悪食クソ女の暴食日記 作:リィン教官対ゴミカス蛆虫宮沢鬼龍
俺の腹はぐぎゅぐぎゅ音を立てていた。森の奥深く、クソ女が目を離した隙に、今にも飛び出してしまいそうな心臓の鼓動を無視して、俺は小柄ながらも肉付きの良い兎を捕まえようとした。しかし、その小さな命を掌に収める前に、背筋を凍らせるような気配を感じ取った。
「……何してるの、非常食?」
背筋を伸ばすと、そこにはいつもの冷酷な笑みを浮かべたクソ女が立っていた。化け物の黒い瞳は、まるで獲物を捉えた野獣のようだった。俺は、震える手で兎を隠そうとしたが、既にクソ女の視界に入っていた。
「あ、あの……お腹が空いて……」
声は震え、言葉にならないほど弱々しい。クソ女は一歩近づき、俺のすぐそばまで来た。化け物の吐息が、俺の耳元をかすめた。
「お腹が空いた、って? ふふふ……私と一緒ね」クソ女は、俺が隠そうとした兎を、まるで取るに足らないゴミのようにつまんで持ち上げた。「でもね、非常食、私の空腹は私が苦しいけど、あなたの空腹で別に私は飢えないもの」
クソ女は、兎の小さな体へ、大口を開けかぶりついた。その咀嚼音、そして飲み込む音が、俺には、まるで自分の内臓が引き裂かれるような感覚だった。俺は、何も言えず、ただクソ女の恐ろしい食事を、そして自分の無力さを噛み締めるしかなかった。 化け物の満たされない空腹は、、俺をも飲み込もうとしていた。
「……むぐ…もっと、獲物を探して来なさい、非常食」
[ホールラビット完食!]
クソ女は、兎を食べた後も、全く満足していないようだった。化け物の言葉は、命令であり、同時に、俺への絶望的な宣告でもあった。 空腹の痛みと、クソ女という存在への恐怖が、俺の体と心を蝕んでいく。俺は、再び森の中へと消えていった。 ぐぅう、と腹の音が響く。それは、クソ女のそれよりもずっと小さく、弱々しい音だったが、俺自身の、生々しい悲鳴だった。 俺は、少しでも食べられるものを探し続けなければならない。さもなければ、次の獲物になるのは、自分自身かもしれないと、俺は恐れていた。
視界をぼやけさせ、足取りを重くするほどの空腹感。 今日だって、森の中で見つけた野兎、山鳩、さらには川で捕まえた魚さえも、クソ女に横取りされた。 あの女は、まるで底知れぬ穴のような食欲を持っている。 どんなに食べても、満腹になる気配がないのだ。
「くそっ……!」
俺は拳を握り締める。 怒りが込み上げる。 空腹だけが理由ではない。 クソ女への苛立ち、絶望、そして恐怖。 あの女は、もはや人間とは思えない。 圧倒的な力を持つ、生きた化け物だ。 俺は、化け物にとって都合のいい道具、生きた食料庫でしかない。
しかし、怒りよりも先に襲いかかるのは、容赦ない空腹感だった。 胃が縮み上がり、まるで何かを掴むように、空虚な感覚が全身を締め付ける。 グゥ……グゥゥ…… 腹の底から聞こえる音は、ますます大きくなる。
「……くそ、クソ女みたいだな……」
思わず呟いた言葉に、俺自身も驚く。 あの化け物と同じように、腹が空いて苦しんでいる自分がいる。 だが、すぐにその考えを否定する。 俺は、あの女みたいじゃない。 少なくとも、人を殺して食べるような……そんなことはまだしたことは無い。
それでも、空腹感は増していくばかりだ。 視界はさらにぼやけ、足元がおぼつかない。 このままでは、倒れてしまうかもしれない。 俺は、よろめきながら近くの茂みに倒れ込み、力なく息をつく。
「……どうすれば……」
このままでは、自分が先に死んでしまう。 クソ女は、そんなことには全く構わないだろう。 むしろ、食料が増えたと喜ぶ。 俺は、自分自身の無力さを痛感する。 そして、かすかな希望と、絶望の狭間で、ただただ空腹と闘うしかない現実を突きつけられる。 森の静寂の中で、俺の絶望的な叫びが、かすかにこだまする。
「……食……べ……たい……」
その日の午後クソ女が狩りに出かけた後、俺はいつものように獲物を探した。 幸運にも、一匹の大きなイタチが、茂みの間を跳ねているのが見えた。 俺は、これまで幾度となくクソ女のために狩りをしていた。 その度に、生きたままの獲物をクソ女に差し出す恐怖と、クソ女の恐ろしい食欲を目の当たりにしてきた。 しかし、今日は違った。 クソ女はいない。 自分のためだけに、狩ができる。 俺は、息を潜めてイタチに近づき、素早く捕獲した。
イタチは、小さく震えていたが、俺の手に掛かった以上、逃れる術はなかった。 俺は、ナイフを手に取り、イタチを素早く解体した。 クソ女のように、生きたまま、あるいは生肉をむさぼることはできなかった。 俺は、普通の男だ。 あんな化け物じみた喰い方は出来ない俺は、火を起こし、イタチの肉を丁寧に焼いた。 煙は、風に運ばれていく。 クソ女には、気づかれるだろうか? 少しの不安があったが、俺は、焼ける肉の香ばしい匂いに、心を奪われた。
ジュージューという音。 肉の焦げる匂い。 それは、俺にとって、何よりも幸せな音、幸せな匂いだった。 俺は、あの日から食事をしたことがなかった。 クソ女に残飯をほんの少し分けてもらうことすら無かった。
焼けたイタチの肉は、柔らかく、ジューシーだった。 俺は、熱い肉を口に運んだ。 涙が、こぼれ落ちた。 それは、悲しみや恐怖の涙ではない。 純粋な、幸福の涙だった。 俺は、ゆっくりと、大切に、イタチの肉を食べた。 あの女には得られない満腹感を得たことに優越感を感じた。 それは、俺にとって、初めての体験だった。 俺は、この幸せを、いつまでも、心に留めておこうと思った。 しかし幸せな時間は、あまりにも短かった。 遠くから、足音と、聞き慣れたぐうぅぅぅというが聞こえた。 クソ女だ。
心臓が、胸の中で暴れだす。 煙。 あの煙が、クソカスに見つかったのだ。 焦燥感と恐怖が、俺の全身を覆う。
俺は、慌てて焚き火の跡を消そうとした。
「何してんの、あなた?」
クソ女の低い声が、森に響き渡る。 俺は、言葉を失った。
「……何も……何もしてないです……」
震える声で、俺は答えたが、その言葉は、虚しく響いた。
クソ女は、俺の目の前に立った。 そして、驚くべき行動に出た。 化け物は、俺の顔に近寄り、俺の口元に自分の鼻を近づけくんくんと嗅いだ。
「……鼬の匂いがするわね……」
クソ女の鼻孔から、ゆっくりと息が吐き出される。 その息は、俺の顔に吹き付け、俺をさらに恐怖に陥れた。 クソ女の嗅覚は、並外れて鋭敏だった。 俺は、何も言い返せなかった。 クソ女の鋭い視線が、俺の全身を貫く。 沈黙が、二人を包み込んだ。 静寂だけが、森に残り、俺の運命は、風任せに揺らいでいた。
クソ女は、俺の顔を見つめながら、ゆっくりとしゃべり始めた。
「非常食……あなた、大人でしょ? 大人ってのはね、責任があるのよ」
クソ女は、まるで子供に説明するかのように、ゆっくりと話し始めた。化け物の目は、空腹で鋭く輝いていた。
「責任ってのはね、色んな事があるんだけど、一番大事なのは、育ち盛りの子供を飢えさせない事だわ」
…その食欲はもはや成長期とかいう次元じゃないだろ
俺は、クソ女の言葉に耳を傾けながら、徐々に理解していった。化け物の論理は、歪んでいた。クソ女の異常な食欲、そして、それを満たすためのクソみたいな理論は、俺の理解を超えていた。
「育ち盛りの子供ってのはね、いくら食べても食べ足りないのよ。だから、大人っていうのはね、その子供に、できる限り食べ物を与える義務があるのよ。それが、大人の務め、大人の責任だわ、大人なら、そのことくらい理解できるでしょ? 子供は、自分の力で食料を得られないのよ。だから、大人であるあなたが、育ち盛りの子供である私に、食料を提供するのは、当然の義務なのよ! それは、社会の秩序、いや、摂理でもあるのよ!」
俺は、その理屈のめちゃくちゃさに、頭が混乱した。 しかし、クソ女の目は、すでに飢えた獣のそれだった。 反論する隙など、どこにもなかった。
「……はい……」
俺は、震える声で答えた。 俺の目は、涙で潤んでいた。 クソ女の言葉は、理不尽で、非情だった。 だが、俺には、もはや反論する力も、抵抗する勇気も残っていなかった。
クソ女は、両手を広げ、まるで演説でもするかの様に力強く語った。
「何度も言うけど、私はまだまだ成長期なの。お腹が空くのは当然でしょ! なのに、あなたはこっそりイタチを焼いて食べてたのね! 許せないわ!」
クソ女は、俺の首根っこを掴んだ。俺は、悲鳴を上げることもできずに、クソ女の怒りを全身で受け止めていた。
「何度も言うけど私は成長期よ。 食べるのが仕事みたいなものだわ。 だから、あなたには、私に食べ物を提供する義務があるの!」
クソ女は、小さな拳を握りしめ、力強く宣言した。 腹からは、ごぎゅるると空腹音が鳴り響く。 その音は、化け物の主張を裏付けるかのようだった。
俺は、言葉を失ったまま、クソ女を見つめていた。 俺は、クソ女の異常な食欲と、それを満たすための手段を選ばない残酷さを、これまでも何度も目の当たりにしてきた。 だが、この理屈の飛躍ぶりには、さすがに言葉を失った。 野盗だった俺の思考力をもってしても、この論理の穴を埋められなかった。
「……でも、私にも食べる権利があります……」
俺は、震える声で絞り出した。 俺は、クソ女に服従しているが、それは決して、自身の尊厳を完全に放棄したわけではない。 僅かながら、抵抗の意思は残っていた。
クソ女は、俺の言葉に、少しだけ目を細めた。 「うふふ…… そうね、あなたにも食べる権利はあるわね。 でも、優先順位があるのよ。 育ち盛りの子供は、大人よりも優先されるべきなの。 それは、自然の摂理だわ!」 化け物は、まるで偉大な哲学者のように、断言した。
「例えば、王様と、神様と、私…… 誰がご飯を優先して食べるべきかしら? 答えは簡単よね。 まず私よ! だって、私は育ち盛りだから!」
俺は、何も言えなかった。 クソ女の論理は、完全に破綻していたが、反論する気力もなかった。 俺は、ただ、クソ女の次の行動を待つだけだっ…は?
世界が廻る、殴られたと気付いたのはその直後に激痛が伝わってからだ。
地面に叩きつけられた体が、衝撃で跳ね返る。痛みよりも先に、恐怖が全身を駆け巡る。クソ女の怒りは、想像をはるかに超えていた。さっきまで燃えていた焚き火の温かさとは対照的に、化け物の拳から放たれるのは、凍えるような冷たさと、尋常ではない力だ。
「それなのにぃぉおまえはぁ勝手に…… 私の食べ物を……!」
化け物の怒号が、森にこだまする。次の瞬間、鈍い音が響き、肋骨がへし折られるような激痛が走る。息をするのも苦しい。
「大人は…… 子供を養うのが…… 当然でしょ!」
また、殴られた。今度は顔面。視界が星だらけになる。意識が遠のきそうになるが、クソ女の言葉が耳に届く。それは、理不尽な悪意と、満たされない空腹感から生まれた歪んだ論理だ。
「私が…… どれだけお腹が空いてるか…… わかってんの!?」
強烈な蹴りが、胃を直撃する。内臓が煮えくり返るような痛み。吐き気と同時に、空腹感も襲ってくる。この矛盾した感覚に、もはや理性など残っていない。
「なのに…… あなたが…… 私の、私のご飯を……!」
殴る、蹴る、叩く。繰り返される暴力は、まるで化け物の怒りを具現化したかのようだ。クソ女の言葉は、断片的にしか理解できない。
「許さないわよ……!」
面に叩きつけられた衝撃が、全身を駆け巡る。土埃が舞い上がり、目に入る砂が痛い。 クソ女の怒号が、耳元で炸裂した。
「勝手に私のイタチを……!!」
殴られた。鈍い音が響き、肋骨が折れたかと思った。息が苦しい。
「クソが!クソが!」
また殴られた。今度は顔面。鼻血が流れ出した。視界が滲む。
化け物の言葉と同時に、蹴りが飛んでくる。胃が締め付けられるような痛み。
地面に這いつくばったまま、必死に息を吸い込む。 クソ女の足が、私の胸に重く乗っかる。
「お腹が空いたの!お腹が空いてるの!お腹がペコペコで狂いそうなの!」
化け物の吐息が、私の耳元で熱く感じる。
強烈なマウントを取っての暴行が、顔面に突き刺さる。顔が破裂しそうだった。苦痛で、悲鳴を上げることもできなかったい。
「うふふ…… もっと…… もっと苦しんで」
クソ女の笑い声が、嘲笑のように聞こえる。 化け物の言葉は、冷酷で、容赦がない。
再び殴られる。どこを殴られたのか、もはや感覚が麻痺している。
「お肉の責任を取らせるわよ、お前のその肉体で!」
クソ女の言葉は、私の意識の淵へと沈んでいく。
意識が朦朧とする中、感じるのは、絶え間ない痛みと、クソ女の怒号と笑い声だけ。 もう…… 何も…… 抵抗できない……