金持ちレズ女はニコに付き纏う 作:──
「ヴィジョンは命を軽んじたわ!ヴィジョンを倒すのよ!」
「ヴィジョンの手は血塗れだ!その体の隅々まで、罪なき一般市民の血に塗れているんだ!」
「いつまでも私たちの口を封じられると思うなよ!」
ホロウに繋がるトンネルから、これまで口を塞がれ続けていた市民たちが溢れ出し、拡声器を通じて口々にヴィジョンの不正を訴える。
パールマンの秘書であるサラはそれを見て不敵な笑みを浮かべる。
「あら、爆破エリアから抜け出して来るなんて中々やるじゃない。でも、それで全てが公になるなんて思ってないわよね?ふふ、忘れないで、ここにはうちの人間しかいないの。─────命令よ、撃ちなさい」
背後に待機していた者たちが一斉に銃を構え、先程まで拡声器越しに叫んでいた市民たちはざわつき、悲鳴を上げそうになる。
しかし、それと同時にパトカーのサイレンが辺りに響いた。
駆けつけた治安局と白祇重工、そして彼らが呼び寄せ多数のメディアを見て、サラは自らの不利を悟ってその場から逃げ出した。
数多の目を掻い潜って逃げたサラ、その前方からカツカツと大きく、苛立ちを感じさせるヒールの音が響く。
「……あら、真紅の令嬢が自分から動くなんて、手助けをしてくれるのかしら?」
「いえ、ただ返すべきものを返してもらいに来たのよ。ヴィジョンに私が幾ら賭けたか覚えている?私は覚えているわ」
サラが真紅の令嬢と呼んだ相手は、その呼び名とは相反する緑色のドレスを纏って闇の中から彼女の前に姿を現した。
「あなたは必ず勝つと言って私から
「え、えぇ、必ず返すわ。……でも、今日じゃない」
「そう、その言葉に嘘はないのね?私からの借り分を踏み倒した者がどうなるか、あなたはよく知ってるはず」
その言葉に、サラは冷や汗を流しながら頷く。
彼女は、目の前の少女がどのような環境で育ったか知っている。
それ故に、彼女が殺人すら躊躇わないことも。
とにかくこの場を凌げれば、そんな甘い考えはすぐさま打ち砕かれることになる。
「言っておくけど、お前が守ってくれると思い込んでるあの組織だって、私からお前を隠し切ることは難しいのよ。……お前には、組織がそこまで力を入れて守る理由があるかしら?」
暗闇の中、微かに見える緑のドレスがサラへと近づく。
まるで死の宣告のようにヒールの音が大きくなる。
サラは観念して目を閉じた。
しかし、ヒールの音はサラの横を通り過ぎて離れて行く。
「悪いけど、お前なんかの首じゃ一ディニーにもならないの。さっさと金をかき集めて、さっさと返して頂戴」
少女はそう言って、サラとは逆方向へ歩いて行った。
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事件後、関係者が逮捕されつつあるヴィジョンの爆破解体本部にて
「猫又、レイアを見てない?」
「……誰?」
「途中で助けに来てくれた女の子よ。ほら、私があなたに預けた電話番号の持ち主」
「緑のドレスの?見てないぞ」
「参ったわね……、事件が終わったらそのままの流れで謝るつもりだったのに……」
ニコはこの場では目立つであろう緑色のドレスを探して周囲を見回しながらため息を吐く。
「謝る……?なんかしちゃったのか?」
「そうなの。今回もなんで助けてくれたのかわからないくらい怒らせちゃって─────」
「あら、わざわざ時間を割いて助けたのに、理由がわからないからって文句言うワケ?」
「──っ!?」
背後から伝わった冷たい視線と威圧感に、ビクリと跳ねたニコにレイアは冷たい視線を向け続けている。
「文句以外に言うことがないなら、私は帰るから。助けるのはこれっきりよ」
背を向けた彼女の腕を、ニコが掴んだ。
レイアは苛立たしげな目で振り返る。
「……この前はごめんなさい。アンタの好意を無碍にした」
「それで?」
ニコの謝罪に、彼女は顔色ひとつ変えない。
そのような謝罪は受け慣れている、それだけでは彼女の心は動かなかった。
「もう一度、アンタの好意を受け取るチャンスをくれない?」
「これまでに渡した分で十分でしょ」
「ニコは既に受け取った分を使い切ったわ」
「……は?」
アンビーの言葉に、レイアは意外そうに目を見開いた。
そんな彼女にアンビーは言葉を続ける。
「借金の返済、ビリーの整備と弾代、私のハンバーガーと映画、ニコのコスメとアクセサリー。それで全部使い切ったわ」
アンビーが差し出したのは無数の領収書が纏められたバインダー。
一ページ目を通すたびにレイアの瞳に嬉しそうな色が浮かび、ページを捲る手が早くなる。
アンビーからの説明には含まれていなかった雑費の領収書も一つ一つを慣れた手つきであらため、バインダーを閉じたレイアは先ほどより幾分か機嫌が良さそうに見えた。
ニコが言う
「……前の料金表、見せてくれないかしら?」
「初回無料にしてあげる。何が欲しいの?」
「この後みんなでご飯を食べに行きたいの。元々は割り勘の予定だったんだけど──」
「まだ予約すらしてないのよね?いいわ、私が良い店に連れて行ってあげる。全部私が奢るから」
「良かったな猫又!こいつが連れてってくれるなら、きっとマジでサバ食べ放題だぞ!」
「……サバが良いのね?まぁ、なんでもあるだろうから好きに食べなさい」
少しはしゃいだ様子のビリーに鬱陶しそうな視線を向けながら、間接的に猫又の要望を聞いたレイアは何度か電話を掛けると、近くの車道まで全員を案内する。
そして数分後、レイアたちの前に黒い大きなリムジンが到着した。
「ライカン、店に行く前に寄る場所があるの」
「承知いたしました。……何処に向かわれますか?」
「Random_Playってビデオ屋。そこの兄弟も招待客よ」
『──っ!?!?』
リムジンに乗り込んだボンプから声にならない叫びが響く。
「なんでわかったかって?ボイスチェンジャーすら使ってないのに、バレないと思った?観念してお出かけの準備をしなさい」
こうして、パエトーンの兄妹もレイアが用意した会場へ向かうリムジンに乗り込み、彼女が用意した場所へと向かうのだった。