金持ちレズ女はニコに付き纏う   作:──

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カラン、とRandom Playの店のドアベルが音を奏でる。

珍しく閑古鳥が鳴いていたRandom Playで退屈な店番をしていたリンは反射的にドアに顔を向ける。

逆光で見えない扉の先から、高貴な印象を漂わせるハイヒールが踏み出してくる。

やがて、黒いドレスが顔を出し、続いて折り畳まれた日傘が姿を見せる。

それらの主人は、リンがハイヒールを見た途端に連想した通り、レイアだった。

腕を後ろに回したまま、悠々と歩いてくる姿は否が応でも彼女の高貴さを感じさせる。

彼女の顔を間近で見る機会のなかったリンは、その表情や仕草を見て、改めて彼女という存在から発せられる圧を感じた。

 

切れ長で釣り上がった細い瞳、その内側からは蛇のような細長い瞳孔がのぞいている。

なんの用事だろうとリンが疑問に思った途端、レイアの瞳がリンを捉える。

 

「なっ、なに!?私は食べても美味しくないよ!?」

 

その細さ故に睨んでいるようにも見えるその瞳を前に焦ったリンは、自分が店番をしていることすら忘れてしまっていた。

そんな焦った様子を見て、レイアはクスクスと笑った。

 

「……私が人を食べるように見える?アレ、不味いから嫌いよ」

「た、食べたこと……あるの?」

「ちょっとした家庭の事情だから気にしないで。─────それで、用事なのだけど」

 

レイアは後ろ手に持っていた箱をカウンターへと置く。

その箱には現在の新エリー都で最も有名な菓子店の名前が刻まれていた。

 

「えっ──嘘!?これって、予約が十年単位っていうあのお店の!?」

「そうよ。あなたと少しお話ししたいと思って、買ってきたの。二人きりでお話しできる場所はあるかしら?」

「それなら私の部屋で話そ!こっち!」

 

リンに案内され、彼女の部屋のソファに腰掛けるレイア。

リンは相手が相手なこともあり緊張した様子だ。

 

「じ、じゃあお茶を淹れてくるね!」

「茶葉はこれを使いなさい」

「……っ!?ま、またお高いやつ……!」

 

息をするように取り出される高級品に緊張しながらも、なんとかお茶を淹れ終えたリンがレイアに感謝を述べるとともに菓子を口に含んだその時

 

「……それで、いくつか質問をしたいのだけれど、正直に答えてくれるわよね?」

 

彼女の言葉に鋭い気配が混じり、威圧するような態度でリンに迫った。

急激な態度の変化に驚いたリンの口元から、ガリッという痛々しい音が響いた。

 

「ひ、ひははんひゃっひゃ」

「……はあ?」

「急に脅かすから舌を噛んじゃったの!」

「舌噛んだくらいなによ、毒を盛ったワケでもないんだから……」

 

本気で呆れた様子を見せるレイア。

その比較対象に抗議しようとしたリンだったが、レイアは有無を言わさず質問を始める。

 

「まず初めに、あなたたちとニコはどんな関係?」

「どんなって……、ホロウレイダーとプロキシで、債務者と債権者で……友達?」

「友達ね……、どれくらい前から?」

「たぶん、数年前だと思うけど」

「……ふぅん?」

 

彼女は目を細めてリンを見つめる。

その瞳は獲物を覗き込むようで、縦に避けた細長い瞳孔が本物の蛇を思い起こさせる。

蛇に睨まれた蛙、リンはまさにその状態だった。

 

「──レイアさん、あまりうちの妹をいじめないでくれないか」

「あなたも来たのね」

「君がウチに来るのは、そういう要件だろうと思っていたからね」

「はぁ、そう。……その言葉に、偽りがないと誓える?」

 

レイアの言葉に頷きつつも、アキラは彼女へ疑問符を投げかける。

 

「そもそも、君はニコを諦めたのでは?」

「もう一度アピールされたのだし、少し踊るのも悪くないでしょう?」

 

鋭い眼光が2人を射抜く。

アキラは気丈に彼女を睨み返した。

 

「……はぁ、まぁいいわ。ニコのお友達なのだものね?少しは優しくしてあげる。ウソだったら、殺せば良いだけだし」

「「───っ!?」」

 

突然向けられた殺気に狼狽える兄妹を前に、レイアは来た時と同じ不気味な笑みを浮かべて去ろうとした、その時

 

「プロキシ!レイアを知らないかし……ら?」

「まぁ、ニコ!私を探してくれていたの?」

 

プロキシ兄妹と話していた時とは明らかに態度が違う。

先ほどまで脅すように細められていた目はパッチリと開き、その表情は相変わらず笑顔のままだが、先ほどのような不気味なものではない。

 

「……お兄ちゃん、今後レイアと話す時は──」

「うん、ニコに一緒に居てもらおう。お互いのために」

 

二人がそんな会話を終えてニコたちがいた方向を見ると、すでにニコもレイアもおらず、二人はどこかへと消えていたのだった。

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