PERSONA-trinity heart-   作:善い思考

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この戦闘回、最初は1話にまとめようと思ってたんですが、どう考えても無理でした。


It's Going Down Now

 

「布都さん!」

 

 爆風から身を護りながら、カンザトは布都の元へ駆け寄った。

 

「体、大丈夫ですか」

 

「お陰様でな」

 

 布都は真剣な顔付きのまま答える。

 二人の近くに、こころが上空から降下してきた。

 

「助かった。ありがとう」

 

「む、いやなに、我もお主に……あぁ今はそれどころではない! 一旦退くぞ!」

 

 煙が晴れる前に、三人は近くの大木の陰に身を隠した。

 

「して、あの化け物は一体なんなんだ」

 

「分かりません。味方じゃないのは確かです」

 

「そんなのとうに分かっとるわい」

 

「この森に棲んでる生き物なんじゃない?」

 

「あんな化け物が棲んでるなんて、とんでもない場所じゃなここは……」

 

 布都は眉をひそめて苦々しく言った。

 もしアレが魔法の森固有の生物なら、入れば二度と帰れない死の森と称しても過言ではない。

 

「布都、さっきの爆発は何?」

 

 こころが布都へ問う。

 さっきの爆発、とは火柱が異形を包み込んだ後に突如起こった爆発のことだろう。

 

「貴方の技は単に火を放つものでしょう。あんな爆発、見たことない。それに爆発の瞬間、周りの魔力が消滅した気がする」

 

「お主、案外よく見とるのう……」

 

 布都は感心したように呟き、虚空を指さした。

 

「そこいらに漂っとる胞子じゃ」

 

 指し示す先へ目を向けるも、当然胞子の様子が肉眼で見えるはずもない。辛うじてモヤのようなものが視認できる程度だ。

 

「ここの胞子は自然的な気──魔力の素を多分に含んでおる。それらを強火で瞬間的に焼いてやれば引火して……ボン!とな」

 

「魔力を含んでるというだけであんな大爆発は起こらないはず。何か仕組みがあるでしょう」

 

「え? えーっと……キノコの胞子が空気中に大量に漂ってて、胞子は粉末のような物で……だからそこに火を放てば熱されて……えーと、なんだったか。あの、粉が爆発する……」

 

「粉塵爆発ですか?」

 

「そうそれ! 詳しくはよう分からんが、我は粉塵爆発と同じ原理で胞子を爆発させたのだ!」

 

 布都が直感的に大爆発を引き起こしたという信じ難い事実に、カンザトは少々困惑した。

 

「気づけたのはコイツのお陰だ」

 

 取り出したのは、魔力を込めると暖かくなるマジックアイテム。布都の体を気遣い、カンザトが眠る彼女のそばに設置した物だ。

 

「それで……?」

 

「目覚めた時に、辺りが随分と煌びやかだったのでな。何事かと思えば、その光はこの道具を中心に発生しているではないか」

 

 先ほどカンザトはマジックアイテムを起動させる際、普段より強くエネルギーを流し込んだ。魔力を含む胞子はマジックアイテムの急激な放熱と反応し、控えめに発光するに至った。

 

「そこでコイツの熱と胞子が反応していると気づき、そして理解した。この森の胞子に炎を放ってやれば何かしら面白いことが起こる、とな! それも全て、我の冴え渡った頭脳と慧眼のおかげというものよ!」

 

 幸運なことに、布都への気遣いが彼女にヒントを与え、結果的に自分たちへ返ってきたらしい。

 

「す、すごいですね」

 

「すごーい」

 

 仲間から賞賛され、布都は得意げにドヤ顔をかます。

 いくら高濃度の胞子が漂っているとは言え、ただ火を起こしただけで爆発が起こる可能性は低いため、他にも魔術的及び化学的な要素が複雑に絡み合い生じた事象なのだが……この場にそういった学術的な分野に精通する者はいないため、誰も異を唱えることはなかった。

 

「そんなことより、だいぶ苦戦しているようだな」

 

「はい……かなり。腕が硬いので中心の本体を狙ってるんですけど、自由に透明になれるのが厄介で……押さえてても簡単に逃げられちゃうんです」

 

「透明に……やはりアレは悪霊の類か?」

 

 一向に意思を感じないので、その可能性を捨てきれないのが恐ろしいところだ。

 カンザトが渋い顔をしていると、何か思いついたらしいこころが口を開いた。

 

「でも、アレの本体は透明になれないのかもしれない」

 

「確かなのか?」

 

「私が本体に斬りかかった時……透明になって避ければいいのに、そうしなかった」

 

「そういえば……」

 

 だがそうなると、もう一つ疑問が浮かんでくる。

 ギリメカラとヘカトンケイルで腕を押さえつけた際に、何故すぐに腕を透過させて逃げなかったのか、という点だ。

 

(なんでだ……?)

 

 自在に透明化するには条件が他にあるのか……まさか手加減していたわけでもあるまい。

 

「ということは、逃げられる前に本体を攻撃しなきゃいけない」

 

「要は透明になるより速く、意識外からの攻撃を仕掛けれる道筋を作ってやればいいのだろう?」

 

「まぁそうだね」

 

「なら話は簡単だ! 先ほどと同じように爆発を起こし続けて、奴の視界を潰せばいい! 爆発は攻撃にもなり、隙を作れる。一石二鳥じゃな!」

 

 カンザトが真面目に思案していると、なんとも極端で大雑把な作戦が布都の口から飛び出した。

 

「俺がペルソナで腕を押さえて、その隙に2人が攻撃すればよくないですか?」

 

「お主が反撃された時どうする。それにお主が前にいられると邪魔で、我が攻撃できん」

 

 一応、心配してくれているのだろうか。微量の私怨が含まれている気もするが。

 

「というわけで、我と弟子がドカンと大爆発させるから、その隙に面霊気は奴の懐に潜り込め! 悔しいが、トドメはお主に譲ってやろう!」

 

「爆煙の中に突っ込めと?」

 

「妖怪だから大丈夫じゃろ。死にゃせん」

 

「無茶言うな。熱いもんは熱い」

 

 心頭滅却すれば火もまた涼しというが、激しい戦いの最中に無の境地へ突入するのは正気の沙汰ではない。

 

「終わったら風を浴びせてやるから!」

 

「いーやーだー」

 

 だが、現状それ以外に打開策が思い浮かばないのも事実。

 

「じゃあ、ペルソナの魔法でこころを支援します」

 

「おお、その手があったか! 中々やるな、ぺるそな!」

 

「ガーン。あなたはこっち側だと思ったのに」

 

「ごめん……たしかに危ないけど、しっかり守るから。頼んでいい?」

 

「……分かった、頑張る。あなたがそう言うなら」

 

 こころは渋々と承諾した。

 カンザトが代わりにフィニッシャーを担う手もあるが、空中で素早く動けて、かつ小柄な彼女が適任なのだ。

 

「頃合いは我が指示する。今と言う時に奴へ向かって火を放て」

 

「でも、デタラメに撃ったらむしろ危険なんじゃ? 忘れてるかもしれないけどここ、森だよ」

 

「んなもん分かっとるわい! まぁいいから、言う通りに動け!」

 

「……本当に大丈夫?」

 

 こころの心配は尤もだ。無闇やたらに放火すれば草木に引火して、自ら味方の退路を潰す恐れがある。

 反対はしなかったが、カンザトも怪訝な表情を浮かべた。

 

「なに、胞子が集まったここぞという時に的確な位置へ撃てばいいだけのこと。辺りを火の海にするつもりはないぞ」

 

「それが難しいと思うんだけど」

 

「我には流れが見える。ゆえに、我の指示通りにすることだ」

 

 その揺るぎない自信はどこから来るのだろう。勘で胞子を爆発させた発言を聞いてしまうと、素直に従いづらい。

 

「……今のうちに逃げる? 爆発が効いたのか、思ったより反撃してこないし」

 

「うぉい! ちょっとは信用しろ!」

 

 布都は必死に訴えるが、戦場においては不確かな作戦より安全策をとるのが道理だろう。

 

「我は腹が立っておる! 不意打ちとはいえあの怪物から一発もらい、あまつさえ気を失うなんて失態を演じたからだ! その落とし前はつけんと我の気がすまんのだ!」

 

 やけに必死だと思えば、案の定、多分に私怨が含まれていた。彼女はプライドが高いのだろう。

 

「そうじゃないにしてもアレは倒した方が世のため人のためとなろう! あんな破壊兵器、野放しにしておいては森がどうなるか分かったものでは──」

 

 その時、ベキベキと幹のひしゃげる破壊音が布都の主張をかき消した。

 

「くそ……悠長に話し合う時間はないか」

 

「どうするんですか!」

 

「と、とにかく作戦通りやれ!」

 

 やれと言われても……本当に大丈夫だろうか。彼女の作戦に命を預けてもいいのだろうか。

 そう逡巡していると──

 

「我は師として、お主をつつがなく地底世界へ導く義務がある! だから──」

 

 布都はカンザトへ近づくと、迷いを帯びた彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「我を……信じよ!!!」

 

 カンザトは驚いた。布都が自分へ「信じて欲しい」と言うことなど初めてであり、この先もないと思っていた。

 しかし今、彼女は心からの本音を語り、強い意志をもって訴えかけている。それはつまり、二人なら必ず作戦を成功させてくれるだろうと信じていることに他ならない。互いに信じろと、言っているのだ。冗談や思いつきで言っているのではない。

 

 彼女の、魂の叫びを聞いた気がした。

 

「……分かりました。布都さんのこと、信じます」

 

 だから、信じることにした。

 彼女の意志と、作戦の成功を。

 

「そこまで言うなら、私も」

 

 同じ気持ちになったのか、こころも賛同した。

 

「そ、そうか! 頼んだぞ!」

 

 パッと表情を明るくした布都は別の木陰に飛び移ると、懐から一枚の皿を取り出した。そして皿をその場に浮かせてから、こちらに手で合図を送った。

 あれはおそらくGOサインだ。カンザトは首肯で返すと、こころに魔法の加護を付与してから、布都と共に戦場へ躍り出た。

 

「お主は奴の右側に回れ! 面霊気は隠れておれ!」

 

「はい!」

 

 自分とは反対に、異形の左側に陣取る布都。彼女が右腕を横様に払うと、火球が数弾放たれる。今度は爆発することなく、そのまま異形の肉体に当たり火の粉を散らした。

 カンザトが先ほどとの違いについて考えていると、異形の頭上に謎の白い物体が浮いていることに気づがついた。

 

(あれは……お皿?)

 

 いつの間に投げたのか、皿が異形の頭上で旋回している。

 自分との手合わせでも使っていた皿だが、あれに何の意味が……

 そこまで考えて、年末年始に実施した突貫修行での会話を思い出した。

 

 

『以前、我の皿は特別製だと言ったな』

 

『い……ってましたね。どう特別なんですか?』

 

『おい、まさか忘れたわけではあるまいな。我の言ったことは一言一句覚えんかい!』

 

『あーはい。で、どう特別なんですか?』

 

『む……この皿は、気の流れを操る際に助けとなる、中間地点のような役割を持っておる』

 

『気の流れ?』

 

『我々が今生きている環境には、常に気が流れておる。それは大地を流れる川のように強弱があり、小川のせせらぎのようであれば、時に大河の奔流にもなりうる。そしてそれは人の運気にも作用するのだ。いわゆる風水というやつじゃな』

 

『風水……占いとかのアレですよね』

 

『左様。この皿は我が風水へ手を加える際の媒介となるため、我の術には必要不可欠な物ということだ』

 

『へー……気ってなんですか?』

 

『そこからか!』

 

 

 皿は布都が気を操る際の手助けをする。

 では、あの皿はこの森に流れる気を……

 

「今だ! 頭めがけて火を撃て!」

 

 準備が整ったらしく、布都が火炎魔法の発動を命ずる。

 カンザトは双頭の番犬『オルトロス』を呼び出し、中火炎(アギラオ)を頭部めがけて放った。

 狙いを定めた火球が一直線に飛んでいき──

 

 ボン!と重い破裂音と共に、異形の頭部で爆発した。

 

「ホントに爆発した……!」

 

「ワハハ! 狙い通りじゃ!」

 

 布都の指示通りに動き、爆発は起こった。タネは理解したわけだが、にわかには信じ難い。まさか彼女の眼は細かい粒子の姿形を捉えているというのか。

 

「悪いが面霊気の出番はないかもしれんなぁ!」

 

 実はこの時布都は、設置した皿を媒介として周囲の微風を操り、空気中に漂う胞子を異形の動線上に集めていた。

 昆虫の複眼のように、胞子を肉眼で見ているわけではなく、化け物茸の胞子から発される魔力──彼女の言う『気』の流れを読み取っている。

 爆発の仕組みは胞子を用いた粉塵爆発だが、胞子を運び集める手段は皿を介した風の操作だったわけだ。

 そのような離れ業を可能にしているのは、彼女の特異な能力に他ならない。

 

 物部の秘術を操る道士、物部布都──彼女は幼少の頃より、『気』を感じ取る才能が秀でていた。

 

「この調子でいくぞ!」

 

 だが、キノコの最盛期より胞子の量が少ない現在の時期と、気の流れを狂わす異形の衝撃波は、この作戦の成功率を著しく下げる天敵だった。

 

「うわっ!?」

 

 爆発をものともせず放射された衝撃波を、カンザトは地面に身を投げ出し転がることによって回避した。

 

「厄介な……」

 

 衝撃波によって乱流する気を感じ、布都は顔をしかめる。

 あれでは折角集めた胞子が飛散してしまう。弟子に注意を引き付けさせるか、上空から集めるしかないか……

 そう考えてると、異形のもう片方の掌がこちらを向いた。

 

「うおっ!?」

 

 襲い来る衝撃波をギリギリで避ける。

 奴はじゃじゃ馬だ。気の流れに集中している暇などないかもしれない。

 異形を睨み思案していると、続けざまに衝撃波が放たれた。

 

「まずっ……」

 

 咄嗟に回避行動をとろうとした次の瞬間──

 

「ぐえっ」

 

 腹を何かに引っ張られた。

 

「わぷっ」

 

 そして、浮遊感を感じたかと思うと、フサフサとした何かが顔面に触れた。

 すぐさま顔を上げ、気づく。

 ペルソナに騎乗したカンザトに抱えられたのち、その巨犬の背に乗せられたのだと。

 

「おい弟子……急に持ち上げるんじゃあない! 師匠はもっと丁寧に扱え!」

 

「すいません!」

 

 それどころではないと言わんばかりに、カンザトは前方から視線をそらさず謝罪した。

 

「だがでかした! これで……集中できる!」

 

 布都はペルソナの背に乗ったまま、気の操作に集中する。

 

「このまま走らせておれ!」

 

 異形を囲むように駆けるオルトロスが、布都の呼びかけに応えるかの如く咆哮をあげる。すると、布都は体内を駆け巡る血液が湧き、力が増すのを感じた。

 

「お、おぉ!? なんだこれは、力がみなぎるぞ!」

 

「ペルソナの魔法です! 長く続かないので今のうちにやりましょう!」

 

「言われなくとも!」

 

 すばしっこく走り回る害敵へ異形は何度も衝撃波を放つが、一度加速した獣の双脚を止めることは出来ない。

 それを好機と感じ、布都は追加の皿を周囲にばら撒く。存在に気づいていないのか、それとも動き回る対象に夢中なのか、幸いなことに異形が設置されていく皿を壊すことはなかった。

 

「支度万端なり! 共に撃つぞ!」

 

 一分ほど時間稼ぎしたところで、布都が反撃に出る宣言をした。

 布都はオルトロスから飛び降り、火気を練り上げる。カンザトはオルトロスの疾走を停止させると、右腕を前方に突き出し、射抜くように人差し指を異形へ向けた。

 

「いくぞっ!!!」

 

 鬨の声をもって、二人は『気』を炎に変えて放出する。

 布都は生命力を、カンザトは精神力を。

 二方向から発射された火球が異形の頭部へ吸い込まれていき──

 

 

 ドン!!! 

 

 

 炎と煙が空高く噴き上がり、森全体を揺るがす轟然たる大爆発が目の前で炸裂する。生じた衝撃が遠くまで奔り、樹冠をザワザワと波立たせた。

 

「うははは! まともに食らいおったわ! 木っ端微塵じゃあー!!」

 

「すご……」

 

 あれだけの威力、大抵の生物は跡形もなく弾け飛ぶだろう。本当にこころの出番は訪れないかもしれない。

 

 そう、気を抜いてしまった。

 

「ッ!?」

 

 とてつもない圧力で体が押される。

 爆発の中心地から黒煙に風穴を開けたのは、無機質な異形の掌から発された衝撃の波動だった。

 

「ぐっ! うっ……」

 

「あぐっ……ぅ……」

 

 油断していた二人は見事に吹き飛ばされ、木の幹に打ち付けられる。破砕された木片が体に突き刺さらなかったのは幸いだった。

 布都は二度も同じ手で戦闘不能にさせられた屈辱を胸に、薄目で異形の姿を見据える。どんな業火も大爆撃も力及ばぬ、奴の肉体は鍛え抜かれた合金か。

 

 だが……終わりでは無い。

 

「隙を見せたな……」

 

 布都が()に合図を送る。

 視線の先、この戦いに終止符を打つジョーカーが、黒煙を穿つように跳躍し、破壊者の前に姿を現した。

 オルトロスの全体攻撃力強化(マハタルカジャ)によって膂力を増幅させられたのは、使役者とその師だけではない。影に潜み虎視眈々と好機を伺っていた彼女も、その恩恵を受けていた。さらに熱対策として、『月』のペルソナ『ヤマタノオロチ』がもつ能力『赤の壁』によって火炎耐性を付与された彼女は、爆風の熱さなどものともせずに突撃する。

 

「やれ! 面霊気ッ!」

 

「こころ! 頼んだ!」

 

 仲間の声援を受けて、こころは両手に力を込める。

 

 共闘し、勝利への願いを一身に背負う。

 

 それは紛れもなく初めての、心震える体験だった。

 

 敵を前にして思うことではないが、不思議と高揚する自分がいた。

 

 だがそれに反し、切ない想いが胸を掠める。

 

 刃先が異形に触れる刹那……こころは思う。

 

 

 ごめんなさい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 袈裟斬りにした薙刀が、異形の体を真っ二つに切断した。異形は言葉を発することなく、切断面からボロボロと崩れていく。

 

 ついに決着。勝利したのは、森への来訪者だった。

 心配そうにこちらを見つめながらも、薙刀を握り力強く立つ勝者の姿を見て、負傷した二人は笑みを浮かべた。

 

「はぁ、手酷くやられてしまったわ……我も……まだ、まだ……」

 

 気丈に振舞っていたが、やはり無理をしていたのだろう。布都は俯き、再び気を失った。

 

「布都さん……」

 

 瞼を閉じた布都を見て、カンザトはセイリュウを呼び出し全体中回復(メディラマ)を発動した。気力は残り僅かだが、放置するわけにはいかない。

 

 肩を押さえながらどうにか立ち上がり、こころのいる方へ視線を向ける。

 

「──ッ!」

 

 そこに居たのは、こころの背後に迫る、消えかかった異形の手。

 

 まだ生きている。

 いや、正確には死にかけで、あれは最後の足掻きなのだろう。最後まで意思を示すことはなかったが、その執拗さには何か執念めいたものを感じる。

 

 力が抜けたのか、こころは気がついていない。

 

 カンザトは最後の力を振り絞り、ペルソナを召喚する。

 

 あそこまで走ろうにも、痛みと疲労で体が思うように動かない。

 

 それでも、遮二無二動かす。

 

 大切な人を守りたいと、失いたくないと、全力で手を伸ばす──

 

 

「こころッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜空の一等星が瞬くように、空の一点がきらりと光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恋符『マスタースパーク』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星色の光線が迸り、光の奔流が異形の残骸を呑み込む。目が眩むような光が収まると、異形は跡形もなく消滅していた。

 

「おい! 大丈夫か!」

 

「あ……」

 

 聞こえたのは、焦った聞き覚えのある声と、こころの安堵の声。

 こころが無事だったことに安心したカンザトは、雪の積もった地面へ倒れ込んだ。とうに気力の枯渇していた身体へ鞭を打ち、無理やりペルソナを召喚したため、意識が保てなくなった。

 

 結局あの生物はなんだったのか。

 何故襲ってきたのか。

 倒してしまってよかったのか。

 逃げ出した先で頭に浮かんだビジョンは、失くした記憶の一部なのか。

 

 色々と疑問は残るが、今はただ、仲間を守れて……いや、仲間と協力し生き残ることができて良かったと、薄れゆく意識のなか思った。

 




化学に全く詳しくないので、粉塵爆発を起こして〜の内容はかなり雑です。適当に読み流して欲しい……

ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜は

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