の論理へ。
彼女の中で「冒険者」のカテゴリが「餌」から「餌を奪い合う敵兼エサ」にスライドしたようだ。それはそれで危険だが、食べられるよりはマシだ。
「ま、まあ、そういう側面もありますが! 基本は仲良く! どうしても邪魔されたら、その時は……まあ、自己防衛ということで……」
「うふふ。わかったわ。私の食事を邪魔しない限りは見逃してあげる。……でも、私の分のお肉に手を出したら、その手ごと食べちゃうから」
ぐぅうううううううううううううううううううう。
会話のシメとばかりに、彼女の腹から地獄のファンファーレが鳴り響いた。 さっき食べた猪や鹿は、もう完全に消化され、彼女の血肉となり、さらなる飢餓を呼び覚ましているようだ。
「あぁ、お腹が空いた。お腹と背中がくっつくどころか、胃袋が背骨を消化し始めそう。……ねえ、ひげさん。ギルドまであと何秒? 私、あと100秒以内に何かが口に入らないと、理性が保てないかも」
「すぐ! すぐそこです! あの一際大きな建物! あれが『食材管理センター』こと冒険者ギルドです!」
「食材管理センター……。いい響きね。きっと奥の倉庫には、解体されるのを待つお肉たちが山積みになっているのね……」「(絶対違うけど訂正したら殺される……!)」
クロエ氏は期待に胸(無いが)を膨らませ、ギルドの扉へと手をかけた。
周囲の冒険者たちが、ギョッとしてこちらを見る。 彼らはまだ知らない。 エランテルに、ドラゴンよりも凶悪な、底なしの捕食者が降り立ったことを。
ぶっちゃけ盗賊のキャラ変は
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あり
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無し
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