金持ちレズ女はニコに付き纏う   作:──

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「……よろしかったのですか?」

「なにが?」

「あの女性は、貴女にとって─────」

「いい、いいの!うるさい!黙って!」

 

運転手の問いに、後部座席から絹を裂くような叫び声と大きな物音が返ってくる。

その態度が全ての答えでは、と言う言葉を飲み込んで、彼は主人を宥めることにした。

 

「……あまり暴れては、貴女のお車に傷が付きますよ」

「─────ええ、そうね。ありがとう、()()()()

「いえ、当然のことをしたまでです」

 

重い沈黙の中、車が彼女の──その大きさは屋敷に近い──家に辿り着く。

ヴィクトリア家政へ依頼をする人物の中で、レイアは比較的楽と言っていい依頼人だ。

彼女はいつも出来るだけ長い時間を取れる時に来るようにと言って彼らを呼ぶが、その依頼は決まって一人では持て余す屋敷の清掃であり、それが終われば彼女の私室で雑談をしようと言われる。

 

それは実際には雑談でなくても良く、彼女の退屈を紛らわすことができれば良いのだとヴィクトリア家政の誰もが理解していた。

それ故にヴィクトリア家政の面々が彼女の元を訪れる時は誰かが料理や話題を用意していたりするのだが、今日の彼女の部屋はそんなことを言い出せるような空気ではなかった。

 

「………………」

 

私室の中央に位置する巨大なベッドの上で、雇い主であるレイアは無言のまま枕を抱えている。

 

「……悪いけど、今日はもう帰って」

 

しばらくの沈黙の後、ヴィクトリア家政の面々は一人づつ一礼をして共に去ってゆく。

そして、その最後にエレン一人が残った。

 

「……どしたの?」

「…………ただの失恋よ。ほっといて」

「それじゃあ、一人になる方がよっぽどシンドくない?」

「一人が楽なのよ」

 

主人の言葉を無視して、エレンはレイアが蹲るベットの上に腰を下ろす。

 

「邪魔なんだけど」

「こんな広いベッドなんだし、一人くらい何ともないでしょ。……ヴィクトリア家政全員だって寝れそうじゃん?」

「……はぁ、もういい。ちょっと付き合いなさい」

 

エレンが静かに寄り添っていると、レイアは苛立った様子で立ち上がるとエレンを部屋の外に連れ出す。

 

「出かけるから、私服に着替えてきなさい。早く」

「……?あぁ、うん」

 

突然様子が変わったレイアに戸惑いつつ、着替えてレイアの元へと戻ったエレン。

すると、レイアはそんなエレンの手を引いて車に乗り込み、自らで運転してルミナスクエアに降り立った。

 

「言ってみなさい、オマエが今欲しいものは何?」

「無くなったし、飴?」

「棒付きね?いいわ」

 

レイアは雑貨屋141へ向かうと

 

「そこのボンプ。ここに置いてある棒付きの飴、全部よこしなさい」

「ンナ!?」

「ほら、これが見えないワケ?早くしなさい」

 

黒いカードをチラチラと見せつけながらボンプに要求し、ボンプが大袋に入れて大量の飴を持ってくると、そこからピンク色の飴を一つ取り出して残りをエレンに抱えさせて車に戻る。

 

「ほら、荷台に積みなさい。次よ、何が欲しい?」

「……そういうの、あんま──」

「うるさい、私のお金をどう使っても私の勝手でしょ」

「……」

「……私のためだと思って、()()は私の価値なの、コレで喜ばれればちょっとは気が晴れるの」

「……そ、じゃあティーミルク飲みに行こ」

 

二人はリチャード・ティーミルクへ向かうと、エレンが先に注文し、レイアも同じものを頼み、支払いはもちろん彼女のカードから行われた。

 

「甘ッ!?すっっごい甘いわねコレ?」

「それが美味しいの」

「……まぁ、わからなくもないわ」

 

ティーミルクを飲み終えると、次は

 

「それじゃあ、次は雑貨かしら?化粧品でもマグカップでも何でもいいわよ!」

 

その時

 

デパコスなんていつぶりかしら!

 

レイアの耳に、今の彼女にとって一番聞きたくない声が聞こえた。

 

「……、ごめんエレン。買い物は別の場所にしましょ」

「いいけど……、」

「ただの気分よ。理由は聞かないで」

「あ〜、了解」

 

踵を返そうとした彼女の視界の端、遠くで揺れたピンク色の髪、未だ彼女の心を強く惹くそれを、彼女は見ないことにした。

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