王の帰還   作:サマネ

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魔王

☆☆ミュージックコラム【ロック•ぽいずん】☆☆

 

 

 

1/3

毎回応援やら批判やらを多数受けている当コラム。

今回も16ビートの風をお送りしていきます。

さて、今回はちょっと思う所あっていつもと少々毛色の違う内容で綴っていきます。

 

それでは…Let's Rock'n Roll!

 

…………………

 

……………

 

………

 

 

 

2/3

……だと、フロントマンである大槻ヨヨコは語った。

確かに今迄のアルバムからすると、今回の1枚はより攻撃性が強いのかもしれない。そこを聞いてみると

「…嫌いなヤツが帰って来るから」

と、ひと言だけ。

そこまで大槻に影響を与える「嫌いなヤツ」とは…

 

読者には突然の話題転換もしれないが、ここからが今回の当コラムの本質である。

ここまで幾つかの所謂「若手実力派バンド」のインタビューを載せて来たが、どのバンドも一貫しているのは「あるギタリスト」の存在を仄めかしている点だろう。

代表的なのは前述の大槻ヨヨコであり、冒頭から紹介しているバンドほぼ全てがそのギタリストを意識している…という所だ。

これはある意味異常だ。

何故か。それはその「あるギタリスト」が、まだメジャーシーンに登って来ていないからである。

それなのに若手実力派バンドがこぞって名前を上げるギタリスト。

これだけで異常性を感じないだろうか。

しかも、実力を評価されているバンドばかりが「その名前」を出すのだ。

地元のライブハウス等のみで演奏しているバンドなどは、下手をするとその存在すら知らない。

どう言う事なのか。

最早都市伝説の一部か。実力バンドだけが受ける「託宣」なのか。

しかし、大槻ヨヨコははっきりと言っていた。

「嫌いな「ヤツ」」と。

それが「そのギタリスト」が実際に存在する証左だ。

しかし、全国的な知名度は無いに等しい。

私もそれなりに長い事音楽ライターをやっている。顔もそれ程狭くないし、知見もそれなりにはあるつもりだ。

全国のライブハウスに取材に行く事もある。でも、地方…いや、この東京ですらその存在を知らない人間の方が圧倒的に多い。

しかし、実力を謳われるバンドには尽く伝わっているその名前。

何故なのか。

 

…それは、「知っている」からだ。

その「存在」を。その「ギタープレイ」を。

 

一時…正確に言うと、去年の夏位まで「そのギタリスト」は沈み掛けていた。

それから秋を過ぎ…「そのギタリスト」は突然存在を消した。

噂によると、同じバンドメンバーと二人でロンドンに渡ったらしい。

ここからが聞いたとしても信じられない話なのだが…

 

その「彼女」(そう、「女性」なのだ)はロンドンに渡り、市内にあるライブハウス「The99Club」でサポートメンバーとして働き始めた。

かのライブハウスは、イギリス最古と目される歴史と伝統のライブハウスだ。(ちなみにイギリスだとLivemusicClubと呼ばれる)

生半可なプレイヤーなどは鼻にも掛けて貰えない。そんな所で働き始めた。それだけでも驚くに値する出来事なのだが、そこで彼女はあるギタリストに出逢った。

 

敢えて名前は出すまい。名前を出すのは野暮というものだ。

しかし…「伝説の野外ライブ」というキーワードで勘づく方も居るだろう。

「漆黒のボディに金糸のライン、ユニオンジャックと星条旗のクロスチェッカーのストラトキャスター」というアイコンで、人物を特定出来る方も居るだろう。と言うか世のギターフリークならまず気付くだろう。

 

兎に角、その「彼」に遭った「彼女」は、あろう事か同じステージに立ち、一緒に演奏をしたらしい。

たまたま彼が友達のアマチュアメンバーを引き連れ、そのライブハウスでお忍びの演奏をしたらしいのだ。

そこでスタッフの一人だった彼女を引っ張り出し、一緒にプレイをしたらしい。

 

その結果、どうなったか。

 

彼は彼女を見初めて、なんと自分のバンドに誘ったらしい。

それが駄目なら、ゲストギタリストに、と。

 

とてもじゃないが信じられる話では無い。あの「孤高のギタリスト」が、人を誘ったのだ。それも自分と同格だと認めて。

そして「彼女」は…それを断った、と。

これまた信じられない話だ。

あの「スーパーバンド」に実力で誘われて、それを断った。

音楽を志す者なら喉から手が出る程欲しい地位。頂の地位。…それを、無碍に断った。

その理由が「日本でバンドメンバーが待ってる」と言う話らしい。

インディーズのメンバーが待ってるから…そんな理由。

普通に考えれば「有り得ない!」。でも、彼女はその考えを通した。自分の信念を通したのだ。

その後…彼と彼女は「親友」になった。

まるで都合の良いライトノベルのような、その結果。

しかしそれは、全くの事実だ。

彼の最新のMVを視てみると良い。ギターはいつもの「彼のアイコン」では無いが、その左手首に嵌まるシルバーのバングル。

そして…機会があれば日本の、東京下北沢にあるライブハウス「STARRY」に行ってみると良い。

そこで同じシルバーのバングルを嵌め、「彼のアイコン」を掻き鳴らすギタリスト。

そのギタリストの名前は

 

ーー後藤[ボッチ]ひとりーー

 

 

さて、もう一人も紹介しなければならない。

後藤がロンドンに渡った時、一緒に付いて行った人間。

これもまた女性。後藤と同じバンドのギターボーカル。

それまでそのギタボは目立つ存在では無かった。はっきり言って、世の数多のギタボに埋もれてしまうような、そんな存在だった。

確かに華はある。実力も及第点。しかし…そこまで。

どんな悩みがあったかは伺い知れない。でも、彼女は後藤に着いて行った。

 

ここで、ボーカルの素養について少し考えてみよう。

ボーカルのそれは、楽器の演奏よりも天性の才能が必要だ。楽器の演奏は、練習すれば上達するだろう。歌も、練習すれば上達はする。

しかし…「フロントマン」としての「ボーカル」は、その才能は、練習で身に付くものでは無い。

例えば泳げない者でも、練習すれば楽しく泳げるようになるだろう。しかし…オリンピックで金メダルを取れるようになるのか。

例えが極端かもしれないが、「フロントマン」としての才能は、それだけ特殊なのだ。

「華」を持ち、「惹き付ける声」を持った上で練習を重ねる。「持っている者」の世界だ。

確かにその彼女には、「華」と「声」はあったのかもしれない。でも飽くまで未知数。尚且つロンドンに行き、「英語圏」で学んだ事は「日本」で花咲くのか。

それは彼女の首を絞めはしないのか。

でも彼女は海を渡った。後藤と一緒に。そしてそれは…見事に花開く。

彼女はロンドンに行き、偶然あるシンガーと出逢った。

 

「ナイト・メア」と言うシンガーを知っているだろうか。

日本では余り馴染みが無いが、北米やヨーロッパへ行けば絶大な人気の歌姫だ。アリーナツアーどころかスタジアムツアーまで出来る実力者。そのバックバンドも素晴らしい。

「レベッカ」と言うギタリストを聞いた事があるかもしれない。以前、日本のCMでも曲が使われていた。

バッキング技術は世界のトップテンに入る実力者。

その「ナイト・メア」と「レベッカ」は公然のパートナーだ。そして、その二人に彼女は師事を受けていた。

イギリスのライターに問い合わせると「信じられない」という答えだった。何故かと問うと「あの二人が誰かを教えるなんて想像出来ない」と。

また「信じられない」事実に当たってしまった。

 

その彼女は二人に一年以上に渡って師事され、最終的に彼女達と「姉妹」になったと言う。

もう一度言おう。下北沢STARRY。そこで歌い、弦を掻き鳴らすその指に、シルバーのリングを認めるだろう。

そしてオーチューブに「ナイト・メア」と打ち込んでみると良い。

先週上がった動画の、その彼女達の指には…同じ意匠のシルバーリング。

 

「ナイト・メア」の弟子の彼女は「セイレーン」と言う通り名を得たらしい。

セイレーン………ライン川のほとりでこの世のモノとは思えない歌を歌い、船乗り達の心を惹き付け、奪い…船を沈ませてしまう「人ならざる者」。

その歌には誰も抗えない。

そのギターボーカルの名前は

 

喜多[セイレーン]郁代

 

 

 

 

3/3

 

彼女達が帰って来る頃、面白い噂を聞いた。

 

二人の日本人を、何とかイギリス国籍にする…と運動している誰かが居る、と。

ルール上も法規上も無茶な話で、それでもどうにかしよう…と考えて居たらしい。

そのムーブメントを起こしたのがロンドンのミュージシャンが主体で、地方議員も巻き込んで運動していた、と。

結局それは結実しなかったらしいが(所詮無理な話だろう)、その二人の日本人こそが

 

後藤ひとりと喜多郁代。

 

その2名。

 

 

更に面白い話はある。

オーチューブで[ロンドン ガトウィック空港 ギター]と検索して欲しい。

そこには、伝説の始まりが映っている。

その日、知り合いのライターが空港で飛行機を待っていたらしい。しかし飛行機が遅延すると言う情報。

日本人なら文句を言いつつも、待つだろう。

しかし欧米人は行動に移す。危うく暴動になりそうになり…「それ」は起こった。

 

女性が一人その場に現れ「Attention!」とひと言。

そして見事なカーテシーを披露(上流階級の挨拶)する。

それからイギリス国歌が空港内に響き渡った。

件のライター曰く「心を持って行かれた」と。

 

それからが本番だった。

 

おもむろに誰かがギターを取り出し、凄まじいまでの演奏を始めたらしい。

その場で騒いでいた乗客に、音の暴力を打ち付ける。

突然現れたそれはまるで[ファントム]のようだったと。

後でそのライターが周りから聞いた話では

「まるでルシファーズハンマーを受けたみたいだ」と語っていたらしい。(※ルシファーズハンマーとは古代、ローマ軍の余りにも酷い暴虐に魔王ルシファーが落とした鉄槌の事らしい)

 

とにかく鉄槌は落とされ、暴徒は静まり返る。

その後大歓声を受けた二人の日本人。

 

[セイレーン]喜多郁代と

[ルシファー]後藤[ボッチ]ひとり

 

まさに伝説の幕開けだろう。

 

 

 

日本のギタリストよ。跪け。

王が帰って来る。

仮初の王達よ。その玉座を空けろ。

そして、座して待つが良い。

仮初の虚飾を飾った者達よ、震えて待つが良い。

 

ギターの王が…魔王が…とうとう帰って来る。

その手に鉄槌を抱え、愚かな者達に審判を下す。

 

信じる者には祝福を

抵抗する者には鉄槌を

 

 

 

王が、帰還する。

 

 

 

 

文責  佐藤愛子  ◯◯年◯◯月

 

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