金持ちレズ女はニコに付き纏う 作:──
ニコたちは協力者であるプロキシ『パエトーン』の力を借り、ヴィジョンの監視拠点にある列車を利用してホロウを通ってヴィジョンの爆破予定エリアから住民を助け出す計画を立てた。
そして監視拠点を襲撃し、ヴィジョンの代表であるパールマンを人質にしたのは良いものの、その部下が監視拠点から外へと続く線路を爆破した為、奪う予定であった列車の中に立て篭もることとなった。
そんな中、今回のことの発端であり依頼人でもある猫宮又奈が自分の本当の目的を明かし、その償いの為にパールマンを手土産として直接ヴィジョンと交渉すると言い、列車から出ようとした次の瞬間、外から轟くようなエンジン音が響き渡る。
「な、なんだぁ!?」
『警告、所属不明の人物が高速接近中』
ビリーの慌てた声とほぼ同時に、ニコたちを手助けしていたプロキシであるパエトーンのボンプが警告を発する。
そして、爆発音が響き渡り列車の車体が揺れる。
「……そこの女、止まれ!」
「あら、治安局如きに指図されるほど低い立場でなくってよ。……はぁ、せっかくのバイクが御釈迦だなんて、車体を撃ち抜いたのはどなた?」
外から、治安局の部隊に扮した──ニコたちを包囲していた──男たちの一人が叫ぶと、それに答えたのは氷のように冷たいトーンの、しかし聞き覚えのある声だった。
そして、数秒と経たないうちに発砲音が響くが、その後に聞こえたのは男の呻き声。
「──!テメェ……っ!」
「甘い、隊列すら守らないだなんて…凡人以下ね」
何かがぶつけられた音と共にもう一度列車の車体が揺れる。
ニコはその拍子に開いた列車のドアの隙間から外を覗く。
そこには緑のドレスに身を包んだレイアの姿があった。
彼女を銃床で殴りつけようとした男が腹を蹴り上げられ、背中を曲げたことで下がった頭を彼女に掴まれ地面へと叩きつけられた。
「ほら、残念賞」
彼女のヒールの付いた鋼鉄のブーツが倒れた男の後頭部に叩きつけられ、グシャリという鈍い音が響く。
仲間が三人倒されてやっと現状を理解した兵士たちは一斉に彼女へ銃を構えて発砲するが、彼女のドレスはそれを受け付けず、鋼鉄のガントレットとブーツも同じく銃弾を通さない。
彼女の右手に握られていた剣が伸びて鞭のようにしなり、彼女はそれを振るうと一気に六人ほどを絡め取ってそのままトンネルの壁に叩きつけ、背後から迫っていた一人に曲芸のような宙返りと同時に頭を蹴りを入れて昏倒させた。
「……ひィっ!あ、悪魔……!」
「いいのかしら?悪魔に面と向かって悪魔だなんて言ってしまって」
剣が畳まれて元の剣の形に戻ると同時に、開いている左手で彼女へ銃を向ける男の銃を掴むと、それを相手の手から奪い取り、地面に叩きつけて踏み潰し、持ち主であった男に剣を突き刺した。
そこまでの蹂躙が終わると、生き残った兵士は戦意を喪失して座り込んだり地面に伏せたりと、各々が殺されないことを祈っているような状態だった。
「
彼女は自身の各種装備を軽く点検し、それが終わると同時に深く息を吸い込み
「……ニコ。ニコ・デマラッ!」
レイアはニコに目を合わせることすらなく、背後から自身を覗くニコに語りかける。
突然の大声に身を震わせたニコ、彼女が物音を発したのとほぼ同時にレイアは振り返り、ニコと目を合わせた。
ニコを見据えたその瞳はドロリとした負の感情が滲み出ている。
「自分が振った女にみっともなく助けを乞う気分はどうかしら?助けを乞われた私は凄く惨めな気分よ。あそこまで言ったのに……いつでもあなたを助ける都合の良い女だと思われていたなんて」
「…っそ、そんなんじゃ────」
「言い訳を聞くつもりはないの。これからどう動くつもり?さっさと教えて頂戴、私の時間は貴重なの。一分一秒が文字通り値千金なのよ」
以前ニコと会った時とは違う、明らかに冷たく冷ややかな態度で接するレイア。
そんな彼女に先ほどまでの状況を説明すると
「いいじゃない、行ってきなさいよ猫」
「ひどい!?」
思わず声を出したパエトーンにレイアは
「あなたがヴィジョン相手に長く話せばそれだけ爆破解体が後回しになるんだから、時間稼ぎにこれ以上良い策はないわよ」
そう言って踵を返す。
「ちょっと、どこ行くのよ!?」
「私たちはその間にホロウを縮めるの。そうすれば住民の避難もコンプリートでしょう?ほら、さっさと歩いて」
「ち、縮めるって言ったってよ……」
「普通のエーテリアスなら3000体は倒す必要があるわ」
「ここには特殊な侵食体が彷徨いてる、そうでしょ?」
「で、デッドエンドブッチャーか!?」
「そうよ」
事も無げに言い放つレイア。
「……何を躊躇っているの?方法はこれしかない。それに、ここには特大の爆薬があるでしょう」
「エーテル爆薬……!待ってて、すぐにデッドエンドブッチャーを探すね!」
「探せるのね、少しは使えるじゃない」
パエトーンが発見したデッドエンドブッチャーの座標を送信するのと、ニコが再びレイアへと話しかけようとするのはほぼ同時であり、レイアはデッドエンドブッチャーの座標の確認を優先した。
「早く行くわよ」
「……ニコと話す時間くらいは──」
「あったとしても、もう要らないから。来ないなら置いて行くから」
彼女は邪兎屋の面々に振り向くことすらなく、指定の座標へと向かっていった。