もんむす世界の神になる話   作:ぷに凝

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火の女神

モンスター娘が好きだ。

 

スライム娘が好きだ。ラミア娘が好きだ。アラクネ娘が好きだ。アルラウネ娘が好きだ。サキュバス娘が好きだ。

 

ミノタウロス娘が好きだ。ケルベロス娘が好きだ。カーバンクル娘が好きだ。ケットシー娘が好きだ。アルミラージ娘が好きだ。メデューサ娘が好きだ。クラーケン娘が好きだ。キマイラ娘が好きだ。ゴブリン娘が好きだ。ワーウルフ娘が好きだ。マンティコア娘が好きだ。デーモン娘が好きだ。デュラハン娘が好きだ。セイレーン娘が好きだ。ハーピー娘が好きだ。ハルピュイア娘が好きだ。スプリガン娘が好きだ。レッドキャップ娘が好きだ。フェニックス娘が好きだ。ターロス娘が好きだ。ゴースト娘が好きだ。バンシー娘が好きだ。ザラタン娘が好きだ。バフォメット娘が好きだ。アルプ娘が好きだ。インプ娘が好きだ。エキドナ娘が好きだ。トロール娘が好きだ。オーク娘が好きだ。イエティ娘が好きだ。ジャイアント娘が好きだ。マーナガルム娘が好きだ。ヘカトンケイル娘が好きだ。スキュラ娘が好きだ。ヴァンパイア娘が好きだ。ドラゴン娘が好きだ。

 

しかし悲しいかな、現実にモンスターもモンスター娘も存在しない。

そして本当にモンスター娘が実在したとしても、私のような軟弱な人間はきっと出会った瞬間たちまち丸呑みされ、消化され、養分になり、モンスター娘の体を構成する細胞の一部と化してしまうだろう。

 

「最高じゃん」

 

最高だった。

 

……しかし、そんな世界線であってもこの世に存在する全てのモンスター娘に出会いたい。そして全てのモンスター娘の細胞になりたいというどこかのマサラ人のような野望は到底叶いそうにない。

 

だが、この世界ならどうだろう。

 

このただひたすらに暗闇が広がり、無限の時間が流れるこの空間ならば……この荒唐無稽な夢も地に足が着くのではなかろうか。

すでに、私はこの世界が夢や妄想の類で生み出された空間でないことはわかっている。ここが本当に夢の中なら、私は今頃モンスター娘の腸内の感覚を味わっているはずだ。

そうでないということは、ここで具現化できる妄想にも限りがあるということだ。それこそ詳細な設計図がなければ曖昧な出来のものが出力されてしまうくらいの制限が。

 

私がどんな理由でこの世界に飛ばされたのか、その道程は全くわからない。

確かなことは私はこの世界を歓迎しているということだ。野望と妄想と想像を叶えてくれるこの力を気に入っているということだ。その事実さえあれば、過程や理屈などは正直どうでもいい。

 

好きなことができる今を楽しむだけだ。

 

……差し当たって、せっかく女神が降臨したというのにこの空間は寂しく思えてきたな。

 

「輝け」

 

私は、世界全体にそう“命令”した。

 

「うおっ、眩しっ」

 

そして視界が白一色で染まった。

 

「もーちょい光度下げて! ってか世界全体が光源はバカすぎ。えーっとそうだな……空だけちょっと光って!」

 

空、という概念がこの世界にあるのかはわからない。しかしちゃんと存在はしていたのか。それとも私のイメージが反映されただけか。

おそらく後者な気がするが、ともかく暗闇の空間に上部に光り輝く空が現れた。

 

「うーん、もうちょい空色に……そうそう、それで下の方まで広げて……いいね。ちょっとグラデーションかけよう」

 

きっとそれは、空というよりただの背景だ。

 

「……おぉ」

 

だが暗闇一色だったこの世界は、どこまでも果てしなく続く空があたり一面に広がる幻想的な空間へと生まれ変わった。

 

「綺麗だ」

 

地面はなく、見せかけであり。太陽も月もない。しかしそれは間違いなく空だった。境がない空色のキャンバスだ。

ほぼ一面、装飾もアクセントも何もない背景とその中心に艶然と座す計算し尽くされた美を持つ一柱の女神は、その対比により一層存在感が増していた。

しかし私は彼女を野ざらし、いや空ざらしにするために生み出したわけではない。彼女に相応しい舞台を整えなければ生みの親としての責任は語れない。

 

「神殿よ、現れろ」

 

私は神殿の建築様式に関する深い造旨など持ち合わせていない。いや、今に至ってはもっと調べておけばよかったと後悔すること頻りだが。

そんな私でも「神様の神殿ってこんな感じだよね」というおぼろげな記憶と具現化の力を頼りにそれっぽいものを作ることはできる。勿論細部までこだわり抜いた上でね。

 

そうして私の前に現れたそれ(神殿)は、古代ギリシアのパルテノン神殿をモチーフとした荘厳な神殿だった。神殿といったらやはりこれが真っ先に思い浮かぶ。というかこれしか知らん。

ドリス式だのモデュールだのは聞き齧った程度の知識しかない。しかしそれでも私なりに黄金比を突き詰めて彼女のために構想した神殿だ。面構えが違う。

 

ただ神殿単体が空に浮いてると違和感あるので、浮遊岩的な地形の上に乗っけようかな。隙間から滝流しちゃったりしてね。これは神殿内部にある聖なる泉から無限に湧き続けているという設定なのだ。

 

っていうか、設定も何も実際にあるし。泉。作りました。

 

「作りました」の一言で全部説明がついてしまうのがこの世界の最高な所だ。

 

「中は結構綺麗だね」

 

さてお次は内装。と言っても、こちらも大枠はすでに出来てる。例によって神殿の構造なんか知らんので全部私流のインテリアだ。

そもそも祀っているのが私の考案した女神なので、当然女神像は私の女神を置かせてもらう。

 

……そういえば、この子の“名前”を決めてなかったな。

 

私的には、これから私が生み出すであろう様々なモンスター娘たちを纏める役目……お母さんとしての役割を彼女には期待したい。この世界における聖母だ。

じゃあマリアかな。いやーでもそれはちょっと安直だ。イブ? これもありきたり。

そもそも私が作った私の世界の女神なのだから、既存のものをそのまま直接引用したくはないな。

 

女神と言っても、きっと彼女は遙か上空の天界から下々を支配するだけの冷徹な女神ではないはずだ。

美しく、豊かな心を持ち、愛嬌があり、高潔で、公平で、少し抜けていて、誰よりも慈悲深い。そんな素敵な女神だ。

 

……。

 

あと自分の顔がいいことを自覚してる方がいいな。ちょっと貞操観念が緩めだと嬉しい。普段は優しいのに夜になると豹変して責めっ気が強いと最高。経験豊富だとさらにお得。愛が重くて伴侶に対しては多少強引な手段を使ってでも自分に夢中にさせないと気が済まないくらいの湿度が欲しい。

 

そして悪魔の祖でもあるから男の快楽を知り尽くした魔性の手管が使えるわけであって。女神のデレと悪魔のツンを使いこなす激エロ女神様としての一面が──。

 

……

 

…………。

 

「はっ、私は何を」

 

気づいたら、女神を描いた図案よりも大きい白紙にびっしりと箇条書きで女神に関する設定が羅列されていた。

 

「そうだ、名前決めなきゃいけないんだった」

 

設定紙をくるくると纏め、女神像の側に安置する。

流石にここに羅列したものを全て反映するととんでもない性欲大魔神が誕生するのでここから推敲していく必要はあるが、第一案として大切に保存しておくべきだ。

 

──。

 

「ん?」

 

今……何か音が。

 

というか、女神像が少し動かなかったか?

 

「……気のせいか」

 

風の音かとも思ったが、そもそもこの世界に風は吹かない。きっと聞き間違いだろう。

 

そして名前だが……設定を考えていく中で、私の中に一つ案が浮かんだ。

発想の元は、彼女の性格からして現代に生きてたら利用してそうだなぁ。なんてどうしようもない考えから浮かんだものなのだが。

元々の意味は、火を起こすための火口。火の元という意味があったはずだ。

女神と火。この二つの関係が深いことは一端のオタクの私でも聞いたことがある。そして私にとって彼女が始まり。最初の火種なのだ。

 

だから彼女にはこの名を送る。

 

「君の名前は、“ティンダー”だ」

 

こうしてまず一柱。

 

この世界に女神が生まれたのだった。




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