もんむす世界の神になる話   作:ぷに凝

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ピカピカの一年生

「ふぅ……」

 

トントン、と書類を揃えて息をつき、椅子に深く身を預ける。

 

景観を損なわないよう、見た目は中世ヨーロッパ風の木製アームチェアにしてあるこの椅子は、内部機構が前世のゲーミングチェアを参考に負担を軽減できるよう作り込まれている。

 

ここは“執務室”。

 

まぁ私が勝手にそう呼んでいるだけだけど、実際最近の私はモン娘をデザインしたり授業の内容をまとめたりする時は大抵ここに引き篭っている。

浮遊大陸とは独立した浮島と、そこに建っている塔のような外観のこの建物は現状、私だけが使っている専用施設だ。

 

ティンダロス神殿のような荘厳な見た目にする必要性は感じないし、かといって見窄らしすぎても格好がつかない。なので私としても悩んだ結果、バベルの塔を参考に私自身の居城としてこういう建物を選んでみた。

 

自分で自分を祀るほど虚しいことはないし、偉ぶるつもりもないので神殿にはしなかった。というか神殿は私の中で軽いトラウマだ。

 

名前は……まぁ、“カイラス塔”とかでいいや。かっこいいし、なんか。

 

そんなカイラス塔に篭って私が何をしているかと言えば、早い話が教科書の編纂だ。より具体的に言えば、私がなんとなくで教えてる教育課程をちゃんと体系化させようという話である。

 

クロエは友達ができることを望んだ。

 

仮にも彼女の保護者面をしている者として、そんな彼女の要望にはちゃんと答えてあげたい。であれば、当然新たなモン娘を生み出す必要性が出てくるわけで。しかもそれが1人だけとかじゃちょっと寂しいわけで。

 

まずは三人。新たにモン娘を生み出すつもりだ。

 

「色々やることあるなぁ」

 

そしてそうなると、当然準備が必要になる。

 

今まではクロエ1人さえ注意して見ておけば早々事故など起きなかったのだが、これが一気に4人となると大変だ。特に新しく生まれる3人は言葉を喋ることもできない赤子同然なのだから。

いくら不滅の体とはいえ、やはり目を離すのは怖いものだ。クロエはある程度成長したのでしばらくは自由にさせているが。

 

大陸中に監視の目を張り、どこにいても駆けつけれるくらいの体勢は整えておきたいな。

文字魔法に関する資料も、誰の目に触れることがないように厳重に管理しておかなければいけないな。

校舎も作ろう。クロエと今から生まれてくる子たちとでは勉強の進み具合が違う。区別するために部屋を分けるのは理に適っている。

 

「……」

 

なんか私、この所難しいことばっか考えてるなぁ。

 

ティンダーがいなくなってから、ずっとそうだ。

 

「……ふんっ!」

 

パシン、と自分自身の頬を打つ。

 

「そんなキャラじゃないだろー、私」

 

前世からそうだったが、私はあまり頭がいい方ではない。

 

そんな私が、柄にもなく教師の真似事をしているのだから……これ以上らしくないことをしていたら、きっとらしくなさが天元突破して化け物になってしまう。

 

ロリモン娘たちの先生ポジになれるなんてラッキー。

 

それくらいの心構えでいいのだ。

 

「行こう」

 

 

手元には、三枚の設定書。

 

「『不滅』『不変』『同調』『調律』……」

 

「先生!頑張って〜!」

 

私は、石造りの広場の上に両手を掲げて立っていた。

 

ここ、“始まりの広間“はモン娘を生み出すための場所として作り上げた。

予想外の事故が起きても大丈夫なように、ここと下界は”結界“により阻まれている。クロエは結界の外で、息を呑むようにこちらを見つめていた。

 

私としても、彼女の前で失敗はできない。

 

流石に3体も同時に意思ある生命を生み出そうと思ったら、創造魔法の構築にも時間がかかる。少しでも手元がズレれば即座に崩れるシビアなパズルを組み立てているような感覚だ。

私の集中力に応じてか、周囲には二つの魔法が生み出す力場が風となって吹き荒れている。創造魔法が放つ光も相まって、側から見た私の姿は実に幻想的に見えるのかもしれない。

 

だが、それを鏡で確認する余裕もないほど強く、強く集中して。

 

「──生まれろ」

 

私は、組み上げた生命を解き放った。

 

──!!

 

白い光が辺りに満ちる。

 

「さて、どうかな」

 

やがて風が吹きやみ……光が徐々に色を失っていく。

 

そして。

 

「おぉ」

 

私の目の前には、三つの人影があった。

 

「わふ」

 

白い毛並みの耳と尻尾を携えたホワイトウルフ。

 

「……うー」

 

髪と下半身が蛇の形を取っているメデューサ。

 

「?」

 

額から伸びる一角と垂れた耳が特徴のアルミラージ。

 

「完璧じゃん……」

 

そのあまりにも愛らしい三人娘を見て、私はグッとガッツポーズ。

 

私の才能が恐ろしいな……。

 

「先生〜!!」

 

と、私が自分に酔っているとクロエが駆け込んできた。

 

「あっ、ちょっとクロエ!? まだ危ないかもしれないから──」

「かわい〜!!」

 

そして、飛び込んできた勢いのまま3人をガバッと抱きしめるクロエ。

 

「……まぁいいか」

 

一応、まだ事故のようなことが起きる可能性があるのだが……それもクロエの笑顔を見ると吹き飛んでしまった。

 

「先生! 今日からこの子たちが私の友達になるんだよね!?」

「うん、そうだね。仲良くするんだよ」

「きゃ〜!! 先生大好き!!」

 

ははっ、よせやい。

 

その二又尻尾口に含んでじゅるじゅる啜ってやろうか。

 

普通に嫌われそうだからやめよ。

 

「じゃあさじゃあさ! 私、この子達のお姉ちゃんってことじゃない!?」

「うん?」

 

クロエが彼女らのお姉ちゃんとな。

 

「確かにそうか」

 

クロエ含め、この子達は全員が私の子供と言える。

だとすれば、一番最初に生まれたクロエが長女ということになるか。

 

「そうだね。クロエがお姉ちゃんだ」

「わぁ……!!」

 

目をキラキラと輝かせるクロエ。

 

「クロエはお姉ちゃんになりたかったの?」

「うん! だってかっこいいじゃん!」

 

かっこいい、か。

 

「それじゃ、クロエも皆のお世話手伝ってくれる?」

「いいよ!」

 

私が生み出したモン娘を、クロエに受け入れてもらえた。

たったそれだけのことが、なんだかとても嬉しいことのように感じた。

 

「じゃあ、まずはこの子達に名前をつけよう」

「わ〜!」

 

クロエに抱かれ、きょとんとするモンスター三人娘。

 

今日からまた一段と忙しくなりそうだ。

 

 

「じゃあ問題。60円のみかん2個と100円のりんご1つ。どっちの方が高いでしょう? イセ、答えられる?」

「みかんの方が好きですね」

「ちょっと、イセ! 先生はどっちの方が高いのかって聞いてるの!! 好きかどうかなんて聞いてないのよ!」

「どっちも美味しいよ〜」

「そういう意味じゃないって!」

「ふふ。じゃあヤマタ。代わりに答えられる?」

「! み、みかんの方が大きいわ!」

「正解。ありがとね」

「!! ふふ〜ん」

「ヤマタ、嬉しそ〜」

「う、うるさいツキノ!」

 

教鞭を執る私の前に並ぶ三人娘。

静かで冷静なイセ。委員長タイプのヤマタ。おっとりとしたツキノ。

 

彼女達が来てから、この世界も一段と賑やかになった。

三人は時々喧嘩することもあるが、基本的には皆仲良しでやってくれている。

それは彼女達同士の相性がいいからということもあるのだろうが、もう一つ大きな理由として。

 

「先生! 皆! 果物持ってきたよ!!」

 

彼女達をまとめてくれる存在がいることも大きい。

 

「ありがとう、クロエ。じゃあお勉強は一回お休みにして、皆でおやつにしようか」

「ほ、本当ですか!?」

「やったぁ〜」

「……もうちょっとやりたいんだけどなぁ」

「りんご、みかん、ぶどう、なし! どれ食べたい!」

「私りんご!」

「全部〜」

「なしをいただきます」

 

クロエが持ってきたバケットいっぱいの果物をみんなで齧る。授業中だが、そんなことはお構いなしだ。というか私が疲れたのでちょっと休憩したいし。

 

なにより、これのために1日を頑張って……。

 

「あっ、もう全部なくなっちゃった」

「……」

 

子供の食欲、エグいわ。




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