次兄殺しの濡れ衣で追放された元天才(転生者)は、不老の少女にかけられていた封印を解除してもらって無双する。復讐はするよ   作:松岡夜空

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食堂にて

「話がずいぶんと違うじゃんよー、シュピナーさんよー。候女を迎えに行くことは不可能なんじゃなかったのか?」

 

 

 食堂でシュピナー、イシュリエの二人と食事しながら俺は尋ねた。

 話している内容は、俺の朝の失態(俺は認めていないが)についてだ。

 ちなみにだが今は昼休憩では、ない。この学園の授業は選択式で、まずは授業を自分で編まなければならない。

 その辺の準備を何もしていなかった俺は、あれからすぐ二人に呼び出され、ここで授業を編んでいた、というわけだ。

 

 

「いいか。候女にはここに来ていただいているんだ。あの身分になると全ての状況がそうなる。だから迎えに上がるのが筋なんだよ」

 

「じゃあ何かい。俺との婚約は向こうにしていただいている状況じゃないってのか?」

 

「約束したのか?」

 

「いやしてないけど」

 

「このやりとりは朝もやったな?」

 

「忘れた」

 

 

 シュピナーがため息をついて、頭をかく。

 俺はその時、こいつこのまま一生アフロヘアーで学園生活を送るのかなー、と思った。

 

 

「いいか。お前との婚約はしていただいてるとかそういう次元に達していない。これはあくまで政略結婚で、最後は娘の意思に任せるとバーバラ候も言っている。端的に言えば、お前が迎えに来ることを候女が拒否ってんだよ」

 

「何でそんな奴との婚約を俺は頑張らないとならないわけ?」 

 

「そうすることで多くの人間が得をするからだ。貴族として当たり前だろ」

 

 

 目を向ける。

 シュピナーはさも当然といった顔で俺を見ていた。

 こいつはアフロだが生粋の貴族だなと思う。貴族の強さは個を殺して貴族全体のために全員が動いていることにある。だから恋愛も政治の一部なのだ。民衆が貴族に勝てないのはまとまりがないからである。故にまとまって行う一揆や革命は勝つ時もある。

 シュピナーにとって、貴族全体のために動くことは義務であり誇りなのだ。見事ではあるが同時に哀れでもあると思えた。

 まあとはいえ、俺がどうこう言うことではないそれは。

 やれやれと思いながら、割を組む。本来ならこの手の作業は中々に楽しいものだが、残念なことにここに俺の自由意志はなく、どこからか入手したリリーシャの割と重なるように組まされている。

 

 

 あーさいこーにつまんね。

 

 

 ガタン!!

 突然、椅子を引く音が響いた。今、食堂には俺たちしかいない。

 俺は目を細めて、二人の視線の先を見据えた。

 見ると、四人の護衛を引き連れて、リリーシャがこちらに歩いてきていた。

 やれやれ。

 思いながら、俺も同じく立ち上がった。

 

 

「リリーシャ候女!! おおお、おはようございます!!」

 

 

 二人が声を揃えて頭を下げるので、俺も合わせて下げていた。

 多分これで大丈夫だろう。

 

 

「頭を上げてくれていいわ。後そちらの二人、悪いけどこの場から消えてくれる? 授業をサボるのはよくないわね」

 

 

 冷たく笑ってリリーシャが言う。

 そういうお前はどうなんだとツッコめる奴は、この場どころか半径百キロ圏内にも数人いるかいないかだろう。

 

 

「ししし、失礼いたしました!! 授業に戻らせていただきます!!」

 

 

 二人が食堂から駆けていく。

 

 

「ブライアン、ネルガル、ソードス、プルーニャ。あなた達も消えていいわ。ついでに、食堂、厨房にいる者も全員退去させて」

 

「え? いやしかし」

 

「大丈夫よ。彼のデータは全部頭に入れているから。アインさんとは別な意味で、そういうことをする男じゃないから、彼は」

 

「彼があなたを襲うとは我々も考えてはおりません。何せあのローディス男爵の息子さんですから。しかし他に不測の事態があるやもしれません。例えば窓から暴漢が来るやもしれません。そういった時のために我々はいるのです」

 

「その時は彼があたしを守るわよ。何せあの傭兵男爵シュミット=クロウだもの。その強さは朝に見せた通り。残念だけどあなた達『三人』よりも頼りになるんじゃないの?」

 

「……わかりました。では何かあればお呼び下さい」

 

 

 四人がつかつかと外に出る。

 リリーシャが前の席に座った。

 食堂にいた何人かが、四人に追いやられて外に出る。

 その間、ジッと俺のことを見据えてくる。美人ではある。しかしやはり好きにはなれそうにはなかった。

 リリーシャが掌を上向けて口を開いた。

 

 

「風よ。我が願いを聞け。そして応えよ。静謐《せいひつ》なる帳《とばり》を降ろし、我らに静寂を与えん。風音失《シルフサイレンス》」

 

 

 風が走る。

 俺は立ったままリリーシャを見下ろしていた。

 

 

「座ったら?」

 

 

 促され、席についた。

 

 

「とりあえず今のあなたはクロード=ローディス、ということでいいのよね?」

 

「ああ」

 

「単刀直入に聞くけど、いい?」

 

「何だよ」

 

「出会ってまだ一時間と経ってないわけだけれど、あなたはあたしのことが好きになれそうかしら」

 

 

 目を見開く。

 リリーシャは笑いながら俺を見ていた。

 何だこれは。

 尋問か?

 どう答えるのが正解なんだ。

 

 

「俺は一目惚れはしないタイプなんだ。長い間一緒にいれば気が合うか合わないかわかる。その時にまた同じ質問をしてくれ」

 

「質問その二。あなたの好みのタイプは?」

 

「タイプなんてない。あえて言うなら好きになった女がタイプだ」

 

「あなたのデータは全部頭に入れてある。他の傭兵からの聴取を見ても、確かにあなたは優しく誠実な人みたい。だったらあたしとは合わないかもね」

 

「そんなものは付き合ってみないとわからないだろ。あんたがどういう人間かもまだわかっていない」

 

「朝にあなたが倒した教官がいたわよね」

 

「それがどうした」

 

「殺したわ。外を見たら面白いものが見れるかも」

 

 

 目を向けた。

 遠いからか、特に何も見えない。

 今一度リリーシャに目をやった。目はすわっていたと思う。しかしすぐに間抜けな顔になった。リリーシャは口元に手を当て、笑いをこらえていた。

 

 

「ふふふ。冗談よ」

 

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