好機逸すべからず   作:赤悪鬼

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12歳-中編-

夏休みももう少しで終わる頃、私はまたボンゴレ本部を抜け出してイタリアの街を探索していた。

 

 

 

表と裏の差が激しい…。

気付かれてないってのが凄いよね、本当。

 

 

 

 

時々目の端に映る裏に対し、私は少し感嘆を示す。

 

 

 

 

「ちょっと遠くまで行こうかな〜」

 

 

 

今日中に帰れればいいし。

 

 

 

辺りの景色を楽しみながらゆっくりと歩いていると、銃声が耳を掠めた。

 

 

 

 

眉を顰めて銃声のした方には近づかぬように歩く。

 

 

 

え、いやだって私何も出来ないし、正義のヒーローでもないから。

 

 

君子危うきに近寄らず、だ。

 

 

 

そう思いながら暫く街を探索していると、ドサリと近くで音が鳴った。

 

 

 

 

「………嫌な予感」

 

 

 

関わるな、と超直感が言っているが、好奇心には勝てず、路地裏を覗いてしまった。

 

 

 

 

「……六道……………骸」

 

 

 

 

そこには、力尽きて(はないだろうが)た未来の霧の守護者、六道骸がいた。

 

 

綱吉が今5歳という事は骸は6歳。

この時期はまだエストラーネオに捕まっているはず。

 

 

 

 

 

「……仕方ない」

 

 

 

 

倒れている骸を抱き上げ(めっちゃ軽かった)、近くの公園のベンチに寝かせる。

まだ起きる気配がなかったので、近くで水や食料を買っておいた。

 

 

 

 

「こんな小さい子が…」

 

 

 

 

弟とそんなに変わらない。

 

 

 

「マフィア…か」

 

 

 

そっ、と骸の頭を撫でる。

 

 

 

『家庭教師ヒットマンREBORN!』という漫画のせいで、マフィアはいいとか思っている人も多いだろうが、所詮、人殺しの集団だ。

 

 

 

そして、その人殺しの血が、私にも流れている。

 

 

ギュッと唇を噛み締め、無力な自分に腹を立てる。

 

 

 

 

「結局、私は何も出来ない…」

 

 

 

〝知って〟いても意味が無い。

何もできなければ…

 

 

「くっ…、ここ…は…」

 

 

 

自己嫌悪しているうちに、骸が目覚めた。

 

 

 

「ここは公園だよ」

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

私が声をかけると、骸は驚いたのか私から距離を取った。

 

 

 

「あ、あなたは…」

 

 

 

「私は…柚希。君は?」

 

 

 

 

「………僕に名前なんてありません」

 

 

 

小さく、悲しげに言う骸。

 

 

 

そっか。

今は〝まだ〟名前がないんだ。

 

 

 

 

「……骸」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「六道骸。君、日本人みたいだし、丁度いいんじゃないかな?」

 

 

 

 

「六道…骸…」

 

 

 

私が言った名前を復唱する骸。

 

 

 

 

「柚希、あなたは…」

 

 

 

 

何かを言おうとして口を閉じる骸だが、私にはその先が予想出来た。

 

 

 

 

 

「私は、マフィアじゃない。けど、マフィアなのかなぁ…」

 

 

 

 

何とも言えない感情に押しつぶされないよう、無理矢理笑顔を作って言う。

 

 

 

 

「どういう、意味ですか」

 

 

 

 

「…私自身はさ、マフィアにはなりたいとは思わないんだよ。でも、この身に流れる血が、それを許してくれない」

 

 

 

 

「マフィアの、むすめ、ですか?それなら関わらなければ…」

 

 

 

「無理、なんだよ」

 

 

 

 

泣きそうになる顔を見られたくなくて、骸の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

 

 

 

「そんなに軽いもんじゃないんだ。私の身に流れる血は」

 

 

 

全く。

私も厄介な家系に転生してしまった。

 

 

 

 

「マフィアを、うらんでますか?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

唐突に言われた言葉に、私は一瞬理解出来なかった。

 

 

 

マフィアヲウランデイル?

 

 

 

 

「……恨んで、ないよ」

 

 

 

 

嫌いだけど、恨んではいない。

別に何かをされた訳ではないから。

いや、命は狙われてるんだけどね。

 

 

 

 

 

「柚希。僕はもう行かないといけません」

 

 

 

 

「…そっか」

 

 

 

わざわざ、自分から戻るんだね。

あの地獄の日々に。

 

 

 

 

「名前、ありがとうございます。たいせつに使わせていただきますよ」

 

 

 

 

「うん。勝手に付けちゃったけど、気に入ってくれたみたいでよかったよ」

 

 

 

「僕には、もくひょうがあります」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「マフィアを、すべてこのてで…」

 

 

 

 

それ程までに恨みは深いんだね、骸。

 

 

 

 

「そっか」

 

 

 

 

私には、それを止める事なんて出来ない。

けど…

 

 

 

 

「闇に飲まれないようにね」

 

 

 

「…………はい」

 

 

 

 

もう一度骸の頭を撫で、買っておいた食料などを渡して別れた。

 

 

 

骸の姿が見えなくなると、私は表情を消した。

 

 

 

 

「所詮、人殺しの集団なんだよ」

 

 

 

マフィアに良いも悪いも…ない。

イタリアンマフィア・ボンゴレファミリー最強と謳われる独立暗殺部隊、ヴァリアー。

人間技では到底クリアできない黄な任務をいかなる状況でも完璧に遂行している集団。

 

そんなヴァリアーのボスが今、私の目の前にいる。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

お互いに無言を貫き通しているため、ずっと喋らないで向かい合って座っている。

別に気まずい、とかは思わない。

ただ、相手も私も、話を切り出さないだけ。

 

どうしようかと悩んでいると、バンッと大きな音を立てて扉が開いた。

 

 

「ゔお゛ぉい!!XANXUS!!何でてめぇアジトに戻ってね……あ゛ぁ?女ぁ?」

 

 

現れたのは、銀髪の男。

何故か左手が義手。

 

 

「るせぇ」

 

 

ヴァリアーのボスは一言言って、興味が失せたように目を閉じる。

 

 

「女ぁ、お前ェ、誰だぁ?」

 

 

「………沢田柚希」

 

 

「!」

 

 

「……」

 

 

名乗ると、銀髪の男…スクアーロは驚いた表情になり、ヴァリアーのボス…XANXUSは私を見た。

 

 

「そっちは?」

 

 

「……XANXUSだ」

 

 

「S・スクアーロだぁ」

 

 

「そう、よろしく」

 

 

とは言っても、よろしくする気なんてないだろうけど。

だって現に、スクアーロは私に向かって殺気を飛ばしている。

XANXUSは露骨にそんな反応はしないが、不機嫌になった事に変わりはない。

 

 

「……先に行っておくけど、私は将来ボンゴレを継ぐことはない」

 

 

「あ?」

 

 

「誰が好き好んで裏社会に関わろうとする一般人がいると思う?お父さんは私にボンゴレを継いでほしいみたいだけど、私は継ぐ気はこれっぽちもない」

 

 

先手必勝。

先に言いたい事を言い、相手の反応を伺う。

 

 

「ぶわっはっはっはっ!!」

 

 

すると、何故かXANXUSは笑い出した。

そんなXANXUSが珍しいのか、スクアーロはピシリと固まった。

 

 

「おもしれぇ。家光の娘は相当できる奴だと聞いていたが、本当だったようだな」

 

 

「買いかぶりすぎかな。私はただの一般人。裏社会にいる貴方達に敵うはずがない」

 

 

「そうか?それにしては、さっきから警戒を解かねぇ。いつでも反撃できるようにしてるようだが?」

 

 

気付かれてたのか。

 

 

私は後ろに回していた手を挙げた。

私のズボンに伴本かナイフが入ってある。

一応護身用の為だ。

 

 

「流石、暗殺部隊のボスってとこかな。スクアーロも気づいてたみたいだね」

 

 

「そんなあからさまに反応されればなぁ」

 

 

そんなにあからさまだっただろうか。

まぁいいや。

 

 

「とにかく、私自身はボンゴレと積極的に関わろうなんて思ってないかな」

 

 

「フッ そうもいかねぇだろ。お前には初代の血が流れてやがる。ボンゴrがそう簡単に手放すとでも思ってんのか」

 

 

「………そう、だね。どうしようか」

 

 

私が昔から考えていた事。

原作の始まりから終わりまではそりゃ関わっていいかなとは思ってる。

けど、そのあとにボンゴレが私を大人しく解放してくれるか。

答えは否、NOだ。

 

 

「柚希」

 

 

「ん?」

 

 

「ヴァリアーに入れ」

 

 

 「は?」

 

 

「ゔお゛ぉい!!何言ってやがるクソボスがぁ!!」

 

 

「てめぇ、相当の実力者だろ」

 

 

「……」

 

 

何でそこまで見破られる。

 

眉間に皺を寄せてXANXUSを見ると、XANXUSは至極楽しそうに笑っていた。

 

 

「名前だけでもいい。ヴァリアーに入っておけ。そうすりゃ、お前も動きやすいだろ」

 

 

「……確かに、そうだけど。そっちのメリットは?」

 

 

「闇夜の守護者」

 

 

「!!」

 

 

「?」

 

 

“闇夜の守護者”?

そんなの、原作には出てこなかった。

 

 

「実際、雲の守護者もいねぇが、闇夜の守護者もいねぇ」

 

 

「闇夜の守護者って、何」

 

 

私がそう聞くと、XANXUSはせつめいするきがないのか 、スクアーロに視線をやった。

それを受けたスクアーロが、私に説明してくれる。

 

 

「闇夜の守護者っておは、ボスの次に権力を持ってる奴の事だぁ。

 

全てを拒絶し、消滅させる闇夜。

大空の敵を消し去り、天候の調整を行う夜。

 

大空が唯一包み込めない存在だァ」

 

 

スクアーロの説明を聞いて、私が最初に思ったこと。

 

 

流石、“私”というイレギュラーがいるだけに、原作もそのままじゃいかないって事ね。

 

 

だった。

 

 

「……私がヴァリアーになるとして、不満を抱く人が多いと思うけど?それに、いきなりそんな大役……現に、スクアーロは納得してない」

 

 

ついっとスクアーロに目を向けると、反対だと言うのが感じ取れた。

 

 

「なら実力を見せろ」

 

 

「実力?」

 

 

「そうだ。一度ヴァリアーアジトに来て、カス鮫と戦えばいい」

 

 

「はぁ?」

 

 

思ってもなかった提案に、思わず素っ頓狂な声が出る。

 

 

 

「前剣帝を倒した人と戦えって?ふざけてる?」

 

 

「ただの一般人がその事を知ってるとはな」

 

 

「ぐっ…」

 

 

自分で墓穴を掘ってしまった。

けど、一度言ってしまったのならもういい。

 

 

「それで本当に納得すると?それに、私はまだ入るだなんて一言も……」

 

 

「入らなけりゃ、じじい共の思うつぼだと思うがな」

 

 

「……」

 

 

確かに、その通りだ。

ティモさんのことは嫌いではない。

勿論お父さんのことも。

けど、初来の事が関わって来るとなると、話は別だ。

私の人生は私が決める。

 

 

「分かった。2日後、朝の11時くらいにここに来るから、迎えに来てほしい」

 

 

「あぁ、分かった」

 

 

それっきり黙ってしまったXANXUSを一瞥し、私はあてがわられた部屋に戻るためにこの部屋を出た。

すると、スクアーロも続いてくる。

 

何か用か、と思って振り向くと、殺気を感じてその場を飛びのいた。

 

 

ザンッ

 

 

私が立っていた場所が、剣で切り付けられている。

 

 

「それなりの実力はあるようだなぁ」

 

 

「何の、つもり」

 

 

「また闘うんだぁ。それなりに戦ってもらわなきゃ、面白くねぇからなぁ」

 

 

「そんなこと言って、私が勝ったりしてね」

 

 

挑発するように言えば、スクアーロはおもしれぇと言って笑う。

 

 

「2日後、楽しみにしてるぜぇ」

 

 

「私も。じゃね」

 

 

ヒラヒラと手を振って、今度こそこの場を後にした。

 

 

2日、なんてあっという間に来る。

2日前にXANXUSとスクアーロと出会ったあの場所に行くと、すでに2人は来ていた。

簡潔に挨拶を済ませて車に乗り込む。

勿論、私の部屋には幻術を仕掛けておいた。

だから私が抜けだした、なんて分からないはず。

 

 

「今回やるのはどちらかが負けを認めるまで行う」

 

 

戦いの内容は至極簡単。

難しいルールでやるより、のびのびと戦える。

 

 

「分かった」

 

 

短く答えて、そっと自分の太ももに着けてある武器を撫でる。

 

スクアーロは強い。

なら、最初から全力で行った方がいいかもしれない。

 

 

そんな事を思っているうちに、ヴァリアーアジトに着いた。

 

 

何て言うか、うん。

城、だよね、コレ。

 

 

ボンゴレ本部も結構城っぽかったけど、ヴァリアーアジトも結構城だ。

若干遠い目をしながらさっさと歩いて行く2人に続く。

 

 

決闘場(?)にはたくさんの人であふれかえっていた。

きっと野次馬。

 

 

「ルールはさっき言った通りだ。始めろ」

 

 

XANXUSの合図で、スクアーロはすぐに動いた。

さっさと片付けるつもりんだんだろう。けど、そんなに甘くない。

 

 

 

キンッ!

 

 

 

 

金属と金属がぶつかる音が響く。

 

 

「! ゔお゛ぉい!!やるじゃねぇかぁ!!」

 

 

「そりゃどうもっ」

 

 

ナイフで攻防を繰り返すが、やはり厳しい。

 

仕方ない、出すか。

 

太ももに着けてあるホルスターから、三節棍を取り出した。

 

 

バキッ!!

 

 

油断していたスクアーロに一撃を入れる。

その事に驚いたのか、野次馬たちがざわつく。

 

 

「こっからは、本気で行く」

 

 

「いいぜぇ。オレも本気で行く!!」

 

 

スクアーロの繰り出す大技を見切り、避けながら反撃のチャンスを伺う。

そして…

 

 

「これで…終わり!!」

 

 

バッキィィイイイイ!!!

 

 

スクアーロの背後に回り、三節棍で思い切り殴る。

 

 

「ガハッ!!」

 

 

スクアーロの首元にナイフを当て、スクアーロが負けを認めるのを待つ。

 

 

「……オレの負けだぁ」

 

 

その言葉にホッと力を抜き、その場に座り込んだ。

 

 

「おい、ドカス共。これで誰も文句ねぇな?」

 

 

XANXUSがそう周りにいる者達に聞けば、誰も何も答えない。

つまり、無言は肯定。

 

 

「柚希。ヴァリアーに入るな?」

 

 

 

「……OK。入るよ。でも、私って基本日本にいるし、やりたい事もあるからXANXUSの命令を聞く気なんてないよ?」

 

 

「ハッそれでいい。日本にはいつ帰る」

 

 

「さぁ?でもそろそろ帰ると思うよ。学校もあるし」

 

 

よく考えれば今は夏休み。

夏休みの課題は貰ったその日に追わらせたからいいけど、惟臣に全然連絡とってないや。

まだ携帯持ってないしね。

 

 

「ならそれまでここにいろ」

 

 

「……ん?」

 

 

「ドカス共と交流でも深めておけ」

 

 

言って、XANXUSは中に入って行った。

え、放置。

 

 

「ししっ スクアーロに勝なんて、すっげーの」

 

 

1人の少年が私に近づいてきた。

その腕には赤ン坊もいる。

 

 

「オレ、ベルフェゴール。ベルって呼べよ」

 

 

「僕はマーモンだよ」

 

 

「私は柚希。よろしくね、二人とも」

 

 

マーモンはアルコバレーノだったよね、確か。

 

 

それにしても、と口角をわずかに上げる。

ヴァリアーに入れば、ボンゴレの命令はあんまり聞かなくてよさそう。

私のボスはXANXUSだからXANXUSを通せって言えばいいし。

その点では入ってよかったかな。

でも、未来の指輪争奪戦に巻き込まれるのは、あんまりいただけないけど。

 

 

そんな事を思いながらヴァリアーの人達と挨拶を済ませた。

てか、よく考えたらお父さんに知られたくないから戻らないといけない。

 

 

……なたあの南京に近い生活が始まると思うと…

いや、私が引きこもってるだけなんだけどね。

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