金持ちレズ女はニコに付き纏う 作:──
あれからニコは周りの人たちにレイアの行方を聞き、電車の駅までたどり着いたはいいものの降車駅はわからず、結局ニコがルミナスクエアで川を眺めていた彼女の元へとたどり着いたのは日が落ち切った後だった。
昼頃から空は曇り始め、強い風がレイアのドレスを揺らしている。
「……レイア?その、お昼のことは──」
「私が信用できないのでしょう?いくらかけても、いつまでかかっても。わかってるから何も言わなくていいわ」
「違うの、そうじゃなくて──」
「違う?何が?私にはわかる、だって……私にわからないことなんてないのよ」
「どうして一人で巨万の富を築けるのか?それは私がやろうと思えばなんだって苦労せず完璧にこなせる才能があるから」
「どのようにその才能を使いこなすのか?私が築いた富が、何度だって私の才能を証明する場をくれる。この富と才能だけが私の証」
雨が屋根を叩く音が響き始めた。
川沿いの柵に手をついて川を眺める彼女は、風に運ばれて屋根をすり抜けた雨に打たれている。
「私はね、これまで一つも失敗したことがないの。そんな私がお父様から繰り返し教わったのはたった一つ、『もしも失敗しそうになったらゲームのテーブルをひっくり返しなさい』って、私に失敗は許されないんだって、失敗する者に才能はないってだから───」
ニコの方へ振り返ったレイアは、それまでに見たこともない表情をしていた。
それは失望にも諦めにも、達観にも怒りにも見えて、ニコがわかったのは、彼女の頬を濡らすそれはただの雨ではなく彼女自身の瞳から生まれたものであるということのみだった。
「─────私、あなたが嫌いよ、ニコ。私を騙したあなたが、私の思い通りにならなかったあなたが大嫌い。だから、今日でおしまいね」
「ちょっと、待って──」
その言葉を遮るように、闇夜に溶け込むような色の高級車がすぐ近くの道路で停車すると、運転手を務めるオオカミのシリオンが車から降りて後部座席のドアを開いた。
「お嬢様、お待たせいたしました」
「ありがとう。それじゃあ、すぐに出発して」
「ちょ、ちょっと!」
「……私は忙しいの。私の時間は一瞬一瞬が文字通り値千金なの、わかる?」
レイアはニコが伸ばしたその手を払いのけると、その横を通り過ぎてニコの背後で待つ車へと一直線に向かった。
「……彼女はご友人なのでは?」
「どうでもいいわ。……勝てないゲームはしちゃ
オオカミのシリオンは一瞬の躊躇を見せたが、運転席に乗り込みレイアがドアを閉めたのを確認するとすぐに車を発進させた。
今回は流石に何も書かないでいると最後の方のレイアのムーブが悪役令嬢みたいになっているので補足
自分の才能とディニーだけで全てが解決する狭い世界で生きてきたレイアは才能と富という自らのアイデンティティに強く依存しています。
才能がある→富を築く→才能を活用して富を増やす、のループが自尊心を保っているわけです。
そんな彼女が一個人のためにディニーを費やすという行為は彼女にとって自分の人間としての価値を渡すこと、魂を渡すようなことと同義です。
そんなディニーを送ったにも関わらず〝怪しいから〟と使われずにいたという事実は、彼女からのディニーはいらない→それを増やすための才能もいらない=レイアには価値がない
ということになるわけです。
レイアちゃんは立ち直れるのか……?
次回をゆっくりとお待ちください