金持ちレズ女はニコに付き纏う 作:──
「「おぉ──!」」
レイアに案内されてやってきた店の内側を見て、猫又とニコが感嘆の声を上げた。
「いい店でしょ?今日は私の奢りで貸し切りだから、好きなだけはしゃいで好きなだけ食べなさい」
先頭を歩いていたレイアの背後から歓声が上がる。
メニュー表が配られると、猫又は事前の宣言通りサバの料理を注文し、その他のメンバーも思い思いの料理を注文していく。
浮ついた雰囲気だったこともあり、猫又やリンが中心となってドリンクバーを注文して、コップを持って席を立った。
アキラは見守るためにそれに続き、浮かれたビリーとそれに連れられてアンビーも席を立ち、その場に残されたのはニコとレイアの二人だけとなった。
「……」
「…ちょっと失礼するわね」
レイアはわざわざ席を立つと、ニコの隣へ座り直すとニコの手を取り、その手に何かを握らせて彼女の手を離した。
ニコが手を開くと、そこにあったのは真紅のエーテル結晶。
「それは、私たちを指し示す目印。私たちの出発地点となった場所で作られた特別なもの、私たちの全盛を示す宝よ」
「えっと、つまり……?」
「私からの信頼の証。それを渡すついでに昔話をしようと思ったの」
ニコの手に握られたエーテル結晶にレイアが手を近づけると、エーテル結晶はそれに呼応するように不規則な輝きを放った。
「…………けれど、また今度ね。ソレは浸食作用を持たないから、どこかに飾っておいて」
レイアが手を離すと結晶から輝きが消える。
それと同時に、二人だけとなっていたテーブルに騒がしい声が戻ってきた。
「帰ってきたよ!レイアさんはお茶でよかった?」
「あら、ちょうどお茶が飲みたかったの。ありがとう、次はコーラでお願いね」
「次も注がせる気満々……!?」
帰ってきたリンとレイアがそんな会話を終えると同時に、注文した料理が次々と運ばれて来る。
全員が一緒に座れるように広く用意されたテーブルを埋め尽くす勢いの料理に全員が目を輝かせた。
「今夜は無礼講よ。好きに騒ぎましょ」
彼女がグラスを掲げて言うと同時に、お祭り騒ぎが始まる。
お茶を飲み干し、ワインを注文し始める彼女を穴が開きそうなほど見つめるニコに、レイアは頬を膨らませ
「……一応言っておくと、私はもう成人よ。あなたより背は低いけれどね」
「あっ、そうじゃなくてさっきの話──」
「続きは然るべき時に話すわ。今は楽しみましょ」
彼女はそう言って先ほどの話題を避けた。
しかし、思い出したかのように
「さっき渡した結晶は、ただ信頼の証ってだけじゃなくて、それを持ってればあらゆる支払いを私にツケられるから、好きなだけ活用して頂戴」
それだけ言って、目の前の食事に手を伸ばした。
「ほら、ニコ?あ〜ん」
「ちょっ!?しない!しないから!」
そうして混沌を思わせるお祭り騒ぎの中、楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。
ニコは、すっかり調子を戻したレイアに猛アタックを喰らいつつも、それをなんとか躱し、宴も終わりの時がやってきた。
「じゃあ、払って来るわ」
そう言ってレイアが取り出したのは真っ黒なカード。
それを見た面々が目を見開くとレイアは得意げに
「これくらい普通よ。私と仲良くなったら、コレを惜しみなく受かってあげるんだから」
彼女はあくまでその場の全員へ向けた冗談のような口調で、しかし視線だけはニコを見据えて1ミリたりとも動かさずそう言った。
彼女が支払いを終えると同時に、ライカンが入口まで迎えにきた。
「お嬢様、歓談中失礼いたしますが……」
「午睡の後に処理するはずだった仕事でしょう?帰ってからやるから、運転をお願い」
レイアはライカンの言葉にそう答えると
「そういうワケだから、またね」
と言ってそのばをはなれてゆく。
去り際、彼女はニコの耳元で
「昔の話、聞きたければあなたから聞いて」
そう言ってその場を去ったのであった。