更新頻度を上げられたら良いんですが…変に拘るから週1が限界。
十二月初旬。
祭りの熱が冷めると同じくして、再び幻想郷に雪が舞い降りた。時が巻き戻されたかのように元の冬景色を取り戻した人里の一角を、カンザトは鈴奈庵へ本を返却するため歩いていた。
ちなみに本日、こころは留守番だ。多分今日はつけられてない。
「ごめんくださ──」
暖簾をくぐり、挨拶したカンザトだったが……
「きゃ!」
「わっ!」
体の前に、軽い何かがぶつかった。
驚き視線を下に向けると、風呂敷を持った小鈴がよろめいていた。
「ごめん小鈴ちゃん! よそ見してた」
「いえ、こちらこそすみません」
「怪我ない?」
「大丈夫です。カンザトさんは本の返却ですか?」
「うん。前借りたやつを返しに来たんだけど……出るとこだった?」
「はい。貸本の回収に行くとこだったんですけど、先にそちらをお受け取りしますね」
「あぁごめん、よろしく」
どうやら一部の客からは貸本回収サービスまで請け負っているらしい。
「回収は小鈴ちゃんがやってるの?」
「いえ、普段はお父さんが行ってるんですけど、数が多い時は私もたまに手伝ってるんです」
「へぇ、偉いな。じゃあ今日もお父さんと?」
「手分けして回収するので、私は一人で行きますよ」
「あ、そうなんだ」
受け取った本を持ち、歩く少女の小さな背を見る。
失礼だが、彼女の体躯は肉体労働に向いているように見えない。
それに出入口でぶつかった際、小鈴の体重は軽く感じた。先ほどの言いぶりからして回収先は一箇所ではないのだろうが、一人でたくさんの本を抱えて回収先と家を往復するのは大変に思える。
なので、カンザトは純然たる善意である提案をした。
「手伝おうか?」
「え?」
「一人で本運ぶの、大変じゃない? 俺も手伝うよ」
「いえそんな、大丈夫です! 慣れてるんで!」
おおよそ思った通りの反応だ。真面目な小鈴なら、手を貸そうとしても遠慮するだろうとカンザトは予想していた。客があまり出しゃばるべきではないのだろうが……
「でもさ、結構量多いんじゃない?」
「たしかに年末だからか多いですけど……いやでも! お客さんにそんなことさせられません!」
「客じゃなくて、友達として手伝いたいって言ったら、図々しいかな」
「ともだち……」
小鈴はカンザトの発した言葉にハッとした。
たしかに友達なら、純粋な手助けもなんらおかしな事ではないのかもしれない。
「2人でやった方が早く終わるし! 迷惑じゃなければ手伝わさせてよ」
「そう、ですね……じゃあ、お願いしちゃおう、かな」
「任せて。……大舟に乗ったつもりで」
「お、力に自信アリ! って感じですか?」
「まぁそれなりに。里の外行くこと多いから、自然と体力もついたよ」
「外って、博麗神社とか?」
「うん。あとは命蓮寺とか」
「へぇ、お参りですか?」
「お参りではないかな。まぁ、ちょっと用事があって」
二人は大きめの風呂敷を手に持ち、本の回収へ向かった。当初は手分けして回ることも考えたが、カンザトが未だ住所情報に明るくないため、小鈴に同行することとなった。
流石と言うべきか、生まれてから現在まで人生の全てを里で過ごしてきた小鈴にとって、人里内は自分の庭のようなもので、道を迷うことなくすいすいと進んでいく。
今読んでいる本や共通の知人の話題で雑談しながら歩いていると、やがて一軒目のお宅に到着した。
「こんにちはー鈴奈庵です! 本のお受け取りに来ましたー」
小鈴が一声かけると、中から人の良さそうな笑みを浮かべた老婦人が出てきた。
「こんにちは、小鈴ちゃん。回収お疲れ様。いつもお家のお仕事手伝って偉いわねぇ」
「いえ、好きでやってるので。お邪魔します」
「お邪魔します」
小鈴の後に続き玄関へ入り、挨拶する。
あらかじめ用意していたようで、数冊の本が靴棚の上に積まれていた。
「あ、それじゃあ……よろしくお願いします、カンザトさん」
「うん」
紫色の風呂敷を広げ、その上に本を乗せる。里に住み始めた最初の頃は、風呂敷の結び方ひとつとっても苦戦したことをしみじみと回想しながら、本を傷つけないように丁寧に包む。
「小鈴ちゃんにお兄さんがいたなんて知らなかったわ。今日は二人でお手伝いかしら?」
「え? ……あぁいえ! 違います! カンザトさんはたまたま手伝って貰ってる、えっと……臨時の助っ人? みたいな感じです」
「あらそうなの? 人手不足かしら」
「そういうわけじゃないんですけど……」
小鈴の家族ではなく、多忙な時期に急遽雇ったスタッフでもない。その情報から、女性は一つの結論に達した。
「ふふ、小鈴ちゃんにも春が来たってことかしら」
「え?」
「あらやだごめんなさい。私、余計なこと言っちゃったわ。残りのお仕事、頑張ってね」
「???」
小鈴は頭上に多量のクエスチョンマークを浮かべながら、老婦人の家を後にした。
「あの人と何話してたの?」
「なんか……春がどうとか」
「春? まだまだ先だけど」
「うーん、どういうことなんだろ……あ、春と言えば今年の話なんですけどねぇ、チュパカブラっていう外来生物を捕まえたんですよー」
「……チュパカブラ? いんの?」
「え? カンザトさん知ってるんですか?」
「もちろん見たことは無いけど名前だけは。というかアレって架空の生物じゃなかったのか……」
「いるみたいですね。紅魔館の主がペットとして飼ってたのが逃げ出したとかで、里に出没したんです」
「えぇ、ヤバいじゃん! どうやって捕まえたの?」
「強力なお酒で酔わせて眠ったところを捕獲したんです。でも逃げ出しちゃって、最後は紅魔館のメイドさんが捕まえたんですよねー」
「お酒で? 凄いな……大変だったんだろうけど、面白いエピソードだね」
「珍しい体験だったのは間違いないですね。それからレミリアさんとも文通するようになったし、結果的にいいことだったかな」
「レミリアさんって誰?」
「紅魔館の主人です。脱走したペットの回収に協力したってことで、感謝のお手紙を貰ったんですよ。それ以来文通してるんですけど、毎回英語で返ってくるからなかなか大変で……」
「小鈴ちゃん英語読めんの? すごいじゃん! 俺なんてからっきしだよ」
「フフフ、すごいですか? それほどでも……ありますけど!」
その後も何軒か回り、順調に本を回収していった。
その度に投げかけられる含みのある言葉と冷やかし混じりの目線に、小鈴は小首を傾げるのだった。
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風呂敷が一杯になったため一度鈴奈庵に戻ってから、二人は最後の回収先『
「おぉ……すごい立派な家だ。もしかして、稗田さんって結構いいとこ?」
「はい、稗田は里の名家ですから。何回か私も来てますけど、未だに落ち着かなくって」
「小鈴ちゃんは何度も来てるの? 仕事?」
「今日みたいな貸本の回収もありますけど、別の用事で来ることもありますよ。阿求……あ、ここの現当主、
「現当主ってことは……え、一番上の人だよね? そんなすごい人と友達なの?」
「まぁ、すごい人なんですかねぇ。幼馴染みなんで、あんまりそんな感じしないっていうか」
木製の巨大な門が開かれると、女中と思われる女性が二人を迎え入れた。普通に生きていればまず踏み入れることのない仰々しい屋敷に気圧されながらも、女中の後に続き塀に囲まれた広大な敷地内を歩く。
これまた立派な玄関扉をくぐると、少しの間待つよう促された。しばし小鈴との世間話で時間をつぶしていると、姿を見せたのは花飾りを付けた小柄な少女。彼女が先の会話で出てきた、稗田阿求だろう。
阿求は小鈴と同い年に見えるのだが、悠然とした佇まいと格式高い環境のせいか、まるで自分とは住む世界が違う、永い時を生きた重鎮であるかのように錯覚させた。
「悪いわね、いつも来てもらって」
「悪いと思うなら自分で返してくれる? お得意様だからサービスで来てるけど、こっちは結構大変よ」
「まぁまぁいいじゃないの。引きこもって読書ばかりじゃなくて、たまには外出て体動かさないと」
「そっくりそのままお返しするわ」
カンザトは気安い会話をする二人を見て、彼女らは気の知れた友人なのだろうと感じた。
「そちらの方は?」
「ウチのお客のカンザトさん。今日は訳あって本の回収を手伝ってもらってるの」
「どうも」
「あらそうなの。それはそれはお疲れ様です……」
会釈してから、カンザトは床に置かれている本を風呂敷に包み始めた。
見れば結構な量だ。小鈴一人で全て運ぶのは骨が折れるだろう。やはり手伝って正解だった。
作業に取りかかるカンザトを横目に、阿求は小鈴を手招きし、小声で喋りかけた。
「何アンタ、いつの間に男捕まえてんのよ」
「はい? 何の話?」
「とぼけんじゃないわよ。あのお手伝いさんのことよ」
「カンザトさんがどうかした?」
「アンタのコレなんでしょ?」
阿求は小指を立てて、小鈴の顔の前にずいっと近づける。
「コレ? ……えぇ!? ち、ちち違う!」
「あ、間違えた。たしか男性は親指だったわ。それにしても驚きよ。この間まで男の影すら見せなかったのに」
「違うって! 私そんなつもりないし!」
「フッ、どうだか。そうか……ついに小鈴も色を知る歳か……」
「アンタは私のなんなのよ! 友達ではあるけど、あの人はただのお客さんだって。今日手伝ってくれてるのもたまたま!」
「アンタにそのつもりが無くても、あっちは小鈴目当てかもしれないわよ。ただの客なのにわざわざ自分から回収の仕事手伝うなんて、何かあるに決まってんじゃない。きっとアンタに気があるのよ」
「え、えぇぇ……? そ、そうなのかな……」
「間違いないわ。男はケダモノなのよ。男慣れしてないアンタなんか簡単に喰われちゃうから、気をつけなさい」
「なんでそんなに自信満々なのさ」
「私は前世の記憶がありますから。男の考えることなんてお見通しよ」
「単に
カンザトがチラリと目を向けると、二人は何かを話しているようだった。会話の内容は聞き取れないが、なんだかとても失礼なことを言われている気がする。
「あのー、どうかしましたか?」
「あぁいえ、なんでもありませんことよ。おほほほ」
何故か阿求は生暖かい視線を向けてきた。
そしてひとつ咳払いをしたかと思うと、今度は真剣な顔付きでカンザトの顔を見つめた。
「カンザトさん。貴方はどうして小鈴の仕事を手伝ってるんですか? 差し障りなければ、理由を聞かせていただけませんか?」
「ん?」
「ちょっ、ちょちょちょーい!」
突然、小鈴が焦りながら阿求に掴みかかった。
「アンタは何を言いやがるのよぉ!」
「小鈴、顔! 顔が怖いわよ!」
「怖くもなるわ! 突然何言ってんのか聞いてるんだけど!」
「ただ気になる動機を問うたのみですけども? 貴方は何をそんなに焦ってらっしゃるのかしらぁ?」
「アンタ絶対他人の色恋沙汰を楽しんでるだけだよねぇ!?」
じゃれつく二人とは対照的に、カンザトは内心動揺しながらぐるぐると思考を巡らせていた。
もしや、ためされているのか、と。
この外見年齢にしては大人びている阿求という少女は、大切な親友が傷つかないように、突如現れた怪しい輩の人となりを見極めようとしているのではないか。そして、彼女は人里において強い権力をもつ、稗田家の現当主だ。
つまり、生半可な気持ちで返答は出来ない。しっかりと誠実さを伝えなければいけない。
そう考えたカンザトは至って冷静沈着に、動揺を悟られぬように落ち着いた声色で答えた。
「小鈴さんが一人でのお仕事は大変そうだったので、手伝おうと思いました」
「そうですか。何かしら見返りを求めてのことですか?」
「いえ。いち友人として、彼女の手助けが出来ればと思ってのことです。そういった考えはありません」
「なるほど……」
小鈴は阿求がふざけて尋ねたと思っていたため、カンザトの丁寧な応対に面食らった。なんなら聞いた本人も温度差に少し驚いた。
「おかしなこと聞いてすみません。では、今後とも小鈴をよろしくお願いします。この娘を大事にしてあげてくださいね」
「アンタは私のお母さんか!」
どういうわけか、阿求は改めて姿勢を正し、恭しく一礼した。
「……?」
小鈴をよろしく? 今後も鈴奈庵をご贔屓に、という意味だろうか。
言われなくとも、鈴奈庵と小鈴にはこれからもお世話になるつもりだ。
「はい、任せてください」
ということで、カンザトは淀みなくハッキリと承諾した。
「……へっ?」
「わぁ……」
すると、小鈴は目を見開き鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
阿求は小さく声を漏らし、ニヤついた笑みを見せた。
「よかったわね小鈴! 任せてください、だって! キャー!」
「あ、あわ……」
「照れてんじゃないわよこのこのー!」
「あ、アンタも赤くなってんじゃない!」
キャーキャーと騒ぐ女子二人を見て、カンザトは何かマズったかと己の発言を省みる。
「なんか変なこと言っちゃいましたかね……」
「いえ、いえいえ! 完璧ですよええ! 是非ともよろしくお願いしますね!」
完璧とは、彼女のお眼鏡にかなった、ということだろうか。どうやら、唐突に開始した友人面接は無事通過できたらしい。
「か、カンザトさん! 回収も終わったし早く戻りましょ!」
「え? うん、分かった」
顔を真っ赤にした小鈴に促されるまま、カンザトは玄関を出た。
「あーちょっと! 今度根掘り葉掘り聞かせてねー!」
阿求の非難めいた声を背に受けて、二人は逃げ帰るように稗田家の屋敷を後にした。
鈴奈庵へ戻る間、小鈴は俯いたままで話しかけても曖昧な返事をするのみだった。
その様子を見たカンザトは、やはり面接は失敗だったのかもしれないと一人不安を募らせるのであった。
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「今日はありがとうございました。正直一人だったら大変だったので、助かっちゃいました」
「どういたしまして。またあれば言ってよ。いつでも手伝うから」
「お給料は出ないですけど……」
「いや、いらないいらない。給料貰うほどのことはしてないし、気にしないで」
「う〜ん、でもやっぱり働いてもらって何も返せないのは……」
悩む小鈴を見て、カンザトは何か頼み事はなかったかと思考する。
「あ、じゃあ……」
少し考えて、すぐに思いついた。
「小鈴ちゃんが嫌じゃなければ、絵のモデルになってくれないかな」
「モデルですか?」
「実は俺、知り合いの絵を描いてて。色んな人にお願いしてモデルやってもらってるんだ」
「へぇー、何かに使うんですか?」
「ちょっと恥ずかしいんだけど、里の人たちから絵の依頼を受けようと思ってて、その見本? みたいなものにさせて欲しいんだよね」
「はぁなるほど、お仕事ですか。私は構いませんよ」
「ホント? ありがとう」
ありがたいことに、快く引き受けてくれた。
時刻は夕方、これから訪れる客も少ないだろうということで、堂々と鈴奈庵の店内を使わせてもらうことにした。
描画を開始してから数分後……
小鈴は椅子に姿勢よく腰掛け、両手を重ねて腿のあたりに置いている。
「……」
小鈴は緊張していた。
モデルだから当然なのだが、これでもかというほどカンザトに顔を見つめられている。
(なんか、阿求のせいで意識しちゃう……)
ここに来てやっと気がついた。行く先々で向けられた妙な視線、態度の正体はこれかと。皆がカンザトとの関係を好き勝手に想像し、自分に特別な人ができたのだと決めつけていたに違いない。
だが、数少ない読書仲間として接してきたせいか、今まで彼を異性として意識したことはなかった。
では、指摘された今、自分は彼のことをどう思っているのか。胸の内には、秘めたる特別な想いがあるのか。
よく人を子供扱いしてくる親友は、彼が私に気があると言っていたが……
(いやいや私そんな下心ないし! カンザトさんも善意で助けてくれただけなんだから、こんなこと考えてちゃ失礼でしょ!)
無い。そんな感情、あるわけない。
甘酸っぱい恋愛小説を読み、人並みにそういったものに興味はあるのだが、実際自分自身がそんな状況に行き当たっても、すぐにハッキリとした答えは出せない。
「小鈴ちゃん」
「ひゃいっ!?」
不意に名を呼ばれて、素っ頓狂な声をあげてしまった。
「……大丈夫? 緊張してる?」
「だ、だいじょぶです! なんでしょーか!」
「俺さっき、稗田さんに変な事言っちゃったかなぁ」
「へ?」
「もし知らないで失礼なことしてたら、小鈴ちゃんにも申し訳ないよ……」
見るからにしょんぼりと眉を下げるカンザト。
彼は思ったよりも鈍感らしく、阿求の妙な発言をあまり良く捉えていなかったようだ。
そんな彼の様子を見て──
「ふふっ」
つい、笑ってしまった。
なんだか、彼の気も知らずに一人で緊張していた自分が馬鹿らしくなった。
「そんなことないですよ。阿求が言ってたことは気にしないでください。カンザトさんがいい人だったから、嬉しかっただけだと思います」
「そうなの? なら良かった……かな?」
照れくさそうに微笑むカンザトを見て、小鈴はまた笑みをこぼし、思う。
やはり私に恋愛感情は無さそうだ。
なぜなら、自分はまだ彼のことをよく知らないから。彼が無償で他人の仕事を手伝うほどお人好しで、少女との会話で感じた些細な不安を気にしてしまう性格なんて、今日初めて知ったことだ。
そんな私が友人に煽られただけで恋心を自覚するなんて、あまりに性急で短絡的だ。プロローグが抜け落ちている。
とどのつまり、先ほどまでの胸の高鳴りはきっと、馴染みのない、恋愛という非日常への惑いと期待によるものだと結論づけた。
・
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・
「えっ、すごい上手じゃないですか! これなら依頼もきますよ!」
「あ、本当? それなら良かった」
皆が出来を褒めてくれるが、現実問題、里で売れるかは、里在住でなおかつ同じ価値観の人間でなければ分からないだろう。そういう意味で、小鈴は審査員に適任だった。
「小鈴ちゃん、今日はありがとう」
「何がですか?」
「普通なら入れない豪邸を見れて、色々と面白い話も聞けたから、今日は手伝ってよかった。モデルにもなってもらっちゃったし」
話を聞けば、小鈴は意外にも奇妙な出来事に出くわすことが多い。実際に妖怪と交流する自分とはまた少し違うが、彼女は事件に巻き込まれやすい質なのかもしれない。
「小鈴ちゃんの生活は忙しそうだけど、楽しそうだね」
「そうですかね……普通ですよ。何も知らない、普通すぎる毎日です」
「えっ?」
「あっいえ、なんでもないです。たしかにちょっと特殊な経験もしてますねー。霊夢さん魔理沙さんのおかげかな〜」
小鈴は本心を取り繕うように早口で答えた。
本当は貴方のような、超常的存在と近しい生活に興味があるんですよ、とは言えなかった。
貸本屋の仕事を手伝ったことにより、里で過ごす小鈴の日常の一端を知った……
「依頼はどうやって受けるんですか? 掲示板にでも貼り出します?」
「今度路上販売をやるから、その時ついでに宣伝する予定」
「路上販売? 何か売るんですか」
「趣味で作ってる粘土細工を売るんだ。良ければ今度見に来てよ」
「へぇー! 行きます行きます! 近くなったら教えてください」
「うん、決まったら伝えるよ。……あ、そうだ。他の人たちは絵に自分の店の宣伝とか好きな言葉とか書いてたんだけど、小鈴ちゃんも何か書く?」
「そうですねぇ……それじゃ、私も店の宣伝を!」
本来交わることの無い、彼女の日常と彼の非日常。
縁がないと思っていた、霧の先の世界。
しかし、彼の紡ぐ物語の登場人物になってしまった以上、誰が望まずとも、いずれアルカナの旅路を照らす星となる。それこそ脈絡なく、彼女が自覚するよりも早く、プロローグを欠いて。
その訪れを受け入れるか、それとも拒むかは彼女次第なのだが……
「できた! 『知識と娯楽を求むるそこの御仁 鈴の音の鳴る鈴奈庵へいらっしゃい』こんな感じでどうでしょうか!」
「小鈴ちゃん、語彙力あるなぁ」
やがて真実を求める少女は、他ならぬ自分自身の意志で、嬉々としてその輪に加わるのだろう。
その選択が吉と出るか凶と出るか、今はまだ分からない。
ものすっごい典型的な鈍感系主人公にしてしまった
小鈴コミュが一番ラブコメしてるかもしれない
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