金持ちレズ女はニコに付き纏う   作:──

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「これが、私の物語よ。怪物と恐れられた女王は、怪物を喰らって怪物となった。これで満足?この後の展開は、そうね……『エーテリアスという確証が取れた。雅、奴を切れ』──かしら?」

 

そう言って苛立たしげな様子を隠そうともしない少女は、自身の回顧の中でその憎悪をもう一度燃え上がらせているように見える。

 

『そんなことは言わない。ただ、君の十年前の要請に応えようと──』

「あぁ、あれね。申し訳ないけど、あれはもう時効よ。この体では、そんな望みはもう──。血塗られた救世の童話は崩れ去り、血塗れの女王はただの怪物に成り下がったの。おわかり?」

 

彼女は芝居がかった仕草で両腕を広げて星見雅の前に立った。

突然の動きに六課の全員が身構える。

雅は一度仕舞ったその刀をもう一度抜き放って彼女に向けて牽制する。

 

「……なんのつもりだ?」

「亡霊を殺すんでしょう?……ほら、大チャンスよ?」

 

彼女は口を三日月のように歪めてそう言った。

 

「私を殺しなさい、そして、私の……私()()の悲願を心に刻みなさい。──その手にこびりついた私の血と、その時踏み躙った我らが悲願、それらを背負いながら生きていきなさい。……父の言葉を繰り返してあげる、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

彼女の瞳に狂気が煌めく。

 

「これで私の使命は終わり。……私は、この血(呪い)をあなたに贈るわ」

 

星見雅を見下ろす長身と、彼女の瞳に雅ですら一瞬たじろいだ。

しかし、雅は数秒間瞳を閉じ、そして静かに刀を鞘に戻した。

 

「……なぜ?」

「私が切るべき悪は、お前ではない」

「へぇ?あれほど刀を向けたのに?」

「私はお前が受け継いだ呪いを受け取らない。これがお前の望む答えのだろう?」

 

この時、彼女の表情を醜く歪ませたのは単純な怒りか、それとも自分が届かなかった姿への嫉妬か、それは本人にもわからなかった。

しかし、彼女はそれを聞いて星見雅と市長と繋がった通信端末を待つライカンに背を向け

 

「ついてきて、依頼料を……迷惑料も兼ねて倍払うわ」

 

そう言って邪兎屋の面々を引き連れてその場を離れようとして、一瞬だけ振り返り

 

「私は十年前の要請を正式に撤回する。ただし、協力が必要なら、十分なギャラを用意してから連絡をしなさい」

 

そう言って、ニコの手を引いて誰もいない屋敷の正門の方向へ進んだ。

すると、そこに裂け目が現れ、邪兎屋の四人とパエトーン、そしてレイアをどこかへと運んだ。

 

────────────

 

「……ここは?」

「このホロウの出口に近い場所よ。エーテリアスを捉える実験場でもあったあの屋敷の影響でこのホロウは安定しているから、出口が常に一定の場所に存在するの」

 

納得したようなしないような、そんな感想を抱きながら一行がレイアの示した方向へとホロウの外を目指してと足を進める中、出口寸前の場所でレイアは足を止めた。

 

「ここがホロウの内と外、人と化け物の境界線よ」

 

そう言って足を止めた。

一行が振り返ると、そこには顔の半分がエーテル結晶に覆われた怪物としての彼女が佇んでいた。

 

「……アンタ、もしかして」

「えぇ、私はここに残る。本当はホロウに入った時…既に依頼料の倍を振り込んでおいたのよ。あの屋敷をいくつかの組織が外側から観測していたことを知ってたから、どんな形であれ想定外の事態にはなると思ってたのよね」

 

彼女は申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「な、なによ、縁起でもないわね。前に借りたお金、支払いがまだだったでしょ?帰りにウチに寄ってお茶でも─────」

「いいわ、全部チャラにしてあげる。あなたも、こんな怪物とはあまり話していたくないでしょう?だからここで、ね?」

 

彼女の顔からエーテルの結晶がチリとなって消える。

 

「せめて、私の綺麗な顔を覚えて帰ってちょうだい。それじゃあ」

 

自嘲するような笑みと共に背を向けようとした彼女の手をニコが掴んだ。

 

「……帰るわよ」

「だから、私は──」

「いいから!私が一緒に帰るって言ってるの、わかんない!?」

 

ニコは離さないとばかりに彼女の腕を強く掴み、そう言った。

レイアは助けを求めるように周囲を見たが

 

「……この映画はハッピーエンドが相応しいわ。少なくとも、意味の薄いメリーバッドエンドはダメ」

「親分もアンビーもこう言ってることだし、な?」

「デッドエンドホロウと、美味しいお魚料理の恩は忘れてないぞ」

 

皆、口々に彼女の選択を否定した。

そして

 

「ね、アンタも邪兎屋に来なさい。アンタに相応しいポストを用意してあげるわ!」

 

ニコは説得するように、しかし自信ありげに、そしてどこか縋るようにそう言った。

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