好機逸すべからず   作:赤悪鬼

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12歳-前半-

「今からイタリアに行くぞ」

 

 

もう嫌だ、この父親。

 

 

 

 

 

久しぶりに家に帰ってきたと思ったらコレだ。

今は夏休みだからいいけど、こっちの都合も考えて欲しい。

 

 

 

 

 

 

「ってなわけで、今度会えなくなった。ごめんね」

 

 

 

 

 

【いえ、構いませんよ。高貴な私の高貴な親友の柚希。家の都合なら仕方ありません】

 

 

 

 

そう、夏休みは直とかと過ごす予定だった。

中々会えないのだが、この夏休みは時間が取れたらしかったから私も楽しみにしてたのに…

 

 

 

 

 

「もー。嫌だ」

 

 

 

 

【…確か、イタリアでしたね?行くのは】

 

 

 

 

「?そうだよ。父親がそこで働いてるからさ。弟のお披露目も含まれてるのかなー。てか、それがメイン」

 

 

 

 

 

もうあんたらだけで行ってくれ。

 

 

 

本当にそう言いたいよ。

 

 

 

 

【……】

 

 

 

 

「直?」

 

 

 

 

 

急に黙り込んでしまった直に声をかけると、直はクスリと笑った。

 

 

 

 

【何でもありません。楽しんできて下さい】

 

 

 

 

 

「嫌味か。…まぁ、イタリアなんて滅多に行かないからね。楽しむよ」

 

 

 

 

【えぇ。では】

 

 

 

 

 

「ん」

 

 

 

 

 

電話を切って、下に降りていく。

 

 

 

 

 

「柚希ちゃん準備できた?」

 

 

 

「うん。もう行く?」

 

 

 

 

 

「えぇ!楽しみね〜。イタリアなんて」

 

 

 

 

 

「そうだね」

 

 

 

 

私は憂鬱で仕方ないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、そんなこんなでやってきたイタリア。

 

 

もう、ね。

イタリア=ボンゴレだよね。

ボンゴレ=ティモさんだよね。

 

 

 

帰りたい。

 

 

 

 

「よく来たね。奈々さん、柚希ちゃん、綱吉君」

 

 

 

 

「お久しぶりです、ティモッテオさん。今回はお招きいただきありがとうございます」

 

 

 

 

 

「いいんじゃよ。久しぶりだね、柚希ちゃん。覚えてくれてるかな?」

 

 

 

 

「はい。お久しぶりです、ティモさん」

 

 

 

 

ぺこりと頭を下げて挨拶をする。

 

 

 

 

 

「それでは、行こうか」

 

 

 

 

空港の外には大きなベンツが。

 

 

 

 

「ねーちゃ!おっきーね!」

 

 

 

 

「そうだね」

 

 

 

 

綱吉の頭を撫でて、ベンツに乗り込む。

 

 

 

 

私は直に御呼ばれして何度かベンチに乗った事があるからそんなに感動しないけど、お母さんと綱吉は違うから凄いはしゃぎよう。

 

 

 

 

私もそれとなく楽しんでいるように見えるよう、ずっと外を眺めておく。

 

 

 

 

「着いたのう」

 

 

 

 

車が止まり、外に出ると…古城があった。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「うわぁ!!」

 

 

 

 

無駄にお金を使ってる感満載。

 

 

 

 

「凄いだろー?柚希、ツナ」

 

 

 

 

「…うん」

 

 

 

 

「しゅごい!しゅごいよおとしゃ!!」

 

 

 

凄いのは城であって、お父さんじゃないんだけどね。

 

 

 

 

 

とは言わなかった。

 

 

 

中に通されて、泊まる部屋に行った。

 

 

 

 

「……五分五分?」

 

 

 

 

直の所と。

 

 

 

まぁ、玖渚機関の高級ホテルならそっちの方が凄いだろうけど。

 

 

 

 

 

ベッドに座って携帯を開く。

 

 

 

 

眠いと思ってたらあっちは夜か。

そりゃ眠いわ。

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

 

「はい?」

 

 

 

 

 

「柚希、入るぞ」

 

 

 

 

入ってきたのはお父さんと…

 

 

 

 

「……誘拐?」

 

 

 

 

 

「違うからな!?」

 

 

 

 

「分かってるよ。わざと」

 

 

 

 

お父さんと一緒に来ていたのは、綱吉と同じくらいの男の子。

日本語が分からないんだろう。

私とお父さんを交互に見ている。

 

 

 

 

 

「Come si sa? I Sawada Yuzuki. Come su di te?」

(初めまして。私は沢田柚希。君は?)

 

 

 

 

「!…BAziru.」

(バジル)

 

 

 

 

 

バジルって確か門外顧問所属の…

 

 

 

 

「お父さん、何でこの子を?」

 

 

 

 

「あ、あぁ。ツナは寝ちまっててな。後でツナにも紹介するが、先にと思ってな。てかお前、いつの間にイタリア語を?」

 

 

 

 

「趣味。ふぅん」

 

 

 

 

 

バジルの頭を撫でる。

 

 

 

 

この子は将来お父さんに振り回される。

間違った日本の知識を入れられてるしね。

 

 

 

 

「ねぇ、お父さん。話があるんだけど」

 

 

 

 

「……Baziru. Lasciatemi andare alluogo di Origano.」

(バジル。オレガノの所へ行ってくれ)

 

 

 

 

態々バジルに席を外させ(私としてはそっちの方が都合がいいが)、お父さんは椅子に座って苦笑いした。

 

 

 

 

 

「何だ」

 

 

 

 

「……分かってるのに態々聞くなんて、酷いと思うよ?」

 

 

 

 

 

「やっぱり分かっていたのか」

 

 

 

 

主語を抜かしての会話。

 

 

だけど、私達にはその主語が分かっている。

 

 

 

 

「お父さんは私に何を求めてるの?こんなデカいマフィアを継げ、なんて言わないよね?」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

目を伏せるお父さん。

 

 

やっぱり私に継がせるつもりだったのか。

 

 

 

 

 

「……正直に言うと、お前にはボンゴレをを継いでほしい。お前には初代の血が流れている。ツナもだが…。いつから気づいていた?」

 

 

 

 

 

「…ティモさんが来てから、かな」

 

 

 

 

本当は全てを知っているんだが、それは言えない。

 

 

 

 

 

「そんなにも前から…。実際、お前たちにも候補者はいる。だが…」

 

 

 

 

 

口を閉ざすお父さん。

確か原作なら、一番10代目に近いと言われているのはヴァリアーのボス、XANXUS。

 

 

 

 

「オレは、柚希に継いでほしい。その方がボンゴレも安泰するし、お前の為にも…」

 

 

 

 

「エゴだね」

 

 

 

 

 

「何?」

 

 

 

 

鋭い視線で私を見てくるお父さんだが、今は全然怖くない。

 

 

 

 

「それはお父さんのエゴだよ。私はそんなの望んでない。私は私の進みたい道を進む。何でお父さんに私の道を決められないといけないの?」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「それに、もし仮に私がボンゴレ10代目となったとして、次に私を待っているのは政略結婚だ。私はボンゴレの道具じゃない」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

お父さんは何も言わない。

という事は当たってるのか。

 

 

 

 

「………オレは」

 

 

 

 

「私は継ぐ気はない」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

「今まで表で生きてきた私に、裏で生きろなんて馬鹿げてる。お父さん。家族よりもボンゴレがそんなに大事?私の幸せを願ってくれないの?」

 

 

 

 

 

「それは、」

 

 

 

 

 

多分、この言い方は狡いだろう。

お父さんはボンゴレでも№2だ。

ボンゴレの為に尽くすのは当たり前。

 

 

家族を取るか、ボンゴレを取るかだよ、お父さん。

 

 

 

 

 

「…………柚希の幸せも勿論願ってる。だが、ボンゴレはこのままじゃいけないという事も事実なんだ。このままだと、XANXUSがボンゴレを継ぐ事になる」

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

お父さんは知らないのか?

XANXUSが9代目の実子じゃない事を。

 

 

 

「……もう、いい」

 

 

 

 

「すまない」

 

 

 

 

バタンッ

 

 

お父さんが出て行った扉を若干にらみつける。

 

 

 

どうやらお父さんはボンゴレを取ったらしい。

 

 

 

 

 

「間違ってる、とは言わないけど、親としてどうなの…」

 

 

 

イタリアに来て1週間が経った。

 

 

 

 

 

「……暇、だね。それに疲れる」

 

 

 

 

 

あてがわれた部屋でそう呟いて窓の外を見る。

 

 

 

 

ここに来てからずっと監視されている。

それが息苦しくてたまらない。

 

 

 

「……外、出よう」

 

 

 

 

 

私はどうやら幻術の才能があるみたいで、幻術なんて芸当使えないと思い込んでいる監視の人らの目を掻い潜る事ぐらいは出来るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、抜け出す事は出来た。

私の幻術なんてスカみたいなもんだから不安だったけど、上手くいったようだ。

 

 

 

 

「イタリアの街も、いいもんだね」

 

 

 

「そうですね。私も結構気に入っていますよ」

 

 

 

 

独り言のはずなのに、返事が返ってきた。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

ゆっくりと、いつの間にか横に立っている人物の顔を確認する。

 

 

 

 

「何で、いるの。直」

 

 

 

 

「偶々ですよ。偶々」

 

 

 

 

 

偶々を主張してくる辺り、偶々じゃないよね。

 

 

 

 

「少し、付き合ってくれますか?」

 

 

 

 

 

「……うん」

 

 

 

 

 

何でだろう。疑問詞ついているのに、その笑顔は断るのは許さないって顔だよね。

 

 

「適当に頼んでください」

 

 

 

「お腹空いたから美味しいの」

 

 

 

 

連れて来られたのは、玖渚機関が経営する高級料理店。

 

 

 

 

「美味しいの、と言われましたも…」

 

 

 

 

困ったように笑う直。

 

 

でも、今、私は機嫌が悪い。

 

 

 

「なら、直のお勧め」

 

 

 

「分かりました」

 

 

 

だからといって、直に当たるなんて馬鹿な事はしないけれど。

 

 

 

 

「それで、何かありました?柚希がそんなに苛つくなんて…よほどの事でしょう」

 

 

 

 

「……別に何でもな「くないですよね?話してください」……」

 

 

 

 

ジト目で直を見るが、直はどこ吹く風。

 

 

 

 

「私に出来る事があるのなら、協力しますよ」

 

 

 

 

「……分かった。でも、さぁ。きっと迷惑かけるよ?」

 

 

 

 

「私の仕事を手伝う事で手を打ちましょう」

 

 

 

 

ちゃっかりしてるね。

 

 

 

 

それ程でも。

 

 

 

 

「じゃあ、何処から話そうかな…」

 

 

 

 

指を組み、苦笑いをしながら話し出す。

 

 

 

 

「まず、私は裏社会のトップ、ボンゴレファミリーの初代の血を引いているんだよ」

 

 

 

 

私が態々裏〝社会〟と言った事に反応する直だが、黙って続きを促す。

 

 

 

 

「だから将来、必然的に巻き込まれるんだよね。別に、ここまでならいいんだよ。でもね、私の父親は私をボンゴレファミリーの時期ボスにしたいみたいなんだよ」

 

 

 

 

「…何ですって?」

 

 

 

 

「だから、時期ボス。嫌だって言ったけど、多分あれは受け入れてもらえないだろうね」

 

 

 

 

「ふざけてますね」

 

 

 

 

「本当にね。私が苛ついていたのはそれが原因なんだよ」

 

 

 

 

 

話し終わると、直は何かを考え込むように眉根を寄せていた。

 

 

 

 

「それで、どうするんですか?」

 

 

 

 

「話が速くて助かるよ。ってか、本当に12歳?」

 

 

 

 

「それはお互いに言える事では?」

 

 

 

「………それも、そうだね」

 

 

 

 

まぁ私の場合、前世の記憶があるんだけども。

 

 

 

 

 

「……最終手段として考えてる事は、直に凄く迷惑をかける事になる。だから他の手も考えたいんだけど…」

 

 

 

 

何も思い浮かばない。

 

 

「柚希。私は構いませんよ?」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「貴女が玖渚機関に来るというのなら、それは私が機関長になるまで待って頂かないといけませんが、私は構いません。親友の頼みです。全力を持って叶えて差し上げます。まぁ、見返りも求めますが」

 

 

 

 

 

悪戯に笑う直に、私はポカンと口を開ける。

 

 

 

 

 

「辛い事があれば私に吐き出しなさい。溜め込みすぎては貴女が壊れてしまいますよ?柚希。貴女は高貴な私の高貴な親友なんです。惜しみなく玖渚機関の権力を使ってあげますよ」

 

 

 

 

ニコリと笑って言ってくれる直だが、正直、何故そこまで私にしてくれるのかが分からない。

直と私では身分が違いすぎる。

見返りなんて求められても、何も返せない。

 

 

 

 

「私は柚希に救われてるんですよ?これでも」

 

 

 

 

私の心情を読み取ったのか、突然そう言ってきた。

 

 

 

 

「周りは私を利用しようとする者ばかりです。けれど、貴女は、柚希は違う。私を1人の、〝玖渚直〟を見てくれている。それだけで、私は凄く救われています」

 

 

 

 

だから気にせず何でも言って下さい。

 

 

 

 

「…………お人よし」

 

 

 

「貴女にだけです」

 

 

 

 

「……ありがと」

 

 

 

下手すれば告白に聞こえるけどね、と溢せば、そうですか?、と首を傾げられた。

 

 

 

 

天然か。

 

 

 

 

 

「あぁ、そうでした。一つ聞きますが、裏世界についてどこまで知っているんですか?」

 

 

 

 

「……チッ」

 

 

 

 

やっぱりあそこで裏〝社会〟を強調したのがまずかったか。

 

小さく舌打ちをして、どうやって誤魔化そうか考える。

 

 

 

 

「誤魔化す、なんて事はしませんよね?柚希に限って」

 

 

 

 

「…………………………………一応、裏世界は3つに分かれている事は分かってる。≪政治力の世界≫≪財力の世界≫≪暴力の世界≫。直…玖渚機関は≪政治力の世界≫だよね?」

 

 

 

 

「はい。凄いですね。裏世界の情報は、≪表世界≫の人間には絶対に探れないというのに。どうやったんです?」

 

 

 

 

「…………企業秘密」

 

 

 

 

 

こればっかりは言えない。

 

 

 

 

まぁ?

直がくれたPCでハッキングとか色々してたら、出てきたけどね、普通に。

 

 

 

 

 

「まぁいいです。柚希。一つだけ約束してください」

 

 

 

 

「約束?」

 

 

 

 

 

「はい。私は時期機関長として勉強しているため、色々と忙しい。知ってますよね?」

 

 

 

 

「まあ…。だから会う時間とかあんまりないし…」

 

 

 

 

「えぇ。……ボンゴレ関係で、いえ、ボンゴレ関係でなくてもいいです。自分の手に負えないと思ったら、私の仕事の事など気にしないで連絡してきて下さい。決して、1人で無茶しようとしないでください。私からのお願いです」

 

 

 

 

「……分かった」

 

 

 

 

そうは言っても、そんな事は出来ない。

これ以上、迷惑をかけるわけには…

 

 

 

「ありがとう、直」

 

 

 

 

いかない。

 

あの後、直と別れてボンゴレに戻り、幻術がどれほど効いているか見てみれば、驚いたことに誰も気づいてなかった。

 

 

 

 

子供騙しのはずだったのにな…

 

 

 

 

というか、私は見様見真似でやっただけだ。

前に幻術を使っている人がいたからちょっと陰で見学させてもらって、それを見様見真似でやったら出来たんだけど…。

(※その幻術を使っていた人は時宮です)

 

 

 

 

 

まぁ、いいか。

 

 

 

 

考えるの、何か面倒臭いし。

 

 

 

 

 

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