もんむす世界の神になる話   作:ぷに凝

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進化が早すぎる!

「縺願?遨コ縺?◆」

「うーん」

 

まずいなぁ。

 

ティンダーが何言ってるんだかさっぱりわからん。

 

いや、そもそも動いて話してる時点で大きな前進ではあるんだけどね。ただ、やはり日本語を喋ってもらわないと私としては困るわけだ。

ティンダーは私に言葉が通じていないとわかっているのかいないのか、わたわたと両手を使ってボディランゲージをしながら私に何事かを伝えようとしている。

いかにも女神様然とした格好の彼女がそんな愉快な仕草をするもんだからギャップがすごい。何がとは言わんけど揺れもすごい。

 

「同じ言語のはずなんだけどなぁ」

「縺ゥ縺?@縺ヲ菴薙′騾乗?縺ェ縺ョ?」

「でもまぁ、敵対はしてないみたいでよかった」

 

ティンダーの様子に、少なくとも私に対する敵意や叛意みたいなものは見えない。

それなら言葉に関してはこれから徐々に教えてあげればいい。何よりも重要なのは私とティンダーの間に対話のための素養が生まれているということ。楽園の実現に向けて一歩前進だ。

 

……それにしても、本当になんでいきなりティンダーは動き出したんだろうなぁ。

 

確かに私は、ティンダー含めこれから生み出すモン娘たちが自分の意思で動き、歩き、喋り出して欲しいと望んでいた。想像を具現化するという私の力の性質上、知らず知らずのうちにその願望がティンダーに影響を与えたという可能性は考えられる。

だけど今までの力の行使は、明確に“命令”という形で行ってきた。そうじゃなきゃ力が使えないと私が勝手に考えていたのもあるけど、知らない所で変なものが生み出されちゃったりしても困るからね。

 

モン娘たちに危害を加えかねない危険物を、知らずに放置しちゃうなんてことも起きかねないから。

 

だから、もし私の無意識の願望がティンダーに知性を与えたとするならこれは結構大きな問題だ。今回はすぐ気づけたから良かったけど、ティンダーが何も知らない赤ちゃん同然の状態なら、それこそ何をするかわからない。

 

少なくともティンダーは、無から炎を生み出すという物騒な能力を持っているらしい。

 

いや、確かに私はそういう風に設定した。ティンダーは火を司る女神で、炎を自在に操るのだと。だけど実際に魔法みたいに炎を出す様子を見せられると、正直早まったなと思ってしまった。

 

それもこれもティンダーがこんなに早く自力で動き出すなんて考えもしなかったのが原因だ。もうすでにスラ娘は生まれてしまったので手遅れだが、今度から生み出すモン娘たちにはあまり危険な能力をつけないようにしないと。

 

「それに、この子も動き出す可能性があるのか……」

 

と、そこまで考えて私はスラ娘もまた知らず知らずのうちに動き出してしまう可能性に思い至った。

……スラ娘は自分の触手で他のモン娘と遊ぶのが大好きという設定がある。現状だと、その相手ってのはティンダーになるんじゃないか?

 

触手に弄ばれるティンダーか……。

 

「……アリだな」

 

その光景を想像して、私はしたり顔で頷いた。連動してスラ娘がうんうんと頷く。美少女同士が絡み合う分にはそんなんなんぼでもやっていいですからね。

 

「ティンダー、触手は好きかい」

「繧キ繝ァ繧ッ繧キ繝・縺」縺ヲ縺ェ縺√↓」

「そうかそうか、それは良かった」

 

何言ってるかわからんけど、多分「好き」って言ってるに違いない。触手が嫌いな子なんてそうそういないからね。

 

いやはや、楽しみが増えたな。

 

 

それから、3度夜が訪れて4度目の朝になった。

 

つまり3日後の朝。

 

「……今日はティンダーが来ないな」

 

“ケルベロス娘”の脚部のエロさを再現するデザインを出力するのに苦戦していた私は、ティンダーの姿が見えないことに首を捻った。

ここ3日ほどで、私は5体のモン娘の図案を完成させた。ティンダーの件があったので実体化はさせていないが、これを書いているとティンダーは決まってやって来て一人でに動くペンを物珍しそうに目で追っていた。

 

そのキラキラした眼差しが面白く、わざとペンをティンダーの目の前で踊らせてみせたりすると、これがまたすごく楽しそうにペンを捕まえようと遊び始めるのでここ最近はモン娘の制作そっちのけでティンダーのおもちゃばかり作っていたというのに。

 

今日なんかほら、私が覚えてる限り最新の変身ベルトだ。ベルト自体が一回転するギミックはティンダーにも気に入ってもらえると思ったんだけどな。

 

裏を返せば本来の仕事であるモン娘制作に集中できるとも言うが……。

 

「……やっぱり落ち着かない」

 

どうにも今日の私の創作は精彩を欠いていた。

だってほら見てこのレイヤー。美しくないよ、線が。この線じゃ見ただけでエレクチオン確定の芸術なんて出来ません。

 

「探しに行こう」

 

と言うわけで、こっちの方からティンダーを迎えに行くことにしましたとさ。

 

「とは言っても、ティンダロス神殿にいるんだろうけどね」

 

“ティンダロス神殿”。

 

火の女神ティンダーを祀る空中神殿を、私はそう名づけた。

 

ティンダーも私と同様、睡眠も食事もいらない体ではあるらしい。しかしだからと言って住む家がないというのは寂しいものだ。自分だけの居場所。プライベートな空間は誰にだって必要だろう。

私が作業に集中していて彼女にかまってあげられない時。ティンダーは自身の神殿に戻って私が生み出した様々なおもちゃや絵などで暇を潰している。私のやっていることなんて、言ってしまえば絵を描いてるだけだからね。完成するまでの時間は退屈なものだ。

 

まぁ、その分完成したらティンダーは自分の神殿に画を飾るくらい気に入ってくれているだけど。

好奇心旺盛な彼女のことなので設定画を壊してしまうこともあるかもしれないが、ちゃんとコピーを取ってあるので大丈夫。その辺は抜かりない。

 

「おーい、ティンダー」

 

そんな事情なので、私は迷わずティンダロス神殿に足を運んだわけだ。私のとこ以外でティンダーが行きそうな場所なんてここしかないからね。

 

「いたいた」

 

そして予想通り、ティンダーはそこにいた。

 

私の描いた図案を手に取り、じっと見つめている。

 

「ティンダー、今日はお絵描き見に来ないの?」

「──」

「ほら、新しい変身ベルトもあるよ。ティンダーも時の王者になりたく──」

 

……。

 

「……え?」

 

……これは、なんだ??

 

いや、あり得ない。あり得るはずがない。

 

こんなこと起きるはずがない。だって……嘘だろう??

 

「ティンダー。この、設定画……」

「──」

「何……?」

 

私はティンダーが手に持っていた設定画を肩越しに凝視していた。

 

それは……私が“描いたことのない”モンスター娘の設定画だった。

 

私が描いた覚えのない、新たなモンスター娘の図案がティンダーの足元に散らばっていた。

その精度は、一眼見た限りでは私が作ったものと遜色ない。それこそ私が作ったと他人に見せてもバレない程度には。だが、そこに描かれているモンスター娘のモチーフは未知のものだ。

 

だがあえて言うなら……それは合成獣(キメラ)だった。

 

スライムの角。馬の脚。タコの触手。悪魔の翼。

 

それらが複合的に混ざり合い、見たことのない容貌を生み出している。不自然で、ツギハギで……かろうじて生物としての体を為している。そんな姿だ。

 

「もしかして、これ……私が描いたモン娘を合体させたのか……?」

 

そして考えてみると、この特徴を持つモンスターは以前私が図案に描き起こし、ティンダーに見せたものだった。

 

「ティンダー。君が描いたの……?」

 

紙を凝視するティンダーにそう問いかけても答えは返ってこない。

 

だけどその言葉を首肯するように……ティンダーの目に宿る知性は、もう何も知らない子供のそれでは無くなっていた。




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