悪食クソ女の暴食日記 作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍
非常食…もとい盗賊の男を捕まえて1時間程歩いた頃、
静寂の森に、鳴き声が響き渡った。 鋭く、甲高く、不快な音色だわ。 初めて効くわね。発生源は美味しいのかしら
料理人は、その音に身を震わせた。「ハーピーです! 空を飛び、急降下攻撃を仕掛けてくる魔物です!」
「魔物?なにそれ 」 私は首を傾げた。 そんな言葉は、今まで聞いたことがなかった。 私にとって世界は二種類に大別されていた。
食べられるものと、食べられないものにね。なお食べられないものはほぼ存在しないわ。そのため、魔物とやらが何なのかは知らないけど多分食べ物に分類されるのでしょう。そう思いじゅるるるると涎をすすり思いっきり舌舐めずりをした。
空を見上げると、鳥のような生き物が、旋回しているのが目に入った。 鳥? いや、違うわね。 鳥よりも大きく、羽は鋭く、鉤爪は恐ろしいほど長く鋭利。 顔は女のような顔をしているわ。やばっすっごく美味しそう。そして奴は私達を食べ物と認識したのか急降下しながら蹴りを繰り出してくる。
こいつ何か誤解してるわね。となりにいる料理人は確かに食べ物だけど私はごはんじゃないわ。というか私は食べるのは大好きでも食べられるのは大嫌いだわ。食べられて死んじゃったら、もう何も食べられないじゃない。
そして、その「変な生き物」に、素早く手を伸ばした。
私はその鳥もどきを、簡単にキャッチし、木に叩きつけた。「げじゃ…」木が倒壊する程の勢いで叩きつけたので鳥人間はピクピクと痙攣するだけの餌となっていた。うんうん、生きていてかつ、動けない。我ながら良い加減に叩きつけたわね。やっぱり餌は新鮮なままいただくのが通だし生きたままかぶりつくのが理想的だわ。ソ・レ・ジ・ャ・ア・イタダキマス!がぶり!がぶり!ごっくん!……うーん 肉は、硬く、筋張っているけど、鳥の旨みにあふれているわね。結構好きなお味だわ。どれどれ足のお味は……そう思って私は思い切り足の付け根を噛み砕き右足を一本食いちぎりながら取り外した。
うん!やっぱり美味しいわ!右足をバリバリボキンゴックンバリバリボキンゴックンと貪って平らげながら力まかせに左足を引きちぎり、右足の最後の一片を飲み込んだ次の瞬間思い切り左足へとかぶりつく。
気付いたらあっという間に鳥人間の下半身が無くなっていた。ああ……ほんっとに残念。ちょっと味見しただけで無くならないでよ。そんなにあっさり無くなる根性なしの肉だらけだから私はお腹が空いて空いて仕方が無くなるのよ……根性なしの肉に失望したら余計空腹が酷くなってきたのでたまらず喉笛にかぶりついた。
ここで鳥人間は絶命したようだが私は気にかけずその喉笛を三口で胃に納め頭もバクバクと平らげ、パンパンに詰まった内臓を次々と引きずり出し頬張り咀嚼し嚥下し、スッカスカになった上半身を笑顔で貪った。
「ハーピー完食!素早さ↑【飛行】習得」
「……ふむ。 まずまず、かしら」 私は、満足げに、血まみれの口元を料理人に縫って貰った服でゴシゴシと拭った。
形は人間なのにお味は鳥肉とかなかなか面白いお味ね。そう思っている時に横を通りかかったトカゲをキャッチし一口で飲み込んだ。
「トカゲ完食!」
料理人は、私の行動を、呆然と見つめていた。
「今のは魔物です。人間を襲う恐ろしい存在…のはずなのですが」
彼は、化け物でも見るかの様な目で震える声で説明した。
「魔物ね。 要は私の知らない餌かしら。日本で取れる餌はほとんど全種類食べたけど、日本の外にはこんな餌もあるのね。要は国外の餌が魔物なのね。もしかして初日の骨もそうだったりするのかしらぁ? ウフフ、まあ、合格よ。なかなかのお味だったわ」
私は、そう言って、もう無くなった鳥人間の残した血溜まりにに軽く微笑んだ。 「はあ……それにしても、生で食べてもなかなか行けたし、焼き鳥にしたらもっともっと美味しかっただろうに……残念だわ。……焼き鳥の事考えたらお腹空いてきた……鳥◯族行きたい…ねえ、非常食。今度あいつ捕まえたら焼き鳥にしてよ、焼き鳥欲が出てきて、お腹が空いて死にそ……」
「ま…まだ喰うんですかい?」
「成長期の子供が食べても食べても足りないのは常識よね」
ぐぅぅ……
はぁ。またいっちいちうるさい腹の虫が暴れ出したわ。
虫は基本的に美味しいから大好きなのに、この虫だけは喰えもしないくせに私のお腹様に居座っては、聞いてるだけでお腹が酷く空いてくる音を鳴らしまくるからほんっとうざい。
そう思っていると近くの樹液に虫が集まっているのが目に入ったので片っ端から口の中に放り込む。
[カブトムシ完食!]
[カブトムシ完食!]
[カブトムシ完食!]
[オオムラサキ完食!]
[雀蜂完食!]
[雀蜂完食!]
歯に挟まった甲殻をボリボリと噛み締めていると非常食の顔が目に入った。
「あのご主人様…どうなされました…」
「気にしないで。ついうっかりかぶりつきそうになるものの、なんとか我慢してる状態なだけだから」
「い…やだ!助けて!まだ待って!」
だめだめこいつは貴重な料理人だわ。できる限りこき使ってから最後に美味しくいただかないと。食事は質よりも圧倒的に量の方が大切なものだけれど。質をおろそかにしてはご飯様に失礼だわ。
それでもついうっかり舌舐めずりをしてしまう。
彼の怯えた顔は、確かに滑稽だった。そしてそれ以上に美味しそうだった。
料理人は、私に怯えながらも、さらに魔物について説明を始めた。
「ハーピーは、空を飛び、鋭い爪とくちばしで獲物を襲います。そして森の奥深くには、もっと恐ろしい魔物たちが潜んでいるんですよ。【軍隊日熊】に【撃吹黒狼】、【大蛇王アストラ】なんかその典型ですって!」 彼は、必死に、言葉を繋いでいった。 まるで、黙ったら私のお腹に収められてしまうかのように。
ウフフ……そんなに怯えなくても利用価値があるうちは我慢出来るわ……まるで化け物を見るような目で見るなんて失礼じゃない? でも、ああ、やっぱりよく見ると美味そうね、こいつ、よ……涎が…!
料理人を見つめながら涎を啜り直すと、料理人は吐いた。
でも話は有益だったわ。この森の危険性、そして、私の知らない「魔物」とかいう食べ物の話を聞けたから
すると空再び騒がしくなった。 先ほどのハーピーよりも多くの、鳴き声が、森中にこだまする。 地面を見下ろすように、7匹のハーピーが空を飛び回ってる。
そいつらは、今度は石や糞を投げてくる。 空からなら安全だとでも思っているのかしら。 滑稽だわ。 しかし、その攻撃は、私を仕留めるには全く威力が足りない。 それどころか、その攻撃をかわす動作すら、面倒くさいだけ。
私は、先程食べたハーピーの残滓らしき力、いや、感覚と言ったほうが良いかしら…… その羽ばたく感覚に意識を集中してみるわ。 すると 私の背中に、何かが生えてくるのが分かる。 ハーピーの羽が、私の背中に生えている。 うふふ 、食べたものの力を、自分のものにする能力、 改めて便利な能力ね。【摂食進化】だったかしら。私のこの力に名前をつけた研究員の筋張った肉の事を思い出すと涎が垂れてきた。
「うふふふ…… 面白いわね」 私は、自らの背中に生えた羽を触ってみる。 柔らかく、そして、驚くほど強靭。 この羽のおかげで、私は、空を飛べる。 そう思った瞬間、私の足が地面を離れた。
そして私は空を舞うハーピー達と同高度まで舞い上がった。 唖然としてるハーピーの一体目の喉笛へ噛みつき。両手で鶏肉をそれぞれキャッチ。あっという間に、ハーピー達は私に首の骨を折られ殺害される。 口のハーピーをむしゃむしゃしながら両手のハーピーを地面に落とし、また2匹の鶏肉をキャッチしまた地面に落とす。
あら、残り2匹のハーピーが逃げ出したわ。でもね…うふふ「わはひはほはんほひはふはへはいへほ」…口にもの加えてる間に喋るのは下品ね。
そう思いながら、翼を動かし、追いかけた。ひっじょうに残念な事に両方は捕まえられないと本能が告げた。同じ方向に逃げてくれれば両方捕まえて美味しくいただけたのに、下手に知恵をつけやがったのか肉塊達は正反対の方向に逃げていく。右に行ったのは肉のみっちりついた美味しそうな方、左に行ったのは肉付きが悪いが凄く美味しそうな方。当然右に行く。「ギャバ!ギャバ!」必死でハーピーは逃げるがぐんぐんとその背は近づく。そして私は上から近づき、その翼を両手で掴みつつ背中を踏みつけにして翼を引きちぎった。「ギャババ!」それからなんとかハーピーの頭を足で捉えへし折った。
はあ、それにしても、飛ぶのってこんなにお腹が空くのね。ぎゅうううおおおおおぎゅううおおおおぐるぐるとかいうとんでもない音をたてて食べ物を要求するお腹をさすってなだめる。その間も私の頭にあったのはさっきのとっても美味しそうなハーピーだった。辺りをキョロキョロと眺めるも、あの餌はどこかに行ってしまったようだ。
どうせ捕まら無いと思っていたけど、やっぱり取り逃すと辛いわね。あら?そういえばさっきハーピー達を落とした所ってどこだったかしら……そう思って空を飛び回ると、さっき逃げた美味しそうなハーピーが目に入った。
なるほど、高度を上げて、逃げていたのね。まあ、逃げられて無いなら良いわ。早速捕まえて焼き鳥にしてやる。黒い巨大な影がハーピーに覆いかぶさったのはそう思った直後だった。ハーピーを、私のご飯を横取りしてくださりやがったのは巨大な空飛ぶ赤いトカゲだった。いつもなら、私からご飯を奪うという大罪を犯した馬鹿は思いつく限りの苦痛を与えてからお腹送りにするし、今回もそうしたかった。でも私には分かる。あいつは強い。今襲いかかったら、確実に私の方がご飯になる。
とーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっても美味しそうな美味しそうな十メートル台の肉塊を、見逃さないとダメだなんて…まさしく生殺しだわ。食欲が刺激され過ぎて、トカゲ肉の代用としてハーピーをバクバク食べながら今度会ったら絶対に喰ってやると決意しながら料理人とハーピーの元へ飛んで行った。
[ハーピー完食! 素早さ↑]
[ハーピー完食! 素早さ↑]
空にいる間にハーピーは全て消化されてしまい、それからなんとか元の場所へ戻るまでの十分感は本当にお腹が空きすぎて死ぬかと思ったわ。
でも、戻ったら、料理人がハーピーを焼き鳥とローストチキンに調理していた。よしよし、仕事が早いわね。涎を垂らしてそれを監視した
ふふふ、これだけ食べれば少しは腹0.000000000000000000000000000000001分目くらいにはなるわよね……なるわよね?
森の奥深くには、もっと恐ろしい魔物がいるらしいわね。 恐ろしい魔物…… それは、どんな味かしら? これ食べたらすぐ次の獲物を探すわよ。 お腹が空いたわ!
ソレジャア、イッタダッキマース!
「ハーピー完食!素早さ↑」
「ハーピー完食!素早さ↑」
「ハーピー完食!素早さ↑」
「ハーピー完食!素早さ↑」
腹0.000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000一分目くらいにはなったかもね
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この森【アレスタッド大森林】の薄暗い道を、化け物は軽やかに進んでいく。この森は大規模な国も街も近くには無いが、有用かつ大量に要求されるタイプの薬草が大量に生えている為、新米冒険者や商人、要は弱者かつカモがよくくる絶好の狩場だ。そいつらを狙った盗賊が常に居座っている上、その死体は広大な自然に飲まれ見つからない。それ故に死の森と呼ばれる。
その死の森に死の権化が現れた。枯葉が音を立てて散る。彼女の背後を、俺はよろめきながら追いかける。化け物のペースは速く、俺の足取りは重たい。時折、化け物が振り返り、俺を見る。その視線には、嘲笑と食欲が込められていた。
「ねえ、非常食……もとい料理人さん。さっきの肉、もっと綺麗にさばいてほしかったわね。もう少し、骨の髄まで綺麗に。うふふ」
化け物は、そう言うと笑う。その笑みは、俺にとって、恐怖の象徴そのものだった。
「す、すみません……。次は、もっと丁寧に調理いたします……」
俺は震える声で答える。汗が、額を伝う。もちろん化け物の言葉を、文字通りに受け取っているわけではない。彼女の言葉の裏に隠された、恐ろしい意味を読み取っているのだ。次の言葉は、自分の命に関わるだろう。
化け物の言葉は、森の風に消えていく。俺は、一人、恐怖と絶望に打ちひしがれ、次の命令を待つのみだった。 脳裏には、化け物の鋭い牙と、その冷酷な笑みが焼き付いていた。 そうして怯え震える俺を放置しクソは何か歌い始めた。
いただくぞいっぱいいっぱいからあげ♪ 人生は一度きりなんだ♪ そうさ君がジューシーなメンチをさ♪ 何度も何度も何度も何度もありがとう♪
クソ女の歌声は、以外な事に美しかった。ただ、不気味で悍ましかった。それは、まるで、飢えた獣のうめき声のような、恐ろしい旋律だった。ご飯の歌、と彼女は呼んでいたが、その歌詞は、生々しく俺の胃袋を締め付けるものだった。
俺は、耐えきれず、嘔吐した。 胃液が、俺の喉を駆け上がり、地面に流れ落ちる。 苦しい。本当に苦しい。 俺は、この化け物に出会って、まだ24時間も経っていないのだ。その事実を思い知らされると、更に吐き気がこみ上げてくる。 昨日まで、仲間と共に、この森を縄張りにし、自由に生きていた。
弱肉強食。それが俺たちの盗賊団のモットーだった。
盗賊団、【風の爪】
総勢四名ぽっち、特にずば抜けて強い人員がいるわけでも無い。【
その理由は二つ。1つ目はリーダーの異能魔導具【生命感知の懐中時計】
半径50キロ以内の生命反応を感知出来るようになるのみならず魔力の多寡の感知によって大まかな戦闘能力を計測出来る。
下級の神器級とも言われるこのマジックアイテムのおかげで俺達の盗賊稼業は順調だった。
徹底的に強者からは逃げ出し、はぐれた弱者に暴虐の限りを尽くすという盗賊稼業の基礎を徹底できたのだから。
国家から討伐隊が来たのも一度や二度ではないが、俺達を見失った間抜けな討伐隊を嘲笑いながら、人が出払った村へ突撃し、残った弱者へ暴虐の限りを尽くしたのは楽しかったな。
俺達を討伐しようとした結果、大切なものを全て破壊されたと気づいた討伐隊の間抜け面を考えるだけで……やべぇ、笑いが止まらん。
申し遅れた。おれの名前はジロー。盗賊だ。
面白おかしく毎日天に唾吐くかのような悪行をしていた俺達だが本日も新たな獲物が見つかった
この周辺では珍しい黒眼に黒髪をした全裸の少女だ。
こんな森の奥深くで水浴び中に俺達に見つかるなんて可哀想だなと嘲笑いながらがも思わぬ獲物登場にニヤニヤと口角を上げるリーダーにそんな事言いながらめっちゃ笑ってんじゃねっすか親分と俺は返し全員でゲラゲラとみんなで笑った。思えばこれが風の爪の最後の幸せな記憶だった。襲った相手は見た目は単なる少女だったが怪物を超えた怪物だったのだから。
喰われるのは、俺たちの側だった。
弱肉強食で本当に喰うやつがいるか馬鹿
糞食らえ、弱肉強食
残念な事に俺はこのメス豚を超えたメス豚。怪物を超えた怪物。蛆虫を超えた蛆虫と長い事付き合う羽目になった挙句、痛めつけられ殺されて喰われるどころでない最悪の地獄を見ることになる。
[
だが、今は…… クソ女の恐怖の支配下にある。 もし、許されるのなら…… あの時、クソ女を襲おうとしていた自分達に、早く逃げろと伝えたい。この森から、一刻も早く逃げるべきだと。 このままでは、皆、この化け物に喰われてしまうと。 あの時の、自分の軽率な行動を、今更ながら後悔する。
もっと早く、この森から逃げていれば…… もっと早く、この恐ろしい存在から逃げ出していれば…… だが、もう遅い。 俺は、クソ女の支配下にあり、そのイカれた食欲を満たすための道具でしかない。 この歌声、あの恐ろしい目、全てが、俺の魂を蝕む。 いつ、俺が次の獲物になるのか…… その恐怖が、俺を、完全に支配している。 俺は、ただ、次の命令を待つのみだ。 そして、いつの日か、この森から逃げ出すことができるのだろうか…… その希望さえ、今は、見えない。
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今まで、様々な獲物をクソ女は食べてきたが、ついさっきハーピー、飛行能力というシンプルに凶悪な能力を生かして戦う凶悪な魔物を食べた後、彼女の背中には羽が生えた。 もしかしてクソ女は、食べた相手の能力を吸収するのではないだろうか? その可能性が、俺の頭をよぎった。 今までも、ただただ恐ろしい存在だと思っていたクソ女だが、もしかしたら、その想像をはるかに超えた存在なのかもしれない。
そして天から帰ってきたイカれ女が追加で持ってきたのは4羽のハーピー。
空を飛ぶという圧倒的アドバンテージこそあれど致命的に頭が悪い魔物だが、優秀な指揮能力を持つ魔物と組むと伝染病まみれのうんこを遥か上空から井戸に投げるだけで村を潰せる。その為とある魔将の率いるこいつは脅威だ。
しかし指揮官さえいないなら脅威ではない
人間からの同情を買うためだか知らんがこいつらの顔は絶世の美女だ。初めはその顔によって同情や手加減をしてしまう冒険者もいるそうだが、それ以上に顔の良さが災いして、生け捕りにされたあげく高値で売買される事がよくある。
なのでこいつを売っぱらいたいのだが……
ぐうぅぅ……
後ろから特大の凄まじい大音量が響く。
……無理っすね。はい。
俺は奴の指示通り羽根を丁寧に剥ぎ、内臓を取り除き、細かく刻んでいく。 クソ女の命令は絶対だ。少しでも失敗すれば……想像もしたくない。 汗が止まらない。だが、少しでも早く、完璧に処理しなければならない。
クソ女は、俺の作業を、涎を垂らしながら見ている。 その様子は、まるで飢えた獣のよう。 足元には、いつの間にか涎の水溜りが出来ている。 本当にきたねぇな。 早く終わらせなければ。 焦る気持ちを抑え、一つ一つ丁寧に作業を進める。 ハーブを散らし、塩コショウで下味をつけ、炭火でじっくりと焼き上げる。 ハーピーの肉は、思ったよりも硬い。 しかし、クソ女のために、最高の料理を作り上げなければならない。 ようやく、4羽分のハーピー料理が完成した。 クソ女は、それを待っていたかのように、俺の手から料理をひったくった。 そして…… 信じられないほどの速さで、それを食べ始めた。 骨も残さず、綺麗に食べ尽くす。 その食べっぷりは、まさに【暴食】
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その1時間後、俺はまたも料理していた。
食材名は馬の下半身と人間の上半身を持った魔物、ケンタウロス その俊足は、森の中でも群を抜いていた。 イカれ女は、まるで人から逃げるゴキブリのように、そのケンタウロスに襲いかかって、頭に取り付き、ゴキリと首を捻った。 そのスピードは今まで見たことのない速さだった。 そしてその死体は今大量の焼肉に変わりクソ女にひったくられた。…… クソカスは「馬肉♡馬肉♡」 と、まるで子供のように喜びながら、ケンタウロスの肉を捕食し始めた。 両手にケンタウロスの肉を山盛りに持ち、頬をパンパンに膨らませながら、彼女はひたすらにそれを喰らい続けた。 その食べっぷりは、見ているだけの俺ですら、気分が悪くなってくるほどだった。
[ケンタウロス完食! 【健脚】習得]
食べ終わると、クソ女は満足げに、次の餌が欲しいわと言って獲物を探しに行った。そして…… ちょっと待て何かが違う。 今までのクソ女とは、明らかに違う。 その動き、そのスピード! 以前にも増して、速くなっている。
俊足のケンタウロス。その能力が、クソ女に受け継がれたというのか。 今までは、食べたものの能力を吸収するスキルでも持ってんじゃねえの、という漠然とした推測に過ぎなかった。 だが、この現象を目の当たりにして、俺は確信した。 クソ女の特殊能力は、間違いなく、「喰らったものの特性を我がものにする」能力なのだ。 この先、奴はどんな存在へと進化していくのだろうか。 俺は、ただただ、恐怖の念を胸に、次のクソ女の命令を待っている。生き延びるためだけに。
俺は、恐怖で震える。クソ女は放っておけば際限なく強くなる。今なら……まだ、方法がないわけでもない。この森を脱出するために、この危険な存在を仕留めるべきだと、何度も自分に言い聞かせてきた。しかし……
馬肉を食い終えたクソ女が血まみれのまま立ち上がってきた
彼女の、まっ赤な舌が、ゆっくりと俺の肌を舐める。その感触は、生ぬるく、粘つく。ドス黒い深淵のような彼女の目と、そのまっ赤な舌を見た瞬間、俺の腰は抜けた。抵抗する気力すら失せてしまう。彼女の圧倒的な力の前では、俺は、無力な虫けらでしかない。
「うふふ、そんなに怯えて、どうしたの?」
クソ女は、満足げに笑った。その笑みは、どこか残酷で、冷酷だ。まるで、獲物を捕らえた獣の笑みのよう。俺の運命は、既に決まっている。俺は、彼女の食欲を満たすための道具として、生き延びるためだけに、この森で、彼女に仕えるしかない。
この後どうなるかはまだ、わからない。だが、一つだけ分かっていることがある。それは、クソ女の空腹を満たすことだけが、俺が生き延びる唯一の方法だということだ。森の奥深くには、もっと恐ろしい魔物がいるという俺の警告が、今、俺の耳元で響いている。しかしもっとも恐ろしい魔物は目の前の貧乳だ。助けてくれ、神様