次兄殺しの濡れ衣で追放された元天才(転生者)は、不老の少女にかけられていた封印を解除してもらって無双する。復讐はするよ   作:松岡夜空

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月を背中に編
状況確認


「何だ」

 

 

 立ち上がってバーバラ侯が言った。

 アンリエッタも同じく立ち上がっている。

 

 

「どうやらリリーシャが狙われたみたいだな」

 

「何故わかる?」

 

「マーキングしといたんだよ。危険が迫ったらわかるように。髪を一本内密に拝借してな。明滅が続いてるってことは生きてる証でもある。まず間違いなく取引に使うためだろう。追うか?」

 

「場所もわかるのか」

 

「ああ。この薬指の指輪はそういう魔具でね。片方で危機の具合を。もう片方で位置を特定できる。ダンジョンに潜っておいてよかったよ」

 

 

 本当はライザに作ってもらったんだけど。

 

 

「くくく。わっはっはっは。いやよい。まずはリリーシャの部屋に行こう。取引なら何かメッセージを残しているはずだ。ついてこい、アンリエッタ、クロード」

 

「御意」

 

 

 アンリエッタが言った。

 俺は名前を呼ばれてキョトンとしていた。

 ただまあそんなに悪い気もせず、肩をすくめながら言った。

 

 

「はいはい」

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ち、父上!!」

 

 

 俺達三人が到着すると、ツァイスが背筋を伸ばした後、敬礼した。

 

 

「ここがリリーシャの部屋だな」

 

「は、はい。しかし中はご覧の有様で」

 

「入るぞ」

 

「はい。どうぞ」

 

 

 手で案内してツァイスが言った。

 リリーシャの部屋は壁側から半壊していた。外側からか内側からかはわからないが、壁を起点に爆発させたのは明白である。

 恐らくさらう際、窓がない、もしくは小さすぎる故に壁ごと吹っ飛ばしたのだと思われる。壁には呪が書かれていて何らかの防御魔術が施されていたと考えられるが、防御魔術は攻撃魔術を防ぐのに特化してることが多く、呪を介さない爆発に対しては割と無力なことが多い。

 俺が普段爆薬を持ち歩いているのもそういう時のためだ。

 今は持ってないけど。

 

 

「部屋を調べた結果犯人らしきメッセージがありまして」

 

 

 ツァイスが紙をバーバラ侯に渡す。

 

 

「手紙の内容を見た結果、犯人を刺激せぬよう捜索隊を結成することは保留にしております」

 

「ふむ」

 

「何て書いてんの?」

 

「まあ色々と書いているが、要約すると次の連絡は明日。その間に雷の星石を用意しておけ、ということらしい。無論その間、事を荒立てるなとも書いている」

 

 

 星石とはスキルを付与するクリスタルのことで、本来スキルを付与する各地のエクスペリオン大聖堂に安置されている。が、それとは別に、独立した星石がいくつかある。雷の星石もその一つ。

 雷の星石はバーバラ家四代に渡って伝わる星石で、こいつを用いると、雷を自在に操るスキル雷神《サンダーボルト》が習得できる。もしくは元々のスキルからそれに成り変わる。

 バーバラ家では、代々当主がこの雷神《サンダーボルト》のスキルを受け継ぐことになっている。

 

 

「なるほどね。で、どうするんだ? 渡すのか?」

 

「国家がテロリストに屈したら終わりだろう」

 

「確かにそうだ」

 

「クロード。リリーシャの居所はわかるんだったな?」

 

「わかるよ。攻め込みたくなったら声かけてくれていいよ。それまでここでゆっくりしてるから」

 

「そうか。ならば今すぐ行ってこい」

 

「は?」

 

「この任務は隠密かつ早い方がよい。攻め込まれるにしても隠密部隊を編成してからと、相手も思うだろう。故に迅速に奇襲をかける。相手は場所が割れていると気づいていまい。リリーシャをさらうことに成功して、束の間の休息だと思っているはずだ」

 

「無茶言うぜ。相手の数もわかっていないのに。誰か回せる奴いないの?」

 

「いなくはない。が、お前のように協調性のないものは一人の方が動きやすかろうと思ってな」

 

 

 苦笑した。

 事実そうかもしれないと思ったからだ。

 

 

「ちょっと紙見せてもらっていいか?」

 

「構わんが何故だ」

 

「疑っているわけじゃないが、任務に必要な情報は自分の目で確認してることにしてるんだ。後であーだこーだ言われたくないんでね。一人でするなら尚更だ」

 

「ふ。用心深いな」

 

「よく言われるか後々面倒なことになるのが嫌なだけさ。後これは言っとくけど、やるなら俺は一回帰るぜ。万全の装備で臨みたいんでね。人質は無事だからこそ意味がある。が、無事ではあっても最悪なことってのはいくらでもある。女なら尚更だな。一分一秒経つごとにその確率は上がるけど、それでいいなら引き受けていい。ダメなら別の奴に仕事をまわしてくれ。俺は絶対引き受けない」

 

「構わん。好きにやってみよ。クロード」

 

 

 口角を持ち上げながら、バーバラ侯は言った。

 何が楽しいんだか。

 思いながら、俺は渡された紙に目を通す。

 

 

「思い切り組織名出して犯行声明出してるな。何だこのオメガってのは」

 

「それは気にしなくていい。オメガは過激派宗教団体だがワシとリリーシャを狙う者はいくらでもいる。なすりつけているかどうかの判断は尋問してみないとわからない」

 

「なるほど」

 

 

 目を細める。

 まあとりわけ、気をつけておかなければならない情報はないな。

 ――ん?

 視線を感じて目を向ける。

 その先には、アンリエッタ。

 静かに俺のことを見据えている。

 

 

「何だ?」

 

 

 俺は尋ねた。

 

 

「いや、大したことではない。それに、今はお嬢様の救出が先。聞きたいことはまた後日、私が自分で赴いて聞かせてもらうことにするよ」

 

 

 目蓋を下ろし、アンリエッタが言った。気になるが、確かに今はリリーシャ優先か。

 

 

「じゃあちょっくら行ってくるわ」

 

 

 バーバラ侯に手紙を返し、俺は言った。

 

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