金持ちレズ女はニコに付き纏う 作:──
「……私たちはこの屋敷の持ち主に依頼されてここに来たのよ」
アンビーが毅然とそう返答する。
すると、月城柳は一層深い疑いの眼差しを一同に向ける。
「ではお聞きしますが、旧都陥落の際に命を落とした人物から…どのように依頼を受けたと言うのですか?」
「……は?」
「この屋敷の最後の主人は、当主の座へ登り詰めた僅か三日後に旧都陥落が起こり、その際にエリー都市政の要請を受け零号ホロウへ出陣。……一千万とも言われるほどの大勢を救い、そのまま─────」
そこまで言った途端に、周囲のエーテル結晶が赤い光を放ち始め、急激に増殖しニコたちと月城柳を分断する。
「ラッキーね!今のうちにズラかるわよ!」
ニコの号令の元、一同は屋敷のエントランスへと走る。
するとそこには、それぞれ刃旗と弓を持った二人の六課隊員──悠真と蒼角が待機していた。
どうしようかと立ち止まったその時、館中の警報が鳴り響き、地面が揺れた。
六課の二人の前に屋敷の奥から、緑色のはずの部分が赤くなったエーテリアスが現れた。
二人が戦い始めた隙に邪兎屋の面々はそのまま屋敷の外へ出る。
すると、そこには星見雅が待ち構えていた。
「……すまないが、お前たちを拘束させてもらう」
彼女は有無を言わさずそう言い切ると、邪兎屋へ刀を向けた。
「さっきから何なのよアンタたち!天下の対ホロウ六課は人様の家を荒らす権利まで持ってるワケ!?」
「……違う、この邸宅にはエーテリアスの捕獲研究の施設が隠匿されている。それを調査し、捕獲されているエーテリアス・レギオンを討伐することが目的だ。そして、ソレはお前たちに手を出せば自ずと現れる」
雅がそう言った次の瞬間、雅と邪兎屋を分断するようにエーテル結晶が現れる。
雅は咄嗟にそれを刀で切り落としたが、それを見越していたかのように周囲に大量のエーテリアスが発生する。
一時休戦かに思われたその時、現れたエーテリアス全てが邪兎屋に背を向け、それを守るように雅に向き直った。
「……やはり、レギオンはここにいる」
そう呟いた次の瞬間には、現れた有象無象のエーテリアスたちは一刀のもとに切り捨てられていた。だがしかし、その直後新たにエーテリアスが現れる。雅はそれを再び切り落とすと、土煙が舞う中低い声で言う
「数を増やそうと無駄だ。姿を現せ、レギオン」
雅が目を向けた方向──屋敷の裏庭に続く道のある方面から微かな赤い光が見えた。
「……あらあら、出会うなりエーテリアス呼ばわりだなんて酷いじゃない」
邪兎屋の面々にとって聞き覚えのある──しかし、異様な圧を含んだ──声が土煙の中から響いた。
雅はすぐさま刀を引き抜いて構え、それと同時に土煙の中から斬撃が雅に迫る。それを自らの刀で受け止めた雅はその剣を見て顔を顰めた。
「……儀礼剣“血栄”。それはこの屋敷の当主のために用意された儀礼剣だ」
鍔迫り合いの中、雅が下手人へ語りかけるように言う
「……旧都陥落の際、この屋敷の当主は零号ホロウ内で防衛軍と合流してホロウを鎮圧するようにとの要請に応えた。──だが、混乱した鎮圧作戦の最中に撤退した防衛軍はお前たちに連絡すらせず、結果として当主含めた全員が命を落とした。……そのお前がここに立ってる訳がない!」
その場に居た全員が息を呑んだ。
雅の体を蹴り飛ばし後退させ、儀礼剣の持ち主は晴れゆく土煙の中から姿を表した。
やはり、そこにいたのはレイアだ。
ニコと出会った時とも、今日屋敷の玄関で別れた時とも変わらない容貌でそこに立っている。
「正体を現せ、エーテリアス・レギオン」
雅の言葉を受けて彼女はただ、口角を上げて笑った。