金持ちレズ女はニコに付き纏う   作:──

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旧都の屋敷にて、のちにレイアと名乗ることになる少女は家族と共にロビーに集められていた。彼女の周りに集まる九十九人の兄弟姉妹たち、彼らはいつか当主としての座を争うためにここに集ったものたちだった。

レイアを含めてちょうど百人の兄弟姉妹は三年半ほどの時を共に過ごし、それぞれがいつかは殺し合う運命にありがらも、お互いを家族だと認めていた。

そんな彼らの全員が集められた時点で、何が始まるのかを全員が薄々察していた。

当主が口を開く

 

「今夜より、お前たちに殺し合うことを許す。無論殺さず追い出しても構わん。最後に残った一人が、最も才ある当主として富と名声を得るであろう。ここに集ったのは皆何かしらの才を持つ者たちだ、その才を活かして当主の座を掴み取ると良い」

 

夕食が始まったのは、そう言われてから三時間後のことだった。

皆が集まる会食の中、レイアが紅茶に口を付けて一口飲み込んだ途端に正面に座っていた妹の一人が高笑いを上げた

 

「……飲んだ、飲んだのね姉様!私の毒を!」

「おお、やったのか!」

 

妹の言葉を聞いた兄弟姉妹たちは皆、歓声を上げた。

無論、もしここでレイアが死のうともここにいる全員が殺し合う運命には変わりはない。

しかし、“一番の脅威であるレイアを、真っ先に殺さなければならない”というのはここにいるレイア以外の全員の共通認識だった。

だからこそ、毒の扱いに長けたストリート育ちの少女が彼女に毒を盛るという計略を持ち掛けたのだ。

しかし

 

「……くだらない」

 

毒を盛られたはずの少女は、ケロリとした顔でそう言い放った。

場の歓声が一気に静まる。

 

「残念、貴女の努力(秀才)は、(天才)に届かなかったわ」

 

彼女は唐突にテーブルを膝で蹴り上げて立ち上がり、その勢いで浮かび上がったフォークを掴み取ると、それを妹の喉仏に突き立てた。

 

「─────っ!!!、っ!!」

「残念ね、貴女のことは本当の妹のように思っていたから。……えぇ、本当に残念」

 

顔色ひとつ変えず、足元でもがく妹を見下ろす少女に、その場にいた兄弟姉妹の全員が後退る。

 

「それで、この子にこんなことをさせたのは誰かしら?……ゴホっ──」

 

少女が咳き込んだその隙を見逃さなかったのは兄の一人。

彼も先ほど毒を盛った妹と同じくストリートの育ちだ。

孤児から人を集める都合上、どうしてもストリート育ちは多いが、ストリートで長く生き続ける者は何かしら才能を持つことが多い。

彼はバタフライナイフの扱いに長け、喧嘩では負けなしだといつも自慢していた。

しかし、振りかぶったそのナイフは奪い取られ、彼自身の腹を貫いた。

 

「今夜はこれだけかしら?それとも、まだ来る?」

 

その凄惨な様を見た者たちは、それぞれが恐怖や悔しさ、怒りを顔に浮かべてその場を去っていった。

 

それから。一日に一人から二人が彼女に挑み死んだ。

ある時は蹴ろうとした足を折られ、ある時は銃を突きつけたはずが自らが撃ち殺され、そうして兄弟姉妹は徐々に数を減らしていった。

ある日の夜、眠る彼女を燃やそうとした二人がその企みを暴かれ、自らが持っていた灯油のタンクに火をつけられて焼死した。

そこでようやく、彼らは悟ったのだ。

“彼女は、自分たちと同じ生き物ではない”と。

そこで彼らは、夕食の時間に全員で武器を持って、食堂で彼女を待った。

そして、彼女がやって来た。

彼女は手にクロスボウを持ち、食堂に入った途端にそれを天井へ打ち込んだ。

 

轟音が響き、床が揺れた。

 

「し、シャンデリア!」

 

誰かが叫んだ。

それと同時にもう一発、天井へ放たれた矢はシャンデリアを吊るしていた縄を断ち切り、壮麗な照明を断頭台の刃へと変えた。

逃げ惑う兄弟姉妹、しかし食堂の扉は全て閉じられ、下手人である少女が入ってきたあのドア以外出口はなかった。

 

「クソ!ハメやがったな!」

「貴女たちの同士討ちよ。ドアを閉めたのは私じゃないから」

 

この言葉は真実だった。

少女を殺そうとした者たちの一人は、毒ガスを用意して少女の殺害が完遂すると同時にその場の他の全員を殺すつもりだったのだ。

しかし、そんな思惑を持っていた男は最初に落ちたシャンデリアの下敷きになって死んでいった。

 

少女は転がる死体の手から拳銃を奪い取り、運良くシャンデリアから逃れた者たちへ発砲する。

ちょうど弾倉一つ分の銃声が鳴り響いたあと、やはり少女が最後の一人となった。

傷ひとつなく、血の一滴も浴びずに少女は九十九人の兄弟姉妹を殺したのだ。

 

 

「……よくやった、お前は最高傑作だ。思うように振る舞い、気に入らぬ者を殺すが良い、私たちはそれが出来る()()()()血筋だ」

 

玉座かのような豪勢な椅子に座り、少女の父はそう言った。

少女は数秒間の沈黙の後、懐から拳銃を取り出し、父にそれを向けた。

場を裂くような銃声が響き、父の左胸から血が流れ落ちた。

 

「……私が、気に入らぬか。それとも、この家がか?お前に権力と名声を与える、この家が?」

「どちらもよ。こんな因習は私で終わり、さようなら古い一族の最後の末裔」

「……ふ、できると思うか?お前はきっと私と同じ道を歩む。何故ならお前は、家族をその手で殺しながら涙一つ流さぬ怪物なのだから」

 

「……お前は商売でもそれ以外でも頂点に登り詰めることのできる器だ。こんな家に留まらず、お前のやりたいことをしなさい。この世界はお前の思うままだ。お前が()になる日を、楽しみにしている」

 

最後の一言は、父としての言葉。

我が子への祝福でありながら、あまりに悍ましい呪いを含んだ言葉だった。

笑い声を上げて、父は倒れた。

旧都陥落が起こったのはここから僅か三日後のことであり、それによって多くの血が流れた呪わしい屋敷はホロウの中に姿を消した。

父が死に際、彼女は残した呪いも、共にホロウの中に残り続けている。

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