王の帰還   作:サマネ

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一夜限りのスーパーバンド(ごった煮風味)

新宿FOLTの店長、吉田銀次郎は悩んでいた。

 

「最近、お肌のハリ•ツヤが悪いわぁ…」

 

何でだろう?

 

毎朝、毎晩、ルーティンのようにスキンケアはしている。

この間も新作のケア用品を買い求め、その効果に感嘆したものだったが…

いや、それよりも前から肌の不調は感じていた筈。だから新作を試してみた筈なのに。

ここ連日の深酒が原因なのか?

それとも、知らない内に何かストレスを溜めているのか…

 

そもそも、ストレスがあったから深酒した?

そういえば、最近ちょっと寝付きが悪い。だから酒量が増えた訳で。

元を辿れば結局、ストレスのせいで寝付きが悪いのか…

 

ストレス?

 

もう数ヶ月も「一番のストレスの原因」が居ないから、そもそもがストレスなんて溜まる筈が無いのだが。

他人より多少思い悩む性格なのは自覚している。

だから「廣井きくりという爆弾」が居ないお陰で思い悩む事自体が減っている…筈…だ。

 

「え…? まさかまさか、え?」

 

一つの仮説に思い至ってしまった。

まさか…きくりのせい…いや、お陰で…ストレス発散している?

あの子がバカをやったりするお陰で、それを怒ったりして私はストレスを抜いてるの?

あれだけ普段困らせられているのに?

 

信じたく無い

考えたく無い

悪い冗談だ

 

とてもじゃないが、その考えは許容出来るものでは無かった。

 

でも、それが事実だとしたら。

いや、事実だとしても、今は検証出来ない(したくも無いが)。

あの子達はいつ帰ってくるか判らない。

帰って来る前に、私の胃に穴が開いて入院でもした日には目も当てられない。

 

…最早認めよう。

これは、この不調は「ストレス」だ。

 

ああ…それなら、どう解消すれば良いのか。

趣味は多い方では無い。と言うか、音楽を聞く以外の趣味なんて、酒くらいだ。

外で酒を飲んで、馬鹿騒ぎして…その夜はそれで良い。が朝を迎えるとまた言い知れない不調が顔を出す。

そこでまたお酒に………それじゃ、負のスパイラルだ。馬鹿のやる事だ。廣井きくりだ。

 

 

ああ、好きなパンクロックを、何処かで大声で歌いたい。

 

ーーーーーーーーーー

 

後藤家の主夫、兼窓際族の後藤直樹は震えていた。

 

「ひとりぃ………」

 

決して娘が可愛くて言っている訳では無い。いや、一周回ってそうなのだが。

 

「ひとりのギターを暫く聴いて無いよ…」

 

ギター音禁断症状だった。最早依存レベルの。

何しろ娘ときたら、四六時中ギターを弾いている。

夕方にはその音が始まり、夕飯•お風呂を経て、またギター音が木霊する。音が無いのはバイトか、バンド練習の時だけ。つまり家に居ない時だけ。

家族が寝静まった後ですら音が響いている。

流石にアンプを通した音は余り無い…が、生音だけでもそれなりに響くものだ。

それが就寝中まで響く。まるで睡眠学習よろしく。

 

美智代はもう慣れたもので、まるで気にしない。家族で一番肝が座っているので、例え災害が起こっても家族に危険が及ばなければ目も覚まさないだろう。

ふたりは、それこそ生まれた時から子守り歌代わりにあのギター音を聴いてきた。もう刷り込みのようなものだ。なのでまるで動じない。

 

僕は…ノーマルだった。「だった」んだ。

自分でもギターを弾き、バンドをやっていた。なので人一倍ギターの音が好きだと言う自負はある。

 

カクテルパーティー効果、という言葉がある。

多人数が集まっている室内等で、色々な話し声や叫び声、騒ぎ声等が木霊して。その中で、自分の興味のある音、話し声だけを自分の耳がチョイスして拾ってしまうらしい。

別に我が家は煩い訳じゃ無いが、たけれどもやっぱり興味のある音は自然と耳が拾ってしまう。チョイスしてしまう。

 

もう禁断症状だ。薬物なんてやった事は無いし、お酒にもそこまで溺れる事は無い。

 

でもこれは禁断症状だ。理解する。理解した。理解…してしまった。

気が付くと、リビングに吊るされたひとりのジャージを眺めている。

…まるでこれでは、娘に欲情する変態のようではないか。

 

モヤモヤを解消する為、久々にギターを手に取った。

ひとりの部屋で、部屋に残されたアンプを繋ぎ、ヘッドフォンを装着。

僕の元愛機、黒のレスポールスペシャルを構える。

ベロン!ガショガショ!

…チューニング忘れてた

ペグを回し、チューニングを合わせる。この辺は昔取った杵柄。…へえ、このオートチューナーって便利だなあ。

 

弾く!弾きまくる!

足りない!まだ足りない!

いい加減腕が落ちてるのもあるが、あの「ひとりの音」には遠く及ばない。

でも、弾く!弾く!

気が付くと、ひと月ばかり集中的に練習してしまった。

 

でも…でも届かない。やはりあの子のセンスには敵わない。あの子の音には、敵わない。

 

依然、禁断症状は改善されず。

 

 

…何処かのステージで演れれば、また違うのかな…

 

あの子の見た景色を経験出来れば、違うのかな。

 

ーーーーーーーーーー

 

新宿FOLTにて、ベースのオッサンは憤っていた。

 

「だからよぉ!花形はギターかもしれんが、王道はベースだろうが!」

「…これだから頭の凝り固まったオヤジは!王道なんてドラムでしょ!?ベースなんて添え物!アンタ達は私のドラムが無けりゃリズムすら刻めない癖に!」

「ぐっ…グヌヌ………」

 

「虹夏、これいつまで続くんだろ」

「知らないよ!あたしだって知りたいわ!」

 

現在、リョウと虹夏の目の前でオッサンとリナさんがイガミ合っている。

 

なんでこんな状況になったのか。

遡ること2時間前。リナと虹夏はFOLTにライブを聴きに来ていた。面白いドラムを叩く奴が出演するという事で。

其処にレッスンを終えたオッサンとリョウがスタジオから帰ってきた。店長の銀次郎に挨拶をする為。

 

「あれ、虹夏?どうしたの?」

「ああリョウ、お疲れ。今日もレッスンだったんたね」

リョウは実際、ちょっとヘバっている。でも、前に比べればかなりタフになった。最初の頃なんか、帰ってきたら口も禄に聞けないような状態だった。

「ん、そう。虹夏はライブ見に来たの?」

「そ。この後中々面白いドラム叩く人が出るらしいんだ」

 

「フン!…ドラムか」

オッサンが鼻息を荒くする。

それを見咎めたリナが、すぐに反応。

「なにさ。バンドの中じゃ、ドラムがイチバン面白いさ。ねぇ、虹夏ちゃん?」

「あ、あははは…」

虹夏が微妙な反応を示す。実際この場でどう反応して良いのか判らない。

「んぁ?イチバン面白れぇのはベースだろが。なぁリョウ」

「…ちょっとまって」

リョウもどう返して良いのか判らない。

 

「ドラムでしょお!?」

「ベースだろうが!」

「ベースなんてボンボン響いてるたけじゃん!それならその辺のゴム張ったモノはじいてたって変わらないじゃない!」

「バカ言うな!それならドラムだって猿が太鼓叩いてるオモチャみてーなモンだろが!」

「あーヤダヤダ!ベース弾いてると何か脳に障害でも起こるのかねぇ!どんどん知能が低下してって、その内自分が猿並みになるのかねぇ!どうせ弾いてる時もウキウキ言ってるんだろ!」

「お…ま!この…!」

 

オッサンは、致命的に語彙力が無かった。

 

普段は二人共、他の楽器に対してしっかり敬意を払い尊敬している。自分が出来ないものを突き詰める姿勢に、リスペクトしている。

だが最早売り言葉に買い言葉になっている。只の泥試合だ。

「ようし分かった!そんならどっかで勝負してやるよ!吐いた唾飲み込むなよ!」

オッサン最早涙目だ。元々チキンハートだけに、売られた喧嘩は極力買わないように生きて来たと言うのに。

「あーいいねぇ!受けてやるよ!猿にも解るように、きっちりカタつけてやる!」

返すリナは流石。あの星歌のメンバーを勤めて来ただけある。

 

「…もう、いい加減にして欲しい」

リョウがゲンナリとして呟く。それを拾うように、虹夏もボソリと返す。

「…そだね」

 

「じゃあ此処(FOLT)で良いじゃない!こんだけ入りゃ、嫌でも判るだろ!このサル!」

言われてビクリとするオッサン。途端に喋りが小さくなる。

「…ここは、デカ過ぎる…」

「あぁ!?聞こえねーな!」

 

「リナさん、取り敢えず落ち着いて」

堪らず虹夏が仲裁に入る。元来の面倒見の良さを発揮した…してしまった。

「あぁごめんね。…よし、じゃあスターリーだ!」

「…えぇ………」

露骨にリョウが嫌そうな表情をする。余りそう言う争いを自分達のホームに持ち込んで欲しく無い。

虹夏も自分が矛先を向けてしまったせいなのかと思い、アチャアと顔を歪ませる。

 

「おいリョウ。…スターリーのキャパってどんだけだ」

オッサンがボソボソと聞いてくる。

「まあ…最大で250位かな?」

嘘を吐いてもしょうがないので、リョウは正直に話す。と。

「250…まぁ、ギリギリか…」

何がギリギリなのか、リョウには察しがついていた。オッサンが人の前に出られる人数が、多分最大でもその位なのだろう。

 

「よし、わかった!そこで良い」

何やらオッサンの中で決定してしまった様だ。もう後に引けないのだろう。チキンハートでは頑張った方だ。

「おー!逃げるなよ!」

リナもリナだ。流石に「星歌上等!」で鳴らして来ただけある武闘派ドラマー。未だに星歌が抜ける時、「パンチは一発で良かったのか」と密かに思っているだけある。

 

こうして、対決の「場」だけは決まってしまった。

 

ーーーーーーーーーー

 

下北沢STARRYにて、星歌は困っていた。

 

「なんでアイツ等、ココで演んの?………」

 

本日、一つのバンドの為に貸し切り。チケットは販売開始5分でソールド・アウト。これ以上は危険だという判断で、チケット販売は終了した。放っておけば500枚でも1000枚でも売れただろう。…そんな入れないのに。

集客が良いのは嬉しい。嬉しい…が、良過ぎるのは却って困る。

なるべく前を確保する為、2時間も前から客が長蛇の列。先程警察から注意が入ったくらい。

こんな事、この店をオープンしてから初めてだ。その内結束バンドもこうなるだろうとは思う(実際なって来てはいる)が、それにしても、だ。

 

「星歌店長。申し訳ありません」

 

その元凶が挨拶に来た。

大槻ヨヨコ

シデロスのフロントマンにして作詞•作曲もこなす、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのそのバンドの、リーダー。

 

「ああ、良いさ。客の入りが良いのはこっちとしても嬉しいからな。…でもさ、なんでウチなんだ?」

素朴な疑問をヨヨコにぶつける。だって、アリーナだってソールド・アウトに出来る実力の持ち主だ。

 

「…なるべく客の近くで演りたいんです。定期的に」

 

言ってる事は最もらしいが、星歌はヨヨコの心の内を何となく察していた。

(なんでぼっちちゃんに拘るんだろうね。今や比べ物にならない位シデロス売れてんのに。…ま、判らなくも無いけど。多分、ぼっちちゃんを本能的に怖がってる。ギタリストとしての…本能的に)

 

ヨヨコの後に、ドラムの長谷川あくびが顔を出す。

「すみません店長。今日は宜しくお願いします」

流石シデロスイチの常識人。ソツが無い。

 

「あ、そー言えばヨヨコさん。来る時ヨヨコさんが買った雑誌に面白い記事乗ってましたよ?」

「…何で人が買った雑誌、先に見てるの…どれよ」

「…これっす」

それはギタマガ最新号の記事。そのイチ企画。

「…なに?………次世代若手ギタリスト…ランキング!?」

 

その記事は、これからの時代を担う若手ギタリストの読者投票によるランキングたった。男性と女性分かれてランク付けしてある。

どちらも1位から10位まで枠がある。そしてその下に次点。

そのランキングをみてヨヨコは鼻を鳴らす。

 

「フン!私が1位は当然ね!…2位はイライザさんか。これもまあ、妥当ね」

気を良くしたヨヨコは、ランクを目で流していく。

「後藤ひとりは5位…評価は「未だ少々安定しないが、ハマったときのプレイは鳥肌が立つ」か。まぁ、中々解ってる評論ね………って!?」

そのままランクを流し見ていたヨヨコの目が、一番下で止まる。そして思い切り見開く。

「…ちょちょちょ、ちょっとコレ…え?なに?どう言う事!?」

 

あくびと星歌が覗き見ると、そのランキングの「次点」には…

 

「ギター…ヒーロー………」

 

星歌が呟く。あくびが評価を読む

「えーと?「若手ギタリストのランキングなので確実に若手である事が必須だった。だからギターヒーローは確認が取れずに次点。しかし、読者からの票を最も集めていたのが、この「ギターヒーロー」だった。噂では何処かのバンドに所属しているという話たが…」っすか。ぼっちさん、未だに明かしてないっすからねえ」

コメントの横には、いまだにギターヒーローの時の「ユニフォーム」であるピンクジャージがギターを構えて写っている。多分動画の映像をキャプチャしたものだろう。

 

何故かヨヨコが俯いてふるふる震えている。

 

「…う」

「う?」

「…うるさいうるさい!さあ!ライブ始めるわよ!さっさと準備しなさい!」

「…えぇ………」

あくびに理不尽に当たり散らして楽屋へと消えるヨヨコ。

「もー、まだ1時間以上あるっすよ…」

ブツブツ言いながらも慣れたもので、ヨヨコの後を付いて行く。

 

 

テーブルの上に残された雑誌。

それをまた手に取り、先程のページを開く。

 

「…すげえな。ギターヒーロー」

 

そのランキングを指でなぞる。自分もそんなランキングに憧れた時はある。

現役時代、兎に角上を目指さない奴は馬鹿だと思っていた。実際言葉にもしていた。

でも、その夢も潰えた。その事に後悔はしていない。

でも…それでも…

この、胸に燻る気持ちは何なのか。

先程もヨヨコに思った事。

 

「ギタリストの…本能…」

 

一度は目指した身だ。そんな心からの願いが、簡単に無くなる訳が無い。

 

「たまにはギター、弾いてみるか」

 

ふと思い立つ。でもそれなら、折角なら…ステージの上で演って…みたい。

 

「ハハ…馬鹿な事」

 

星歌は困っていた。まだ、自分に「その熱」が残っている事に。

 

ーーーーーーーーーー

 

以上がひと月程前の事。

 

で、今現在。下北沢STARRY

 

何故か、ステージの上には5人が登っている。

その5人

 

ギターーーー伊地知星歌

ギターーーー後藤直樹

ベースーーーオッサン

ドラムスーーーリナ

そして

ボーカルーーー吉田銀次郎

 

物見遊山の気持ちで、観客は満杯。

主にスターリーとFOLTの常連客と思われる。

 

「銀ちゃーん、声出んの!?」

「星歌さーん、腕…錆び付いてない!?」

 

野次も酷いものだ。

 

ある意味奇跡的なクインテット。まず集まらないであろう5人。それが何故か、集まってしまった。

 

最初の犯人は美智代だった。

余りに挙動不審な態度の直樹に、それとなく要望を聞き出した。

それからの行動は早かった。直ぐ様虹夏に連絡を取り、「機会があれば」とステージの登壇に言質を取った。

次の犯人は虹夏。

リナとオッサンがスターリーで演る事が最早既定路線になってしまったので、無理矢理直樹とのブッキングを画策。

その次の犯人はリョウ。

最近星歌が隠れてギターの練習をしているのを見掛けてしまった。そしてそれとない風を装い、虹夏に思いを聞き出させた。

最後の犯人は星歌。

偶々FOLTに出向いて話し合いをしている最中、銀次郎の近況と要望を聞き、強引に一枚噛ませてやった。

 

こうしてミラクルなクインテットが完成。

 

 

「あの…僕、ここに居て良いのかな………」

直樹が明らかに不安な声を出す。そこに

 

「おとーさん!がんばれー!」

 

後藤ふたりの声が飛ぶ。美智代と二人で直樹の勇姿を見に来たのだ。

 

「お、おー!おとーさん頑張っちゃうぞー!」

後藤直樹。娘には弱い。

 

「まあお父さん、楽しみましょう」

星歌が声を掛ける。

「は、はい!店長さん、お手柔らかに…」

なんとか笑顔で答える。

まだ不安げだが昔取った杵柄。ステージ上でギターを構える姿は中々堂に入っている。

 

「しかし、また星歌と演る事になるとは、ねぇ」

リナが呆れ顔で星歌に話し掛ける。

「私だって思っても見なかったよ。…ま、ウチで演ってるギタリストのせいで、松ぼっくいに火が付いた、って感じかな。一回きりの、さ」

リナはそれを聞いて、ふぃ、と視線を逸らす。

「ずっと消えなけりゃ良かったのにな…」

その呟きは星歌には届かない。届かせるつもりも、無い。

 

視線を逸らしたついでにリナはオッサンを見る。

「オッサン、ダイジョブなの?」

明らかに顔色がオカシイ。青を通り越して紫になっている。

「ダ、ダ、ダイジョブだよ!当たり前だよ!」

何が「当たり前」なのかちっとも分からない。

 

「オッサン!失敗しろ!」

リョウから野次が飛ぶ。

「うるっせえ!見てやがれ!」

何を見るのかちっとも分からない。

 

「アンタも変わらないね」

星歌が苦笑しながらオッサンに声を掛ける。

「…お前は変わったな。…何か、丸くなったよ」

「そーかい。…アンタ、もっと肝が太けりゃ日本有数…いや、世界に行けるベーシストになったのにな」

「ふん!…これが俺だよ。…俺の夢は、アイツが継ぐさ。面と向かって言わねぇけどな」

リョウを横目でチラリと見る。多分、アイツは世界に行ける。そう教え込んだ。日本の様な狭い世界に収まらない、ベースを。

他のメンバーもそうだろう。イギリスに行ったギターも、ちらっと噂だけは耳にした。ロンドンでとんでも無いモンスターが誕生しつつある、と。ボーカルも、あの「ナイト・メア」に師事した、と。「世界の歌」、に。

後はドラムスだ。…まぁ、リナが教えてんなら、大丈夫だろう。昔から口は悪いが、腕は確か。ここ最近の評価も抜群に良い。

なまじ固定メンバーで演るよりスタジオミュージシャンってのが教えるのには都合が良い。色んなメンバーを纏める方法を、技術的•感覚的両面で捉えてるヤツだ。

 

「銀次郎さんも、行ける?」

星歌が銀次郎に確認を取る。それを受けた銀次郎は、余裕綽々…いや、開き直っただけか。

「もうここまで来たらなる様になれ!よ。それより其処のデブ!あんたちゃんと弾きなさいよね!弟子に恥掻かせないように!」

「…うっせぇなあ。解ってるよ」

 

一応このメンバーで何回かは合わせの練習はしてきたのだ。

流石に現役がリナだけなので、合わせは必須。むしろ時間が足りないくらいだ。

それでも「真剣に遊ぶ」という大人のコンセプトで、本番も何とか乗り切ろう、と。

 

つまりは「とにかく楽しもう!」

 

もうリナとオッサンの勝負もどうでも良い。元々見知った仲だ。お互いのプレイは充分知っている。プレイに対して信頼もしている。

直樹はとにかく「ひとりのプレイ」を追い掛けたかった。腕はまるで及ばないが、ひとりが普段演っているスターリーで「ひとり成分」を吸収したかった。

星歌は燻ぶったモノを燃やし尽したかった。たまたまリナと演れるのは、最後の舞台で僥倖だ。

銀次郎は、叫びたかった。それがストレスの解消になるかは判らない。でも、好きなパンクロックを大声で叫べれば何かが変わる、かもと思った。

 

皆のそんな思惑で、このバンドは一夜限りの結成。

その名も

「傑作バンド」(PA命名)

 

さあ、その輝きは、熱は皆に届くのか。

 

 

その答えは、終始大笑いしていた観客だけが知っている。

 




今回は、息抜きでお馬鹿な話でもどうぞ。
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